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IS〜インフィニット・ストラトス〜 破壊者の魔剣 第一話 幼馴染
作者:鈴ノ音   2012/07/13(金) 16:43公開   ID:33E/nA6Ip9Y
 京はIS学園の前で鞄を持ってタバコを吸っていた。いくら十代の体に戻ったからと言ってそうそう元々の癖が抜けるわけではない……と、言っておきたい。
 しかたがないだろ、大人の都合というやつだ。喫煙者のみんなならわかってくれるはず。

「あっ、おい! お前がもう一人のISを操縦できるって言う……伊神京《いがみ》だっけ?」

「ああ、正解。そう言うお前は織斑一夏か……」

 肺に入れていた煙を口から空に向けて吐き出した。もう、何年ぶりか似合う一夏はだいぶ大人になっていた。ああ、コレならもてるのも納得だわ、さすが女性ハンターである千冬の弟。一夏、恐ろしい子。

「おう。それより、未成年なのにタバコはだめだろ」

「いろいろ訳ありでな……こんなものでも吸ってないとやってられない状況なんだよ」

 主に束のせいでな。苗字を変えることになったり、その時にいっそ篠ノ乃にしようとか言い出したり、いま思い出しただけでも偽装することが多すぎて結局自分にまで仕事が回ってきたのだ。
 そして、何せ世間一般では二番目にISを使える男子だと物見遊山で沢山の報道陣に囲まれそうになったり、近くの高校生に呼び止められたり、テレビで放送されたり。見てる分には大丈夫だが、あれは下手したらトラウマになるな。うん、絶対そうに違いない。
 
 束め、覚えておけよ……。

「それより、よろしくな俺のことは一夏でいいよ」

「ああ、俺のことは京で頼む」

 そう言いながら、手持ちのポケット灰皿にタバコの吸殻を入れると、一夏に向けて右手を差し出す。
 マナー大事。特に喫煙者。

「よろしくな、一夏」

「こっちこそ、よろしく京」

 そして、学園前で位置かと熱い男の友情が芽生えた。……気がした。

 傍から見れば完全に不良と優等生なのだが、正直年齢二十四の人間に不良だの優等生だのの定義はすでにどうでもいいものだった。

「じゃあ、そろそろ行くか」

「ああ、そうだな。行くとしよう」

「なんか、京って不良みたいだな」

「そんなことねえよ。まじめな学生だって」

 そんなたわいもない会話をしつつ教室の指定された席に付く。
 前にも後ろにも右にも左にも女子ばっかりだ。正直コレでひとりだったら、生きた心地がしないだろうな。

「あーあー、一夏固まってる……」

 教室をぐるっと見回して、教卓の前の席にいる一夏を見る。最悪の席だな、そして周りの女子が好奇心の目で一夏を見ている。ちなみに京は窓際の前から三番目という適度なポジションに座っていて、程よくクラス全体が見渡せる。

 前の前の席には、束の妹である篠ノ乃箒が座っていた。おー、箒ちゃん、見ない間にずいぶん大きくなって、お兄さん感激。涙が出てきた。

「ねえねえ、伊神君。伊神君って専用機持ちなの?」

 突然後ろから声をかけられた。ふっと、振り返るとマジメそうな女の子がいた。確か名前は鷹月静寐たかつきしずねさんだ。

「うん、一応ね。もう、ロールアウトが終わって、今も手元にあるよ。沢山問題抱えてるけどね」

 そういって灰銀色に輝くネックレスを鷹月さんに向かってみせる。いがいにも、このレーヴァテイン、アクセサリーとしても何気に有能である。

「わあ、綺麗ー」

「あ、やっぱりそう思う?」

「思う思う、これってやっぱり第三世代の試作型かなにか?」

「うーん、一応試作型だけど……」

 口が裂けても第六世代などという単語は出せない。いや、考えても見てくれ、世界が第三世代の開発に着手し始めてるって言うのに、この手の中に第六世代がありますなんて言ったら各国の威信を丸潰しすることになりかねん。

