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Ultraman saga -three light warries- 第0話 壊滅
作者:ソウ   2012/06/09(土) 11:29公開   ID:M5QsyOzFGqA
東京都 市街地

多くの人で溢れていたと思われるその場所からは、人の声、動物の鳴き声はおろか無機質な物音ひとつすら聞こえてこない。

道路にはドアが開いたまま乗り捨てられた自動車が何台も放置され、歩道も人がいたと思われるような痕跡数多く残されていた。しかし、ここには人がいる気配は欠片も感じられなかった。

まるで突然姿を消したように。

そしてそれ以上に異常さを感じさせるのは道路のコンクリートを貫いて茶色い土が見えるほど深く残っている複数のクレーター。それだけを見れば隕石でも落下したのだろうと人は考えるだろうが、そのクレーターはいくつも直線上、それも左右に続いていた。

普通に考えればこのように隕石が規則的に落下するなどありえない話だ。

そう。それは決してクレーターなどではない。

巨大生物の足跡だ。

その存在を裏付けるように、ビルには巨大な爪あとが刻まれている。

この異常な情景はここ、東京だけではない。

大阪、名古屋などの日本の主要都市は無論、北米、アジア、ヨーロッパ、世界各地で人類はその姿を忽然と消し、巨大生物の出現を伺わせる痕跡が残されていた。

むなしさを感じさせるように風が吹き、数枚の新聞紙が飛んでいく。風が止んでコンクリートで舗装された道路に叩き付けられた数枚の新聞紙の1面には、このような記事が記されていた。

『動物、人間の神隠しは侵略宇宙人の仕業!?』

『地球防衛隊ヨーロッパ支部、壊滅!?』

『バット星人、日本に現れる!?』









地球防衛隊 アジア支部
厚木基地

同時刻、静かな都市部とは裏腹に、多くの人の声と物音が鳴り響いている場所があった。

格納庫で整備兵達が戦闘機の最終チェックに追われる中、基地のブリーフィングルームではパイロットと思われる、服装をした5人の隊員達がパイプ椅子に着席し、目の前に立っている隊長と思わしき人物をじっと見つめていた。

「皆、作戦の再確認を行う。よく聞いてくれ。」

目の前のスクリーンに世界地図と思われるホログラムが映し出され、そこには2つの赤い光点が示されている。1つは韓国の首都、ソウルに。もう1つは日本の東京に。

「現在、我々を含む各地の地球防衛隊が侵略宇宙人、バット星人に対する反抗作戦が開始されようとしている事は知ってのとおりだ。作戦内容は2箇所の敵の同時攻撃だ。」

隊長は指示棒を使って、韓国に示されている光点を指すと、その光点に向かって韓国の首都、ソウル、中国、ロシアなどの方角から幾つもの矢印がその光点へ向かって伸びてくる。

「現在バット星人の宇宙船は韓国の首都、ソウルの郊外にいるとの情報だ。その宇宙船に対して地球防衛隊アジア支部、そしてロシアの部隊が残存戦力を可能な限り投入し、これを叩く。」

隊長の言葉と同時に、韓国の光点には撃破を意味する赤い罰印が表示され、次に指示棒の先端を日本へと向ける。

「我々アジア支部、日本の部隊は以前バット星人が言っていた、"ゼットン"と言われる生命体への攻撃を行う。我々以外にも、既に各基地から戦闘機部隊が出撃している。」

ホログラムが消滅すると、隊長と思わしき人物は隊員達一人ひとりの表情へ目を向けながら静かに語る。

「この作戦は、地球防衛隊の残された全戦力を投入した、地球の命運がかかった作戦だ。これでもし我々が敗北すれば、この地球は終わりだろう。」

その言葉に隊員達の表情が一瞬曇るが、隊長は力強い言葉を隊員達に投げかけ、彼等の闘志を奮い立たせた。

「だが!!ここで奴に立ち向かわなくてもこの星は終わる!!奴を倒せば、姿を消された人々が帰ってくる可能性も決してゼロではない!!その希望が例え、暗闇の中の僅かな光だとしても、我々は、可能性を本当の希望に変えよう!!!」

