人の命は流れに左右される。
運命はいつだって不条理だ。

そんな当たり前のことはだれかれに言われずとも今までの人生で理解している。


俺が突然幼児になっていたのも、年を重ねる毎に顔がイケメンに近づくのも、まだ幼いのに金の髪がフサフサなのも、伯爵夫妻……両親のノロケが半端じゃないのも、五歳になったら魔法！！なんてものを教わるなんて事も、皆皆不条理な運命の下に襲い来る事実。


だが逆に考えよう、ポジティブシンギングだ、＋思考だ！


道場でやらされた爺の酷しい修行が無いのだと思おう。
爺から離れたのだと思おう。
前世………前世？では居なかった両親（しかもすばらしい人間だ）が出来たのだと思おう。
異世界転生物語だと思おう………うん、それが良い。



とりあえずは自分が転生した事をすなおに認め、自由に歩きまわれる歳まで何も考えずに過ごそうと思い、それを実行した。

それですぐに何年かが経ち、五歳になったわけだが……………











それは俺が起きてすぐのこと。
広い自室（まだ五歳なんだがなぁ）にてメイドに服を着替えさせてもらっていた俺の元に、普段の貴族とは思えないラフな格好から派手な格好にモデルチェンジしたリシュリュー伯爵こと父上が入ってきた。
普段どおりの服でさえ威厳が見える若作りの父が装飾つきの服を纏えば、それはそれはとてつもない英雄であるように思える。

金銀……などといった煌びやかなものでなく、鉄やら銅やらただの金属のモチーフであるにも関わらず、だ。


この人の仕事は外交官らしく、平時はともかく降臨祭やら年始等々の行事が行われる時期には決まってこのような格好になる。
母上はそんな父上を見るのが大好きらしく、常に

「ミシェルのようになりなさい」

と俺にささやきかけていた。
息子に惚気んなとは思うが、俺は二人のことが大好きだ。
これは享受しよう。





さてそんな父上だが、部屋に入ってきたと同時に俺の元まで歩み寄り、天高く俺の体を抱き上げてニコリと微笑んだ。
２メートル近い大男である父に抱えられて一瞬ビビリはしたものの、独特の安心感からか気にならず、じっとこちらを覗く対の瞳を真っ向から見返してやった。

父上はそんな俺に笑みを深めて口を開いた。


「レオナルト」

「はい？」

「お前ももう五歳だ。魔法を習わねばならないし、それには一緒に学ぶ仲間が必要だろう」

「？」

まあそうだろうが、それと今の状況がどうかち合うのだろうか。


「私の友にはお前とほぼ代わらぬ年頃の子を持つものが多々いるのだ。今日はその友の子の一人が誕生日でな、実はその祝いに誘われているのだよ…………だからというわけではないのだが、今からお前を連れてそちらへ出かけようと思う」

「！？」

おお！！まさかのお出かけですか父上！！！
この身になって始めてのお出かけだよ。


「ふふ、その様子だと行きたいみたいだな」

「はい！是非！！」

五歳児らしからぬ言い方だが、父も、脇に控えていた着替えを手伝ってくれたメイドも、微笑ましく俺を見ていたから良しとしよう。


「じゃあ早速行くか。馬車はともかく空を飛べば早いからな」

「早い？」

魔法はそんなに早いものなのか。
てっきり浮くだけなのかと。


「私なら時速二百リークくらいかな。これでも古今東西老若男女、ありとあらゆるモノより早い自信があるくらいだ………風竜にも勝ったことがある」

そう言ってドヤ顔を決めた父上は、俺を床に降ろしてしゃがみ、目線を合わせて肩を竦めた。
やけに様になる仕草はまさしくイケメン。


大好きだから言わせてもらうが、リア充滅びろ！！！