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ショコラ・ノワール スティックチョコレート 決断のしるべ
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/09/18(日) 17:04公開   ID:k1thGKoNjk6
少し肌寒い中、放課後のチャイムが鳴った。

「皆さん意見はありませんか?それでは、委員会を終わります」

私、梶原まゆは委員会で使った資料を集め、職員室へと向かう。

「梶原さんって、駅前の有名進学塾に通ってて、頭いいよねぇ」

周りが、憧れるような目で見る。


私は、夜に塾にいた。

「この間の模試を返すぞ!トップは梶原まゆッ
今回の平均は65点、梶原一人が満点だ。お前ら、梶原を見習え!」

塾の先生が私を褒める。皆私に向かって拍手をする。

私はこの感覚が清々しくて、勉強を頑張っている。


塾が終わり、友人と帰っていた。

「T大附属受けるんでしょ?まゆって本当すっごいよねぇ、憧れちゃうッ」

友人も、すごいと褒めてくれる。私は、受験のためにも勉強をしなくてはいけない。

「私、ノート買わなきゃ、じゃあね」

私は、友人を別れ、一人で近くの雑貨屋へ行った。

店の中は、いろいろな商品が順番に並んでいる。

「えーと、ノート、ノート・・・あッ」

私はノートを見つけ、取ろうとした時にひじが近くにあったグラスに当たり、床でパリンと音を立て、割れた。

(ど、どうしよう・・・売り物なのに・・・)

私は、慌てて、レジへ向かい店員さんを探した。

「あ・・・あの、すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」

声をかけても、誰も出てこない。

グラスの裏に書かれた値段を見ると、2500円、到底そんな持ち合わせはない。

「あの!すみませんッ」

何度言っても誰もいない。私はお金を取りに行こうと思い、グラスをハンカチの中に包み、ポケットの中に入れた。

(お金を取りに行って、戻ってくればいい・・・私は何も悪くないッ)

自分にそう言い聞かせ、店を出た。体が心臓になったようにバクバクして、体は汗でグッショリだった。

「見ぃーちゃった」

店を出た瞬間、同じクラスの半沢ルミさんにはち合わせた。

半沢さんは、ニヤニヤ笑い、チャラそうな金髪で校則違反だらけの格好をしている。

「優等生の梶原さんが、こんなことするだなんて、皆が知ったら驚くだろうなぁ」

脅迫をするように、私に迫る。

「違う、お金を取りに行くつもりで・・・」

私は、手汗が滲み、必死にいいわけをした。

「そんなのいいわけよ、ハタから見たら、ただの万引きじゃん」

万引き・・・そんなの知れたら、私は・・・。

私は、とっさに半沢さんに誰にも言わないように頭を下げた。

「えーどうしよっかなぁ・・・じゃあ、お・か・ね貸してくれる?」

ニヤ付きながら、私に手の平をヒラヒラさせる。

「優等生でいたいんでしょ?安いもんじゃないッ」

そんな屁理屈を言う半沢さん。確かにバラされたら、内申に響く・・・。

私は、半沢さんに千円札を手渡した。半沢さんは笑顔で走り去った。

(本当に黙っててくれるのだろうか?)

内心、心配だった。あの笑顔・・・何か仕出かしそう。


翌日、休み時間に私が次の授業の予習をしていると。

「梶原さん、昨日はどうもッ。ねぇ、宿題見せてくれない?」

私は半沢さんの顔を見られず、宿題のノートを渡した。

「やったぁ、まゆちゃんが宿題やってくれるってぇ」

ノートを奪い取ると、そんな事を皆の前で大声で言った。

「ちょっと、半沢さん!?」

私は、机から勢いよく立ちあがり、そう怒鳴った。

「何よケチ、あの事バラしちゃおっかなぁ?」

悪質な笑顔で振り返る半沢さん、私はゾクッとした。

私は、それから半沢さんにいいようにこき使われ、掃除当番や宿題などを押し付けられるようになった。私は受験のために我慢した。

だが、ある日、半沢さんに職員室前に呼ばれ、こう言われた。

「ねぇまゆ・・・今から職員室に入って、明日の数学のテストの問題用紙を取ってきて」

今は、中間テスト期間、そんなのがバレたら、何のいい訳もできない。

「いやよッ!」

私は、必死に拒んだ。

「あッ、先生が向こうにいる、バラしちゃおっと」

半沢さんにバラされそうになり、私は、職員室に入った。

問題用紙を探していると。

「アナタ、テスト期間中は入室禁止ですよ」

女性の先生に見つかり、持っていた資料を落としてしまった。

「アナタ、何やってるの!?」

バレてしまった。私は、急いで学校から飛び出した。

(私はどこから間違ってしまったのか?あんな事約束しなければ、こんな事には・・・。)

後悔し続ける私、気がつくと森の奥にいた。

(このまま森をさまよっていたら、いつか餓死するのかしら・・・?)

そんな事を考えていると、女性の声がした。

「いらっしゃい、願いの叶うチョコレート屋ショコラ・ノワールへ」

見ると、十六、七の少女で美しい顔立ち。
陶器のような肌は、どこか冷たさを感じる。ダークチョコレート色のショートドレスが白く輝く肌に映える。レースや飾りが付いていて、キラキラ輝く。
腰よりも長い髪は、夕闇のような紫で、その瞳は夜と同じ深いブルー。
まるで、フランス人形のようだ。腕には、黒猫を抱えている。

気がつくと、目の前にチョコレート色をした古い洋館もある。

「私は、ショコラティエの哀川ショコラ・・・さぁ入りなさい、願いを聞いてあげる」

冷たい笑みを浮かべ、私を洋館へと招き入れる。

中は、見た事のないチョコレートでいっぱいで、チョコレートの香りで充満する。

私は、そのチョコレートの美しさにくぎ付けになった。

「お悩みのようね、アナタの悩みを晴らすチョコがきっとあるわ
さぁ、ここから、好きなチョコレートを選びなさい」

少女は、トレーに5つくらいの種類のチョコレートを乗せ、私に差し出す。

どれもおいしそうだ。

「ただし、私のチョコは高いわよ」

意地悪そうな笑顔を浮かべ、私に迫ってくる少女。

(高いっていくらするんだろう?どれも同じ値段なのかしら?)

