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インフィニット・ストラトス・クン・ポケット (第一章) 第一球 姉と幼馴染と親友と
作者:作者   2012/07/06(金) 10:27公開   ID:Kj5KwqVsk/2
きらめく朝日。新品の制服。そして新品の勉強道具。
そして……

「おれは甲子園に行きたいんだよぉぉぉぉぉ!」

そして泣き叫ぶ青年。
それは新しい生活の始まり。

「一夏君。気持ちは分からなくもないでやんすけど……」
「あのね織斑君。今自己紹介の時間なんだけど……」

そっくりな顔をした二人のメガネが隣の席と机の前から一夏に話しかけてくる。

「あ、すいま……すいまなくない!」
「ひうっ!」
「ちょ、ちょっと一夏君。姉ちゃんを困らせないでほしいでやんすよ」
「え、あ、ああ……すいません」

そう言いながら一夏はお辞儀をして謝る。

「あ、あのね、大声出しちゃってゴメンね? あ、あのね、自己紹介してくれるかな? ダメかな?」
「自己紹介ですか……はい」

そう言って一夏は立ち上がる。

「おれの名前は織斑一夏。小学生高学年から野球一筋で甲子園に行きたくて……行きたくてぇぇぇぇぇぇ!」
「ひううっ!」
「あ、ああ……何を言っても無駄なのはわかるんですけど……」

泣きそうな真耶をみて一夏は戸惑う。

「だって、女子ばっかりのこの学校で甲子園なんかに行けるわけない……」
「そんなことはない」

一夏は聞き覚えのある声か聞こえその方向を向く。

「ち、千冬姉!?」
「ここでは小波先生と呼べ」
「そんな、だって、一真兄と結婚して主婦になったんじゃ」

《バチコーン》

一夏は頭をたたかれ抑える。

「あ、小波先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」

やさしい言葉で話しかける千冬を一夏は珍しいものを見るように見つめる。

「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」

千冬が声を掛けただけで真耶は涙声をやめ若干熱っぽいぐらいの声と視線になる。

「姉ちゃん……」
「へ、平治君かなんか涙声に……」

何に泣いているのかは聞かないことにしようと一夏は思った。

「諸君、私が小波千冬だ……織斑千冬といったほうが諸君のほうが知っていると思うが。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育て上げるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠一五才を一六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

そして千冬の言葉が終ると教室がざわつき始める。

(暴力的な発言に戸惑いが隠せないのか?)

一夏がそう思いながら帽子を整えなおすと突然女子たちが叫びだす。

「キャ―――――!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

突然の光景に一夏は戸惑う。

(き、既婚者と分かっていながらこの状況になるのか!)

数年前の織斑 千冬と小波 一真の結婚の話は大きなニュースになった。
ISと野球の日本を代表する二人の婚約発表だったからだ。

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉さまのためなら死ねます!」

(そ、それなのに収まらないこの女性ファン……)

一夏はあきれるしかない。

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスだけに馬鹿者を集中させてるのか?」
(俺もそう思うよ……)

周りを見ながら一夏もあきれたような表情をする。

(たぶん千冬姉がこんなこと言っても……)

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして〜!」

そう、収まることはなかった。

「い、一夏君。大丈夫でやんすか?」
「ふ、ふはは……平治君。君も大丈夫なのか?」
「はっきり言って疲れるでやんす」

男子二人は手をつなぎ友情を深めた。

「あの〜ち……小波先生。さっきの話は……」

 恐る恐る一夏は千冬に話しかける。

「それは後で話す」
「はい、千冬姉」

《パスタァ!》

「すいません小波先生様!」

《パァンッ!》

「こ、小波先生……」

と、このやり取りを見ていたクラスの女子が騒ぎ出す。

「え……? 織斑くんって、あの千冬様の弟?」
「ああっ、いいなぁっ。変わってほしいなぁっ」

女子が羨ましそうに一夏を見つめる。

(その羨ましそうに見る視線……あまり好きじゃないな……ん?)

