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What looks lonely end of 第三話 『救助』
作者:13   2011/09/08(木) 20:56公開   ID:JHZjjd6HxsM


 〜ファイル2〜


 ターゲットのパウラは無事救出。
 
 アメリカに裏切られたアークは一人、留置場に取り残され絶望的な状態に立たされていた。

 同時刻にホワイトハウスに私兵部隊『大和』のボス、コードネーム ガスがCIA長官に逆切れ詳細は不明。

 その後ガスは軍隊を壊滅、そして脱走。

 沽券に係わるため表向きに大統領は警報の誤作動による軍と警察の接触事故としている。


 世界は戦争にまた一歩近づいたのだった。



 〜12月25日0時2分『長官室』〜


 愉快にウィスキーで晩酌しながらながらブレイブは探知されない特殊仕様のケータイを取り出す。

「私だ、やつのところに失敗作を送りつけろ。いくら不良品といえど多少は時間稼ぎをしてくれるだろう。なに、帰ってきたら始末すれば問題ない」

 そういってケータイを閉じる。

「これで、奴らが死ねば我々大朝鮮国の勝利、死ななくても戦争は始まるだろう。この際だ大和にも消えてもらおう。最高とは思わないか令嬢?」

 ブレイブの視線の先には救出されたはずのパウラが監禁されていた。

「あなた、いったい何がしたいの?」

「戦争が始まれば、CIAの需要が高まる。そうすれば私はより高い地位に立つことができるそのためならアメリカ人を何万と殺しても構わん」

 ブレイブが狙っていたことは昇級だった。

 パウラはぐったりとうなだれため息をついた。

「そんなことのために……」

「お前は些細な誤解から凄まじい炎が炎上するところを見物してもらおう」

 からりとウイスキーの氷が揺れた。


 〜12月25日4時14分『留置場』〜


 ダアアン!!

 傷が痛む。既に処置は施しているが痛みが消えるわけではない。

「ふう……これであれ以外片付いたか……」

 無線塔の上でAK−74背負い、VSSを持ちながらため息をついた。

 辺りは暗く、とてもとは言えないが狙撃なんてできる状況じゃなかった。

 アークは一人で留置場にいた敵兵を全て片づけていた。すでに体は満身創痍で出血もかなりしている。

 先ほど医務室で治療はしており、止血はしているし銃弾も急所も外している。がアークには医療の知識はあまりなく応急処置程度のものだった。

 幸いにも食糧と防寒対策は施設内にあり数週間は生き延びれるだろう。

 だが、極寒のなかで独りは流石のアークも精神がおかしくなると思い救助を呼ぶことにした。無線施設があるということはネットや連絡手段が使える、退路は完全に断たれたわけではない。

