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What looks lonely end of 第二話 『ガス』
作者:13   2011/08/23(火) 00:03公開   ID:JHZjjd6HxsM


 〜ファイル1〜

 
 大統領レイノルズにかかってきた一通の電話、それはCIA長官であるブレイブからだった。受話器越しにブレイブは大朝鮮国に大統領令嬢のパウラが誘拐されたことを報告した。

 おそらく大朝鮮国は主権放棄をアメリカに要求してくるだろう。その事が公けになる前にパウラの救出計画が立った。

 その役目を任されたのがコードネーム アーク アメリカが誇る指折りのエージェント。

 彼には脊椎演算という特異な能力があり、詳しいメカニズムはまだわかっていない。

 そしてアークは大朝鮮国の土を踏み、極寒に耐え今まさにパウラのいる部屋にたどり着いた。


 〜12月25日16時34分『留置場』〜


 バコォォォン


 C4を爆発させた。少量でもなかなかの威力だった。

 爆薬を使うと音で敵兵に気づかれるが、ドアを破壊した方が今回はいいと考えアークは爆薬を使用した。

 どのみち、令嬢が逃げた時点で殺害命令が出されるだろう、生きていることにして外交に使う。

 かといって最初から殺せば、そのことがばれた時の報復を考慮しなければならない。

 ドアの破壊には成功したが爆発の影響で左腕にかすり傷が出来た。

 息を整え内部に侵入する。


 部屋は倉庫のような作りで棚は無く、ダンボールが置いてあった、部屋自体に家具がないためか広く感じられた。

 地下は比較的気温の変化はなく夏涼しく冬暖かいためか肌がピリピリとする。 

 そこには椅子に縛られ、口を布か何かで塞がれた白人女性がいた、服はボロボロで胸や性器、腹部が露わになっていた。

 性器が露わになっている時点で、なにかしらの性接触が敵兵とあったのだろう。 

 Mk23を構え、少しずつ歩みを寄せる。

「ん〜うーん!!」

 何かをアークに言いたそうにしているが、視線が明らかにアークを見ていない。

 女性に瞳が反射して後ろにいた敵兵が二名見えた。装備はAKー74



「「ザ・ワールド」」



 脊椎演算を使用しジグザグに進み敵兵の持つAKー74の照準を狂わせ、銃を左腕で構える。


 ズキリッ


 左腕が骨折したような痛みに襲われMk23を落とす。

(しまった!!)

 脊椎演算の弱点、それは痛みだ。脊椎にかかる痛覚の刺激は強烈なものになり、ちょっとした怪我でも大怪我したような痛みに襲われる。

 アークは苦痛に顔を歪めた。

 身体を捻らせ、右腕でナイフを取り出し、敵兵の両目を刺す。

 ナイフから手を離し、敵兵の装備のナイフを奪い、刃の部分を持ち、もう片方の敵兵に投げる。

 
 敵兵の喉にナイフが刺さり血が噴き出した。

 Mk23を拾い上げ、眼を潰された敵兵の頭を撃ち抜く。

 ホルスターにしまい、拘束されている女性の口の縄だけ解く。

「もう大丈夫か?」

「最悪よ、どうせアンタみたいなジャパニーズも――」

 アークの中に疑心が湧く。白人や黒人にはアジア系の特にアジア系アメリカ人、日本人、朝鮮人、韓国人、中国人の顔の見分けがつかない。だがアークが日本人であると一発で当てた。


 まるで、それを知っていたかのように。


「オレは大統領の命によりお前を助けに来た。アークだ」

 目にナイフが刺さっている敵兵のところに行き、ナイフを拾い血を拭う。

 ぬるっとした体液が目からあふれ出る。パウラと思われる人間は見るに堪えなかったのか目を伏せる。

「パパの命令できたの!?」

 ナイフを腰に納め、敵兵の服を脱がせ始める。

「ああ、そうだ」

「じゃあ、なんで口の縄しか解かないの?」

「秘密だ、そういえばお前の今食べたい物はあるか?」

 淡々とアークは服を脱がし下着姿にした。

 中国系の顔は日本人と似通っているためちょっと顔をしかめる。

「え?……シーフードグラタンだけど」

 敵兵のポケットからタバコがでてきた。その中から一本取り出し。

「吸ってもいいか?」

 そういうと、パウラと思われる人間は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 タバコを自分のポケットにしまい、下着姿の死体に手を重ねる。

