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Ultraman saga -three light warries- 第1話 異邦人
作者:ソウ   2012/06/09(土) 11:31公開   ID:M5QsyOzFGqA
物音1つない寂しげな市街地に聳え立つ多くのビルの合間を縫うようにUローダーは飛んでいく。

「第6地区に進入。」

アンナ機からの通信がメンバー達のインカムに届くと、Uローダーのパイロット達の言葉が返ってくる。

《チャッチャと済ませますかぁ。》

《サワ、油断しない。》

コックピット内で背中を伸ばしながら若干緊張感に欠けた様子のサワに対し、副リーダーのミサトが呆れたように注意する。

今回の彼女達の目的は衣服・生活用品などの補給である。一見すると目的そのものは重要ではあるが、それほど難易度が高い目的とは考えづらいだろうが、ミサトの言うとおり、ほんの僅かな油断が最悪の事態を招くことも十分に考えられる。

それほどに今の世界は"異常事態"なのだから。

アンナはモニターに映されている過ぎ去っていく街の風景を見つめ、小さくため息を吐いた。

人はおろか、野良猫に野良犬、カラスなどの動物1匹見当たらない市街地。全世界がバット星人に支配され、自分達以外の人間は誰も見当たらない。

まさに地球は、"命の消えた星"となってしまったのだ。

「リーダー、地表の安全、確認!!」

「目的地、到着!!」

Uローダーの外側にある搭乗スペースにいるノンコとマオミからの通信を聞き、心を少々染めていた憂鬱を振り払いながらアンナは今握っている操縦桿とは別のレバーを握り、前に押し倒しながら各機へ通達した。

「全機、タッチダウン!!」

目的地である規模の大きいスーパーマーケットの駐車場に向けて降下していくと、Uローダーは飛行形態のホバードライブからに二足歩行のロボット形態、スタンドライブへと変形し、ガシュン、という音と共に3機とも着陸した。

「よし!!いつもどおり私とノンコは周囲の警戒、3人は物資の調達を!!」

その言葉を聞き、メンバー達は行動を開始した。

ノンコは地中感知レーダーを地面へセットし、ミサト、サワ、マオミはスーパーマーケット内部へと入っていった。

普通ならば近くの店員がいらっしゃいませ等の明るい挨拶があるはずだが、当然店員や他の客がいるはずもなく、代わりに物音1つしない沈黙が彼女達の来店を迎え入れた。

「2人とも、リスト以外の物には手をつけないでよ!!特にサワは前みたいに化粧品を漁らない事!!」

「わかってるって・・・」

ミサトの言葉にふて腐れたように言葉を返すサワ。

「じゃあ皆!!ショッピングタイムは5分ッ!!」

その言葉にOKと元気のいい声で返事をし、3人はショッピングで使う買い物カートを転がしながら店内を駆け巡っていった。









マーケットの前で待機していたUローダー、アンナ機の元にノンコからの通信が入る。

《リーダー、レーダーに反応。やっぱり来ましたよ。そっちのモニターに転送します。》

その言葉と同時にローダーのモニターにレーダーが映し出された。

ピッピッと電子音が発せられると同時に、モニターの右上に示された光点が少しずつ中心に接近してくる。

その距離は1000m、つまり"それ"は1kmの距離まで接近しているということになる。

「あと980・・・960・・・」

レーダーの情報が転送された携帯端末を見つめながらノンコが報告していく。

「3人とも、思ってたよりも時間がなさそうだよ。予定の時間を繰り上げることになると思うから急いで。あとミサト、ここから1番近いトラップエリアは何番だ?」

《はい、えっと・・・7番です。》

わかった、とアンナが内部の3人へそのようにやりとりをした後、映し出されたレーダーを再び注視する。

今接近している"それ"と自分達が遭遇することは何とか避けたいところだ。遭遇すれば間違いなく"それ"は自分達を襲ってくることになるだろうし、戦ったとしても真正面からぶつかればこちらの勝機は限りなく薄い。それほどに"それ"と自分達人類の間には大きな力の差があるのだ。

