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Diesの登場人物たちが異世界から来るそうですよ? 第四話
作者:satieru   2012/07/22(日) 10:47公開   ID:eFlDFqeitOQ

「で、マジなところ、お前あいつの言ったことホントに信じちゃってるわけ?」
サウザンドアイズの白夜叉の個室を辞した蓮たちはとりあえず間借りをしている部屋に帰ってきた。
司狼は辺りに『耳』がないことを確認した上で蓮にそう切り出した。
「あいつって、メルクリウスのことか?」
「それ以外いねぇだろ。もう一度聞くが、お前はマジで、本当に、おめでたくも、あいつの言葉を鵜呑みにしちゃってるわけ?」
「・・・・・・あぁ。信じてる。あいつは嘘だけは――」
「だーかーら!ロートス!?あなた正気!?もう狂ってないわよね!?」
「失礼だな、アンナ。俺はいたって正気だ」
「正気とは思えねぇことぬかすから言われてんだよ、タコ。あいつとたった1回共闘したからって無条件に信用するとか頭沸いてるか、まだ狂ってるとしか思えねぇよ」
司狼とアンナにメタメタに言われて蓮は言葉につまる。
「理由は3つ。1つ、俺たちをここに呼んだのがあいつだってこと。2つ、あれは嘘は話していなくても真実も話さない。で、3つ目。これが一番の理由だが、あいつが状況を丸投げしてるってことだ」
司狼の言葉を続けてアンナが補足する。
「どういう方法で私たちを呼んだ方法は知らないけど、あいつが私たちを何の理由もなく呼ぶと思う?何か私たちにやらせたいことがあるのよ。次に2つ目、多分あいつが言ったことは本当で、黄昏はアスモデウスとかいう魔王に捕まっててロートスの助けを待ってる」
「なら――」
「最後まで聞く。よく考えてみなさいよ。あの黄昏大好きストーカー男が、そんな危険な状況を悠長に眺めてると思う?」
「それはアスモデウスの居場所がわからないからじゃないのか?」
「私たちだってわからないわよ」
「だから俺たちに協力を求めてきたんだろう?」
「違う。あいつは『お前に任せる』って言ったんだ。これが3つ目の理由なんだが、あの仕切りたがりの演出家気取りが、それもマリィーちゃんが関わってることで傍観するなんてことは『絶対に』ありえない。」
司狼のダメ押しに蓮はまたしても言葉に詰まるが、何とか正論を返す。
「あいつはもう座を握ってるわけじゃない。世界中森羅万象を見渡せるわけでも決めれるわけでもない。やつ1人で出来ることなんて高が知れてるだろう?」
「いいや、やつ1人じゃない。言ってただろ、やつには黄金がついてる。俺たちよりどの程度早くここに来たのか知らないが、マリィちゃんレベルの存在をあいつが探して見付けられないってことはまず有り得ない。その魔王ってのがどれだけ強いのか知らないが黄金が、いざとなれば水銀自身も加わって勝てないようなやつは、そういるもんじゃない」
実際のギフトゲームは単純な力の強さだけでは測れないものがあるが、司狼のいうことは概ね的を射ているだろう。
さすがに蓮も渋々ではあるがそれを認めた。
「・・・・・・なら、あいつは俺たちに何をやらせたがってるっていうんだ」
「「知らねぇよ(知らないわよ)」」
「・・・・・・お前」
蓮は思わずため息を零すが司狼とアンナは悪びれた様子もない。
「いや、本当にわかんねぇよ。つかあいつの考えてることがわかるって、そいつはカミサマだって無理だろ」
「まぁここにいる『カミサマ』には1人くらいわかるやつがいるかもしれないけどねー」
と、冗談を交えつつ司狼は現状を纏めた。
「マリィちゃんを助ける。これはいい。だが水銀は何か重大なことを隠してる、ないし企ててる。戦力としては軍勢レギオンから好きなだけ引っ張ってこれるから問題はない。が、アスモデウスの居場所はわからないし、手がかりもない」
「・・・・・・こうして聞くと先行きが不安になるな。っと、戦力ってことで言っておかなければならないことがある」
「あ?」
「何?過剰戦力じゃないのかってこと?」
言われれみればその通りで彼等はこの修羅神仏が鎬を削る箱庭においても彼らの力は群を抜いていると言わざるを得ない。
ほぼ全員が戦闘技能に秀で文字通り一騎当千の戦士であり、奥の手たる『創造』は誰も彼も強力無比の必殺の技である。
中でも『創造』の更に上、『流出』に至り世界法則の書き換えさえ行うことが可能な刹那ハイドリヒ黄金メルクリウス水銀の3柱の力はそれこそ宇宙を消し去るほどの力を持っているのだ。
たしかにこれでは戦力過剰と言わざるを得ない。

「――いや、俺、多分形成も満足に出来ない」

「「・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
司狼とアンナの2人としては実に珍しい、純粋に驚きに上げた叫び声であった。
「ちょ、ちょっと、ちょっと待って!え、ロートス!?それどういうこと!?」
「あーいや、そのままの意味なんだが・・・・・・」
「そのままの意味ってそのままの意味!?そうよね!?形成が使えないってことでしょ!?そういうことなんでしょう!?わかるわよ!よーくわかるわ!!だからどういう意味なの!?」
「・・・・・・落ちつけロリババ。お前のが意味わかんねぇよ。――で、実際どうなのよ。マジで使えないわけ?」
アンナより幾分冷静に見える司狼だが、その頭の中はアンナと同様に困惑でいっぱいだ。
何しろこれはまさしく『有り得ないこと』だからだ。
「・・・・・・使えない、ってことはない。ただ、何ていうか・・・・・・俺の中で噛み合ってない感じがするんだ。多分戦力的には形成位階に成り立ての頃と変わらないだろうな」
蓮は己の無力さに歯噛みする気力さえ湧かない。
「噛み合ってないっていうのはロートスと聖遺物がってこと?」
「・・・・・・。あぁ。使い方は知っているはずなのに思い通りに使えない、とでもいうか。持て余してる感覚に近いかもしれない」
蓮の言葉を聞いて司狼とアンナは改めて自分の仮説を組み立てていく。
「いつからそんな感覚があったんだ?」
「ハッキリ気付いたのは白夜叉ってやつと対峙したときだ。咄嗟に構えようとして自分の中が酷くズレてることがわかった」
「感覚は?身体の調子に変わりある?」
「一応『座』を認識は出来てるよ。・・・・・・というか、今更だがここの世界は酷く狭い感じがするな。あーもしかして・・・・・・」
「多分この箱庭を作ったやつだろ。ここの外には多分あいつらが広げた『座』が広がってて、多分ここは間借りした場所なんだろうよ。・・・・・・『座』が見えるってことは位階が下がったってわけじゃないな。まぁ元々自由に昇り降り出来るもんでもないしな。ってことは」
「肉体の方ね」
2人はそう結論づけた。
「お前もあっちでいい一撃(いいの)もらったんだろ?俺らはこっちに来たときに身体も魂も再生したが、さすがにここのシステムもお前みたいな存在を万事よろしく再生させることは出来なかったらしい。魂は再生出来たみたいだが、肉体がそれに追い付いてないんだよ」
「聖遺物は確かに魂を燃料にして動く。でも器たる肉体がそれに見合わないのなら使えるわけがないわ」
例えるなら自動車だ。
いくらガソリンがあったとしてもエンジン肉体がそれに見合っていないのなら十分な性能を引き出せないのは道理だ。


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