 一見、ただの雑談だがアークにとっては重要なことだった。

 彼女が本当に大統領の娘なのかを探っていた。

「名前は?」

「パウラよ」

 アークは小さく頷き、縄を全て解く。

「最後にひとつしてもらいたいことがある」

 敵兵の服を差し出し着替えさせる。薄着で外にでたら凍死してしまう。

 服を受け取り、着替えをはじめる。アークは気を使い後ろ向く。

「なにをすればいいの?」

 一息ついてアークは敵兵のAK−74を拾い残弾を確認する。


「人を殺してもらう。もちろん罪には問われないから安心しろ」


 振り返り、着替えを終わっていることを確認しAK−74を投げ渡す。

「ちょっと、どういうこと!?」

「お前はアメリカに主権放棄を要求するために拉致された。つまりここではお前は生きていて初めて価値のある人間だ。だから前線に立てば相手を戸惑わせることが出来る」

 アークは歩き出した。

「ふざけないでよ!! なんで私が!!」

 大声を出して叫ぶ。

 アークはMk23をパウラの頭に当てる。

「じゃあ、ここでオレと死ぬか?」

 冷淡にアークは言う。

「別にお前ひとり死んだところで悲しむのはアメリカ国民だけだ。しかもこの状況で生きててもそのうち、大統領がお前を生きていた事すらなかったことにするかもな」

 銃口を遠ざけ頭を撫でる。

「ねえ、アンタ本名はなんていうの?」

 パウラが聞く。

「知りたいか、止めておけ」

 
 アークはあらゆるセンサーを無視しパウラの腕を引いた。

 ここまでくると時間との勝負、敵に見つかるまでそう長くはない。

 それに、パウラにアークと同じ動きを寸分狂わずさせるのは無理だ。
 
 どこか懐かしいその手の感触がアークを惑わせる。


「ターゲットと遭遇した」

 無線につなげ、アークはリロードしながらビスに聞く。

『じゃあ、迎えをよこすからその建物の屋上に行ってちょうだい』

 無線を切り、MK23を構え慎重に進む。

 エレベーターの通路の曲がり角に隠れ一息つく。

「お前、様子を見てみろ」

 パウラを先行させていかせる。

 死となり合わせという恐怖からか足元がおぼつかない。

 パッと見てパウラがこっちを見る。

「いたのか?」

 それを聞いたパウラは静かに頷く。

「殺せ、その距離なら乱射しても当たる。ストックを肩に当てて片目をつぶって、胴体を狙え」

 指示通りAKー74を構えるが銃口がガタガタ震えている。

 無理もないいくら敵とはいえ人間、意識して人を殺すというのは精神的に苦痛である。

 そのストレスで軍を辞める人間も少なくない。

「無理そうな――」


 ダン、ダン、ダンと銃声がアークの耳を劈く。


「は、ははは……で、できたわよ、アーク」

 心なしかパウラの手がもう震えていなかった。

「上出来だ。助かる」

 そっと立ち上がり、すたすたと無機質な廊下を歩き、エレベーターのスイッチを押す。

 屋上と言っていたが、そんな近くでよいのだろうか。

 アークはため息を吐き出した。

(なにか、あるな……)

 思い返してみれば色々ところで怪しい節が多々ある。

 ダクト付近で殺した敵兵がまだ見つかっていない。見つかっているのならば既にエレベーターの電源は切られ一階ずつしらみ潰しに探すはずだろう。

 しかも、地下でC4爆薬を使っているのにもかかわらず偵察兵すら来ない。

 極めつけの屋上待機、どう考えても怪しい。

(まぁ、オレには関係ない陰謀なら別にいいのだが……)

 エレベーターの中に乗り込み屋上に向かう。

 つかの間の休息だった。
 
「ねぇ、聞いてもいい?」

 パウラがサイズの合わない服のバランスを取りながらアークを向いた。

「なんだ、答えられることなら何でも答える」

 扉にもたれ掛りパウラを見た。青い目にクリーム色の髪、アークの夢に出てきた女そっくりだった。成長していうのか胸部だけは夢と違う大きい出っ張りがあった。

(だいたい、Eぐらいはあるな……何考えてるんだオレは……)

 自分自身に若干の嫌悪を覚え、嘲笑った。

 

