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Diesの登場人物たちが異世界から来るそうですよ? 第一話
作者:satieru   2012/07/22(日) 10:34公開   ID:eFlDFqeitOQ
これはDiesの登場人物たち(神咒神威神楽after)が角川スニーカー文庫から刊行されている「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」の舞台である箱庭に召喚されちゃったら、という作者の妄想を具現化してしまったナニカです。
とりあえず設定はDiesは神咒神威神楽after。ただし独自解釈含む、問題児シリーズは4巻までの設定(原作が進んで矛盾とか出てきてもそこはスルーでお願いします)を用いさせてもらいます。
主人公は練炭。
誰が何と言おうとも練炭。
ぶっちゃけ無双予定。
黄金と水銀も出るよ!

・・・・・・え?ヒロイン?
1人しかいねぇよ。






「・・・・・・どういうことだ?」
ある青年が思わず、と言ったふうにそう呟いた。
それは女顔の青年だった。
さらに言うなら、その女顔の青年は『落下していた』。
もう一度言う。
青年は落下していた。
それも現在進行形で、頭を下にした垂直落下でだ。
更に付け加えるならここ数十秒落下しているのにまだしばらくは地面に到着しそうにない相当の高高度からの落下である。
しかし青年は全く慌てた様子もなく、いや、正確に言うならば慌てる暇などないほどに己の置かれている状況に理解が追い付かないのである。
不意に青年が自分の身体に視線を向ける。
「・・・・・・これは」
眉間に皺を寄せますます困惑した表情を浮かべる。
青年の見た目はいったって普通の人のそれだった。
黒髪黒目で、肌は健康的な肌色。
装いこそその外見にはそぐわない白い奇妙な鎧のようなものをつけてはいるが、典型的な日本人のそれに間違いない。
だが、だからこそ、青年は自分の目が信じられない。
髪は鮮血のごとく赤かった。
肌は憎悪で黒く濁っていた。
瞳は殺意に濡れ、容貌は悪鬼のそれだった。
「・・・・・・どういうことだ?」
青年が再びそう呟いたときだった。

「おい、蓮!そろそろどうにかしねぇと、危ないぜ?」

「っ!?」
不意に聞こえたその声に青年――藤井蓮はまたしても、いや、先程とは比べられないほどの驚愕に見舞われた。
「お前・・・・・・司狼か!?」
「おうおう、こんなイケメンがそう何人もいるかよ。――で、お前、そろそろどうにかしねぇと本当にやべぇぞ?」
赤いコートをはためかせ蓮とは逆に足を下にして隣を落下するいかにも一癖ありそうな悪童――遊佐司狼は言葉とは裏腹にニヤニヤと口元を歪めている。
「やばいって何がだよ!そんなことよりも俺達は「落ち着け。言いたいことはわかってる。わかってるから周り見ろ」
「・・・・・・なっ!?」
「マジで今まで気付いてなかったのかよ。鈍い頭のは知ってたがそこまで鈍かったとは思わなかったぜ」
つい先程までは遥か地平まで見渡せるほどの高高度にいたはずが、今では後もう数秒で激突する寸前にまで地表が迫っていた。
蓮は気付いていないが、落下時間はすでに5分を数えようとしていた。
「うぉおぉぉおおおおぉぉおぉおおおお!?」
今更ながらに慌てるが、時既に遅し。
蓮と司狼は全くの減速なしに地面に叩き付け――

「なーにやってんのよ、あなたたち」

られるその瞬間、いや、ついた瞬間、蓮と司狼は慣性を全く無視した停止に絡め捕られていた。
「アンナ!?」
「はーい、みんなのアイドル、アンナちゃんでーす!元気そうね、ロートス♪」
そういって天真爛漫なあどけない笑顔を浮かべるのは紅色の髪にグリーンの瞳を携えたまるで人形のように可愛らしい少女だった。
しかし何故かそのような少女にはおおよそ似つかわしくない軍服を着用しており、チグハグ感が拭えない。
とはいえ、所々を改造しているためコスプレのように見えなくもない。
「アンナ・マリーア・シュヴェーゲリン、なのか・・・・・・?」
「だからそうだって言ってるじゃない。どうしちゃったの、ロートス?落下の衝撃はちゃんと影で止めたから無いと思うんだけど・・・・・・」
アンナは不思議そうな表情を浮かべるが、本当に不思議に思ってるのは蓮の方だった。
「・・・・・・俺達は、あそこで・・・・・・穢土で死んだはずだ。なのになんで、俺達はこんなところにいるんだ!?」
蓮の最後の記憶は波旬の畸形嚢腫――坂上覇吐といったか――の一撃を受け、これなら信頼して後を託せると自分は消滅したはずだ。
「知らないわよ。いるんだからいるんじゃない?まぁたしかにかなりおかしな状況なのは認めるけどね」
少し真面目な表情をして自分の考えを口にする。
「私たちがここにいる理由はわからない。原因も不明。見当もつかないわ。今わかるのは――」

