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Diesの登場人物たちが異世界から来るそうですよ? 第二話
作者:satieru   2012/07/22(日) 10:38公開   ID:eFlDFqeitOQ

蓮たちがこの世界に来て1週間が経った。
3人が(と言っても大部分はアンナが)手分けして集めた情報によると、
「ここは『箱庭』っつぅ暇人のカミサマが作ったオモチャ箱で、俺らはこの世界にいる誰かに喚ばれたみてぇだ。ここで生活するにはコミュニティーって組織に所属して、ギフトゲームってのに参加するのが手っ取り早い、かつ一般的で、まぁ当たり前だが盗みやらはご法度。と、大体こんな感じか」
司狼がそう纏めた。
「何日かはここでの生活が保障されてるみたいだがそろそろ何とかしねぇとヤベぇわな。どうするよ、蓮」
「俺に聞くな。こういうのはお前の方が向いてるだろうが、知能派」
「うっわノープランかよこの脳筋。そりゃねぇぜ。お前からもなんか言ってやれ」
今度はアンナに話を振った。
「まぁロートスはこういうの考えるタイプじゃなし、いいんじゃない?」
「こいつ甘やかしてもいいことないぞ」
「辛くしてもいいことはないでしょ。・・・・・・とにかく、まずは私たちのここでの生活基盤を整える必要があるわ。ギフトゲームに参加するのにも何するにしたってコミュニティーってのに入ってなきゃ難しいんでしょ?」
「みたいだな。どっかに混ぜてもらっか?」
「ばっか。あんたみたいなチンピラはともかく、私みたいな可憐で繊細な乙女や、ロートスみたいな高次の存在を扱いきれるやつらがそういるわけないでしょう」
「可憐で・・・・・・・・・・・・乙女、ねぇ?」
「あぁん?」
「おぉ、年寄りは怒らすと怖ぇな、ったく。――ならどうするよ?」
司狼の口調は問いかけるものだったが、ニヤニヤとした表情を見る限りアンナの考えていることに最初から感ずいている様子だ。

「勿論、私たちで、私たちのコミュニティーを作る。ここを詳しく調べる意味でも私たちを喚んだやつを探すのにもそっちの方が都合がいいでしょうし」
と、ここで今まで黙って聞いていた蓮が徐に口を開いた。
「俺達のコミュニティーを作るっていうが、そんな簡単なことなのか?手続きってやつは基本的に時間がかかるものだろう。間に合うのか?」
言外に時間がかかるのならどこかのコミュニティーの傘下に入ることもよしとする発言にアンナはやれやれと言った風に続ける。
「知らないわよ。だから今からそういうのを知ってそうなやつのとこに行くの」
「知ってそうなやつ?」
蓮は怪訝そうに聞く。
アンナはそれに簡潔に答えた。

階層支配者フロアマスターよ」




「お帰りください」
そうして蓮たちは近くの階層支配者フロアマスターである白夜叉という人物がらしいサウザンドアイズというコミュニティーを訪れていた。
が、しかし、店の前を箒で掃いていた割烹着の女性店員によって店に入ることすら拒まれていたが。
「ちょーっとちょっと!何なのよその態度!私たちはお客様よ!」
「では本日はどのようなご入用で?ご予算は?コミュニティーの名前は?もしくは御旗を確認させて頂いても?」
にべもない言葉にさすがのアンナも二の句がつげない。
「俺達は最近この箱庭に来たばかりなんだ。だからここの詳しいことを白夜叉ってやつに聞きたい。ここの責任者なんだろう?」
蓮はアンナを宥めるように前に出て割烹着の店員と向き合う。
「そんなことのためにワザワザ階層支配者フロアマスターの時間を取らせるわけにはいきません。ただでさえ今箱庭はごたついているのです。新人の研修にかまける余裕はないんです。ここでの詳しいことはどこか適当なコミュニティーに入ってそこの方にでも聞いてください。それでは」
言うだけ言って割烹着の店員は蓮たちに背を向けて店の中に入ろうとする。
「おーい、ねぇちゃん。さすがにあんまりだと思うぜ?別に俺達だって来たくて来たわけじゃねぇ。強引に来させられたんだ。ここの責任者ってからはちょっとは力になってくれてもいいんじゃねぇの?」
司狼がタバコを吹かしながらそう言った。
店員は心底面倒そうに顔を歪めながらも再度振り返える。
「ですから、今はそれどころではないんです。個人的に貴方方の境遇には多少同情もしますが、それはそれこれはこれ。階層支配者フロアマスターが出張るほどのことではありません」
「どうしても?」
「どうしてもです」
司狼と店員が無言で睨み合う、というわけではなく、苛立ちを隠そうともしない店員とは逆に、司狼は相変わらず飄々とした態度を崩さない。
「ふぅ・・・・・・なら、仕方ねぇな」
司狼が面倒くさそうに頭をかく。
店員はそれを諦めと取り今度こそ背を向け店に入ろうとし、

