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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第四話
作者:AST   2012/07/06(金) 20:54公開   ID:GaMBFwOFFuY

セシリアとの決闘の当日、放課後の第三アリーナAピットには一夏と箒が二人きりでいた。

観客席にはクラスメイト達が、管制室には千冬と真耶が居た。

セシリアは先にISを展開して、一夏を待ちかまえている。

一夏は箒と共に自分の専用機が届くのを待っていた。



第四話




「来ないな・・・」

「ああ・・・」

するとスピーカーから真耶の声が聞こえてきた。

『織斑君、来ました!織斑君の専用IS』

『織斑、すぐに準備をしろ。アリーナの使用時間にも限られているからな、初期化と最適化は実戦でやれ、お前にとって、この位は問題ないだろう?』

ハッチが開き、視界に入ってきたのは“白”だった・・

「これが一夏の専用機・・」

『織斑君の専用IS“白式”です。』

純白の機体に触れ、精神を集中する。

“黒騎士(ニグレド)の俺が、白騎士(アルベド)を使う事になるとは・・・これも何かの縁か”

そう思って、彼は“白式”を装着し一体化する。

“しっくり来るな・・・”

やはり前世での経験がISとの同化に役立った様だ。違和感が無い

『織斑、気分はどうだ?行けるか?』

「大丈夫だ。行けるさ」

その言葉に千冬は“そうか”とだけ返した。

「一夏・・・・・」

箒が不安げにこちらを見るが、一夏はカタパルトの方を向く

「行ってくる・・・」

「ああ・・勝って来い」

フッ、と笑うとカタパルトから発進する。

「織斑一夏・・・出る。」

黒き騎士は新たな力を得て、再び戦場に羽ばたいた。

嘗て黒騎士と呼ばれし男は、新たな世界で白き装甲を纏い、ここに蘇った。

アリーナ上空まで上昇し、待ち構えていたセシリアを見る。

「あら、やっと来ましたのね。待ちくたびれて仕舞いましたわ」

「それはすまない、ISの搬入が遅れた。」

だが、と一夏は続ける。

「この戦いは退屈させん」

「あら、たいそうな自信ですわね。」

互いに相手を見据えて、集中する。

『これより、クラス代表決定戦、織斑一夏 対 セシリア・オルコットの対戦の始めます。』

真耶の号令と共にセシリアが先手を取った。

彼女の持つスターライトMk‐Vから放たれたレーザーが一夏へと向かう

「・・・遅いな」

それを身を捩り、紙一重で躱す一夏

「さあ、踊りなさい!!この私とブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)を!!」

続けてレーザーが襲い掛かってくるが、全てを紙一重で躱し続ける。

「遅い、遅すぎるな・・・」

彼にとってレーザーの速度は、光速であるのにも拘らず慣れてしまっている。

前世に於いて約五十年間もの間、マキナは魔城で二人の騎士と訓練をしてきた。

その片割れである白騎士の称号を持つ少年:ウォルフガング・シュライバー

彼の能力は絶対先制加速、これによる速度の上限は無い

故に彼は光速の相手であっても、その上を行く神速の速さとなる。

そんな超加速能力を相手にしていれば、嫌でも速さに慣れる。

まぁ相性上、彼は一度も攻撃を当てる事は出来なかった訳だが・・

馬鹿げた速度に慣れてしまっているが故に、高速対応が可能な反射神経なのである。

体は一夏であるが、最近になって音速までなら完全に対応できる様になった。

流石にレーザーの光速には対応できないが・・

“まだまだ、射撃も未熟だな”