「小さいとき貴方とあったことある気がするの」



 アークは心の支えにひびが入った気がした。



 よりにもよって自分が一番見られたくない姿を自分が追い求めてきたような人に見られたのだから。



「それは、他人の空似って言うやつだ。オレは紛争地帯を駆け回っていた、ただの傭兵だ」

 ため息をつき目を閉じる。

「一回だけ、私は紛争に巻き込まれたことがあるわ、そのときの日本人に恋をしたの顔はうる憶えだけど輪郭は似てる」

 アークの記憶と一致する。だからといって本当に彼女がそうとは限らない。

 いや、そうあってほしくないと懇願していたのかもしれない。 

「そうか、それがオレだとしてなんだという話。

 オレは傭兵アーク。アメリカに飼われる使い捨ての犬でしかない。

 犬に恋をする人間なんて精神がおかしい奴だな、オレはこの手で何千の命を奪ったしこれからも奪うだろう。そんな人間に恋心なんかの持つんじゃねえ

 第一、オレがもしそうだとして、どうしたいんだ?」

 
 冷酷にアークは突き放す。

 自身もこういうことに慣れていない。

 刺さるように胸が痛む。鼻でアークは自身を嘲笑った。


「どうしたいって……恋をした人を恋人にするのは当たり前でしょ!!」


 パウラは白人なので赤面すると顔の色がすぐに変わる。

 その発言を聞いたアークは扉に手を着いた。


「わかった。生きてここからでたら傭兵を辞めて、どっかの誰かさんの専属のSPにでもなってやる。ただし月給は今の給料よ高くしてくれ」


 ガチャン


 扉が開き冷気が一気に入り込んだ。

「ここで合図を出すまで待ってろ」

 アークはMk23を構え、一歩づつ前に進む。


 だが屋上にはだれ一人いなかった。


 妙な違和感を感じるなにか自分の身になにかありそうな気がして緊張の糸がはち切れんばかり。


 上を見上げると迎えのヘリがホバリングしながら機関銃やスティンガーをぶっ放す。


 降下するのを確認しパウラに合図する。

 それを見てパウラは全力で走る。


「大丈夫か!! アーク!!」


 ヘリのスライド式のドアを開け長官が叫ぶ。

「問題ない」

 パウラがヘリに乗ったことを確認するとアークもヘリに足を掛けた。



 ダンッ



 体中の力が抜け落ちその場に倒れる。


「ど……いう……つもりだ?」


 長官がアークの腹部に発砲したのだった。

 
「君がいるとアメリカ側が有利になってしまうのでな。戦争起こすきっかけを作ってもらうついでに死ね」

 アークは嫌味な顔をになり

「けっ、チクショウがいつか殺す」

 そういってドアが閉まろうとした。


「「ザ・ワールド」」

 
 体中に激痛が走る。感電したような激痛。

 アークはパウラにMk23を投げ足元に落下した。


 ヘリは上昇しアークを置いて行った。

 腹部を見ると血が滲み痛みが走る。


 VSSの弾を一発取り出し、ナイフで弾の先端を切り落としなかの火薬を傷口に撒く。

「はぁ……はぁ」


 雷管で着火させる。傷口が燃え上がる。

 
 焼ける痛みで意識が飛びそうになる。目を見開き痛みに耐える。


「――ッッ――!!」


 声を上げれば敵兵に気づかれる。今はヘリの方に躍起になっているとふんで傷口の治療を試みた。

 傷口を焼くのは直りが遅くなり普段の生活で使っていいのもではない、だが出血した状態で雪化粧の地面を歩けばどうなるかはわかるだろう。

 脂汗を垂らしたアークは立ち上がりVSSを構え非常階段に向かう。

「ビス、これからどうすればいい?」

 何も返事がないことから見放されたのだろう。もともと大統領の娘を奪還するのが目的、アークは役割を果たしたと言えるだろう。

 一段、一段、階段を下る。

「泣けるぜ」

 寒さが穴の開いた傷口から伝わる。アドレナリンが出ているのか痛みはほとんどない。

「さてこれから――」


 バンッ


 非常階段のドアが開く。

「動くな、両手を挙げろ!!」

 前後に二人ずつ敵兵がいる中アークは冷静に深呼吸する。

 こういった状況は何度も経験しているが慣れない。

「「ザ・ワールド」」

 アークの体中に激痛が走った。
 

 〜12月25日17時00分 『ホワイトハウス』〜


 娘の拉致、大統領になって初めて家族に危険が及んだ瞬間である。事が大きくなれば 

 レイノルズはデスクワークをそつなくこなしているがそれは娘の事を思い出さないようにひたすら作業をしていたからである。