コダイ・ハヤト隊長の言葉に隊員達の胸が熱くなる。コダイは最後の言葉として心から声を絞り上げた。

「未来のために、そして残された人々のために、全力で成し遂げるんだ!!!」

言い終えると同時にコダイは隊員達に敬礼を交わすと、隊員達は立ち上がり、コダイに返礼した。

闘志が満ち溢れた目のまま、隊員達は自分の搭乗機が待つ格納庫へと向かうため、ブリーフィングルームを後にした。









格納庫では6機の戦闘機が待機しており、全機出撃準備が整っているように見えたが、1機だけ未だ整備班がチェックしている機体があった。

「どうした?」

「コダイ隊長、先ほどミサト隊員の機体に少しトラブルが発生してしまいました。出撃にはあと20分はかかってしまいます。」

その機体のパイロットである地球防衛隊に入隊して間もない新入りの女性隊員、ミサトはその言葉を聞いたのか、整備員のもとへ歩み寄って問い詰める。

「そんな!?何とかならないんですか!?」

「万全の状態で出撃するには、もう少し時間が必要だ。すまないが少し待ってくれ」

「万全じゃなくてもちゃんと飛べれば構いません!!」

「そんなわけに行くかよ!!俺達整備班は万全の状態に仕上げるのが仕事だ!!こんな状態でお嬢ちゃんを出すわけにいかねぇ!!」

ミサトと整備員が言い争う中、ずっと腕を組んで考える素振りを見せていたコダイはゆっくりと口を開いた。

「既に各基地からの部隊も出撃している。彼らとの合流時間を考えれば、出撃時間を伸ばす余裕はなさそうだな。」

「隊長、そんな!!」

声を上げるミサトに、通りかかった先輩隊員が茶化すように声を掛けた。

「残念だったなぁ、ミサト。安心しな。お前の分も暴れてきてやっからよ。」

先輩隊員はそういいながらヘルメットを被り、戦闘機、F-15改に乗り込んでいく。

小さくふくれっ面を浮かべるミサトに、コダイが諭すように声を掛ける。

「そうふて腐れるなよ| 新入り《ルーキー》。今すぐ出撃出来なくても、後から合流すれば良いだろ?ま、それまでにゼットンがいたらの話だけどな。」

「茶化さないでください!!」

「怒るなよ。安心しな、もちゃんと皆でここに生きて帰ってくるからな。」

兄が妹を諭すようにミサトの頭をポンポンと軽く叩くと、コダイは自分の乗機に向かって歩いていく。

そんなコダイの背中に、ミサトが声を投げかけた。

「隊長!!私は待ってるつもりなんかありませんよ!!すぐに追いつきますからね!!」

コダイはその言葉に振り向き、やさしい笑みを浮かべながらサムズアップを翳し、再び機体へと歩いていった。









厚木基地を離陸してから約10分、コダイの部隊は他の基地から発進した戦闘機部隊と合流し、攻撃目標の存在する地点まであと10分弱という距離まで迫っていた。

先頭を務めるコダイはふと後ろを振り向き、EDFと描かれた友軍機の数を確認し、小さく苦笑を浮かべた。

『これが今の日本にある"全戦力"とはな。』

今回のゼットン攻撃作戦に参加している機体は、コダイの機を含め合計29機。

一見するとそれなりの戦力と思われるが、日本すべての基地から集めた戦力としてはあまりにも少なすぎる。

だがそれも無理もないと再び苦笑するコダイ。

これ以上に規模の大きい戦力を所持していた日本の部隊も、突如現れた侵略者との度重なる戦闘でここまで疲弊してしまったのだから。



事の発端は今から1年と半年前、日本の某所に多く生息していた野鳥が突如姿を消すという事件から始まった。

そこに生息する野鳥達はそこから移動することは殆どなく、あったとしても一匹残らず移動するということはまずありえなかったため、野鳥の学者達は大きく混乱していたのだ。一部の人間やゴシップ系の雑誌ではこの事件を神隠しと噂していた。

このような鳥を含む多くの動物が突然姿を消すという事件が世界各地で起こりだし、そして最初の事件から1ヵ月後、動物の次は人間までもが姿を消してしまった。

最初は都市部から少しはなれた小規模な村だった。地元の警察が調査すると、そこには先ほどまで人が生活していた痕跡が多く残されていたため、この失踪事件は迷宮入りしてしまい、これも神隠しだと世間ではささやかれていた。

