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ロストコントロール 第一話『始動』
作者:13   2011/03/07(月) 21:52公開   ID:JHZjjd6HxsM
  第一章

 〜六月二日正午〜

 この世界は囲われているから、救いの王子様は何もできなくて、ただ囲いを眺める事しかできないから、お姫様が囲いから救い出してくれるように意志を表しなさいなさい。

「なんで、私がこんな目に……」
 この世界は三つの都市に分かれている。『ガイア』『タイタン』『イカロス』と名がついている。いずれも高い化学技術力を持っているとだけいっておこう。特に私の住んでいた『ガイア』は犯罪率0パーセントという平和な都市だ。
 そして私はこの世の中は狂っていると皮肉にも思っていた。きっとそういう時代なのだ。そうとしか思えない。なぜなら―――
 ついこの間まで不自由のない生活を送っていた、この超がつく天才(周りが勝手に言ってるだけ)三菱 茜《みつびし あかね》が七十二時間ほど前に不自由だらけの生活を送る羽目になったからだ。
「まぁ、そのうちいい事もあるさ」
 のん気な口調で大きな荷物を持っているのは命の恩人の黒髪 蒼《くろかみ あお》一見すると細身だけど、都市が秘密裏に手を加えた人間、マンガやゲームでいう人造人間というやつだ。
 この蒼はおかしなところがたくさんある。
・黒髪という苗字なのに髪がきれいな白髪(天然らしい)。
・他に類を見ない原始的な生活。(服装は普通)
・日系なのにやたら背が高い?、私が低いだけかもしれない……。
・なんの躊躇もなく人を殺せる(本人曰く)。
・少し頭が悪い、というか学校に行った事が無いらしく師匠と言う人にサバイバルと言葉と武術を習っただけだそうだ。 
 ツッコミどころがありすぎて困るが、私には優しく親切にしてくれる。
 今、私は都市から追っかけられている。理由は謎だけど。そこに同じ穴のむじな、とでもいうのか?蒼が現れ私を助けてくれた。言葉で言うと怪しいが実際助けてもらうとその怪しさが消えるのは不思議なものだ。
「ところで茜」
「なに、蒼?」
「なんで、都市に追われている?」
「分からないわよ」
 これで蒼に都市に追われる理由を分からないといった回数は二回目。どうでもいいか。
「そっか」
 蒼は茜の方を見て申し訳無さそうに笑った。
『スマン……後ろにデッカイ蛇がいる』
 ああ、やっぱりこのオチか……

 ガブリッ、と私は大きな大きな蛇を見て記憶が途絶えた。

 気がつくと蒼の助けられていた。
 体は蛇の体液でベトベトになっていた。
「「これだから『ダウナー』は嫌なの!!」」
 多分、蛇は生体兵器と思われるがこのさいどうでもいいや。
『ダウナー』とは、三都市以外の地域のこと。都市が出来てありとあらゆるところの人種、部落、民族が保護されたためか『ダウナー』に人はいない(蒼は例外)ことになっている。つまり無法地帯、草木は生えたい放題、動物は増えたい放題とまぁ。
 そんな場所にだれも好き好んで来るわけがないしここに来るには手続きがあるから『ダウナー』で採れた物はなんでも高くなっているのもまた事実。
「近くに川があるからそこでキレイにしような茜」
 いま、正直、泣きそう。

 川で体を洗っている間、蒼は食料を調達に行った。 
 水は冷たいが夏なので気にはならなかった。むしろ水道代を気にしなくていいことと人目を気にせず全裸で自然の風景を堪能できるのはある意味で贅沢だとか思った。茜十七歳の今日この頃。
 ふとウエストを見ると今まで少ない食事で重労働(主に移動)させられていたためか、いい具合にくびれが出ていた。
(ヒップ、ウエストは文句なしだけど、胸は……大丈夫、寄せればCくらいはある、きっと!)
 都市の夏はクーラーがあるから建物に引きこもるが『ダウナー』にそんなものはない。そのためかこうやって水浴びをする機会がプール以外ほとんど無くなっていた。
「気持ちいい」
 背伸びをしながら言った。人目を気にしないと気分が楽だ。
「夏の水浴びは気持ちいいよな〜分かる分かる」
 ここには蒼と言う人間がいたのをすっかり忘れていた。
 タオルで体を隠して蒼の顔面をビンタした。
「いてて、どうした、蚊でもいたか?」
 おまけにもひとつ高らかに痛そうな音が響いた。
「おいおい、蚊ぐらい一発で仕留めろよ」 
 この朴念仁は痛覚が無いのか、思い切り振りかぶったのに。
「「レディーの裸を見るなァァァ!!」」
 蒼はようやく気付いたのか、あ、ごめんみたいな顔をしていた。
「じゃあ オレ周りの様子を見てくるわ」
 といってあの朴念仁は退散した。
 小言を呟きながら服を着る。しばらくして蒼が帰ってきた。
「この辺は食べれそうな木の実や草は無いな」
 ショックというかお腹すいた。朝から何も食べていなかった。ため息をつき涙目になった。
(決めた、これから好き嫌いはしないどんな物でも食べる!)
 茜は堅く決意した――

「……これ食べるの?」

 はずだった。
 目の前にはグロい生物がいた。ほら、よく子供とか好きそうなあの生物。
 ―――昆虫
「無理無理無理、これは無理」
 断固たる拒否態勢で言い放つしかなかった。
「わかった、魚にしよう」
 蒼は手に持っていた昆虫を逃がすとシャツを脱ぎ川の中に入った。男性だけあって体は細いが筋肉質だった。
 蒼はナイフを取り出すと逆の手で水面を叩き始めた。
 水面が波打つ。
 バシャン、と水を突いた。手を持ち上げると魚がナイフに二匹突き刺さっていた。
「これなら食えるか?」
 唖然とした私は黙って頷いた。
(ちょ、え、ほえ?、なにこれ手品の一種?)
 蒼はそのまま火を焚き魚を焼き始めた。
「塩気無い」
 魚を食べた感想を素直に言った。
「仕方ないだろ塩がないんだから」
 それなら仕方ない。