「次の仕事をくれ」

 レイノルズは秘書に命令する。

「今日の仕事は全て終わったのですが……」

 目を逸らしながら秘書は申し訳なさそうに言う。

「そうか」


 ジリリリリ


 大統領の部屋に電話が入る。おそらくCIA長官のブレイブだろう、彼にはこの回線のダイアルを知っている。


「どうした?」

『令嬢を救出しました。怪我もなくアークがやってくれました。ただ少し令嬢はショックで精神が覚束ないので休養が必要かと』
 
 大統領のレイノルズはほっとして体中の力が抜けた。

 娘は無事に帰ってきてその上怪我がひとつもない。大統領はアークに栄誉与えようと引き出しから書類をだした。

「アークと話したいんだが?」

『彼はパウラを庇ってその……』

 死んだとレイノルズは引き出しを閉めため息をついた。

 戦場に死はつきもの大統領も紛争などで何人も人間を見送ってきた。今さら人ひとり死んでもどうということは無い。

「そうか、じゃあ火葬の準備をしないとな……」

『死体も戦場に……』

 哀しそうにブレイブは言った。

「そうか仕方ないなパウラにかわっ――」


 ドゴンッ


 防弾性の壁に人が一人通れるくらいの穴が開いた。

『どうしましたか大統領!!』

 砂煙とただ空しく響く警報と共に現れた人間を見てレイノルズは顔が青くなった。

「奴がきた……」

 日系の顔に黒いサングラス、金色の染め髪、迷彩柄の軍用ズボンにTシャツという明らかに無防備な格好の男がそこにいた。

 実際、無防備ではなくTシャツとズボンは特殊な繊維で作られ、戦車の砲弾をも凌ぐ強度をもつ。

『奴って、まさか!? すぐに軍を手配します!!』

 ブレイブは焦っているのか大声になっていた。

「安心しろ今日は忠告をしに来ただけだ」

 男は冷静に淡々と話す。低音の声のせいか迫力が凄まじい。


 男はガスと呼ばれる日本の私兵部隊『大和』のリーダである。

 この大和は三十人ででロシアの二千人の部隊を撃退したといわれる。

 あらゆる軍隊の中でも戦争に関してはこの大和の横に出る者はいない。

 大朝鮮国と緊張状態を保っていられるのはこの大和が後ろ盾につているからである。
 
「うちの部隊の人間が世話になりましたね」

 ガスはレイノルズの前に立ちふさがるとにっこりと笑った。

 身長は190センチほどでかなり大きく威圧感でレイノルズは脂汗を掻く。

「どういうことだ? 君たちの部隊の人間になにかしたのかね?」

「オレはレイノルズにいってねえ、ブレイブに言ってんだ」

『私が何をしたというのだ?』

 冷静にブレイブはガスに聞く。

「とぼけてんじゃねぇぇぇよ!!」

 ガスは顔の血管を浮き出し大統領の机を蹴り飛ばす。

 重さ四十キロは超えているだろうその机をガスは宙に浮かせた。片足の軽い蹴りで。


 ドガッ


 一回転して床にめり込む。

「まぁ、いいアークが復讐にくるからな」

『あの男は死んだ。撃たれるところも見た』

 ガスが血管を浮き出させる。

「大統領!!」

 秘書が内線電話からなにかを聞いたのか青ざめた顔で言う。

「大変です『ブレイブ 潰す アーク』という信号がここに送られてきました」

 ガスはにっこりと笑い。

「せいぜい、今のうちにしたいことしとけ」

 ポケットに手を入れ、穴の開いた壁からガスは出ていった。

 タバコを取り出し火を点ける。

「ボス、一人で滅茶苦茶しないでください。困ります」

 そういうのは、大和の部隊長のフライス。

「オレは、大丈夫だ安心しろ」

 親指をぐっとあげる。

「じゃあ、今から一人でこのホワイトハウスから抜け出してみてください。いくらボスでも無理ですよ」
 
 外を見ると重装備の軍隊が警戒態勢に入っていた。

 パッと見で四百人はいるだろう。プラスに戦車と装甲車、ガトリングのついたジープ。

「ありゃ〜こいつは楽しそうだな(笑)」

「いや、(笑)とかいらないですし、かっこわらなんてくちで言いませんよ」

「そんっじゃ、ちょっくら行ってくるわ〜」

 ガスはバルコニーへ行きそのまま飛び降りる。

 敵は銃を構え発砲体勢に入る。

 そんなことに臆することなくガスは歩みを止めない

『両手を挙げろ!! さもなければ発砲する!!』

 指揮官と思われる人間が拡声器を使って指示する。

「撃ちたきゃ撃て、オレはここから帰る」

 ガスは挑発して中指を立てる。