そのような事件が多発していく中、信じられない事件がまた起こった。

それは、宇宙人の宣戦布告。

世界各国の主要都市の上空に、"バット星人"と名乗る侵略者がホログラムを出現させてその姿を現した。バット星人いわく、これまでの動物、人間の神隠しは自分の仕業であり、地球を自分の所持する巨大生物、"怪獣"の実験場とする、と宣言した。

まるでアニメや特撮ヒーローなどの空想の話であったが、実際に起こっている異常事態に人々は大きく困惑した。

バット星人は手始めとしてこれまでどおり世界各地の人間をさらうと同時に、空想の存在と考えられていた怪獣を各地に出現させ、ある程度市街地に被害を出したところで怪獣を自身の宇宙船へと回収する、というまるで人類を弄ぶかのような行為を繰り返し、さらにバット星人が"ゼットン"と呼称する謎の生命体の入った繭らしき物体を日本某所へ置いた。まるでゲームでもしているかのような侵略行為は人々を絶望へ叩き落すには十分であった。

この非常事態に国連は世界各国の首脳陣との協議の結果、今こそ国同士が手を取り合い、地球とこの星の命を守るために戦うべきだ、という結論に至り、結成されたのがE.D.F(Earth Defence Force)、《地球防衛隊》である。

世界各国の防衛隊はバット星人の操る怪獣、宇宙船に対し攻撃を仕掛けるなど、徹底抗戦を試みた。序盤はバット星人の出現させた無人戦闘機や怪獣を撃破、撃退するなど善戦していたが、その防衛隊の隊員達の多くは今までの人々同様、姿を消されてしまった。

戦う者までも神隠しにあってしまったことで防衛隊の戦力は次第に疲弊。人々も姿を消される中、ついに地球防衛隊ヨーロッパ支部が壊滅してしまった。

それに続くように南米、アフリカ、中東、そして各支部の中でもトップクラスの戦力を誇った北米支部も約3ヶ月に渡る攻防の末に壊滅してしまい、今に至る。

残された東アジアとロシアの部隊もバット星人の繰り出す無人戦闘機、怪獣に対し徹底抗戦するも、民間人や動物同様姿を消され、戦力は疲弊。そしてこの防戦一方一の状況を打破すべく。各支部の残存戦力を結集しての今回の作戦を決行したのだ。

全戦力を投入しているため、返り討ちに会うようなことがあれば防衛隊の戦力は事実上の全滅となる、ハイリスクな作戦であるが、隊員達の士気は旺盛であり、全員がこの作戦を成功させるために全力を尽くすつもりでいた。

コダイはレーダーを確認すると、まもなく作戦エリアに進入することに気づき、友軍機に通信を行う。

「各機に告ぐ。まもなく作戦エリアだ。攻撃目標は1体とはいえ、バット星人の残した化け物であることに変わりはない。油断はするな。」

コダイのその言葉に了解、という返答がいくつも帰ってくる。

そして作戦エリアに入ってから数十秒後、ごつごつとした岩ばかりの風景の中心に存在するそれが目に入った。

《攻撃目標を確認!!》

半透明の赤紫色の殻の中には、黒を主体とした超巨大な生物が存在していることが分かる。その巨大さは侵略者が放った怪獣達とは比べようがないほどの大きさだ。

《あれがゼットン・・・?生で見ると余計に気味が悪いぜ・・・》

誰かが無線越しにそう呟くのを耳にするコダイ。

コダイもこれと同感だった。自分も恐怖を感じている。恐らくそれはこの作戦に参加している隊員全員が持っている感情だろう。

確かにこの作戦が成功すれば地球の未来を取り戻せるだろうし、さらわれた人々や動物達も帰ってくる可能性もある。

だが今回の敵はいうまでもなく強敵だ。返り討ちにあう可能性も否めない。誰もがその重圧と恐怖を抱えているのだ。

コダイは操縦桿を握り締める手が自然に強くなっていることに気づき、リラックスするために力を抜き、フゥ、と息をつくと、無線越しに仲間達へ告げた。

「だが見ての通り、奴は繭の中だ。孵化する前なら十分に勝ち目はある!!バット星人の宇宙船に対する攻撃も既に始まっている!!俺達も行くぞ!!各隊、アローフォーメーション!!攻撃開始!!」