 パソコンのディスプレイに電気を通し電源を入れる。

 スリープモードだったため暗証番号は必要なかった。

 メール画面を開き手動でメールアドレスを打ち込む。

「届いてくれ……」

 アークは苦笑いをして送信が完了された画面を見つめる。

 武器をAK−74に持ち替えリロードをする。


「さて、そろそろか……」


 アークは逃げるようにその場から走り出した。
 
 ドアを開け外に出ると凍りつくような冷たい空気と猛烈な吹雪が体を包んだ。

 サーマルゴーグルを取り出し辺りを見回す。

 赤外線により、どんなに暗いところでも見えるようになる。
 
 アークは何かに気づき、バックステップを唐突に始める。

 
 ダン

 ダン 
 

 左右から銃弾が飛び交う。

「やっと、姿を見せたなアーク」

「面倒掛けやがっていい加減死ねや」

 サーマルゴーグルによってやつらの姿を確認することが出来た。まわりは吹雪のせいで5メートルも見えていない。

 がっちりとした肉体に対物ライフルのバレットM82を装備した化け物。


 マシニングとセンタ、


 アメリカ特殊部隊、最強の双子であり、彼らに標的にされたものは必ず死んでいる。

 面倒なことに彼らは手術や薬で常に最高の身体能力を維持され続けている。

 能力もセンスもそこらの軍人とは違う。

 要人抹殺のプロである。 

「悪いが、お前らじゃあオレは殺せない」

 アークはポケットから拾ったウォッカを取り出し一気に飲む。

 身体の芯が焼けそうになる、度の強い酒は一時的に気付け効果や痛みを緩和させる働きがある。


「「ザ・ワ-ルド」」


 それでもなお身体に激痛が走る。

 その中でVSSの照準をセンタに向け、AK−47をマシニングに向ける。


 ダダンッパシュン


 激しい銃声が白い大地に響いた。

 だが、銃弾は当たらなかった。体を半歩後ろに引きずらしていた。

 流石は最強の双子、アークの脊椎演算をもってしても対等に渡り合えている。

 アークも不敵に笑みを浮かべ近くにあるコンテナに隠れる。

 相手がバレットを使っている時点で障害物に隠れていても命の保証は無い。

 AK−47を捨て、VSSを両手で持つ。

 サーマルゴーグルを装備している分こっちにまだ勝機がある。

 太陽が出てきた時アークは敗北する。せいぜいあと一時間。コンテナから顔を出し様子をうかがう。

 うっすらだが、人と思われる姿を見つける。おそらくセンタだろう。


「「ザ・ワールド」」


 ゆっくり、と相手の頭を狙う。

 引き金に指をあて、スコープを信じ風を計算する。


 プシュンッ

 当たったかどうかは確認していない。

 引き金を引いた瞬間にアークは銃を手放し手榴弾のピンを引き抜き後ろに投げ込みコンテナを乗り越える。

 背後には双子のもう一人のマシニングがバレット構えていたが咄嗟の手榴弾に対して回避を優先した。

 手榴弾はただ爆発しただけで何も被害はなかった。

 そのままアークはセンタのところに向かった。弾は頭を撃ち抜き脳みそが飛び出していた。持っていたバレットM82を拾いマシニングの方を見る。

 サーマルゴーグルのおかげでマシニングの居場所が手に取るようにわかる。

 
 ダンッ!!


 肩に凄まじい衝撃が加わる。

 対物ライフルは装甲車などを破壊するための武器であり本来なら人間に撃つものではない。

 マシニングは対物ライフルを喰らい腹部が抉れていた。

「お前らの敗因は、慣れだ。普段はコンクリートジャングルで暗殺や抹殺をしてきたお前らがいきなりこんな吹雪の中で戦えるわけがないそれだけだ」

 極寒のそこに立っていたのは黒髪の悪魔だった。


 〜12月26日11時56分『大和 ボスの部屋』〜   
 
 
 和風造りのその部屋にはハイスペックのパソコンがポツンとありその近くには布団がたたんであった。

「えーりん!! えーりん!!」

 そう言って男は腕を「えー」のとき振り上げ「りん」で下ろす動作をしていた。

 パソコンの大型画面には銀髪の万能の薬をつくちゃったりしてる巨乳のお姉さんがウィンクをしていた。

 このオタク全開の迷彩柄のズボンに無地のTシャツを着る身長190cmはある男こそが昨日ホワイトハウスに一人殴り込みその場にいた敵兵を全て制圧した男、コードネーム ガス

「ニコ動は最高だな。特にボカロと東方がいいね、二次作品も活発だしコスプレもしやすい」

 パソコンの画面を見ながらにたにた笑い、遠目から見ればただ気持ち悪いだけである。

「おっと、いけね、今年の八月に出たぶらっく・ろっく・しゅーたーもやんねーとな自分で買ったものも忘れちまう歳かあ」

 ガスは実際の年齢はアークと同じ十八である。普通なら高校に通って、冬場はもっぱら彼女とかとデートとかしたいはずだ。

 しかし、彼は高校はおろか小学校低学年ぐらいしか学校には通ってない。悲しいことにガスは親に売られ奴隷になった。アークとにた境遇の持ち主である、その後彼はアメリカに数年飼われたが、アメリカに忠誠がなく、日本に戻り私兵部隊を『大和』を十四歳のとき立ち上げ、たった四年で国が恐れるくらいまで勢力を拡大した。