「あ、やべえ、先生来た。また後でね、鷹月さん」

 教室に入ってきたのは緑色のショートヘアの女性だ。ナイスタイミングと内心でガッツポーズしつつも、顔だけは申し訳なさそうに取り繕って鷹月さんに謝っておく。

 なにかいい案を考えておかないとな。

 そして、先生のほうなのだが。めがねがなんか明らかに私ドンくさいですよって言ってるように見えて仕方がないんだが、大丈夫なのかIS学園……こんなんで。

「伊神君、ごめんね。一番最初に自己紹介お願いね」

 なぜか一番最初に自己紹介することになった。あ行の人間少なくね?おかしいな、こんなはずじゃなかったのに、トップバッターとは……。

 そして、もう一つこの先生自分の自己紹介してなくね?あれ、この人やっぱり、ドジっ子だった。

「わかりました」

「伊神京です、よろしくお願いします。そう言えば先生の自己紹介を聞いてませんでしたね……ねえ、山田真耶先生?」

 優しい口調で先生を見てみる。途端に先生はおどおどし始めた。あー、本当に不安になってきた。

 何故先生の名前を知ってるかといえば、学校の名簿に単純に載っていたからだ。ただそれだけの単純な理由。

「ごめんなさい、伊神君、私ったら本当に……自分の自己紹介もしてないのに……なのに、なんで私の名前を伊神君が知ってるんですかっ!」

 少しからかっただけなのに、本気で謝ってくる真耶先生。この人驚いたり、謝ったり、表情の切り替えが器用だな。と、本気でくだらないことが頭の中に浮かんでくる。

 と、馬鹿みたいなことを本気で考えていたら、頭に衝撃が走った。鋭い一撃、この感触。あー、なんと言うか懐かしい。京の名誉のためにいっておくが、彼がMなわけではない。ただ単純に、束と馬鹿騒ぎをしていたらだいたい竹刀、最悪木刀でこのようにたたいてきた幼馴染の少女がいた。

「教師をからかって遊ぶんじゃない」

「千冬……」

「伊神と言ったな。生徒が教師を呼び捨てにするとは、どういう了見だ?」

「申し訳ありません織斑先生。できれば少しで良いので、今すぐお時間よろしいですか?」

 まだ伊神京イコール幼馴染の京だということに気が付いてないであろう千冬に対して京は少し自分の姿を正してから、簡潔にそれだけを言う。

 もちろん、『今すぐ』を思い切り強調して。

「それは今すぐか?」

「ええ、今すぐです」

「クラスの人間に聞かれたらまずいことなのか?」

 その言葉に、クラスの全員の視線が京に釘付けになる。告白するとでも思われているのだろうか?

 生憎だが、そんなドキドキ、ワクワクなイベントはもう終わっている。正直心臓が持たなかった。あの時のことを思い出すと今でも顔が真っ赤になる自信がある。

「まずいですね。機密レベルAクラスです」

 その言葉に、千冬の表情が厳しくなる。普通、単なる学生なら機密レベルAなんて言葉は使わない。機密レベルAとは厳戒態勢を取るレベルの機密を指す。と、言う事はいまこの場で開示できる情報のはずがない。