私が迷っていると。

「選べないでしょう?それはあなたが迷っているから「現実の世界」でも」

少女は、そういう。

確かに私は、半沢さんにいじめられないためにも、あのグラスを店に返したい
でも、受験がちらつく。

「では、このスティックチョコレートを食べなさい。これは、決断力のチョコレート」

細長い棒状のチョコレートを差し出す少女。

「で、でも、私お金がないんですッ」

私は食べたいけど、断る。

「ふふ、あなたから、いただくのはお金ではないから・・・」

不思議な笑みでそういう少女。怪しく輝くチョコレートを私は食べた。

その瞬間、サクッとした触感がして、白い光が私を包んだ。

(私・・・何を悩んでいたのかしら?)

私は、自分の決意に気がついた。

「どう?お味は」

そう問いかける少女。私は、そのおいしさに惚れ込んだ。

「おいしいですッこんなチョコレート初めて食べました」

私は、丁寧にお礼を言うと、すぐさまあのグラスの店へと向かった。

少女は青緑色のガラス製の小瓶を持ち、中では小さな光が光る。

「いただいていくわね、あなたの「悪に屈する弱い心」・・・」

そう呟くと、ほのかに笑った。

私は、店に入ると、店員さんにグラスを見せた。

「一つなくなっていたグラス・・・と、とにかく親御さんに来てもらわないと」

店員さんは私を見るなり、慌てた表情で言う。

母親がすぐさま駆けつけた。母はすぐに私を殴った。

「あんたが万引きするだなんて・・・こんなことして、受験にだって響くのよ!?」

母は、私を怒鳴った。私は、母の思いが胸にしみ、涙をこぼした。

「いいの・・・私、ウソをつき続けて自分を苦しめてた・・・
私―――・・・もうウソはつきたくないの・・・!!」

母は、そんな私を優しく抱きしめてくれた。これでようやく苦しみから解放される。


翌日、教室へ入ると半沢さんが待っていた。

「まゆどういう事!?昨日逃げやがって、今日こそやってもらうからね」

半沢さんは私を問いただす、だが、私は半沢さんを睨み返した。

「断るわ」

そうきっぱりと言った。

「どういう事!?あんたが万引きしたってバラしていいの!?」

半沢さんの「万引き」という言葉に教室全体がざわめいた。

「いいよ、どうぞ・・・お店の人にも謝って許してもらった
だからもう、あんたのいいなりにはならないッ」

皆が半沢さんを見た。

「私・・・あんたには感謝しているのよ迷う心を断ち切るきっかけになってくれたから・・・でももう二度と迷わないッ!」

そうきっぱりと言い放つと、皆が半沢さんと睨んだ。

「み・・・見ないで私を・・・私は悪くないッそんな目で見ないで!」

半沢さんは学校を飛び出した。

そして、森の奥にあるチョコレート屋へ辿り着いた。

「いらっしゃい、半沢ルミさん・・・ね?」

少女は、半沢さんに問いかける。

「気が付いたらここにいたのよ、何なのこの気味悪い店」

半沢さんは息を切らしながら、機嫌の悪そうにそう言った。

「ここは願いの叶うチョコレート屋、代償を払ってくれるのならどんな願いでも叶えてあげるわ」

冷たい目線で半沢さんを見る少女。

半沢さんは近くにあったラッピングされた秘密を隠すと書かれた「シェルチョコレート」をポケットへ忍ばせ、店を出た。

少女は、それに気づき、窓から逃げる半沢さんとみると。

「省みる心を持たない不遜な者・・・黒き闇に堕ちていきなさい」

手を天高く振り上げ、そう言った。

半沢さんは、シェルチョコレートをラッピングの袋から取り出し、食べる。

「味はまあまあね、秘密を隠せるって本当かしら?」

そう言っていると、目の前に半沢さんの友人が通りかかる。

「あ・・・ねぇ!」

声をかけたが友人は、半沢さんに気付かないのか通り過ぎた。

何度声をかけても、気付かない。しかも、周りの見知らぬ人までも半沢さんに気付かない。

「な・・・何よこれ・・・
ねぇ!無視しないでよッ・・・誰か私に気づいてぇ!!」

道の真ん中で泣き叫ぶ半沢さんをトラックが引いた。

「あれ?何か当たったかな?」

運転手には、半沢さんの事を気付いていない。と言うより半沢さんの姿すらない。

「あなたはもう誰からも気づかれない、でも、あなたの悪事は隠し通せるでしょう?・・・いただいて行くわね「あなたの存在」それ自体」

少女は、深く不気味に笑った。

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■作者からのメッセージ
ハウズオウさん

描写が変でしたね・・・読み返してみると、自分でも思いました(苦笑)

今回は、どうでしょうか?

描写がまだ少ないですかね?私は、これが限界です(汗)

次回は、もっと頑張ってみたいと思います

ちなみに、ガトーオペラはパリのオペラ座の近くで売られていたそうです

トリュフは今でも皆さんに食べられていますね

トリュフは私の中では、チョコを代表するチョコレートだと思います
テキストサイズ:7992

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