アンナが先ほどミサトにトラップエリアの情報を聞いたのは万が一"それ"と戦闘することになった時の為だ。リーダーを務める異常、考えられる最悪の状況を想定しなければならない。

自分達がセットした対"それ"用のトラップを活用すれば、少しでも有利な状況にするためだが、出来ることなら戦わずに済ませたい、そう思いながらアンナはレーダーに表示された光点をじっと見つめていく。

接近しているそれが来る前に目的が達成されることを祈りながら。










ミサト、サワ、ノンコがマーケットに入店してから約2分弱。すでに3人の買い物カートはリストに記されていた物で溢れていた。

トイレットペーパーにタオル、洗濯用の洗剤、Tシャツに靴下などの生活用品や衣服でいっぱいになっている。

ミサトとサワがカートに入っている物の中で足りないものがないかと最終確認をしている中、靴の調達を担当しているマオミが困ったような声を挙げた。

「16.5、16.5・・・これも・・・ダメ、ピッタリのがなーい!!」

1つ、また1つと子ども向けのシューズを手に取りながらサイズを確認するマオミ。

「子どもはすぐに大きくなるって。」

「もお、頭固いんだよマオミはぁ。」

ミサト、サワに順にそう口にした後、それがマオミのいいトコでもあるんだけどね、と微笑みながら付け足し、ミサトもそんな彼女に同感と応えるように笑みを浮かべた。

次の瞬間だった。

彼女達のいるマーケットが震動に襲われたのは。












突如地面がグラグラと揺れだし、ノンコがバランスを崩しながらも何とか倒れまいと踏ん張る。

その揺れを感じたのはUローダーのコックピットに座っているアンナも同様だった。

《どうしたの!?まだ"奴"との距離はある筈だよ!!》

Uローダーのスピーカーでノンコにそう伝えるアンナ。

「その筈です!!まだ"奴"との距離は十分・・・」

嫌な予感を振り払おうと手にしたタッチパネル式の携帯端末を操作するノンコ。

今のが小さな地震であることを祈りながら操作を進め、切り替わる画面を見た瞬間、自分が致命的なミスを犯してしまったことを彼女は把握した。

「あ・・・・






あかああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!

レーダーのエリア設定、1目盛り間違えてしもうたああぁぁぁぁっっ!!!!!」

その言葉を聞いたアンナはすぐさまレーダーが映し出されているモニターを操作すると、画面の左上端あたりにいた光点は自分達の現在地である中心の光点とほぼ重なりかけていた。

すなわち、既に"奴"は真下にいるということだ。

アンナは舌打ちしながらインカムを握り、3人へと通信を送る。

「全員退避!!!すぐにマーケットから出て!!」

その言葉に3人は驚愕の表情を浮かべる。そんな彼女達の中で最初に口を開いたのはサワだった。

「嘘!!頭の連絡から1分位しか経ってないのに!?」

「皆急いで!!」

ミサトの声と同時に3人はカートを転がしながら店の出口へと猛ダッシュで掛けていく。

その途中でミサトは何枚も用紙が貼り付けられてた店の掲示板に紙をバンと貼り付けた。

貼り付けた用紙は地球防衛隊の使用する借用書であり、そこには今回持ち出した物資のリストが記されている。

掲示板に何十枚も貼られた用紙もすべて彼女達が貼った借用書である。バット星人によって人が消えたからといって略奪を行うわけにもいかず、さらわれた人々が帰ってきたときのためにも、このようにちゃんとした形で物資を補給せねばならないのだ。