「わかった、場所を移そう」

「すみません、ありがとうございます」

 そう言いながら、先頭を歩く千冬の後ろを付いて歩く。まさにその姿は威風堂々と言うにふさわしい。

 昔から堂々としてるとは思ってたけど、やっぱこの年までそうしてると様になるな。

「ここだ、入れ伊神……」

「失礼します」

 案内されて入室した先は生徒指導室だった。防音設備、施錠設備、防犯設備に適したこの部屋ならまず、大丈夫だろうという判断からか。

「で、機密レベルAとは何だ? 告白しに来たわけでもなかろう」

 生徒指導室の一番奥にある革張りの椅子にどかりと音を立てるように座って、千冬は足を組む。なんというか、懐かしいな。昔からどこも変わっていない。

「ああ、亡国企業に一夏が狙われている。一様、千冬の耳にも入れておくようにって束から頼まれてな」

 京の言葉に先ほどまで険しかった千冬の顔が更に険しくなる。眉間に皺がより、目も完全に釣り上がってる。まさに、鬼のようだという言葉がぴったりだ。

「そうか。で、おまえは妙に私のことを親しげに呼ぶのだな。私の記憶が間違いなければ今日、私とおまえは初対面のはずだが?」

 怒りの矛先が、京へと向けられる。昔から慣れているだけで、平気なわけであって、面倒ごとはこれ以上ごめんだ。

「いや、俺とおまえの出会いはもうずいぶん前だよ……」

 言いながら、自分でも昔のことをひとつずつ思い出していく。一番最初の千冬にあったときのことを。

「覚えてない? 束に引きずられて来た俺と束に待たされてた千冬が会ったのが束の道場だった……俺の名前、忘れたわけではないだろ?」

 少し芝居がかった口調で千冬に言ってみるが、当の千冬は一度首を傾げてからもう一度眉間にしわを寄せて、怖い目つきで睨む。

「伊神京だろ? 知らんぞそんな名前のやつ」

「伊神じゃないよ、新崎京って言えばわかるでしょ? もしくは昔みたいにキョーちゃんとでも呼んでみるか?」

 そういいながら、切り札である昔の写真をIS学園の制服から取り出して、千冬が見えるように、目の前においてやる。

 そこに写っていたのはまだ小学生の京を真ん中に右側に小さくなっている束、その横に堂々と胸を張っている千冬だった。束はフリルの付いたかわいらしいドレス。千冬と京は胴着を着て竹刀をカメラのほうに向けて突き出している写真だ。

「うそ、だ……それになんなんだ、その姿はっ! 面影があるとは思ってはいたが……」

 普段冷静な千冬が取り乱すように、すごい眼力で睨んできた。さすが世界最強、その殺気は異常だ。背筋に冷たい汗が走る。

「束の作った肉体年齢を15歳まで逆行させる薬……らしい。そして、もう一つの薬で元に戻ったら抗体ができて15歳の肉体には戻れなくなるとさ。なんなら束に聞いてみるか?」 

 そういって差し出した携帯電話の電話帳画面には携帯番号ではなく文字の羅列がただ並んでいるだけだった。そして、これを見ただけで千冬は束の秘匿回線だと一瞬で理解できるだろう。

「また、あいつか……」

 千冬は呆れたようjに緊張を解いて、背もたれの椅子に腰をかけなおした。そして、思い出したようにがばっと音が出てきそうな勢いで飛び出すと、再び眉間にしわを寄せて近づいてきた。

 昔から意外に見ていると愉快だよな。千冬って……。

「それより小春はどうしたっ! 心配だったから京に預けたのにっ」

「大丈夫、束に預けてあるから」

「不安だ……」

 言いながら、千冬は自分の額に手のひらを当てる。これは昔から千冬の癖で、これがでるとだいたい気持ちも落胆している。

「大丈夫だって、束も小春を大事にしてたし、何より小春も束のことを慕ってる。もんだいないだろ」

「はあ……それもそうか。だが、まさかこんなところで会うことになるとは思っても見なかったが」

「本当にな」

 ため息をつき、どこか納得したように千冬は立ち上がった。その表情はどことなくうれしそうなものだった。

 その笑顔に京も千冬に向けて笑顔で返す。

「それより、千冬これ小春の八歳の誕生パーティーのときの写真。携帯にも送っとくぞ」

 写真に写ってるのは24歳の京と千冬。その間に小学生の女子を抱える束。その四人の前にはワンホールのケーキが置いてあった。ケーキには『Happy Birth Day Koharu』と書かれている。

「ああ、ありがとう京。それに久々だな、二人きりになるのは」

「そうだな……」

「それが、京のISか?」

「ああ、これがカタログスペック」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第六世代相当IS

『レーヴァテイン』

製作者 篠ノ乃束
OS製作者 新崎京

『詳細』

 量子化せず全装備を体中にマウントしているため、量子化分の処理能力を機体の制御、武装の制御に使用しており、更に破損した二つのコアの量子演算ユニットと同時に本体のコアが演算をするのでカタログスペックでは通常のISの三乗倍という驚異的な数字をはじき出している。
 ただし、カタログスペックであって実際はコア同士のリンクが上手くいかず処理能力が二倍程度にしか伸びていない。レーヴァテインは史上最強のコンセプトで作られているため武装、装甲、機動力においては実際本来のスペックならばどの国の機体よりも上であり他の追随を許さないのだが、高性能すぎて現在の処理能力では追いつかず、実際には『打鉄』にも劣る。

 更に、通常のISとは違い三連高速核融合炉を搭載しているため、シールドエネルギーがほぼ無尽蔵に使えるが現在は出力が安定域に達しっておらず、低出力域を超えないため通常で1000あるが使用武器の全てにエネルギーを供給しなくてはいけないため何もしなくても秒間0.5ずつ削られていく。後述のエクスカリバー展開時は秒間-1.5。合計秒間-2消費することになり十分も戦闘ができないころが難点の一つである。

 機動力重視で装甲を極限まで削っているため、一発でも絶対防御にまで届く装甲をしているが、アンチビーム、実弾無効化の装甲が採用されているため、近接戦闘以外の武装はほぼ無効化が可能。もちろん、過剰な威力の武装ならば絶対防御にまで攻撃を与えることも可能。