 もともと、ガスがアメリカの部隊にいたためか、ガスの素質もあってかアメリカ人の入隊希望者は例年あとを絶えない。

 ガスは自分の部屋から出て、食堂に向かった。

 ここ大和は実際に日本にあるわけじゃない、正確に言えば日本よりの太平洋にあった廃棄プラントをリサイクルしそこを人が住めるようにし、プラントを拡大しヘリや戦車などの兵器を置いている。

 今は軽く日本の東京ドーム並みの面積のプラントが三つほど出来ている。それぞれ人が住む居住区、武装や訓練をする格納区、食べ物を自給する養殖区の三つになっている。

「今日の朝飯はなにかな〜」

 のんきに食堂に行くと隊員がなにやら騒いでいた。

「どうしたーお前ら? またエロ本の取り合いか?」

 隊員の一人に聞く。

「いや、この新人がボスに格闘を挑むと言い出して聞かないんです」

 そう聞くとガスはため息をついた。

 ガスはその趣味から仲間に舐められることがある。

 ガス自身も理解しておりあんまり気にしていない。

「あんたがボスなんだろ、オレと素手で勝負しろ!!」

 自信満々に新人がガスを挑発する。

「やめとけ新人、オレは朝飯を食いに来たんだ。オレとやる前にフライスとバトってろ」

 そういって、席に着き、よそってあった飯を食べようと箸を持つと

「この腰抜けがぁぁ!!」


 ガシャン!!


