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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第一話
作者:AST   2012/07/05(木) 00:50公開   ID:GaMBFwOFFuY
ギロチンの刃に自分の首を飛ばされ敗北しながらも、やっと自分の名を思い出せた事

自分を創り出した腐れニート神との決戦で流星に押し流された自分の体が何処かへと墜ちてゆく浮遊感

ずっと墜ち続けた自分が新しく生まれ落ちた瞬間の光

「この子の名前は_______________」




第一話




織斑一夏は前世の記憶というものがある

否、気づいたら新しく生まれ変わっていたという表現が正しいだろう

前世の彼であったのなら即座に死を望み、座に存在する変態ニート神を呪っていただろう

だが、この身は前の様に死んだ身の姿では無く、織斑一夏という人間の肉体であり前世の姿では無い

かつてマキナと呼ばれ、本当の名をミハエルと呼ばれた彼の前世はやっと死ぬ事が出来たと言う事だ

ならば自分は織斑一夏としての人生を生きてゆこうと決意した

まあ、ここまでは良かった

軍事転用された宇宙用マルチフォーム・スーツ、インフィニット・ストラトス、通称IS

篠ノ之束によって開発され、女性しか起動できないと言う欠点の為に女尊男卑の社会を生み出した

現在はスポーツとしての形で落ち着いている

そして国連によって造られたISの操縦者を育成する学園、IS学園

「何故、俺はここに居る・・?」

そう呟き、周囲を見回す

かつて小学生のころに分かれ、和風美人となった幼馴染に目をやると目を逸らされた

本来、男である筈の一夏がここに居るのは、受験会場を間違え、偶然ISに触れたら起動してしまったからだ

クラスメイトは全員女子、この状況を悪友の五反田弾に言ったら
それ何てギャルゲー?と心底羨ましそうな視線を浴びせながら言ったのを覚えている

その時は「そうか・・」と素っ気無く返しただけだったが、この気まずさと居心地の悪さの中で新しい人生の青春時代を過ごすのかと考えると、今なら言える

今すぐ代わってくれ!と

「_____くん、織斑一夏くん」
「む・・・?」
気が付けばクラスの副担任である山田真耶が自分の名前を呼んでいた
「あ、あの、大声出しちゃって、ごめんなさい。あの、お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!で、でも自己紹介、『あ』から始まって今『お』なの……だから、織斑君の番なんだよね、だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?」

ダメ?と涙目になっている山田先生を落ち着けてから自己紹介をする事にした

「・・・落ち着け」

「は、はい!」

ぶっきらぼうな一言の筈なのに、何故か年上の男性に優しく言われた様に感じた山田真耶は頬を紅く染めながら答えた

自己紹介をするべく一夏は席から立ち上がった

「織斑一夏だ。・・・・よろしく頼む」

彼の自己紹介終了

「えっと・・以上ですか・・?」

「これ以上、言葉で語る意味は無い」

キュン!!

多分、クラス中にそういう擬音が聞こえた気がする

これが普通の男子なら単なる格好付けだと思われるだろう

しかし、一夏の多くを語らない寡黙な大人の男を感じさせる所

所謂ハードボイルドな男の雰囲気が漂っていた。

クラスの女子たちは自分達と同年代である筈なのに、一回りも二回りも年上の大人であるかのように感じさせる一夏にときめきを覚えた(個人差はあるが)

「お前がそういう性格なのは分かっていたが、自己紹介としてそれはどうなんだ?」

その言葉と共に教室に入ってきたのは、一夏にとって唯一無二に家族にして、幼い自分を学生の身でありながらも必死に自分を養ってくれた大恩ある実の姉

世界一のIS操縦者と名高い織斑千冬であった。

彼女の頬がやや赤く染まっているのはどうしてだろうか?