 フルスキンタイプ。
 量子化ができないので、高速切り替え《ラピッド・スイッチ》が使えない。

『装備』
エクスカリバー
・常時、零落白夜を展開可能なブレード。零落白夜のほかにレーザーを展開することが可能。マウント箇所は左腰。

二連レールガン×2
・高威力の実弾兵装、両腰に四つ折りでマウントされているスラスター付のレールガンで移動時にも使用される。

大型プラズマ砲×2
・両肩から背部下に伸びる大型のプラズマ兵装。威力は極めて強力で現在装備されている射撃兵装の中で加粒子砲についで高い。

大型ビームライフル×2
・バスターモードを搭載した高出力高威力のビーム兵装。二つを前後で接続することでスナイパーモードとして使用可能でその全長はスターライトMkVの二倍を超える。十数キロ先を狙撃してISを破壊できる程度の出力を誇っているが、一発でシールドエネルギーを400消費する。

両肩部搭載型陽電子砲×2
・肩の部分の装甲が上下に展開。内部に陽電子砲が内蔵されている。出力が高く反動がほとんどないため扱いやすいが燃費は相当悪い。

エアリアルウィング搭載兵装『リベリアル』×36
・片側三枚づつ計六枚搭載されているエアリアルウィングから射出される自立機動型兵装。ビーム、実弾、シールドが装備されており、状況に応じて使い分けが可能。

エアリアルウィング搭載レーザー兵器×24
・リベリアルを射出したエアリアルウィングにレーザーを装備した武装。出力は普通だが、前方全方位に攻撃を展開できるため、使い勝手がかなりよい。

大出力ビームブレード×2
・格闘戦で使用されるビームブレード。エクスカリバーには劣るがその分取り回しが便利ですぐに取出しが可能なため重宝される。二本付いているため二刀流も可能。

近接三連防御機構×2
・両腕に付属されている三連近接防御機構。実弾兵装でミサイルなどを打ち落とすために使用される。

両肩付属レーザーブーメラン×2
・中距離戦用のために装備された特殊兵器。通常のブーメランとは違い、投擲した後も持ち主の手元に戻ってくるようになっている。

アンカーワイヤー×8
・両肩内側、両手首下、両腰レールガン内側、両足首、にそれぞれ搭載されている相手を拘束および引き離す際に使用されるブースター付きのアンカー。主にエクスカリバーと併用して使用される。

リボルディングブレーカー
・とっつき。左腕に装備されている大型の火薬使用武器。リボルバー式パイルバンカー。男の憧れ装備。以上。

『ワンオフアビリティー』
他の武器全てを封印し、シールドエネルギーを大幅に消費する変わりに魔剣『レーヴァテイン』を召還する事ができる。

破壊者の魔剣・レーヴァテイン
全IS中最強最高の攻撃力を誇る剣。シールドはおろか絶対防御すら切り裂いてしまうほどの攻撃力を誇る。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんだ、この馬鹿げたスペックの高さは……」

「俺も止めたんだがな、亡国企業を倒すためだ、仕方がないさ」

「それに、未完成部分が多すぎるぞ、主に本体部分だが」

 確かに急ピッチで作業を進めてたとはいえ、コアとジェネレーターが未完成過ぎるのは否めないが、むしろ今考えるとそのくらいじゃないと第三世代の性能だということを信じてもらえないだろう。だから、これなら試作機でもみんなには通りそうだ。

「完成する前に一夏の入学が決まったからな、せめて武器だけは仕上げてきただけだ……」

「はあ、そうか。全授業が終わったら、私の部屋に来い。教室に戻るぞ伊神」

 プライベートモードはここまでといわんばかりに生徒指導室を出て歩いていく千冬の後を追う。

「さて、これからが忙しくなりそうだな」

 そう言いながら京は学園の外を見た。

 遠くで雷が鳴っている。まるで、戦いの始まりを告げるように。


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■作者からのメッセージ
今回はレーヴァテインの詳細スペックを入れてみました。
正直、ISのスペックがおかしすぎる気がしないこともないですが、そこはご愛嬌で。白式以上の欠陥機の予感しかしませんね。
次回のアップは遅くても4日後になると思います。
よかったら、レビューのほうお願いします。

次回はいよいよ、イギリスからやってきたあの方との戦闘だと思います。
テキストサイズ:13k

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