 ガスの朝飯が無残に宙を舞い床に落下した。

 
 ほんのわずかだけ沈黙が訪れる。


「「おい、新人逃げろ!!」」


 綺麗に仲間たちは声をそろえた。

「え、なにいっ――!?」

 その後、新人は一撃で、全治二週間の大怪我となった。

「飯は食えないのかよ……」

 ため息をつきながらガスは自分の部屋に戻るとパソコンにメールの着信音が響いていた。

 部下の一人からパンを貰いそれをほうばりながらディスプレイを覗く。

「珍しいな……」

 最後のひとかけらを口に放り込みガスはディスプレイ見てニヤリと笑った。


「さてと、あっちは寒そうだな」



 格納区、

 おもに訓練や武器の手入れ、加工、制作する中枢で任務の前は必ずここに来る。

 中は大きな倉庫のような作りなっている。ただ、潮風は武器に悪いため外気は入らないようにしている

 空腹を我慢しながら無機質な床を歩いた。

 行くとフライスがすでに戦闘機F22を用意していた。

「準備が早いな」

 フライスは戦闘機を指差しニヤリと笑った。

「中に食い物と武装を用意しています」

 そういってフライスは操縦席に乗った。

 エンジンが起動し轟音を立てる。

 倉庫の扉が開き発進準備に入る。

「行きますよボス」

 ガスは助手席乗り込みマスクをつける。

 身体に凄まじいGがかかった。


 〜12月26日12時15分『長官室』〜


 ケータイのバイブが鳴る。

 CIA長官、ブレイブは通話を開始する。

「私だ……なんだとあの双子が敗北しただと……まぁいい、スクラップの様子は?……分かった直ちにガスを狩れ」

 ケータイをポケットに納め机を叩く。

「いったい、何をやってるんだ!! まったく使えない部下だな!!」

 顔を赤くさせる。しばらく沈黙が訪れ不敵にブレイブは笑い始める。

「まぁいい、やつなら問題ないだろう欠陥品だがな。どうやら、アークはまだ生きているようだなこの際だ貴様の前で処刑してやろう」

 拘束され何もできないパウラの前に立ち嘲笑い、パウラの胸をまさぐる。

「お楽しみにと行こうか?」


 〜12月26日12時30分『留置場付近』〜


 音速超えたスピードでガスはアークの救出に向かう。

 留置場と思われる場所を発見し減速を始める。

「サンキューなフライス」

 そう言ってガスは武器を装備し始める。

 寒冷地仕様の防弾ロングコートに手袋、サングラスを身にまとう。

「大丈夫ですよこのくら――」

 レーダーにミサイルの警告が出る。

「ボスどうします?」

「とりあえず降ろせ」

 戦闘機のハッチが開く。エンジンの熱が顔を襲う。

 席を立ち欠伸をしながら上空五十メートルくらいのとこから飛び降りる。

 背中にはM61という本来戦闘機に乗せるようなガトリング砲を腰にぶら下げ、何万発という弾が入った金属の箱を背負いながら落下していく。

 ミサイルを確認するとガスはM61を構え射撃する。

 六本の砲身が向く先にはミサイル。
 
 銃弾が飛び出すというより炎が噴き出すに近い。

 ミサイルはF22にあたることは無く爆発した。


 ガトリングを腰にぶら下げ、落下する。


 ドサッ


 地面が雪でクッションとなりガスは無傷で着地した。

 
「ふう、じゃあ行く――」

 ガスの頭に衝撃が走る。

 これは紛れもなく銃で撃たれた感覚だった。

 周りを見渡すと、黒い人らしきものが見える。

 ガスは地面を蹴り距離を縮める。

 一面の雪化粧のおかげで見失うことはないだろう。

 逃げると予想してガトリングを構える。

 だが、敵と思われる黒いやつはガスのところに剣のようなものを手に近づいてきた。

 おかしい、ガスは自分のなかに毒づく。まるでガスを待っていたかのように、まるでガスを殺したいという憎しみをため込んでいたかのように。

 相手は黒いコートに身を包みフードで顔を隠しており誰なのか、性別さえわからない。

 間合いに入り相手は剣でガスを薙ぎ払う。

 ガスはいつものように腕でガードする。


 バキリッ


 骨に異様な音が響いた。

 ガスは目を見開き黒いコートを掴む。

 相手は慌ててコートを脱ぎ捨てる。

 ガスは構えていたガトリングを腰に納めた。

 なぜなら、


 そこに居たのはガスと同じくらいの歳の少女だったから。


 この極寒地帯でショートパンツにビキニような服をまとった黒髪ストレートの女の子。

「おまえ、髪型変えたらぶらっくろっくしゅーたーのミクになれるんじゃね? というか顔かわいいな」

 ガスはゲームのキャラクターに例えて褒める。

「……なんで、武器を収めるの?」

 少女は首を傾げる。

「オレは女は殺さない、できれば傷つけたくないそれだけだ」

 ガスは自分に課した約束が三つある。

 ひとつは仲間は助ける。

 ふたつは女は殺さない。

 みっつは食事はみんなで食う。

「……そんなことで、あなたは私に殺される」

 少女の刃がガスを襲う。 

 
 ピキリッ、


 と骨が少しだけ擦れる音がした。

 ガスは少女の刃が自分に届く前に少女の顎を横から小突いた。

 顎が横にずれると脳が揺れ簡単に脳震盪がおき小さな力でも簡単に相手を失神させられる。

 ガスは倒れた少女のコートを弾の入った箱のに乗せる。

 少女を自分のコート中に入れベルトで落ちないようにして凍死しなように注意を払った。

「あと、どのくらいだ?」

 耳についている無線でガスは聞く。

『そっから少しだ、吹雪が酷いから自力で頼む』

「了解」


 ガスは少女と数百キロあるガトリング一式を持ちながら前に進んだ。


 〜12月26日7時24分『留置場 食糧庫』〜


 幸いにも食糧庫に暖房設備がありそれなりにアークは休息を取ることが出来た。

 大体、三時間ほどあのあと休息をとり体力が少し回復した。

 近くには調理室があり、水道はこの季節は凍結しており使えず、コンロは無事だった。

 アークは立ち上がり食糧を漁る。しかし加工品は無く食材ばかりでとてもアークでは調理できるものではなかった。

 ため息をつきながらアークは横になった。

 
 パウラの無事とブレイブに復讐を心を込めながら。


 思い返せばこの一日でアークの人生ががらりと変わった気がする。パウラと出会い久々に人間らしい会話もできた。多少無視してしまったところはあるが、なにより戦争が始まるきっかけを作ってしまったこと、おそらくアメリカはアークを裏切っていないだろう、裏切ったとすればブレイブ、奴には裏切る動機もあるしアークが邪魔な理由がある。とアークは読んでいた。