「すいません!!必ずお返しします!!」

ミサトの申し訳なさそうな声が店内に響き渡り、3人は店外へと出た。










3人が外へ出るとレーダーを回収していたこの事態を招く要因のミスを犯してしまった張本人、ノンコと合流した。

「ゴメエエェェェン!!ミスってもうたああぁぁぁぁ!!!!」

「ゴメンじゃないよもう!!!」

関西弁で謝るノンコに叱責するミサトだが、そんなやり取りする暇も与えるつもりもないのか、接近していた"それ"は姿を現した。

駐車場のコンクリートを突き破り、大きな叫び声と共に"それ"−怪獣−は姿を現した。

60mはあろうと思われるその巨大な体は濃い青色でゴツゴツとした屈強なボディを持っており、頭頂部にはカーブ状の鋭い刃のような角を生やした怪獣、〔アーストロン〕は悲鳴をあげながら逃げるチームUのメンバー達を追い掛けていく。

彼女達も物資を抱えながら懸命に走るが身長60mと身長1m60cmでは歩幅も大きく差があるため、彼女達がどんなに走っても最終的には追いつかれてしまう。

徐々に縮まっていくアーストロンとチームUの間に割って入ったのはUローダー アンナ機だった。

アンナ機はUローダーの左手に装備された銃の銃口をアーストロンへと向け、装填された対怪獣用特殊徹甲弾を放っていく。

放たれた徹甲弾は1発、また1発とアーストロンへ命中する。

この徹甲弾は地球防衛隊の結成当初に対怪獣兵器の1つとして開発された兵器であり、現にバット星人が出現させた怪獣との戦闘ではそれなりの戦果を挙げていた。

だが怪獣の中でも強力な部類に入るアーストロンの頑丈な皮膚の前では、ただ火花を散らし、僅かに怯ませる程度しか出来なかった。

だがアンナもこれで怪獣を倒せるとは考えてはいなかった。

彼女の目的は自分に注意を向けさせることなのだから。

「リーダー!!」

「リーダー、危ないですよ!!」

彼女達は必死にアーストロンに立ち向かうアンナ機を見て声を上げるが、アンナは心配するなといわんばかりにいつもの彼女らしい強気な口調で通信した。

「大丈夫だ!!私はこいつを7番のエリアに誘い込む!!あんた達は早くローダーへ!!」

その指示に対し、了解という返事を聞いたアンナはにやりと笑みを浮かべながら両側の操縦桿を前へ力強く押した。

「さあ!!かっ飛ばすよおおぉぉぉ!!!」

アンナは機体を180度反転させ、ガシュンガシュンと音を立てながら逃げるように走っていき、外部スピーカーからアンナの声が聞こえる。

《さぁ着いておいで!!》

アーストロンは自分に背を向けて走っていくUローダーに対し、凶暴な鳴き声を挙げながら追い掛けていく。

『ガアアアアァァァァオオオオォォォォォ!!!!!!!』

一瞬アーストロンののど元が赤く光ると、口から炎のようなもの−マグマ光線−が吐き出され、アンナ機を襲う。

アンナ機はそれを難なく回避していき、アーストロンを挑発するような声を発しながら前方の駐車された車を軽快なジャンプで飛び越えていく。

《こっちだこっちだ!!》

しかし飛び越えた筈の3台目の車にローダーの左足が当たってしまい、一瞬バランスを崩しそうになるが、そこはアンナの操縦技術で難なく持ち直した。

アーストロンはマグマ光線を再び吐き出し、先ほどアンナによって小破してしまった自動車へと命中した。車は一瞬炎に包まれて爆散し、跡形も残さずに破壊されてしまった。

それを見たアンナは持ち主に強く同情しながらも、必死に目的地である7番エリアへと機体を動かしていく。

すると前方に3つのドラム缶に立てかけられている7と記されたオレンジの旗を見つける。

何とか目的地である7番エリアに到着したようだ。

アンナはアーストロンがしっかりと自分についてきてるかと後ろを確認する。

自分の後方数10mにはアーストロンが接近しており、進路上にあった自動車や建造物は完全に踏み潰され、自分を狙って放たれたと思われるマグマ光線によってコンクリートの道路は破壊され、茶色い地面まで露となっている。