29機の戦闘機部隊はその言葉と同時に5機編隊を5つ、4機編隊を1つ組み、ゼットンに対し正面と左前、右前の三方向から突貫していく。

真正面の編隊のトップはコダイが務め、その左右に2機ずつ付く、アローフォーメーションというその名のとおり、矢を模したフォーメーションであった。

作戦は繭状態のゼットンに対しこのフォーメーションを組んだ編隊ごとにミサイルを撃ち込み、1つの編隊が撃ち終えたら間髪入れずに次の編隊が、その編隊が撃ち終えたら次が、という波状攻撃であった。

作戦通り編隊ごとに攻撃を仕掛けた。まずはコダイの率いる厚木基地の部隊がゼットンの繭の真正面に突っ込んで行く。

「発射ッ!!」

1機が2発、合計10発のミサイルが放たれた。身動きの取れない繭にそれらを回避できる筈もなく、ミサイルは全弾命中、轟音と爆炎が繭を包んだ。

コダイの編隊はすぐさま旋回して繭から離れ、そして他の編隊からもミサイル攻撃が行われる。

何十発ものミサイルが命中したことにより、全機がミサイル攻撃を終えたときには爆煙で繭は全く見えなかった。

《仕留めたか!?》

無線越しで誰かが期待に満ちた声をあげる。

確かにそう思うだろう。58発ものミサイルの直撃を受けて生きている生物など存在するのだろうか。

だがコダイは不安と恐怖感を拭えずにいた。

理由は2つある。

1つはあれほど人類を圧倒したバット星人が切り札の如く出現させた怪獣がこれほどあっけなくやられるものだろうか?