「スポット……ガス……アーク……」


 スポット、彼はもう死んでいるがアークやガスの最高の戦友で同時に最強のライバルであった。残念なことにアニメオタクでガスをアニメオタクにしたのは彼である。アークやガスを上回る強さがあった。それはまるで一か所だけを変化させるような。

 ガス、世界でも指折りに入る怪力無双の持ち主で大和のリーダー、同時に彼は献血や慈善活動をいたるところでしている。そのためかよからぬ輩がガスの遺伝子を使ってクローンを作り最強の軍隊を作ろうと試みるがガスがその研究所を壊滅させ、無数の国の経済を麻痺させた程だった。それは触れた者を次々と焼切るように。

 アーク、彼はただ人より反応が速いだけである。本当は武器を作ったりする方が得意である。だが一度任務を受けると、冷酷なくらい精密に人を殺め彼の通った道は赤く染めあがる程だった。それは刹那の時を刻む、弾け飛ぶ放電のような。

 
 〜12月26日7時35分『留置場 付近』〜


 吹雪が悪化し足元が重くなる。極寒の中で少女とガトリングM61を持ちながらひたすら歩いていた。一応、建物らしいものは見えているがこれ以上吹雪が酷くなれば目視も不可能だろう。

「う……ふぁ〜」

 無邪気な声で少女が目を覚ます。

「お、起きたか、大丈夫か一応怪我の無いようにはしたんだが……」

「……なんで助けたの?」

 不思議そうに少女は尋ねる。

 落ちないようにしたかったのかガスにしがみ付く。

「そこにお前がいたから、お前名前は?」

「……GS計画 試作番号 613番 スクラップ」

 それを聞いてガスは激昂を覚えた。GS計画、ガス・シュミレーション計画、とはガスの筋肉繊維や骨を科学的に生み出し全身に移植することによって生まれた、強化骨格人間を量産する計画、改造された人間は飛躍的に身体能力を上げることができる。だが人体実験には危険が伴い奴隷や人身売買で取引された人間が使われることが普通だった。

 そして、その八割は脳を弄られて一定の指示にしか従わないようなったりして制御されている。

 人が人を制御するガスはそれが許せなかった。

 それ以上にその実験をするために何百人という命が失われていることにガスは罪悪感を感じずにはいられなかった。

「お前はなんでスクラップに?」

「私が他に比べて感情豊かだから、軍は私をゴミにした」

 ガスはそれを聞いて吐息をついた。

「なあ、お前オレと一緒に来ないか?」

「いいの? 私は貴方の敵よ?」

 あっさり話が行き過ぎているがガスはそんなこと気にしない。

「じゃあ、お前オレの仲間になれ少なくとも、つめてえ飯は食わなくなる」

 ガスは頭をそっと撫でた。とても強化骨格とは思えない、柔らかさというか女の子らしいなにかがあった。

 一瞬だけ雪のように白かった肌が赤く染まったような気がした。

「いいの?」

 少しだけ少女の顔が明るくなった。元々ガスを殺したら遅かれ早かれ始末されていたのだろう。 

「ただし、呼び名はオレが決める」

「それぐらいなら」

「じゃあ、今日からお前はそうだな……沙耶だ」

「さ…や?」

 可愛らしく首を傾げる。

「番号はオレが嫌いなんでな」

「……わかった」
 
 気のせいかもしれないが彼女、沙耶はうれしそうにしていた。

「沙耶、歩けるか?」

 沈黙が走る。

 もともと、怪我はしていないのだが、一応確認する。

「…………ちょっとまだ頭が響く」

 そのまま、ガスの細身の体にぎゅっとしがみつき頭を埋める。露出の多い服装だったためか体温がよく伝わる。

「そうか、歩けそうなら言ってくれ、もうすぐ目的地だ」

 吹雪の中でも鮮明に留置場が見えている。 

 ただ、気がかりは本当に沙耶一人だけなのかということ、普通に考えてそんなわけがない、最低でも三人、多くても十人はいるだろう。


 ガスは不敵に笑い、腰のガトリングを構える。

「どうしたの!?」

「いや、ちょっと試し撃ちをな、この銃は使うのは初めてだからな」


 ガトリングの銃身が回転し始める。


 M61痛み無き銃弾と呼ばれている代物。

 ガスは射撃のスイッチを入れる。

 あまりの炸裂音と火花で辺りの吹雪が一瞬無くなる。

 