怪獣の恐ろしさを改めて感じながらもアンナはにやりと不敵な笑みを浮かべながらUローダーを走らせる。

「よし・・・いい子だよ!!」

アーストロンは目の前の小さな標的にてこずっていることに業を煮やしたのか、Uローダー目掛けてマグマ光線を乱れ撃ってきた。

《うおっと!!》

マグマ光線を回避しながらアンナ機はあと100mを切っている7の旗目掛けてまっしぐらに走っていく。

「もう少しだ・・・!!」

上下に揺れる操縦席の中でアンナはそう呟いた次の瞬間、前方が激しい炎に包まれた。アーストロンはアンナ機の進路を遮る為にわざと彼女の前方にマグマ光線を吐き出したのだ。

しかしアンナはすぐさまUローダーをホバードライブへ変形させ、空へと舞い上がった。

飛び上がったアンナは自分達の設置した7の旗が立てられたドラム缶がアーストロンの足元にあることを確認すると、コックピットの左上にあるレバーを勢いよく前に倒した。

「鬼ごっこはお終いだよっ!!

ファイヤーーーッッ!!!」

レバーが倒されると同時に、アーストロンを囲むように半径15mから一瞬光が放たれた。何が起こったのかわからないアーストロンは困惑したように鳴き声を挙げる。

次の瞬間、アーストロンの立っている場所が急に崩れ始め、バランスを崩したアーストロンは地面に飲み込まれるように倒れていく。

そう。彼女達が用意したトラップエリアとは、大きな落とし穴だったのだ。

彼女達の策に見事に引っかかったアーストロンを笑みを浮かべながら見つめるアンナ。

「やったー!!」

「ナイスッ!!」

「さっすが頭ァ!!」

「ヨッシャー!!」

Uローダーに既に搭乗しているミサト達4人もその様子を見ており、それぞれ歓喜の声を上げた。

「足元には気をつけな!!」

落とし穴に嵌まって倒れたままのアーストロンを馬鹿にした様な口調でそう言ったアンナは、アーストロンから前方へと目を離し、4人と合流すべくインカムを小さく掴んだ。







次の瞬間、アンナの言葉に腹を立てたのか、何事もなかったかのようにアーストロンはむくりと起き上がり、空を舞っているアンナのUローダーへマグマ光線で集中砲火を行った。

「何ッ!?」

アンナはすぐさま急速旋回し、アーストロンの攻撃を回避しようとする。

必死にアンナが機体を動かしていくが、1発、2発目は何とか回避できたものの、3、4発目はかわしきれず、機体を軽く掠めてしまった。

小柄なUローダーはそれで飛行バランスを崩してしまい、地表へ向けて一直線に降下していく。

アンナは着地するために咄嗟にスタンドライブへの変形操作を行ったがあと少し間に合わず、着地の際のバランスが崩れ、アンナ機は地上に叩きつけられ、1転2転と転がっていき、コックピットのキャノピーの部分は外れてしまった。。

何とか機体が停止し、アンナは外にむき出しとなったコックピットの中で機体を立ち上がらせようと操縦桿を動かしていくが、機体は立ち上がろうとはするものの、なかなか起き上がれそうにない。周りのモニターへ目を向けると、DANGERと表記され、関節部のダメージが報告されている。

