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Diesの登場人物たちが異世界から来るそうですよ? 第三話
作者:satieru   2012/07/22(日) 10:41公開   ID:eFlDFqeitOQ

司狼は相変わらず人を食ったような表情をしていた。
蓮はついに来たとため息をつき、アンナはすでに観戦モードだ。
「ギフトゲームってのをやってみたいんだわ。ここじゃそれで生活が成り立ってんだろ?」
「・・・・・・ギフトゲームはこの箱庭の到る所で行われておる。帰りにでも適当に受けてみるとよかろう」
「いやいや、俺が言ってんのはそんなチンケな遊びじゃねぇんだよ。あんたは階層支配者フロアマスターなんだろ?ならつまりはあんたが頭だ。・・・・・・つまり、あんたのゲームが一番面白いってことで間違いないだろ?」
「・・・・・・っく、くく、くはははははは!!!おんし、おんしは!まだ右も左もわからぬこの箱庭で!まだ知りもせぬギフトゲーム、ただ一番面白そうなどというそのような理由で、この私、白き夜の魔王――太陽と白夜の星霊たる白夜叉のゲームに参加させろと!っくくく!よかろう!おんしのその不敵さを称え我がゲームに招待しよう。・・・・・・して、おんしが望むのは試練への『挑戦』か?それとも対等な『決闘』か?」
おそらく、挑戦と答えれば白夜叉は司狼をして楽しませるに足る試練を用意するだろう。
逆に決闘と答えれば、その瞬間から白夜叉は持てる力と誇りを賭け命の限りに戦うに違いない。
それは司狼とてわかっているし、自分では白夜叉に勝てるかどうかわからない、とうより、十中八九負けるのはわかっている。

「来いよ、白髪野郎」
「っは!私は女だ!」

だからこそ、司狼は『決闘』を迷いなく選ぶ。

「あぁ、知らないわよ、アレ。自分から死ににいくなんてどうかしてるわー。自滅因子が自滅しに行ってどうすんのよねー、ロートス?」
「あのバカは死んでも変わらない大バカだ。そんなことはずっと前から知ってるよ」
蓮とアンナの視線の先では小さな身体を縦横無尽に駆ける白夜叉に司狼が手にしたデザートイーグルを発砲するという構図だ。
もっとも白夜叉に弾丸程度の物体ではその着物に掠ることも出来ない。
とわいえそれは当然司狼も把握している。
「うらぁ!」
と、司狼が仕掛けた。
司狼はあえて当てることの出来ない発砲を繰り返すことで白夜叉に無意識に回避のパターンを作らせた。
そして十分にそのパターンが出来たころ、白夜叉は司狼の思惑通りの場所に回避してきた。
その瞬間、今まで『活動』に留めていた聖遺物を『形成』する。
「っ!?」
突如自らの足元に出現した幾条もの鎖に白夜叉の顔が驚愕に染まる。

――ことはない。
「この程度か?で、あるなら些か・・・・・・興ざめを言わざるを得んな」
白夜叉は自身の足に絡み付こうとする幾条もの鎖をまるで動きを読んだかのように躱す。
まるで捉えられそうにない司狼の一連の作戦に白夜叉は冷やかに告げる。
「・・・・・・今ならば許してやるからさっさと失せろ。力の差はわかったであろう?これ以上続けるならば「俺もちょっとばかし本気を出しちまうぜ?」

被せるように司狼の言葉に、白夜叉はそれが決してハッタリではないことを感じた。
「!?」
そして感じた一瞬の悪寒。
まるで自分の中が空っぽになっていくような、全身の力が抜けていくような虚脱感に、しかし白夜叉は爛々と瞳を輝かせる。
「面白い。来い、童!」
「俺のが年上かもよ?」


「そこまでだご両人。誇りある戦士の決闘に、私のような不心得者が割って入るなど言語道断の行いであると弁えているつもりではあるが、しかし一時でも構わぬのでどうか私の話を聞いてはもらえないだろうか」