中身が歴戦の戦士である一夏は、彼女の射撃をそう評した。

「棒立ちでは、相手の射撃兵器の的だぞ?」

悠々綽綽と一夏は彼女の欠点を述べながら、高速移動で彼女の横へと回り込む

そして近接用ブレードで切りかかる。

「くっ!!?」

間一髪の所で回避したセシリアは一夏から一旦距離を離す。

まさか、接近を許してしまうとは思ってもいなかったセシリアは本気で一夏を倒そうとする。

「貴方が初めてですわ。ここまで私の攻撃を避けたのは。その貴方に敬意を表して全力で行かせて頂きますわ!」

ブルーティアーズの肩の装甲から、四機のビットが射出される。

「む・・・」

それぞれが別々の方向から一夏に向かってレーザーを放ち始めた。

それすらも躱してゆくが、その内の一撃は躱しきれ無いと判断したの一夏は右手のブレードで叩き切った。

「なッ!?」

まさかレーザーを叩き斬るなんて非常識な真似をするとは思っていなかったセシリアが
驚きの表情で一夏を見た。

「まだ、戦いは始まったばかりだ・・全てを見せてみるがいい」

まるで、彼女を試しているかのように言い放つ一夏

その眼は、まだこの程度ではないだろう?と語っている。

「いいでしょう、この私、セシリア・オルコットの全てを貴方に見せてあげますわ!!」

セシリアは己の全てを一夏へ見せつける為に戦う

“未熟だ。・・・ならば、この戦いを教訓に出来るものへと変えてやろう”

一夏は先生的な事を思いながら、彼女の円舞曲(ワルツ)に付き合うのだった・・・


モニターでそれを見ていた箒は一夏の行動に疑問を持っていた。

「何故、追撃しなかったんだ・・?」

一夏がセシリアを切り付けた直後に、追撃していればダメージを与えられた筈だったのだ。

「多分、オルコットのワルツに付き合うつもりなんだろう・・・」

千冬が箒の質問に答える。

「どうしてですか?早く決めてしまえば良いと思わないんですか?」

真耶が不思議そうに聞いてくる。

「あいつは戦士だ。戦いの中でオルコットを教育するつもりなんだろう・・」

「教育って・・オルコットさんは代表候補生ですよ?」

「だが、実戦の経験も無く、戦場を知らない」

“私もだがな”と付け足して真耶の疑問に答える千冬

「では、織斑君には戦場の経験があるんですか!?」

「いや、無い筈だ・・だが、あいつは明らかに戦場を、闘争を知っている。」

そう言った千冬の表情はどこか悲しげであった。







試合開始から十分後・・・


セシリアは自分の胸の内の変化に戸惑っていた。

彼の戦士として眼に男を感じ、胸が熱くなるのはどうしてか?

自分を見守るような父親の様な眼に安らぎを感じるのはどうしてか?

“自分の胸の内を焼く、この感情は何だ?

数瞬の後、彼女はその答えに思い至る。

“ああ、そうですのね・・・この感情が恋と云うものなのですね・・・”

己が内に芽生えた感情は、自覚した途端に更に激しさを増しながら燃え上がる。

彼に自分の全てを見て欲しい・・・そして、その全てを受け止めて欲しい、と

この時、セシリア・オルコットの中に生まれた想いは確かに渇望だった。

そこに水銀の手が加われば、永劫破壊の術式はここに完成する。

“さて、彼女が語るのは道を求する物か?道を覇する物か?”

彼女の口から語られるのは、己が渇望の具現化

一夏の眼が僅かに驚愕で見開かれる。

Love bade me welcome: yet my soul drew back,
―愛は私を喜んで招き入れてくださった、だが私の魂はしり込みしていた

 Guilty of dust and sin.  
―塵と罪に汚れていたからだ

But quick-ey'd Love,observing me grow slack 
―だが慧い眼をお持ちの愛は、私がぐずぐずしているのを見ておられた
 
From my first entrance in,
―私が初めて戸口に入った時から

Drew nearer to me,sweetly questioning,
―私に近付いて、やさしくおたずねになったのだ
 
If I lack'd anything.
―客人が、私は答えた、ここにふさわしくないのです

A guest,I answer'd,worthy to be here:  
―何か足りないものがあるのか?と
 
Love said,You shall be he.
―愛はおっしゃった、お前がその客人になるがいいと

I the unkind,ungrateful? Ah,my dear,
―私のような薄情で恩知らずな者がですか?ああ、わが愛しきお方よ
 
I cannot look on thee.  
―私はあなたを見つめることもできません

Love took my hand,and smiling did reply,
―愛は私の手を取り、微笑んでお答えになった
 
Who made the eyes but I? 
―私でない誰がその目を作ったというのだ?