「クソッ!!関節部をやられた・・・ああ、もおっ!!!」

なかなか立ち上がらない機体に苛立ちを覚え、コンソールに拳を叩きつけるアンナ。そんな時、ズシンズシンと大きな足音が近づいてくる。

見るとアーストロンは落とし穴を何とか脱出し、自分へと一歩、また一歩とその距離を縮めている。

《リーダー聞こえますか!?脱出してください!!今そっちに向かってます!!聞こえますかリーダー!?返事をして下さい!!》

「バカ!!今来たら皆危ないだろ!!私は大丈夫だ!!今脱出す−−−」














次の瞬間、そんな彼女達のやり取りを遮ったのは大地の大きな震動だった。

高層ビルなどの大きな建造物は左右に揺れ、積もった塵などが振り落とされて宙を舞っていく。

その震動は地震などとは違い、ほんの一瞬の揺れであった。まるで大きな何かが地面へ降り立ったような。

アンナをはじめとするチームUの面々は何事かと思い、困惑と焦りを露にしている。

今の状況でさらに新たな怪獣が出現したのであれば状況は最悪どころではなくなり、絶望的な状況に置かれることになってしまう。

足音と思われる大きな音は1歩、また1歩とこちらへと近づき、その度に喫茶店のオープンテラスのテーブルやビル内の起業オフィスのデスクは上下に揺れていく。

チームUはその足音の正体に対する警戒を強める中、アーストロンはその足音に少し困惑しているような様子だった。

そしてその足音の主が姿を現したとき、アンナは呆然とした表情を浮かべながら小さく呟いた。










「巨人・・・?」

アンナの見つめるその存在は、まさに巨人の名にふさわしい大きな体を持っていた。

その屈強な体には銀色のラインに赤と青の模様、胸には左右に伸びている黄金のプロテクターと青く輝く鮮やかなクリスタル。額には白い輝きを放つクリスタルが埋め込まれ、同じように白い光を宿した複眼を備えている。

その姿は異形ではあるがこれまでバット星人が送り込み、人類を恐怖で震え上がらせた怪獣とは大きく異なり、見ているだけで心が震えるような神々しい巨人だった。

ミサト、サワ、ノンコ、マオミもUローダーを着地させてその巨人をポカンと口をあけて見上げている。

『危ないぜお嬢ちゃん達。ここは俺に任せて下がってな。』

すると彼女達の心の中に初めて耳にする男性の声が響き渡る。

「えっ・・・?」

アンナは困惑しながら巨人を見つめるが、その巨人はアーストロンからアンナへと視線を向け、大丈夫だと言うようにゆっくりと頷いた。

アンナはそれに従うようにコックピットを脱出してアーストロンと巨人と距離を取る。

先ほどの言葉と巨人の頷きを思い浮かべながら、彼女の中で1つの言葉が過ぎった。

『今のは・・・テレパシー・・・?』

SF作品などでよく扱われる能力だが、アンナはそのような非科学的な能力を殆ど信じていなかった。しかし現に彼女をはじめ、チームUは現にそのような能力を目の当たりにしている。

ある程度距離を離れた時、サワ達の乗ったUローダーが空から自分の近くへ着地する。

「リーダー!!」

「大丈夫ですか!?」

4人のその言葉に大丈夫だ、と声を掛けた後、彼女達はアーストロンと対峙している巨人へと目を向けた。

『フッ!!』

巨人はアーストロンに対してファイティングポーズを取り、アーストロンは巨人を見据えながら威嚇するようにグルルと唸っている。

数秒間の睨み合いの中、沈黙を破ったのはアーストロンだった。

『グオオオオォォォォォッッ!!!』

勢いよく放たれたマグマ光線は一直線に巨人へと襲い掛かる。

だが、

『ハァッッ!!!』

何でも溶かすといっても過言でない火力を誇るマグマ光線は突き出された巨人の手のひらによってあっけなく防がれてしまった。

それを見たアーストロンはマグマ光線を乱れ撃ちにしていくが、巨人は歩きながらそれを手のひらで次々と弾き、アーストロンへと近づいていく。

巨人がある程度の距離へ接近したとき、アーストロンは格闘戦を挑んだ。

『ガアアアァァァッッ!!!』

右手を振り下ろし、鋭利な爪が巨人へと襲い掛かるが、巨人はその動きを完全に見切っているのか体を横へ動かして回避した。

アーストロンはすかさず左手を振り下ろすが今度は巨人の右手に防がれてしまった。

なかなか攻撃が思ったように当たらないことに怒ったのか、アーストロンは巨人へと激しい攻撃を仕掛ける。

だが巨人はそれをすべて回避、または防御で完全に防いでおり、そしてアーストロンは自慢の頭部の角で巨人の体を切り裂こうとするが、巨人は見事なバック転でそれを回避し、アーストロンとの距離を取ると、少し屈んだ体勢から地面を力強く蹴って勢いよくアーストロンへとキックの体勢で飛び掛った。