唐突に、本当に何の前触れもなく、影のような男が現れた。
「なっ!?」
白夜叉は一瞬完全に思考に空白が生まれた。
それはこの一瞬完全な無防備であったが、それすらも忘れていた。
「よう、引きこもりじゃねぇか。そのツラまた見ることになるとは思わなかったぜ」
「この顔ならすぐ近くにもう1つあるだろう」
「お前のその薄気味悪いニヤケ顔はそうそうねぇよ」
銃口を向け敵意を隠そうともしない司狼にしかし、男――メルクリウスは愉快げに笑うだけだ。
「して、お前は何を呆けている。私がここにいるのがそんなに不思議かね?お前たちがいるのだから自分たち以外もいるかもしれないと、その思考に至るのは至極当然だろう。あぁ、いや、それとも私がここにいるのということを認めたくないだけかな」
見ればアンナは既に影を展開し臨戦態勢。
蓮はようやく取り戻した思考をフル回転させてメルクリウスに問いかける。
「あんたがいることを認めたくないってのには全面的に頷くが、今それはどうでもいい。そんなことよりメルクリウス、お前はさっきなんて言った?」
「君の仲間のことかね。心配せずともこの近くにいるし、『もうすぐ来る』。獣殿に感謝するがいい。彼がいなければさすがに私といえど全員を喚ぶことなど出来なかったであろう」
「お前が俺たちをこの箱庭に喚んだって?」
「いかにも」
「ならラインハルトもいるっていうのは?」
「考えてもみたまえ。そも、私が友を蔑ろにするわけがなかろう。彼も彼の軍勢レギオンも元気にしているよ」
「――本題に入れよ。てめぇがここに現れたのはなんでだ?」
いつまでも話が進まないことにイラついたのか、司狼が口を挟む。
「無粋だな。親子の会話に口を出すものではないよ。とはいえ、私も少々疲れていてね。さすがにそろそろ休みたい。――ツァラトゥストラ。我が息子よ。女神を救え。彼女は君を待っている」
「まさか!?そんなだって彼女は!」
「私が、そして獣殿が、ここに存在しているのだ。なんら不思議ではあるまい。彼女はアスモデウスという魔王に囚われている。ソロモンが魔神の一柱ではないがね。いかなる理由か放浪を続ける魔王で所在がハッキリとしない上、今の私は無力な男だ。故、お前に任せる。獣殿には話を通してあるゆえ軍勢レギオンから好きに持って行くがいい」
それだけ言うとメルクリウスの身体が徐々に透け始める。
「メルクリウス!」
「それは心配かな?一応言っておくがそれには及ばんよ。元々これは影だ私はこことはかなり離れた場所にいる。同じ場所には獣殿もいるから戦力としては十分すぎる。ゆっくりと休める。では、任せたぞ」
そういって初めからそこには何もなかったかのように、メルクリウスは完全に姿を消した。
「心配してるんじゃない。文句を言いたかっただけだっての・・・・・・」
蓮がそう呟くが、その声にどこか安心した響きがあったのを近くにいたアンナは聞き逃さなかった。


「して、あやつは何者じゃ?おんしらの知り合いであろうことはわかるが・・・・・・得体が知れぬ」
今の一件でやる気が削がれたのか、戦意のない瞳で白夜叉がそう尋ねてきた。
「引きこもりだよ、それもすげー質の悪い上にストーカーで変態。合言葉はメルクリウス超うぜぇ」
銃を収めた司狼がさっきまで本気で戦っていたとは思えないほどフランクにそう答えた。
「まぁ概ねその通りね。最低最悪よ。あいつのせいで何人がトラウマ植え付けられたか」
「お前もその内の1人だろうが。・・・・・・で、蓮。どうするんだ?乗るか?」
極めて珍しいことに、司狼は真面目な表情で蓮にそう聞いた。
それに蓮は、迷うことなく答える。
「乗るさ。あいつは性格ひん曲がってるしやることなすこと迷惑しかないが、嘘は言わない。俺たちの黄昏を――マリィを・・・・・・助ける!」


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