Truth,Lord,but I have marr'd them: let my shame 
―真実です、主よ、ですが私はそれを汚してしまいました、私の恥に
 
Go where it doth deserve.
―しかるべき報いを受けさせてください

And know you not,says Love,who bore the blame?
―お前は知らないようだな、と愛はおっしゃった、誰がその責めを負ったのかを?
 
My dear,then I will serve.
―わが愛しきお方よ、それではお仕えしましょう

You must sit down,says Love,and taste my meat:  
―お座りなさい、愛はおっしゃった、そして我が肉を食べるのです
 
So I did sit and eat.
―そこで私は座り、いただいたのだ

Creu 
創造

Seren golau dydd teimlad syrthio mewn cariad
―星光降り注ぐ、恋慕心情



彼女を中心に異界が展開される。

 しかし、世界が灼熱の世界に変わる事も無ければ、紅い月が照らす夜になる事も無い

だが、彼女の世界が生み出された事だけは確かであった。

 「織斑さん・・いえ、一夏さん・・私の全てを受け止めて下さいな」

熱っぽい声で愛しい彼に告げた彼女は、同時に蒼き雫達を一斉に放った。

 一夏はそれを油断せずに回避しようする。が・・

「言った筈ですわ、全て受け止めてと・・躱そうとするなんて酷いではありませんか」

彼女がそう言った直後、蒼き雫達から放たれたレーザーが拡散した。

まるで雨の雫の様に丸く小さな光の弾が、豪雨の如く彼に降り注ぐ!!

「____ッ!!!」

最大出力で急速上昇し、雫の弾幕から脱出するが

全てを躱しきれず、装甲が豪雨に降られシールドエネルギーを持って行かれる。

「____くっ!!」

一撃一撃の威力は大した事無いが、それが豪雨の如く降り注いでくるのだ。

完全に躱す事など、あの千冬ですら難しいだろう

だが弾幕を何とかやり過ごした一夏はそのまま彼女へ向かって行く、が・・・

「・・・だから言った筈ですわ。全て受け止めて欲しいと!」

次の瞬間、背中に豪雨が降り注いだ。

「ぐうッ!!!?」

突然の衝撃に落下してしまう一夏だが、すぐに体制を立て直す。

“そういう事か・・・”

一夏は理解した。

彼女の渇望は“自分の全てを受け止めて貰いたい”と言う覇道である。

つまり、当たるまで追い続ける大量の弾幕

レーザーが拡散して小さな雫の様になったのは、全て受け止めて欲しいものと言う事から

四つでは足りずに表現しきれないと言う事だ。

その眼は久しぶりの窮地に焦りと楽しみを感じている事で輝いていた。

“つくづく、自分は戦う事に向いているらしいな・・・・”

自分は戦いの運命に戦わずに生きてゆく事は出来ないらしい

次の瞬間、一夏を包み込むようにして、レーザーの弾幕が襲い掛かった。




その頃、管制室でも騒然としていた。

「レーザーが拡散した!?」

真耶が驚愕の声を上げる。千冬も驚いたような表情をしている。

更に一夏が飛び越して躱す。

するとレーザーの弾幕はとんでもない速度で曲がり、彼の背後から直撃する。

「一夏ッ!!」

箒が思わず声を上げた。

「馬鹿な・・いくら偏向射撃が理論上可能とは言え、あの曲がり方はあり得ん・・」

「で、では、あれは一体・・!?」

箒の言葉に千冬も考える。

すると、クラスメイトの声が千冬の耳に入ってくる。

「セシリアさん、凄いね。」

「でも、あの詩って何だろう?」

そこで彼女は思い至る。

「まさか・・あの詩を詠う事で発動する単一使用能力なのか・・?」

「そんな!まだ二次移行でも無いのに単一使用能力の発現なんてあり得るんですか!?」

真耶の言葉に、さあな、と千冬は返して続ける。

「ISはまだ謎が多い、あれが何であっても真実は分からない」

そして彼女はモニターに映る弟の姿を見る。

“どうやら、目はまだ死んでいない様だな・・”

その表情は凛々しく、見る女、全てを引き寄せる魅力があった。

“自分ですら魅力を感じるのだから”と思い

ちらりと、他の連中に目を向けると・・

箒は頬を紅くして王子様を見る眼をしているし、隣にいる副担任も同じ様な目をしている。

“相変わらず罪作りな奴だ”

千冬はフラグ野郎の弟を見て溜息をつくのだった。

このままでは負けるだろうが、時間的にそろそろだろう

すると、彼を包み込むようにレーザーが全方位から襲い掛かった。

「一夏ッ!!!!」

箒が再び彼の名前を叫ぶ。

逃げる事も防ぐことも不可能な必中の攻撃に包まれた彼は墜ちるのか?