女子の中に数人うらやましそうな顔をしていない者がいる。
一人は金髪の女子とあともう一人は……

(あの髪形って……)

その見覚えのある髪形の女子は一夏に低温の視線を送る。

(な、何だ? 俺の予想通りならなんであんな視線を?)
「そろそろ座ったらどうでやんす?」
「あ、ああ……」

平次に言われ席に再び座る一夏。
するとチャイムが響く。

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基本知識を半月で覚えてもらう。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

どこの軍隊かと言わんばかりの言葉が教室中に響く。

(そういや少しの間ドイツに行ってたらしい……千冬姉はISのトップだしそういうのをしてたのかもしれないな)

そして通常の授業が始まる。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

「ぬ……」
「い、一夏君? 大丈夫でやんすか?」

一夏は授業の内容についていけなかった。
そのせいで頭から煙でも出ているかのように参っている。

「や、野球が、野球がしたい……」
「ほ、放課後には話すってさっき小波先生が言ってたでやんすよ!」
「女子が9割を占めるこの学校で何があるって言うんだ……」

そう言いながら頭から煙を上げうつ伏せになる一夏。

「あ、オイラちょっと姉ちゃんと話があるので失礼するでやんす」

そう言って平次はその場を後にした。

(男一人にしないでほしいよ……)

そう、ここはIS学園。
ISとは女性にしか動かせないものだと思われていた。
だが数年前を川切りに少数の男子がISを動かしていた。
といってもだれでも動かせるというものではなかったようで男で動かせるというものは珍しがられる。
彼、織斑 一夏はその珍しい男の一人なのだ。

(虚しい……俺にはもう何も……)

動物園の動物のように見られる現状に一夏は絶えることができない。
これなら男子と女子が同じ学校で別々にされていて街にいくには金がいる
といわれるほうがマシだと。

「平次君……早く戻って……」
「……ちょっといいか」
「え?」

突然、一夏は話しかけられる。

(いろいろ言いあって男子にだれが話しかけるかで言い合ってた気がしたんだが……)

「って今の声……やっぱりお前は箒?」
「…………」

一夏の目の前にいたのは野球を始める前に引っ越して6年ぶりに会う幼なじみだった。

「……話があるってことだよな。廊下でいいか?」

一夏の目の前にいる箒は昔から強いて変わらずの髪型であり。
とても不思議なポニーテールをしているので忘れることはできなかった。

「早くしろ」
「え、あ、箒」

一夏を置いて箒はすたすたと廊下へ行ってしまった。
放棄が歩いて行く道を女子たちは空ける。

「女王様みたいだな……」



そして廊下に出る。
二人から少し離れたところに包囲網ができている。
全員が全員、聞き耳を立てている。

(これじゃろうかにでても無意味ってやつだな)

そう言いながら一夏は帽子のつばを触る。

「あ、そういえば」
「何だ?」

ふと、スポーツ新聞を見ていた時の記事を思い出す。

「去年に剣道大会優勝してたろ。新聞で見たぜ〜」
「…………」

そういうと顔を赤らめ下を向く。

「ほ、箒?」
「何?」
「一面大きく載ってて……」
「まさか一夏が新聞を読むなんて」
「理不尽な!」

肩を掴まれ揺らされ一夏の帽子がずれる。

「お前、おれは野球青年だぜ。スポーツ新聞の購読はだな……」
「そうか……いや、一夏。お前は剣道をやめたのか?」
「ん? わかってんだろ……理由なんて。一真兄に憧れてだな……」
「そうか……」

何か思うことがあったのか静かになる箒。

「ま、まぁ何だ。久しぶりじゃないか。まさかとは思ったけど本当に箒だとは、全然変わってないな」
「む、そうか?」
「ああ、髪型も同じだし」
(そんな不思議な髪形他にいないからな……)

そう言いながら、そう思いながら一夏は箒の髪をさす。
すると箒は自分の髪をいじりだした。

「ふ、よくも覚えているものだな……」
「えっ? あ、ああ。お、オサナナジミノコトナンカワスレナイデショ―」

まさか変だからという理由で覚えていたなどともいえず、それらしい理由を言う。
だがかなりの棒読みである。

「…………」

それを聞いた箒は一夏をにらむ。

「な、何だよ……」
「……」

《キーンコーンカーンコーン》

チャイムが響く。
それとともに近くにできていた包囲網も消えていく。

「あれ、一夏君と……誰でやんす?」

廊下の先から歩いて変えてきた平次が一夏に話しかける。

「え、ああ、こっちは俺の……」
「チャイムが鳴ったのだ教室に戻るぞ」

そう言って箒はいそいそと教室に戻って行った。

「? 一体どうしたでやんすか?」
「……とりあえずおれたちも教室に戻ろう」

そう言って二人は教室に戻った。


次回に続く

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