 〜蒼〜

 すいません、本当は塩ありました。
(まぁ、明日になれば忘れるか)
「あっ、塩あった」
 あ〜、これもう無理だ謝ろう。
「すいません、入れ忘れました」
「これ砂糖だった」
 うおーー、あぶねーー。
(よし、このまましらを切ろう)
「なんだこっちに塩あった」
「そ、それはよかった」
 ばれた、これ絶対塩入れた忘れたのばれたって。
「まぁ、誰だって間違いはあるし」
 そう言ってくれるだけでもありがたい。
「これからどうするの?」
「この先にある洞窟で待機する、近くに海と繋がってる湖もあるから何かと便利だぞ。少なくとも塩には困らない」
 皮肉を混ぜて言ってみた。
「わかった、じゃあいきましょう」
 焚き火を消し、荷物を持って洞窟に向った。

 ……誰かに見られてる気がする。
 
 洞窟に着いたのは夕方だった。
「ここか」
「わりと住み良さそうね」
「まぁ、短い付き合いだけどな」
 長くても二ヶ月くらいはここに滞在するのか。
「この洞窟でなにするの?」
「師匠からの連絡を待つ」 
 すまないな、そこまでしか知らない 
「師匠ってどんな人?」
 ――師匠、オレを幼少期から一人で育て、サバイバル、武術、そして言葉を教えてくれた人、いわば恩人なのだが五年ほど前に都市に仕事に行ってから音信不通、そんな師匠が手紙をオレに出して茜を助けろとまぁ、そんなとこ。
「とりあえず、荷物を置くか」
 荷物を置きに中に入ると少し薄暗かった。
 外に出ると太陽が眩しかった。
「じゃあ、湖に行くか」
「ここにいてもヒマなだけだしね」
 というわけで湖に行った。
 湖は青く広く本当の海のようにほのかに塩の香りがした。思った以上に良い所のようだ。
「キレイなところね」
「そうだな。出来ればこの余韻に浸りたかったけど」
 ナイフを取り出し真後ろに投げる。
「茜、逃げろ!!」

 ――ガツンッ!とそのまま標的の骨に刺さった

(手ごたえあり、だが仕留め切れなかったか)
 ヒュッ、と風を切る音が聞こえた。
「ナイフを返してくれるとは余裕だな」
「まぁな、ガキ二人始末するのにいちいち本気出してらんねーよ」
 振り返ると剣?のような武器を持った男がいた。
「随分と場違いな格好だな」
「この服装の方がなにかと便利でな」
「へぇ〜そうなんだ」
 周りを見て茜がこの場から離れたことを確認した。
「愛想のねぇガキだな」
 男はタバコを取り出し火をつけた
「自己紹介がまだだったな。オレは『運命フェイト』と呼ばれている」
「オレは黒髪 蒼」
 『運命』はタバコの煙を吐くと言った。
「いくぞ」
 一気に剣を抜くとまた鞘に収めた。
「『一閃』!!」

 ――バキリッ!と骨が軋む音がした。気がつくと蒼は宙に浮いていた。

 空中で体勢を整えようとするが『運命』はそれ以上のスピードで近づき水月に一撃を加え地面に叩きつけた。
(――ッ、なんだ今のは!?)
 そのまま意識が遠のいていく
「ふん、弱すぎる、殺す価値も無い」
 その場から立ち去って行く『運命』を見て意識が途絶えた。

 
 〜茜〜

「はぁ、はぁ、ここまで来れば流石に……」
 何とか洞窟に戻ってきて安堵した。
「この程度の距離くらいで安心しているな」
 後ろを振り向くとあの男がいた。
 一歩後退し身構える。
「お前はもっと弱そうだな」
 迫力に押され生唾を飲んだ。
「なにが目的なの?」
「今回は『黒髪蒼の任務の障害の有無の調査及び任意の殺害、三菱茜の任務の障害の有無の調査及び任意の殺害』」
 蒼の殺害ということは、蒼は死んだといことになる。
 ――つまり、誰も助けてくれない。
 諦めかけてその場に膝をつく。
(終わった、ここで私は死ぬのよ……)
 男は後ろを向き歩き出した。
「お前を殺す必要は無い」
 これは、助かったのかな。
 男が立ち去ったのを見て。
 湖に戻った。
 
 ――そこには蒼が倒れていた。

「うそ、でしょ?」
 蒼は死んだ。
「何がうそだって?」
 はずだった――あれ?
「生きてたの!?」
「まぁな、それよりあの男……」
「あの男がどうしたの?」
「化け物だ。わけわかんね技みたいなの使いやがった」
 それがどのような物かは知るよしもなかった。
「とりあえず、生きてて良かったね」
「それもそうだな」
 蒼に死なれると困るってほどのレベルの話ではない強いて言うなら枯渇問題だ。
「とりあえず洞窟に戻るか」
 そう言って歩き出した。

                     第一話終り

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■作者からのメッセージ
初めまして、13と申します。
今回、知り合いの紹介でここに小説をうpさせてもらいます。
以後お見知りおきを
次回の小説は少し書き方が変わってるいるかもしれないので気に入らなかったからコメントしてもらえると幸いです。
それではこの辺で失礼
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