2つ目は、現に爆煙の向こう側からは殺気を感じさせるほどの生命力が強く感じていたからだ。









次の瞬間、コダイの嫌な予感が的中したのか、爆煙の向こうから1つの触手のような物がなかなかのスピードでこちらに向かってきた。

「ッ!!全機散開!!」

すぐさまアローフォーメーションを解除し、回避行動をとるコダイたち。だが、回避行動が遅れたコダイの隣を飛んでいたF-15改が、触手によって左翼を弾かれていた。

バランスを崩したその機体は、まっすぐ地表へと落下していく。

「おい!!聞こえるか!!脱出しろ!!」

コダイはパイロットにそう叫ぶ。落下していくF-15改のコックピットからパイロットが飛び出し、すぐにパラシュートを開く姿が確認された。

次にゼットンの繭へと目を向けると、当然繭は未だに健在であり、繭からは2本の触手がしなりながら自分達へ接近していた。

《化け物め!!あれだけ喰らっても平気なのかよ!!》

それを見たコダイはすぐさま友軍機に指示を出す。

「全機、編隊を解いて回避行動に専念しつつ各個に応戦!!ダメージを負った機体は無理をせずに離脱しろ!!」

そう叫んだコダイは返事を待たずに操縦桿を倒し、友軍機の後ろをぴったり付いて回る触手に狙いを定めた。

「人間を・・・・なめるなあぁッッ!!」

操縦桿のトリガーを引き絞り、2門のバルカン砲が火を噴く。

20mm弾を当てられた触手はダメージによる痛みのせいか、友軍機への追尾を諦めていくのが見えた。

他の機も触手の攻撃を回避する機体、触手に攻撃を仕掛ける機体、本体である繭に集中攻撃を仕掛ける機体等、状況を見る限りこちらが圧倒的不利とまではいってないようだ。

だが繭の破壊が不可能なのであればこの作戦は失敗となってしまう。

何とかこちらが有利になるための策を見つけようとするコダイだが、次の瞬間、赤く光る何かが自分の機体の横を通っていった。

後ろを見ると、それが被弾してしまったのか、機体後部から黒い煙を出しながら落下していくのが目に入った。

繭へと目を向けると、先ほどと同じ物と思われる火球を機体へと放ち、1機、また1機と撃墜されていくのが見えた。

「クソッ!!このままじゃ全滅だ!!」

火球の回避に神経が行くと触手に撃墜され、触手に気をとられると火球に撃墜されるという事態になっていまい、状況は圧倒的に不利となってしまった。

再び隣を飛んでいた味方機が触手によって串刺しにされ、残りは僅か10機未満となってしまった。

「バット星人はこれほどの化け物を・・・しかも繭の状態で・・・」

《コダイ隊長!!厚木基地からの通信が入りました!!直ちに・・・うわっ!?》

無線越しの声から聞いてどうやら通信してきた味方も落とされてしまったようだ。

舌打ちしながらも無線の周波数を変え、厚木基地へと連絡を取る。

「こちらコダイだ!!どうした!?」

《コダイ隊長、残念なお知らせです・・・》

酷く落胆したような声に、何があったのかと問うコダイ。

通信士は重い口を開くように語りだした。

《さきほど連絡がありました・・・・







バット星人の宇宙船に攻撃を仕掛けた戦闘機部隊は、全機レーダーからロストしたとのことです・・・》

コダイはその言葉を聞いたとき、自分の耳がおかしくなっていることを願った。だが自分の耳は何の以上もないらしく、通信士の落胆した声が聞こえてくる。

《残念ですが・・・作戦は失敗です・・・報告によれば宇宙船はこちらに接近しているとの事です。ここは撤退を−−−》

コダイは無線を切り替えると、怒りに満ちた目で触手と火球を駆使して攻撃している繭を見据える。

そして再び無線を開き、残り僅かな友軍機に指示を下す。

「全機に告ぐ!!バット星人の宇宙船への攻撃部隊のほうも失敗したとの報告があった!!全機、ただちに作戦エリアを離脱!!厚木基地まで撤退せ−−−」

コダイのその言葉を遮ったのは1つの爆発音だった。

音のした方角を見ると、1機の友軍機が炎を上げながら墜落していくのが目に入った。視界の片隅ではパラシュートが開かれているのが見える。どうやら脱出に成功したようだ。

だがレーダーを確認する限り、どうやら自分が最後の1機になってしまったようだ。

コダイは繭の中のゼットンへと眼差しを向け、怒りを込めた目でにらみつけるが、ゼットンはそれすらもあざ笑うかのように不気味な鳴き声をあげる。

「ふざけた鳴き声しやがって・・・・自己紹介のつもりか?」

そう毒づいた瞬間、繭から2本の触手が猛スピードで伸びてきた。

コダイは機体を急速旋回させ、2本とも回避するが、触手は諦めるつもりはなく、執拗に自分を追尾してくる。

コダイは機体を巧みに操りながらそれらの攻撃をひらりひらりと交わしていく。

だが機体の真正面から触手が突如回りこんで来た。

「回避できない・・・だが!!」

ロックオンする暇もないため、コダイは目視で目の前の触手に対してミサイルを発射した。

放たれたミサイルは目の前の触手に見事直撃し、先端部分は完全に吹き飛んでいた。