 四人は殺しただろう。

 この吹雪では確認することも出来ないだろう。

 沙耶の様子からしてどうやら本当に逃げ出したかったらしい。

 GS計画で改造された人間は嘘を言えない。そういう風に造られているからだ、裏切りをさせないために。

「さて行くか」

 ガスはのんびりと敷地内に入る。


 カチャ、


 鈍い金属音がわずかに聞こえた。

「動くな、手を挙げろ」

 ガスは懐かしい声を耳にした。

 ザクザクと雪を踏む音が聞こえる。

 大人しく手を上げる。

 銃口がガスの顔を狙う。

 サーマルゴーグルをつけているせいか顔を認識できていないらしい。

「アーク、オレだオレ」

 わずかに沈黙が走る。アークは銃口を向けたままサーマルゴーグルを外す。

 ゴーグルを外すと日本人らしい黒髪に黒目が表れる、容姿は年相応でガスより小さい。

「なんだ、ガスか来てくれたのか」

「そんなところだ、暇だし」

 アークは一息つき、鋭い目つきになる。

「ところでガス」

「なんだい?」

「変なのがお前にくっついてるぞ」

 そう言って沙耶を指差す。

「気にするな、拾っただけだ」

「そうか、相変わらずだな。それとお前の後ろにいるパッと見百人くらいる軍隊はお前が呼んだのか?」

 ジト目を使いながらアークはガスを見る。



「「……スクラップの時間といこうか」」




                     三話終わり


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ

 どうも13です。

 今回は投稿が遅れて申し訳ないです。リアルのほうの事情がありまして


 今回で三話目になりますようやく主人公的二人が出会いました。

 このお話の戦争と人間をイメージして書いてみました戦争のための人間とそうじゃない人間が戦争に巻き込まれたら人はどうなるかとふと考えたのがきっかけです


 そろそろコメント返し


 暦 殿

 つたない文章でごめんなさい、もっとオレに文章力があればありきたりな言葉を使わせなくて済んだのに。努力努力ですな。

 暦さんはこの手話はあまり触れたことがないので難しいですよね。

 あ、でも面白いと言ってくださってありがとうございます。


 黒い鳩 殿

 アメリカらしくいってみました。やっぱりとんとんで進んだら面白くないじゃないですか、あと裏切りの予兆をあえて書かなかったんです。自分的には最後まで黙って一気に行くというイメージを持たせたかったんです。予兆があればハラハラ感ありますけどね、アメリカと考えて予兆をあえて書かなかったのですが。

 アークとパウラの会話を千切れトンボにしたのは、アークは人に接するのが苦手と間接的に伝えたかっただけです。でもってパウラが結構、ガンガン話を進めていくタイプの人間だと会話で見せたかっただけです。結局失敗してる気がしますが…

 今回も参考になりましたありがとうございました。


 ああ、それと今後続きを書いていく上でエロい描写やグロい描写があるのですが思い切ってやってみてもいいですか? ひょっとするとアウトラインを行くかもしれませんが……
 そのへんもコメントしてもらえるとありがたいです。

 コメントありがとうございましたいつも参考になります。


 ハナズオウ 殿


 コメントありがとうございます。

 今回はガスの視点が多めに設定しています。

 これからアークたちの活躍を期待してください。

 あと、今回出てきた銃はすべて実在します。一応、大まかな銃の種類、スナイパーライフル、ガトリング、ハンドガンとか説明は入れているものの、そういうのが好きじゃない人はわかりづらいですね。

 もっと細かい描写を入れると部品名とかが出てきて余計ややこしくなるので伏せさせていただきます。どしても気になる場合はウィキにあると思います。

 人任せでごめんなさい。

 参考になりましたありがとうございます。


      〜最後にちょっとしたクイズ〜

 コードネーム、アークとガスの名前の由来はあることからきていますそれはなんでしょう?

 答えがわかった人はコメントとともに記入してください

 答えは次回のあとがきで




短いながらこれにて

13より
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