『発砲許可、敵を殲滅しろ!!』

 ガスに照準が定まる。

「やったね〜たえちゃん〜 撃退数増加中〜」

 身体を倒し、走り出す。

 矢のように早く移動し装甲車の後ろに隠れる素振りを見せた。


 だがガスという男には隠れるという考えは存在していない。


 メキッ


 そこにいた、誰もが絶句した。

 なぜなら――


 メキッメキッ


 一台、数十トンの装甲車が……

「意外に軽いなこれ」

 たった一人の男が何食わぬ顔で欠伸を交えながら片腕で装甲車を持ち上げていたのだから。

「ピッチャー振りかぶって――」

 装甲車を持った手を後ろにひき。

「投げたぁぁぁ!!」

 装甲車がボールのように宙を舞い、砲弾のように落下した。

 ジープ一台と敵兵十人程度は巻き込んだだろう。 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 ナイフで攻撃を仕掛けた敵兵がガスの喉元を切り裂く。

 予定だった。

「な、なぜだ、どうして刃が折れるんだ!!」

 首筋には傷ひとつなくガスはその敵兵に軽くジョブを喰らわせた。おそらく、十メートルは吹っ飛んだろう。

 
 ドンッ


 スナイパーがライフルでガスの頭を撃ち抜く。

「つ〜、これは目が覚めるぅぅ(涙)」

 ガスという男はアーク同様、人間から逸脱した存在。見て分かる通り馬鹿力の持ち主である。

 筋肉の繊維一本一本が太いワイヤー並みの強度を持ち骨や皮膚もそれに対応するために頑丈になった。

 だが彼の進化は、奴隷時代にある。日々の重労働、少しでも休めばきつい拷問。少ない食事、常に死と隣り合わせの状態だった。その中で彼は生存本能を全開にして働き、セーブしていた身体はタガを外し、あっという間に自分の肉体を破壊していった。

 破壊と再生を繰り返すうちに彼は化け物と呼ばれまでの怪力を手に入れた。

 そして彼は、止まれなくなった。

 進化に拍車がかかり、未だに体は破壊と再生を繰り返し、いつしか自身の破壊を求めるようになった。

 進化を破壊し、破壊を進化にして彼の身体は出来上がった。


 ガスはジープや装甲車で固めてあるバリケードに向かった。


 一歩、進むごとに弾幕は激しくなるがガスの前では豆鉄砲に同じ。

 それはおろか、敵が豆鉄砲喰らった顔をしていた。


 バリケードのジープをひょいと掴み、ニヤリと笑った。


「お前ら、死にたくないならそこ退(ry」

「やりすぎですよ!! ボス!!」

 フライスが止めに掛かる。
 
 銃も剣も使わずガスはそこの頂点に君臨していた。

「おk、把握した。帰ってニコ動見るかww」

「あとボス、何度も言ってますが大和のトップがオタク発言するのやめてください……」

 呆れた声でフライスは言った。

 ガスは殉職したアニメオタクの戦友の影響で立派なアニメオタクになった。

「ヘリが来てますのでこちらに」

「わかった」

 ジープを下ろしフライスの指示に従った。


「アーク、早く『復讐しろ』帰ってこい

 
       二話終わり 

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■作者からのメッセージ

 初めまして13です

 毎度どうも13です

 残念ながら13です


 遅れてすいません。

 暑くなったり寒くなったりするのでお体にはお気をつけてください。

 いろいろ忙しくて続きが書けませんでした。

 今回は第二の主人公的存在を出してみました。

 描写の至らぬところもありますが以後よろしくお願いします。


 コメント返し


 ハナズオウ 殿


 新しいジャンルを開拓してみました。これが終わればロスト系の続編か学園物を書きたいと思っていますこの話もすぐにおわる予定ですけどね。

 ともあれ、毎回コメントしてもらいありがとうございます!!
 自分もできるだけコメントしますのでお互いに切磋琢磨していきましょう!!


 黒い鳩 殿


 思いっきり映画にとゲームに影響されてこの話を作りました。

 パウラのSPが全滅してるに犯人がわかるのはなぜかというと……おっといけないネタバレだww

 ともあれ、その辺もそのうちわかると思いますので次回に半分くらい期待を。

 ご指導ありがとうございました!!


以上13
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