「フッ、これくらい−−−」

次の瞬間、彼の機体を強い衝撃が襲う。左翼を見ると完全にそれが失われていた。後ろに着かれていた触手にやられてしまったのだろう。

「クソッ!!」

愛機を失うことに後ろめたさを感じながらもコダイは脱出用のレバーを引いた。

彼の体を宙に放り出され、何とか体勢を保ちながらパラシュートのレバーを引く。

減速のGが一瞬体を襲った後、コダイはゆっくりと降下していきながら地面に激突して爆散した愛機へ目を向ける。

これで攻撃部隊は全滅。地球防衛隊に残された戦力はこの作戦で消失したため殆どない。仲間も大勢失ってしまった。

ゆっくりと地表に着地したコダイはパラシュート装備をはずし、ゆっくりとヘルメットを取る。

「・・・・なんてザマだッ!!!」

人類の命運がかかった作戦だというのに、自分は大勢の仲間を失い、戦う力も奪われてしまった。

自分の無力さと侵略者に対する怒りを込めてヘルメットを地面へ叩きつける。

そんな時、あたりが急に影に覆われた。

「ッ!?」

空を見上げると、上空には黒いリング状の不気味な飛行物体が浮かんでいた。

それをじっとみつめながらコダイは小さく呟いた。

「バット星人の宇宙船か・・・」

パラシュートで脱出した仲間達は絶望した表情で見上げている。

「俺達も・・・さらわれるのか・・・」

今までさらわれてきた人々は世界人口の90パーセントを越えているが、その人々がどうなったのかを知る術はない。

バット星人に監禁されているのか、それとも殺されてるのか。

だが今更あがいたところで逃れることは出来ないだろう。

宇宙船が自分達の真上に来ると、徐々に光が発せられてくる。人々が神隠しにあったときに目撃されている黒い不気味な光だ。

「だが・・・まだ終わらない・・・」

コダイは力強く宇宙船を見据えながら言葉を続けていく。

「この世界の人間がすべて消えたわけじゃない・・・人がいなくならない限り・・・・





まだ可能性と希望はある・・・・」

言い終えると同時に、コダイ達パイロットはどす黒い大きな光に飲み込まれていった。









「コダイ隊長との通信は!?」

「駄目です!!通信不能!!」

「そんな・・・まさか全滅!?」

厚木基地では再び慌しくなっていたが、攻撃部隊の出撃準備を整えていたときと比べて、職員達や隊員達の表情は絶望に満ちていた。

「バット星人の宇宙船を確認!!当基地に接近中!!」

「クッ・・・やむをえん!!総員撤退準備!!基地を放棄する!!宇宙船は自動迎撃システムで時間を稼がせろ!!」

対空砲、対空ミサイルが次々と地上へ姿を現していき、その様子から見て侵略者に屈するつもりは欠片もないようだ。だがこの基地にいるすべての人間が感じていた。

”確実に負ける”と。

「ミサト機、離陸します!!」

「何ッ!?まてミサト隊員!!撤退だ!!今離陸して何になる!!」

ミサトはインカム越しに聞こえる上官の声に耳を傾けながらも、F-15改のコックピットで各システムを立ち上げていた。

ようやく整備を終えて出撃準備が整い、遅れを取り戻そうと機体に乗り込むと同時に彼女の耳に入ったのが攻撃隊との通信が途絶したとの報告だった。

新入りの隊員とはいえ、大勢の仲間がやられて黙っていられるほど、彼女は大人しい人間ではなかった。

ミサトは無線越しで上官に静かに応える。

「自動迎撃システムだけでは限界があります。自分も時間を稼ぎます。」

《待て−−−》

通信を一方的に切ると、ミサトは機体を空に上げるべく、機体を動かしていった。









離陸してから数分後、ミサトは接近している侵略者の巨大な宇宙船を確認した。

とてつもなく大きく、一瞬だけ彼女の体を恐怖が包むが、彼女はすぐさまそれを振り払い、宇宙船へとフルスロットルで突貫していく。

すると、円盤からいくつかの黒い物体が吐き出されてきた。物体は宙に吐き出されると同時に自分に向かって突っ込んできた。

バット星人の無人戦闘機だ。

ミサトは無人戦闘機から放たれたビーム攻撃を回避し、真正面に出てきた機体にバルカン砲を叩き込む。
バルカンを直撃した敵機が煙を上げながら自分の視界から消えていくのを確認すると、すぐさま反転してもう1機の敵機を追いかける。

何とか背後に回りこんだミサトは、ロックオンと同時に操縦桿のトリガーを引き絞った。

発射されたミサイルは自分の前を飛ぶ無人戦闘機に一直線に飛んでいき、機体後部に直撃。無人戦闘機は黒い煙を上げながらきりもみ状態で大地に激突して爆発を起こした。それを見たミサトは小さくガッツポーズを作る。

入ったばかりの新入り隊員であったがカリキュラムや訓練をしっかり受けていた彼女の腕は決して伊達ではなかった。

だが次の瞬間、基地でいくつもの爆炎が立ち上っているのが見える。

既に基地のいろんな箇所が攻撃を受けており、対空ミサイルランチャー、対空砲などの迎撃システムの殆どもスクラップと化し、残された迎撃設備が弾幕を張る等して必死に応戦しているが、それらもすぐに撃破されてしまった。