『ダアァッッ!!!』

巨人のとび蹴りアーストロンの腹部へ命中し、アーストロンは怯んで何歩か後退するが、至近距離で巨人に向けてマグマ光線を放とうと喉を赤く光らせるが、巨人はそれに恐れず真正面から間合いを取り、顔面へと力強いパンチを撃ち込んだ。

『ディアアァァッッ!!!』

『グギャアァァッッ!!!??』

アーストロンは再び何歩か後退すると、勝ち目がないことを悟ったのか地中に逃げるために地面を勢いよく掘っていく。

アーストロンの鋭利な爪と強力な腕力があれば地中へ逃げるために穴を掘ることなど造作もないことだろうが、それを行うには状況が悪すぎた。

『グオオオォォォォッッ!?』

『ムウゥゥゥゥン!!!』

巨人はアーストロンの尻尾を掴んで掘りかけの穴から離すと、そのままアーストロンを力強く振り回した。

『ウオオオオォォォォッッッ・・・・・ダアアァァァッッ!!!』

暴れるアーストロンを何回か振り回した後、巨人はアーストロンを大空へと力強く放り投げ、アーストロンはその巨体が小さく見えるところまで飛んでいく。

『ジュアアァァァッッ!!!』

そして巨人が両手で十字を組むとその十字から光線が放たれた。

青白く輝く光線は宙へ投げ飛ばされたアーストロンへと一直線と伸びていき、それがアーストロンに命中すると大きな爆発が起こった。

爆炎が消滅するとそこにアーストロンの姿は見えなかった。

その巨人の圧倒的な戦闘力に呆然とするチームUの面々。

「あの巨人・・・一体何者なの・・・」

アンナがそう呟いた時、巨人は自分達へと振り向いてその大きな複眼を向けた。

彼女達は初めてみる巨人に見つめられ、ほんの少し体が固まったような感覚が体を走る。

だが巨人は先ほどのアンナの問いに答えるために、再びテレパシーで5人にこのように言葉を返した。













『正義の・・・味方さ。』

それと同時に右手でサムズアップを作り、彼女達に翳す。

それを聞いた5人は互いに顔を合わせていき、その表情は強い笑みを浮かべていた。

「じゃあ・・・やっぱり・・・!!」

「私達の・・・」

「「「「味方だああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」」」」

アンナを除く4人が満面の笑みを浮かべながら巨人の下へと駆けて行く。

しかしアンナはその巨人をじっと見つめたまま、こう呟いた。

「正義の味方・・・か・・」

幼い頃に誰もが憧れたであろう存在。しかし大人に近づいていく中で世間の酷く醜い面を見るたびに、人はそのような存在はテレビや本の中の存在でしかないと感じるようになる。

アンナもその中の1人だった。

弱き者に救いの手を差し伸べ、弱者や罪無き者を虐げる悪を倒していく正義の味方。

幼い頃に夢中になっていた存在だが、成長していくたびに社会の汚い部分を見て嫌気が刺していった。

学校でいじめを黙認する教師。己の過ちを認めない警察や企業。何かと理由をつけては誰かを虐げる人間。

そのような人間を目の当たりにしてアンナは肌に感じるようになった。

"正義の味方"など絵空事なのだと。

アンナはそれを認めたくないという思いと、そんな世間に対する嫌悪感から一時、社会に反発するようになっていた。

だが彼女は感じていた。目の前の巨人が、幼い頃の自分が憧れていた存在なのかもしれないと。

「・・・フッ・・・」

アンナはそんな自分を小さく笑いながら帽子を被りなおし、アンナも4人の後を追うように巨人の元へと歩いていった。










その巨人の名は、

〔ウルトラマンダイナ〕。

己の身と引き換えに自分の世界を救った伝説の英雄であり、また、異なる世界からこの世界へやってきた、最初のウルトラマンである。


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