9歳です。ただいまの西暦は1983年です。
というわけで毎度恒例の近況報告をば。
世界情勢についてなんだけど、目立ったことは起こってないようだ。
もっとも、知らないだけでなにか大きな動きがあったのかもしれないんだけど。
それに目立ったことは起こっていないけど、情勢の悪化については着々と進んでいるようだ。
殲滅もかなわず、むしろ敵の攻勢にじわりじわりと押されている人類。
ここまでくると、キーワード『AL』の中に占める位置はわからないが、BETAが重大な要素の一つなのは間違いないだろう。
当初はあんまり気にしていなかったんだが、ほぼ確定だな。
まあ、とりあえずは海の向こうの話なんで手も足も出ないんだけど。
そんなこんなで、恒例の情報開示コーナー。
おれのマル秘情報をまるっとおみせするぜい。
基本情報
名前:立花 隆也
性別:男
年齢:9歳
身長:135cm
体重:35kg
身体能力情報
筋力:973(180+3000)
体力:1023(180+3000)
俊敏:987(180+3000)
器用:872(180+3000)
感覚:612(632+300)
知力:921(928+300)
精神:899(1022+300)
気力:984(180+3000)
自分で言うのも何なんだけど、たいがい人間離れしてきたな。
この間誰もいないのをいいことに身体能力を調査したら、100mを8秒台で走ったり、垂直跳びで2m近く飛んだり、100kgのベンチプレスを片手で持ったりと、周りに知られたらただじゃすまい結果がでた。
下手に知られたら、変な研究所に送られて解剖されてしまうかもしれん。想像するだに恐ろしい。
通常技能情報
・母国語学:639
・外国語学:939
・調理:421
・家事:721
・戦術戦略系勉学:392
・文系勉学:731
・理系勉学:877
・機械工学系勉学:682
・電子工学系勉学:421
・内科医療系勉学:632
・外科医療系勉学:245
・剣術:702
・近接格闘術:491
・機械系整備:621
・電子機器系整備:319
・医療技術:427
・気放出:211
・気混入:234
・投擲術:173
etc…
年を追うごとに突っ込みどころが増えていくなあ…
いや、言いたいことは分かる。なんかおかしいってのもわかる。
でもこれが現実なんだからしょうがないじゃないか。
語学については、古典文学の勉強していたら勝手に母国語と外国語に分化していた。
調理については、趣味で料理をしてたら、家事から分化してた。
勉学については、まあいろいろとあった。戦略戦術系は、たぶん戦国時代物の本を読んで戦略戦術の勉強をしてたのが影響しているんだろうとは推測できる。あ、あと孫子とかも読んだぞ。
電子工学は、整備工場に電子部品を使ったものが持ち込まれるんで、そのために勉強していたらちゃっかりと分化していた。
医療系については、これも内科と外科に分化してた。内科の方が高いのは、まりもの死因が病気だった可能性を考えて重点的に勉強しているためだ。
剣術はめでたく700の大台を突破。大人に混じっても全国区で余裕で通用する腕前だ。
師範にようやく勝てるようになる、と思ったら、あのじいさん、
「ぼうず、おんしのおかげでこの年になってようやく儂にも、剣の道のなんたるかが見えてきたようなような気がする」
などとほざき、武者修行の旅に出たかと思ったら、剣術:864とかに成長して帰ってきやがった。
おまけに特殊技能で、『剣の秘奥』『気遮断』『気配同化』なんてものまで身につけてやがる。
はっきり言っておれよりもこのじいさんの方がおかしい。ぶっちゃけ伊勢守とか卜伝とがちでやり合えるレベルだろ。
格闘術はいつのまにやら名称が近接格闘術に変わっていた。確かに、色々な流派に手を出してるからな。
整備は持ち込まれてくる工作機械なんかを整備しまくってたら勝手に上がっていた。
これだけの腕があれば、将来はなんの不安もなく整備士とし食っていけるな。
でここからが問題になってくるんだが、まずは医療技術だ。
これは知識ではなく、実際の技術、つまり実践により培われたものだ。
なにを馬鹿な、と思うだろう。おれだってそう思う。どこの馬鹿がたかだか9歳の子供に医療の手伝いをさせるのか。
ここが後進国や戦争まっただ中で人材不足だというならまだ分かるが、曲がりなりにも先進国。おまけに人材も不足していない。
ではなぜか、ということになるのだが、それについては後ほど語ることにして、次の技能だ。
気放出。
つまりあれだ、男なら誰でも通ったことがあるはずのあれを試しにやってみたんだ。
こう、気合いを込めてだな、標的に向かっておきまりのかけ声とともに、構えた腕を前に突き出したわけだ。全身全霊で、魂の咆吼とともにだ。
そしたら、出ちまった。
それはもう、見事に出ちまった。
おじさんあれほど驚いたのは久しぶりだったよ。
標的にした樹齢40年ほどの樫の木が吹き飛んだ時には開いた口がふさがらなかった。
人間離れしてきたな、どころかなんか半分人間やめてる気分になってきたよ。
でもぶっちゃけ実戦で使えるかっていうと微妙なところ。なにせためが必要な上に、構えが大仰すぎる。
もっと熟練すれば違ってくるかもしれないが、今では大道芸ぐらいの使い道しかない。
精進あるのみだ。
気混入。
気放出の隙を無くすのにどうするかと思案してたどり着いた結果のうちの一つだ。
例を出すと、現在おれが全力で石つぶてをぶん投げると木の幹に軽くめり込む。これだけでも十分驚異的だが、気混入で石つぶてに気を混入するとどうなるか?