「そんな・・・」

唖然とする彼女だが、敵はよそ見する暇すら与えてくれないようだ。

機体の真後ろに無人戦闘機がぴったりと付いていたのだ。

ミサトは舌打ちしながらも振り切ろうとスロットルを上げたり旋回するなどするが、無人戦闘機が離れる様子は全くない。そして彼女の機体を強い衝撃が襲った。

危険を表すアラームがコックピットに響く中、ミサトは機体が持たないことを悟り、すぐさま脱出用のレバーを引いた。

宙へ投げ出された後にパラシュートを開くミサト。ゆっくりと地面に近づいていく中、基地のほうへ目を向ける。

すでに宇宙船は基地の真上に到達しており、宇宙船からは不気味な光が発せられていた。

その光は、奴が人々をさらったときにたびたび目撃されていた、どす黒い邪悪な光。

「え・・・!!」

彼女の言葉もむなしく、宇宙船から放たれた邪悪な光が、彼女の仲間が大勢いる基地を包み込んでいった。

その光にミサトは目をつぶるが、目を開いたときには、すでに宇宙船や無人戦闘機はその姿を消していた。

着陸したミサトは基地のほうをじっとみつめながら、ひざを突き、うなだれることしか出来なかった。人類の命運を掛けた作戦は失敗し、そして残された多くの仲間までも、侵略者によって消されてしまったのだから。









(地球防衛隊による反抗作戦から僅か10日後、バット星人は残された地球防衛隊の各基地を襲撃。襲撃された基地には、誰一人残されてはいなかった。

地球に残されたのは、もう私達だけになったのかもしれない。

でも私達は、まだこうして生きている。

生きている限り、可能性は必ずある。)





とある建物の中、太陽のまぶしい光が差し込み、そこには女性らしい多くの化粧品セットが置かれているが、そこでは1人の女性がグローブ、そしてEDFと描かれた戦闘服と、今時の女の子のお洒落とは程遠い物を身につけていた。

女性の年齢は20代半と若々しく、その容姿や雰囲気からはどこかリーダーらしさが感じられる。
その女性、アンナは1つのインカムを手にすると隣の女性に向けて放り投げると、ベレー帽を被った地球防衛隊の生き残り、ミサトがそれを片手で受け取ると、左耳へと装着しながらその部屋を退室していく。

もう1人の女性、サワはどこか暴走族を連想させるようなスカジャンを着ており、気合を入れるかのように紫色の鉢巻を頭に巻きつける。その姿からして男勝りな性格が見て取れる。

3人は格納庫へ向かうと、既に2人の女性が自分達を待ちわびていた。

「こっちも準備できたよ!!」

「ローダーの整備も万全やで!!」

眼鏡がトレードマークの少女、マオミと、関西弁で喋っているノンコが3人へ声を掛けると、アンナが他の4人へと目を向けて声を掛けていく。

「よし・・・みんな、いくよ!!」

その言葉に4人は、オウッ!!と返事をして格納庫にある3機の多目的ローダーマシン、〔Uローダー〕へと乗り込んでいく。

アンナ、ミサト、サワはそれぞれのコックピットへ。マオミ、ノンコの2人は機体後部の搭乗スペースへと乗り込んでいき、コックピットに登場した3人は機体の各システムを立ち上げていく。

そんな5人の元にオペレーターを務めるヒナから通信が入る。

《皆、準備はいい?》

その問いに5人がそれぞれ返事をすると、ヒナのフォースゲートオープン、というアナウンスと共に目の前のゲートが開いていき、少々薄暗かった格納庫に太陽光が差し込んでくる。

彼女達は〔チームU〕。

ほぼすべての人々が姿を消したこの地球で、残された子ども達を守るために活躍する最後の地球防衛隊である。

《チームU、レディ・・・》

アンナの言葉に各々の操縦桿を握る手に自然と力が入っていき、Uローダーの2つのメインエンジンも強い火を発していく。

《ゴーッ!!》

3機のパイロットはガチャリとレバーを前に倒し、Uローダーは格納庫を飛び出て大空へと舞い上がっていった。









ほぼすべての命が姿を消したこの地球。

それでも今を懸命に生きようとするチームUと子ども達。

だが彼女達はまだ知らなかった。

この星と彼女達を救うため、異なる宇宙から現れる3人の正義の超人の事を。


1人は己の身を犠牲に世界を救った伝説の英雄。

1人は優しさ、強さ、勇気、そして希望、これらの力を持つ慈愛の勇者。

そして最後の1人は、歴戦の戦士を父に持つ若き最強戦士。

彼等は互いに手を取り合い、邪悪な侵略者へ勇敢に立ち向かっていく。

地球を、そして消された命を、取り戻すために。


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■作者からのメッセージ
どうもはじめまして。

映画 ウルトラマンサーガを自分なりに手を加えてみた作品になります。

映画を観ておらず、ネタバレが嫌だという方にはお勧めできませんので、ご注意ください。

これからもよろしくお願いします。
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