“それでは面白く無いだろう?”
英雄(ヒーロー)とはどんな強敵にも決して負けず、最後に勝利を掴む。

それこそが英雄譚なのだから

織斑千冬はフッと笑って言った。

「機体に救われたな。馬鹿者め」

モニターには白では無く黒に染まりし、騎士の姿があった。




「一次移行!?・・まさか、今まで初期設定で戦っていたのですか!?」

セシリアが驚いた様子で彼に聞いてくる。

どうあっても、自分は黒騎士である事は否定できない様だ。

そして、その手に展開された武器は姉が使っていた物と同じだ。

「俺は最高の姉を持った。

幼き俺を必死で養い、栄光よりも俺を選んでくれた最愛の姉だ。

あの時に、俺は彼女を支える事を誓った!!

だからこそ、お前を倒す!

見せてやる。この俺を!!!!」

黒き装甲を纏った彼は彼女を本気で倒すことにした。




「・・・・・・・」

千冬は体を震わせながら涙を流していた。

「・・・千冬さん。どうぞ」

「・・・すまない」

箒からハンカチを受け取ると溢れてくる涙を拭く

「いい弟さんを持ちましたね」

「ああ、いつも泣き言ひとつ言わずに、グスッ・・・私を支えてくれた
・・グスッ・・・弟だ・・」

だが、彼女は更に涙を流すことになる。




 一夏は詠う、嘗ての渇望とは違う渇望の一つ

Es ist unsere liebe, Ich liebe dich, Ich will dich unterstützen 

_我が愛しき者よ、私は貴方を愛し、貴方を支えたい

Du unterstütztest mich lange. 

_貴方は、私を長い間支えてくれた。

Du gabst mir alles, um mich zu unterstützen.

__貴方は私を支える為に、全てを私に捧げてくれた。

Ich unterstütze dich dieses Mal.

_今度は私が貴方を支える番だ。

Gib diesen Körper, alles,

_この身を全てを捧げて

Widmen wir sich dir.

_貴方に尽くそう 

_Briah 

_創造

__Ich gebe eigenen Weg Die Welt des Bruders 

__我捧ぐ・姉弟世界

それは最愛の人の為に出来る事を全て行いたいと言う渇望から生まれし求道

その力は万能化、ありとあらゆる物全てを使いこなす事が出来る能力

「は、はははははは!!素晴らしい!素晴らしいですわ!!一夏さん!!
 初期設定で私を苦戦させただけで無く、一次移行で単一使用能力(ワンオフアビリティー)を発現させるとは!
 やはり、貴方は最高に素敵ですわ!!さあ、もっとこの円舞曲(ワルツ)を楽しみましょう!!」

セシリアの表情は歓喜に満ちていた。

自分の惚れた男は、これ程までに強さを示し、屈する事無き誇り高さを見せている。

“ならば全力を以ってして、全てを貴方に受け止めて下さい!一夏さん!!”

また一夏も熱烈な視線に眼で答える。

“お前の全てを受け止めてやる”

蒼き雫達がセシリアの周囲に集う

セシリア自身もレーザーライフルを構える。

円舞曲(ワルツ)の終曲(フィナーレ)を飾るに相応しい一撃

“さあ、受け止めて下さい!!これが私の全てです!!一夏さん!!”

放たれし全てのレーザーは拡散し、再び収束して一つの極光を生み出す。

それを受け止めるべく一夏も又、正面から突撃して躱す事などしなかった。

“単一使用能力:零落白夜、発動!!”

