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ショコラ・ノワール ガトーオペラ 歌姫の誘惑
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/09/17(土) 12:17公開   ID:k1thGKoNjk6
『森の奥には、願いの叶うチョコレート屋があるのよ―――・・・』

私、阿部まりあは、広場で歌っていた。私は歌手です。

美しく響き渡る歌声、すると、草むらから黒猫が現れた。

「わッ野良猫かな?おいで」

黒猫を膝に乗せ、歌うと猫も合わせて「ニャー」と鳴く。

すると、女性の声が気の聞こえた。

「カカオ、こんなところにいたの」

声の主は、裾の広がったショートドレスを着ている。
ドレスには、レースや飾りがたくさんついている。
ダークチョコレートを使ったような深い茶色で、すらっとした手足がドレスから伸びている。
顔立ちは美しく、ブルーの瞳で、腰まである髪は夕闇のような紫。
歳は十六、七くらいで、落ち着いた雰囲気

「その子、私の猫なの・・・」

抱きかかえている黒猫を指差す。

「あッゴメンなさい」

「かまわないわ、遊んでくれていたのでしょう?よければこのお店に来て
飲み物でもごちそうするわ」

少女はハート形のカードを渡した。そのカードには
「願いの叶うチョコレート屋ショコラ・ノワール」と書かれていた。

私が振り返ると少女はもういなかった。

私は事後と場へ向かうと、先輩歌手の中州亜矢さんがいた。

茶髪で黒い服を着てダークな印象。

「まりあーッこっちこっちーッ」

亜矢は手を振る。私は亜矢の事を尊敬していた。彼女にもそう言っているが
私の方が人気が出てきて、少し嫉妬をしているようだ。


数日後、週刊誌にこう書かれていた「阿部まりあ整形疑惑!?」
もちろんデタラメだが、ほかのにも色々書かれている

それから、歌手の人に酷い嫌がらせを受けるようになった

控室が荒らされていたり、生卵をぶつけられたりと・・・。

私は精神的に追い詰められ、歌すら歌えなかった。

そんな中亜矢は笑いながらこう言っていた。

「阿部まりあはもうおしまいだ、ここまでうまくいくとは思わなかったけど
後から来たくせに私を追い抜くなんて・・・許せないのよ!」

私は悲しみのあまり森の中を泣きながら走る。

すると、目の前に古い洋館があった。

屋根はチョコレート色で、不思議な文字で「ショコラ・ノワール」と書かれていた

中から、あの時の少女が出てきた。

「やはり来たのね・・・私はショコラティエの哀川ショコラ
さぁ入りなさい。叶えたい願いがあるんでしょう?」

私は冷や汗をかきながら、店へ足を踏み入れた。

中は部屋中に無数の種類のチョコレートが並べられている。

充満するチョコレートの香り、種類は私の知らないものばかり。

「あ・・・あの、願いの叶うチョコレートって本当にあるんですか?」

半信半疑で聞くと、ショコラはニヤリと笑った。

「だったら、もう一度歌えるようにしてくださいッ
歌がない私なんて・・・生きてる意味がないんですッ!」

ショコラにすがり付くと、ココアパウダーを振りかけた丸いチョコレートを渡された。

「では、この「トリュフ」を食べなささい
なめらかなクリームがあなたの声と心をいやしてくれるわ
ただし、お代としてあなたから1つ何かをいただくわ
私のチョコは高いわよ」

不気味な笑みを浮かべるショコラ

どうやら、代償として何かを失うそうだ。

「それでも叶えたいなら食べなさい」

手が震え背筋がゾクッとした。

でも、かまわない・・・どうなっても・・・私に失うものなんてないもの!

チョコを口に放り込むと、甘く口の中で溶けた。

その瞬間、今まであった辛い出来事がガラスが割れるかのように私の中で砕けた。

「どう?お味は」

「あ・・・とってもおいしかったです」

呆然としながら店を後にする私。

(どうしてチョコレート屋なんかにいたのかしら・・・?)

「傷ついた心をいやす「トリュフ」
お代はいただいていくわね。あなたの「悲しい記憶」・・・」

ショコラはガラス製で出来た青緑の小瓶を持ち、中では何かが光っている。


私は、とある歌番組に出た。

他の歌手はみんな私を睨みつける。

(私・・・何かした?)

私の番になると、私は大きく息を吸い、一生懸命歌った。

(私は・・・歌う事が大好き!)

「まりあ、一体何があったんだ?」

不思議そうにするスタッフ。

「そういえば、噂のあのチョコレート屋にいたそうだよ」

マネージャーが話す。すると、亜矢が・・・。

「ねぇ、そのチョコレート屋、くわしく教えてくれませんか?」


あのチョコレート屋の扉が開いた。

入ってきたのは亜矢。

「いらっしゃい、中州亜矢さん・・・よね?」

落ち着いた雰囲気を見せるショコラ。

「願いの叶うチョコをちょうだいッ
あの子にも売ったんでしょ?歌えるようになるチョコ!」

ショコラに手を差し伸べる亜矢。

「あの子よりももっと上手くもっと目立てるように・・・そんな風に歌えるチョコを出してッ!」

少し焦った様子の亜矢。

だが、ショコラは落ち着いている。

「だったら、歌姫の美声を閉じ込めた「ガトーオペラ」
コーヒーリキュールの香りがアナタの眼れる才能を目覚めさせてくれるでしょう」

層状の生地と表面の金箔が高級感を漂わせるチョコレートケーキを差し出す

そう言うと、亜矢はすかさずショコラからチョコレート奪い走り去った。

「生き急ぐあわれない者・・・黒き闇に堕ちていきなさい」

ショコラは、そう言うと手を天高く振り上げた。


亜矢は事務所で奪ったチョコを食べた。

そして、歌ってみるとこの世のものとは思えない美しさの歌声が出た。

「すごい・・・こんな歌声が出せるなんて・・・これでまりあに勝てる!」

ガッツポーズをとる亜矢。

それを聞いたスタッフが・・・。

「聞こえたぞ!ずい分上達したじゃないか!
次のライブの大トリはおまえにしよう!」

みんなが拍手をする中私を見つけた亜矢は。

「まりあさっきの私の歌声、聞いた?あんたより何倍も上手でしょう?」

嫌味っぽく言う亜矢だが。

「えぇ!本当に上手でしたさすが亜矢さんですね!」

ニッコリ笑う私。それが気に入らなかったのか、亜矢は私に襲いかかってきた

「もっと悔しそうな顔をしなさいよ!
いつもヘラヘラしてるあんたなんかつぶれちまえばいいんだよ!」

すると、近くにあったセットが倒れ。

「きゃぁぁぁあああ!?」

亜矢を下敷きにした。


ショコラはとある病院にいた。

「ここの患者さん、元歌手で顔を大けがして再起不能たしいよ」

ヒソヒソ話す看護婦さん。

病室には、顔に大きく包帯を巻いた亜矢がいた。

「お代にいただいて行くわね・・・あなたのその「美しさ」・・・」

ショコラは私の時と同じく小瓶を持っていた。

森の奥には、願いの叶うチョコレート屋があるのよ
願いをかなえるには、代償がいるの

店に1人の女性が現れた。

「あの・・・私、美しくなりたいんです
そんなチョコありますか?」

客に背を向け、振り返るショコラ。

「えぇたった今出来あがったわ
とびきりの「美しさ」を閉じ込めたチョコレートが・・・」

それでもあなたは食べますか―――・・・?

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今回から新しいのを書いていきます

これは私の1番好きな本が原作です

少し、違うと思います(原作と・・・)
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