「〜〜〜であるからしてISの基本的な運用は〜〜〜」
一夏が箒と教室に戻ってきてから、現在二限目の授業を受けている
相変わらず一夏は無表情で教科書を見ていた
箒の方はぷしゅ〜と顔を真っ赤にしながらも何とか授業を受けている
流石にその様子を不審に思ったのか
「えっと・・篠ノ之さん?」
「は、はいッ!?」
「随分と熱っぽそうに見えますけど大丈夫ですか?」
「も、ももも、勿論です!大丈夫です!」
物凄い動揺しながらも答える箒
その様子にクラスメイト達の乙女センサーは教室に戻ってきた様子や
それからのニヤケ顔と蒸気噴射から、休み時間に絶対何かあった!と確信するのだった
第二話
「ちょっとよろしくて?」
「・・・・む?」
二限目の休み時間、今度は金髪縦ロールのお嬢様が一夏に話しかけた
「なんですの!そのお返事。私に話しかけられるのも光栄なのですから
それ、相応の態度と言う物があるのでは無いかしら?」
それを聞いた一夏は即座に脳内情報を検索、該当する人物を探し当てる。
「英国の代表候補生か・・」
「その通りですわ。名前まで覚えていらっしゃらないのは、如何なのかしら?」
「覚えていない訳では無い。セシリア・オルコット」
ジロリとセシリアを見ると、ぶっきらぼうに言う
「何の用だ?」
「まあ!何て物言いでしょう!?本来、私の様な選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡なのですわよ?その辺りをお分かり頂けるかしら?」
「そうか・・・幸運だ」
「馬鹿にしているのですか!?」
喰ってかかるセシリアと我興味無しと言った様子の一夏
まるで構って欲しい犬が吠えてくるのを適当に相手する飼い主にも見えなくない
「ふ、ふん!まあ、よろしいですわ。何か分からない事が有ったら
泣いて頼まれるのでしたら、教えて差し上げてもよろしくてよ!
何せ、私は入試で唯一教官を倒したエリートなのですから!!」
ある程度落ち着いたセシリアが偉そうに言うが
「俺も倒した」
「「「「「・・は?」」」」」
セシリアだけで無く、会話を遠巻きに見ていたクラスメイト達まで呆けた声を上げた
「わ、私だけと聞きましたが!?」
「女子では、な」
「で、では、私だけでなく貴方も倒したと言うのですか!」
「ああ」
「どうやって!?」
ガァッと再び食って掛かるセシリア
教官を倒したと言う事に興味深そうに眼をキラキラ輝かせているクラスメイト達
彼女らに説明するように一夏は語る。
「突撃したら、向こうの方も突撃してきた」
「それで?」
「懐に入った」
「そして近接武器を使って倒したと?」
「頭掴んで地面に叩きつけた」
「「「「「「「「「「ひどっ!!!」」」」」」」」」」
実際、相手になった真耶は凄まじい速度で地面に叩きつけられた衝撃で気絶、そのまま追撃してもう一方の拳を叩き込もうとしたら、ブザーが鳴って試験が終了した
まさか高空から地面に顔面を叩きつけられるなんて経験したのは、彼女が初めてだろう
意識を取り戻した真耶はその時の記憶が飛んでいたらしい
おそらく精神の安定を図るために脳が記憶から消去したのだろう
その後、千冬に“お前は教官を潰す気か!”と怒鳴られた
すると、チャイムが鳴りだした
「ッ!・・つ、続きはまた後ですわ!!」
セシリアは捨て台詞を吐くと自分の席に戻ってゆく
三限目の授業を終え、今は四限目の授業だ
「これから再来週行われるクラス対抗戦に出るクラス代表を決める
クラス代表者とは、そのままの意味だ。対抗戦だけで無く、生徒会の会議や委員会にも出席する。まぁ、クラス長の様なものだ。クラス対抗戦とは入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差は無いが競争は向上心を生む。一度決まれば余程のことが無い限りは一年間変更は無い。その点を踏まえておけ」
教壇に立った千冬が全員に言い放つ
いつも通りの一夏は興味が無いとばかりに腕を組んで千冬を見ている
「はいっ!織斑君を推薦します!」
「私もそれがいいと思います!!」
クラスメイトが次々と一夏を推薦する
「では、候補者は織斑一夏・・他にはいないか?自他推薦は問わないぞ?」
それに反論する声が上がった
「待って下さい!納得がいきませんわ!!」
机を叩きながらセシリアが立ち上がる
「そのような選出は認められません!!大体、クラスの代表が男だなんて言い恥さらしですわ!!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと言うのですか!?」
更にセシリアは捲し立てる
「実力で言えば、私がクラス代表になるのは必然!それを珍しいからと言う理由で極東の猿にされては困ります!!大体、文化も後進的な国で暮らすこと自体私にとっては苦痛でしか__「下らん」何ですって?」
一夏の言葉の端々には怒りの感情が感じられた
「下らんと言った。クラス代表になるのであれば、国家の代表候補生ならば、他国を国を侮辱する言動は慎め、英国には礼儀と言う物が無いのか?」
普段寡黙な一夏がここまで喋るのは結構怒っていると言う事だ
「なっ、私の祖国を侮辱しますの!?」
「先に侮辱したのは貴様だ。英国人(ライミー)」
イギリス人への侮辱の言葉を言われたセシリアは
「決闘ですわ!!」
「良いだろう」
前世で黒騎士と呼ばれた男に挑戦状を叩き付けた
「もし私が勝ったら小間使い!いいえ、奴隷にして差し上げますわ!!」
「俺が勝った場合はどうするつもりだ?」
「そんな事、万が一にもあり得ませんわ!もし貴方が勝ったら奴隷でも何でもなって差し上げますわ!!」
まぁ、そんな事あり得ませんが!と言うセシリアに一夏は問う
「手加減はどうする?」
「あら、早速お願いかしら?」
「違う、俺の手加減だ」
するとクラスの女子が一斉に笑い出す
「織斑君、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって大分昔の話だよ?」
口々に言うクラスメイトが言うが、下らなさそうに一夏は語る
「それは女がISを使えるからだ。女が男に対しての絶対的優位性を持つISを男の俺が使える。それがどういう意味か分かるか?」
その言葉にクラス中が押し黙る
「それにIS以外の肉体的要素は男の方が上だ。学力は本人次第で如何にでもなる。」
つまり、と一夏は続ける
「ISが使える事以外で男女に差は無い」
俗物共の政策で女尊男卑の社会が作られただけだ。と見事に政治家を敵に回す発言を一夏はした。
「話が逸れたな・・・尤も、俺と貴様に経験による差があるのは否めん。だが、決闘に手加減を加えるのも誇りに反するか・・・」
一夏はそう言ってセシリアを見据える
「良いでしょう!私の誇りに掛けて貴方を全力で倒して差し上げますわ」
その言葉に一夏は僅かにニヤリと笑った
それに気づいたのは箒と千冬の二人だけであったが・・
「さて、話は纏まったな。勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意しておくように」
千冬がそう言って纏めると、授業が始まったのだった