巨大な極光の奔流の中を一夏は剣で切り裂きながら突き進む

「_____ッおおおおおおオオオオオオッ!!!!!!!!」

咆哮を上げながら、スラスターの全開出力で突き進む。

「セシリア・オルコットォ!!」

極光の先に待ち受ける彼女の姿を、その瞳に捉える。

そして極光を突き抜け、所どころが融解した剣を捨て、彼女へ一撃を放つ!!

「これが!織斑一夏だァァァッ!!!!!」

彼の放った拳と、彼女が最後に放ったミサイル

そのどちらが早く到達したのかは、言う必要はないだろう・・・










「何が“これが!織斑一夏だ!!”だ。負けたじゃないか!!」

保健室で箒に看病してもらいながらベッドの上に寝ている一夏

「そうだな・・・・・」

最後の一撃を放った時、確かに一夏の拳は届いた。

だが最後に放ったセシリアのミサイルの爆風が一夏の拳の狙いを僅かに逸らし

本当にギリギリの差で負けたのだ。

0.1:0の差で・・・

やはりレーザー四発分の直撃を受けたのがいけなかったらしい

「悔しいな・・・」

「そうか・・・・」

ああ、そうだ。と一夏は言う

「必死で力を求めた癖に、敗北した・・・それだけなら許せる。
 
だが、姉さんの同じ力を使っておきながら敗北した。
 
俺は姉さんにまた恥をかかせた・・・・」

相当、悔しいのだろう。握られた拳の色が変色して白くなっている。

するとそこへ・・・・

「何を言っているか馬鹿者」

「姉さん・・・」

千冬がやって来た。

「いつも、お前は自分を責める馬鹿者だ。」

「う・・・」

千冬に責められて、しょんぼりする一夏

だがな・・・と千冬は言う

「お前が必死で私の為に努力してきたことは知っている。」

「・・・・・・」

「だから少しは自分を許してやれ・・・」

そう言って千冬は一夏を抱きしめた。

「・・・・ありがとう」

「構わないさ、充分すぎる位お前は尽くしてくれた。その礼だと思え」

そのまま一夏は安心したのか、千冬の胸の中で眠ってしまった。

「千冬さん・・」

「織斑先生だ・・後は頼んだぞ?」

「はい・・・」

一夏を箒に託した千冬は保健室から去って行ったのだった。

「一夏・・・」

箒は安心したような表情で眠る一夏を撫でながら、思う。

“お前は何時まで経っても千冬さんの事しかないのだな・・”

何時か、そこに自分も入って見せると誓った彼女は、

自分も強くならなければと思うのであった。






何処かにある研究室の一室に彼女はいた。

「あははははは!!これは凄いね!まさか、これ程の事が出来るなんて!」

ISの開発者、篠ノ之束はディスプレイに映る光景に興奮していた。

「己の渇望を世界へ戦闘用に具現化して、現出させるなんてさ・・」

非科学的にもほどがあるよね、と束はごちる。

「このセシリアって娘の渇望は、レーザーを拡散と収束まで自在にしてるし、

おまけに追尾性能まで付いちゃってるなんてチートもいいとこだよ・・」

 すると、束の背後から影法師の様な男が現れた。

 “如何かな?彼女等が演じた歌劇の程は・・”
 
 「私の予想以上だよ、胡散臭くて最初は信じられなかったけどね・・」

 “ふむ、君がそう評するならば、私が手を加えただけの甲斐があったと言うものだよ”

 ニヤリと影は語る。

 「でも、この創造って言うのは、誰でも使えるんだよね?」

 “然り、君が使いたいと言うのならば、君に与える事も出来るが?”

 「ふぅん・・じゃあ、今度頼もうかな・・」

 “では、自分の内に眠る渇望を理解する事だ。それまでは私も舞台裏にいるとしよう”

 そう言い残すと影は消えて行った。

 「そうだね・・貴方が出てくるのは舞台の最終章、そしてその時こそ貴方の願いを叶える時」

“そうだよね、メルクリウス?”

束の、その言葉はどこか暗い闇の中へと消えてゆくのだった・・・・・



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■作者からのメッセージ
Diesだと創造は簡単に出来る代物では無いですが、ISコアに仕込んである術式は簡易型なので、渇望が薄くても発動は出来ますし複数の創造も出来ます。その分威力も規模も格段に下がっています。例外はありますが・・・・・・人間の欲望は限りない
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