「しゃーねぇ。ちょっと荒っぽいがこれでいくか」

「っ!?」
次の瞬間には突如どこからか出現した鎖が完全に身体を縛っていた。
「ちょ、あなた!?」
「はーい、ちょっとゴメンよー」
「何をすっきゃ!?」
「お、可愛い声じゃん。普段からそっちにしとけよ。モテるから」
司狼は鎖で巻いた店員を米俵よろしく肩に担ぎ、蓮とアンナに向き直る。
「入場券は手に入れた。ほら行くぞ」
「はーい!」
「はぁ・・・・・・。人攫いだよな、こいつは」
昔を思い出したのか何とも言えない表情で蓮は店に入っていった。

それからどれほど経っただろうか。
「ここか」
しばらくして、蓮たちはとある部屋の前に来ていた。
ちなみに担がれた店員は初めの頃こそ騒いでいたが、今では大人しく、というより、警戒の色を強くしていた。
「貴方達・・・・・・何者ですか?」
「世界一のイケメンだよ」
「ふざけないでください!この建物の中には結界が張り巡らされていて正しい案内をしないと目的地にはつけません。それを貴方は迷うことなくこの一番奥の部屋までたどり着いた。有り得ません」
店員がそう言うが対する司狼はあくまでマイペースだ。
「べっつにー。ただ何となくこっちな気がしただけだ。まぁ根拠のない確信はあったがね」
「意味が――」

「そう騒ぐでない。最近は珍妙な客人が多いな。とりあえず入るがよい」
と言う声が聞こえた瞬間、後ろでニヤニヤしていたアンナは表情を引き締めた。
司狼も表面上は相変わらずだが、纏う気配が変わった。
「まぁせっかく招待してくれたんだ。押し入りも甚だしいが、そこは向こうの器のデカさに期待しよう。――行くぞ」
蓮が2人を庇うように部屋の戸を開けた。


――瞬間、蓮たち3人を驚愕が襲った。
「「「っ!?」」」
「ようこそ、客人。私がここの階層支配者フロアマスターにして四桁の門三三四五外門に本拠を構えるコミュニティー『サウザンドアイズ』の幹部、白夜叉だ。何分今は時間が惜しいので前置きは無しでいこう。おんしらの用件は何だ?」
そこにいたのは真っ白い髪に和装をした小さな少女だった。
が、その少女がいたのは『水平に太陽が廻る白い雪原と凍る湖畔の広がる世界』である。
豪傑の名に恥じぬ3人であるが、これを見て驚かぬほど感性が擦り切れてはいない。
「へぇ。中々面白いもん見せてくれんじゃねぇか」
「覇道型の創造位階・・・・・・ってわけでもなさそうね。術理そのものが根本から違うわ。うっわこんなの初めて見た!」
「・・・・・・お前ら暢気だな」
「いやいや、そういうおんしも大概であろう。慌てた様子もないようじゃが」
蓮を見る白夜叉の目がツウ、と細くなる。
「このくらいのものは見慣れてる。今更騒ぐほどのことでもないさ」
「なるほどのぅ」
白夜叉はくっくっくと笑うが内心ではいぶかしんでいた。
「(あやつからは特別強い力を感じんが・・・・・・なんだ、気配が妙だ。それにあの赤い髪の女はおそらく関わない方がよいタイプじゃな。が、・・・・・・)」
「ん?なんだよ、こっち見て。俺に惚れたか?」
「おんし・・・・・・どうやって結界を抜けた?」
司狼の軽口には取り合わず白夜叉はそう尋ねた。
白夜叉は司狼こそこの場で一番警戒しなくてはならない相手だと判断したからだ。
「だから、何となくだ。勘だ勘」
「・・・・・・まぁよかろう。して、用はなんだ?言ったように私は暇ではないのだ。出来れば手短に頼みたいのじゃが」
「こっちもそのつもりだ」
そういって司狼は箱庭に来てからのことを簡潔に白夜叉に伝えた。
白夜叉は途中でいくつか質問をしながら司狼の話を最後まで聞くと、
「あいわかった。ではおんしらのコミュニティーの設立についての手続きはこちらでしておこう。御旗はそちらで用意して後日見せ来てくれればよい。おんしらの召喚者についても出来る範囲で探そう」
「へぇ。随分と気前がいいじゃねぇか。この店員とは大違いだ」
未だに肩に店員を担いだ司狼が不敵に笑いながらそういった。
「なに、階層支配者フロアマスターとしては少々やりすぎだが、うちの店員がしでかした失礼な対応の迷惑料とでも思ってくれ。――話は以上か?ならば帰りは――」

「あぁ、ついでにもう一個頼むわ」


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