「すまないな、山田君。挨拶を押し付けてしまって・・」

「いえ、これ位の事は・・・」

取り敢えず座る一夏

「全く・・お前はもう少しマトモな自己紹介は出来ないのか?」

「・・・姉さん」

スパァン!と出席簿で頭を叩かれた

「ここでは織斑先生と呼べ、いいな?」

「・・・分かりました。織斑先生」

その後、すぐにクラスのミーハーな女子達が騒ぎ出したりしたが、一夏は我関せずと言った様子で居たのだった。



授業が終わり少しの間の自由時間となったのだが
一夏はひたすらに腕を組んで目を閉じていた

彼の周囲にいる女子達は話しかけたい様だが、良くある誰が話しかけるかで言い合っていた

すると彼女達とは別の女子が一夏に話しかけた

「ちょっといいか?」

閉じていた眼を開けて声の主の方を見ると

「・・ああ」

短い返事を返し、席から立ち上がった

「ここは人が多い、屋上で話そう」

教室の至る所から残念そうな声が聞こえたが、一夏は気にする事も無く彼女に連れられて行く



人気の無い一年校舎の屋上で一夏は久しぶりに再会した幼馴染と二人きりでいた

「久しぶりだな、箒。六年振りか」

「ああ、お前も相変わらず無口なままだな」
「・・・饒舌な方が良かったか?」

「いや、それはそれで何か気持ち悪い」

「・・・随分な言い様だな」

少しムッとした感情が声にも伝わる

どうやら一夏の感情は顔で無く、声に出るらしい

「・・まぁ良い、教室で一目見てお前だと分かった」

「そ、そうか?」

「髪型、眼、雰囲気・・こんな所か」

箒は顔を照れくさそうに自分の髪の毛を弄っている

一夏は彼女との記憶を思い返していた

自分の拳は強すぎた

だから彼女の実家である神社の道場で剣道を学び始めた

そこで共に剣を学び高めあった幼馴染

姉妹揃って人付き合いが苦手で両親が悩んでいた事も思い出せる

最初の頃はお互いに交わす言葉は少なく、素っ気ない会話ばかりだった

まともな会話をする様になったのは彼女が男女と馬鹿にされ、イジメを受けていたのを助けた時からか

馬鹿にされている彼女を抱き寄せ、ただ相手に向かって一言

「黙れ」

それだけで彼女にイジメをする者はいなくなった

子供なら気絶する寸前の殺気をぶつけたのだから当たり前である

ちなみに一夏は気づいていないが、この時の箒の一夏を見る眼は王子様を見る眼だったらしい

それから一夏は箒を抱き寄せて胸の中でひとしきり泣かせた後に
元気づける為に彼女の額にキスをした

これは精神が子供の扱いに慣れていない独り身のオッサンである一夏が、胸で泣いている箒をどう元気づけようか必死に考えていると
唐突に前世で唯一の子持ち(親父として色々ダメな美丈夫は除外)で子育て経験のある同僚ならどうするかと思い付いた結果である

効果は抜群だった。むしろ抜群すぎた

何故なら、その直後に同僚だった白騎士の如く神速の速さで走り出したのだから

その時の感想は

「・・・どうやら元気になった様だな。感謝するぞ、バビロン」

何処かで困った様に苦笑しながら“やっぱり兄弟かしらね?”と自分が育てた曾孫に言うFカップの巨乳美女が居たとか何とか・・

そろそろチャイムが鳴る頃だろうと思った一夏は過去の思い出から帰還して箒に言った

「話したい事はまだ有るだろうが、そろそろ鐘が鳴る頃だ、戻るぞ」
「そう・・だな」

少し残念そうな表情になる箒を見て一夏はやれやれと言った様子で溜息を吐くと

「・・箒」

彼女に急接近し

「なッ、ななな何だ?」

箒の頬が赤く染まるのにも構わずに
「綺麗になったな」

そう言って昔の様に額にキスをした

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!?????」

箒は顔がものすごい勢いで真っ赤に染まり、ぶしゅぅ〜〜〜と蒸気を出し

まるで蒸気機関車の如く、猛スピードで教室にすっ飛んで行った。

「・・・・・熱でもあったのか?」

当の本人だけが何も分かっていなかった。

“やっぱ、罪造りな男だよね。あのマキナがあんな事するなんて思わなかったけど、流石は藤井君のお兄さんって思えるよね?”

と、また何処かで、好意を抱く自分の後輩を弄るクォーターの少女が居たとか何とか・・・


その後、授業に無事、間に合った二人であったが、箒の方は顔を真っ赤にしながらもどこかニヤけており

千冬は、またコイツかと言いたげな表情で一夏を見ていたのだった

「・・・・・・・・・?」

当の本人はやっぱり気づいて無かった


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■作者からのメッセージ
某二次創作投稿サイトの方から移転してきました。駄文ですが読んでくだされば嬉しいです。Dies iraeの二次創作、その中でもマッキーが主役の物が増えるカンフル剤になってくれれば嬉しいです。
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