「――ここが俺達の知ってる世界じゃないってことだろ」

タバコを咥えた司狼が相変わらずのにやけた笑みを浮かべながらそう言った。
「落ちるときに見えた感じ地球じゃねぇだろうな。今改めて周りの植物を観察してみたがどれもこれも知らねぇ品種ばっかりだ」
そう言われて蓮も辺りを見渡す。
自分たちが落下したのは大きな湖の畔のようだ。
日の光を受けた木々の葉が幻想的な装いを見せているが、その葉は捩れていたり奇抜な色をしていたり、中には自らの意思を持ち動いてるようにしか見えないものまである。
「・・・・・・たしかに、こんな植物は見たことも聞いたこともないな」
「もう1つ」
と、司狼が今度は軽薄な笑いの中にも真剣味を帯びた目で付け加えた。
「俺達が、俺達に戻っている」
「は?」
「といっても、お前はあんま実感ないだろうがな。とはいえ、そっちは心当たりあんだろう?」
「まぁね。私の気のせいかもしれなかったし考えを纏めてる最中だったから黙ってたけど」
「どういうことだ?」
「つまり、私たちはあいつらのいうところの天魔奴奈比売じゃなくて、『アンナ・マリーア・シュヴェーゲリン』の姿を取り戻してるってこと。これ、かなり有り得ないことよ?」
蓮は別として、その眷属となっていた彼らは波洵によって魂を半ば以上に砕かれ、しかし蓮の時間停止の渇望によって辛うじて形を保っていた。しかし
それは穢土での話しであり、残された領土たる穢土から一歩でも出れば忽ち身体を保てなくなっていただろう。
故に彼らは穢土から出ることが出来なかったし、それゆえの『防戦』だった。
なのに現在、司狼とアンナはまったく普通に存在出来ている。
もちろん蓮は何もしていない。
死者蘇生黄金錬成なんて生易しいレベルじゃない。魂の再生よ。それに『やり直してる』わけでもない。正直、これが全部夢だって言われたほうがまだ納得出来るわ」
アンナは戦慄したように顔を強張らせた。
「まぁ考えたって仕方ねぇ。見た感じ他に知り合いはいないみたいだし、移動しようぜ」
「移動するったってどこにだよ?地理だってわからないのに無闇に動くのはマズいだろう」
「心配すんなって。脳筋のお前と違って知能派の俺は落っこちてる最中にそこら辺は見渡して大体はわかってる。一応ここから数km行ったとこに街っぽいもんが見えた。遠目で詳しくは見えなかったが廃墟ってことはねぇだろうよ」
「さーんせい!私としてもこの不可思議な状況を放置はする気ないの。そういう意味でも現地人から色々聞けるのはかなり有用よ。ね、ロートス、行きましょうよ!」
「・・・・・・お前の場合、単純に自分が行きたいだけなんじゃないのか?」
「ぶぅー!そんなことないわよぉ。ただ、ちょーっと気的好奇心が刺激されてるだけよぉ。さっき言った事も嘘じゃないわ。何にせよ、ここで額を付き合わせててもこれ以上の進展はないと思うわ」
たしかにアンナの言うことにも一理ある。
これ以上ここで悩んでいても進展はあるまい。
「・・・・・・わかった。たしかに、ここでこれ以上話してても埒が明かないのはたしかだ。司狼、案内頼む」
渋々、といったふうではあったが蓮は司狼とアンナの意見を聞き入れ、司狼が見たという街に向かうことに決めた。
「りょーかい。ほら、冒険の始まりだ」


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