答えは、木の幹に当たった瞬間に気が暴発して、木の幹が大きくえぐれてしまう。
気の混入に要する時間はほんの一瞬。手に持った瞬間に充填は完了する。
人間に当てればただじゃすまないのは間違いない。いや、おためごかしはよそう。これは人を殺害せしめるのに十分な威力だ。
大きすぎる力は人に不幸をもたらすが、しかし、それを制御すれば受ける恩恵も大きい。
自分の自制心を過信なんてしていない。今身についている能力だって、正しく使い続ける自信はない。いわんや、この気放出、気混入の能力をだ。
だがそれでもおれは力を欲する。正しくあろうとする因果を、愚かしくもゆがめようと挑むために。己の自己満足で予定調和を乱さんがために。
ここまで言えば、投擲術なんてものが身についているのもおわかりになるだろう。
要するに投球もとい、投石訓練をしていたら身についていたわけだ。
特殊技能情報
・因果律への反逆
・自身状態閲覧
・自身状態管理
・思考制御
・思考高速化
・思考並列化:LV2
・他者状態閲覧
・他者状態管理
・気練成
・気制御
・身体強化:LV2
・気強化:LV2
・超回復
・感覚強化:LV2
・精神強化:LV2
・知力強化:LV2
・現実世界脳内再現(取得消費経験:20,000)
・気配察知(感覚が500を超えたら勝手に取得してた)
『気配察知』は文字通り、気配を察知することができるようになる特殊能力だ。
実際には気配なんて曖昧なものではなく、はっきりと個体の識別まで可能なんだから、どちらかというとレーダーといったほうがいいかもしれない。
どうりでじいさんに不意打ちを食らわそうとするとあっけなく反撃に遭うはずだ。全方位検知可能だから死角というものが存在しない。
なにせ自分を中心に円形の領域があり、その範囲内にいるものの位置は確実に特定できるからだ。もちろん真上の空、真下の地下すら例外ではない。
で、次が問題の『現実世界脳内再現』だ。
これを取得するのは大いに悩んだ。なにせ20,000も経験値を消費するわけだ。おまけに能力の詳細については実際に身につけて検証するまでわからないときた。
それでもなお取得したのは、現実の壁にぶち当たったからにほかならない。
9歳という年齢、秘匿すべき身体能力、実践でなければ身につかない技術、限られた時間、自身の行動限界。
現実という名の制約を課せられたおれには、『現実世界脳内再現』の文字が非常に魅力的に見えた。
シミュレーター的なものを期待して、半ば賭のつもりでこの特殊技能を取得したおれは、見事に賭に勝った。
脳内シミュレーターとでも言えばいいか、思考内で仮想の現実空間を作り出し自身を投影した存在を動かすことにより、現実と等しい経験を得ることができるようになったのだ。
もちろん制約は存在する。だが、それを補ってなおあまりある恩恵をおれに与えてくれた。
その成果が、さきほどちらっと触れた医療技術だ。
脳内空間で自身の投影とは別に人物を再現する。この人物が問題で、実際に見て聞いて感じたことのある人物のみしか再現できない。これがこの特殊能力の制限の一つだ。
そのため、おれはしばらく病院でけが人、病人をボランティアの名目で世話してきた。
自分の目的のために、表現のいい言葉で表を言い繕っておきながら他人を利用する。
仮想世界の中とはいいながら、彼らにおれが何をしたか。経験をつむためという目的のために、医術書だけを頼りに行われる治療というなの訓練。我ながら唾棄すべき行為だ。
いつしか目的と手段が入れ替わってしまうのではないか、自分が壊れてしまうのではないか。
不安は尽きない、恐怖は消えない、震えは止まらない。
眠れない日が増えてきた。
うなされる夜が増えてきた。
悪夢に侵されることが増えてきた。
だが、止まるつもりはない。
おれが『因果律への反逆』だから?
まりもに降りかかる理不尽が許せないから?
それもある、それこそが原動力なのだから。それは否定すべきではない。
だがそれ以上に渇望がある。
まりもの笑顔を見続けたい。
まりもの笑顔が消えた世界を見たくない。
まりもを失いたくない。
どうしようもないまでに身勝手な理由。
ああ、そうか、おれはどうしようもないまでの利己主義者なのだな。