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ひぐらしのなく頃に 〜結殺し編〜 第五話『日曜日・後編』
作者:虫歯菌   2012/07/24(火) 17:51公開   ID:C9tYKpxvBfA




 〜日曜日・後編〜


 梨花ちゃんには家にまで来てもらうことにした。いくら夏であっても、夜の外は冷えるというものだ。外で話し込んで風邪をひかれたら困るし、ぼく自身が風邪をひく可能性だってある。夏風邪なんて冗談じゃない。
 母さんはまだ帰宅していないが、梨花ちゃんと話をしている途中に帰ってこられると少し困る。どうやら梨花ちゃんは、内密な話をしたいらしいから。ぼくとしてはこの場に母さんがいてもいなくてもいいんだけど。その場合、この《状態》にある梨花ちゃんとの会話はできなくなるだろう。
「……まぁ、適当に寛いでてよ。お茶でも出すから」
「良いわよ、お茶なんて。時間の無駄。私も早く沙都子のところに帰らないといけないから、ゆっくりしてられないのよ」
「人の好意と善意は全力を以てして受け取れって教えてもらってないのかい?」
「残念。それを教える母親はとっくに死んでるし、父親も同じくよ」
 ぼくは一瞬だけ躊躇ってから、なんでもないように言った。
「それはそれは、残念だね。……沙都子ちゃんは?」
「沙都子もいろいろ訳ありよ。まぁ、あなたが知る必要はないわ、榊原祐二」
 わざわざフルネームで呼んでくる辺り、微妙に警戒されていると見て良いだろう。
 お茶は良いと言われたが、客になにも出さないというのはぼくのポリシーに反することだ。鬱陶しいと思われようがなんであろうが、お茶は出させてもらうことにした。
 いやまぁ、本当のところポリシーとかそんな大層なものは持っていないんだけど。ただの礼儀の問題だろう。
「良いって言ったのに……」
 ぶつくさ言いながらも、梨花ちゃんは冷たいお茶に手を伸ばした。別に飲まなくても良かったんだけどね。社交辞令みたいなものだし。
「それで、梨花ちゃん。梨花ちゃんはその口調でぼくに話しかけてきたけど……」
「話しかけてきたのはそっちじゃない?」
「細かいことは気にしない。――で、ぼくとしては今の君が《素の梨花ちゃん》であると認識してるんだけど……間違いはないかな?」
 梨花ちゃんはずずずとお茶を飲み、そして吐息を吐いた。
「……まぁ、間違いではないわ。こっちの私が本物よ」
「で、そっちの巫女さんは誰だい?」
 今まで描写なんてもの一回もしてこなかったし、今まで一度も触れてこなかったけど、ぼくの視界にはそれが見えている。見えてしまっている。半透明の《それ》が。所謂――幽霊が。
「……り、梨花…………? もしかして……」
 突然話を振られた巫女さんは、唖然としながら梨花ちゃんに話しかける。だが、梨花ちゃんは答えない。
 いや、薄々気付いてはいた。いつも梨花ちゃんのすぐ近くにいたあの幽霊が、梨花ちゃんと関係があることくらい。しかしそれは《気付いた》だけだ。それが《本当》なのかどうかは分かりはしない。そして今、その真意を聴くことができる。
「あなた……羽入が見えるの!?」
「羽入……それがその巫女さんの名前かい?」
「……そうよ。最も、オヤシロ様と言った方がこの村では通じるでしょうけど」
 梨花ちゃんがそう言った。
 羽入――オヤシロ様と呼ばれたその女性は、《あぅあぅ》と言いながらなにやらじたばたしている。埃が舞っているように見えるのだが……。できれば、暴れないでいただきたい。
「……そうかい。オヤシロ様……なにかしらの信仰の対象かい?」
 《様》なんて付けるくらいなのだ。とても大事な《ナニカ》であることは確かだ。客とか、取引先とか、そういう戯言は抜きで。
「ええ、そうね。この村の信仰対象よ。……それより、見えていたならなんでこれまで疑問に思わなかったの?」
「疑問には思ったさ。今まで幽霊なんて見たこともなかったし信じることもなかった。ただ、《幽霊が見える》なんて言ったら、変な目で見られるだろう?」
 転校早々、電波少年みたいな立ち位置にだけはなりたくなかった。
 まぁ、本当、賭けだったんだけどね。梨花ちゃんがもしこの幽霊の存在を知らなかったり、見えなかったりしたら、ぼくは今頃、変な目で見られていただろうし。いや本当、梨花ちゃんと羽入ちゃんが友人関係――友霊関係?――で良かった。
「まぁ確かに、それもそうね」
「今の梨花ちゃんのことを皆は知ってるのかい?」
 ぼくの唐突とも言える質問に、梨花ちゃんは小首を傾げた。その顔は、先ほどまでの大人のような顔ではなく、いつもの子猫のような梨花ちゃんの顔だった。
「どういうことかしら?」
「今の梨花ちゃん――つまり、素の梨花ちゃんを、皆は知ってるのかって訊いてるんだよ」
「……こういう話し方の私を知ってるのは、羽入とあなただけよ」
 それは、なんとなく予想していたことだ。別段、驚くことでもなんでもない。ぼくは適当な相槌を打ってから、また質問を投じた。
「さっきオヤシロ様は信仰対象って言ったよね? それはどういうことなんだい?」
「……その前に聴かせなさい。あなたは、私の味方となってくれる人間なのか」
 その言い方は、まるで自分が人間ではないとでも言っているような言い草だった。それに少し戸惑いながら、ぼくはそれに答えた。答えたというよりは、応えたというべきかもしれない。
「梨花ちゃん。ぼくはね、卑怯者というレッテルが最も嫌いな人種なんだ。他人を売ることに関してはなんの抵抗もない。他人が死ぬことで自分が助かるのなら喜んで他人を差し出そう」
 ぼくがそう言うと、梨花ちゃんは少し顔を悲痛に歪ませた。
 それはきっと、ぼくが味方じゃないと言った様に聞こえたからだろう。
「だけどね。卑怯者のレッテルを貼られるのなら、話は別だ。言ってしまえば、自分がどう見られているかだね。不安なのさ。ぼくという人間は。
 君の視線に気づけたように、ぼくは憶病なんだ。仲間に嫌な目で見られることだけは絶対にしない。――仲間から蔑まれるようなことは、絶対にしない」
 ぼくは続ける。
「だから安心すると良い。ぼくは、仲間の為なら他人だって殺せる。梨花ちゃん、ぼくはね、君たちが初めてなんだよ」
 ぼくは続ける。ここまで饒舌になるのは、いつ以来だろうか。もう、思い出せないし、思い出したくもない。
「君たちが、ぼくにとって初めて《仲間》と呼べる存在だった。それを誇っていい」
 梨花ちゃんが、驚愕という感情をその可愛い顔に貼り付けた。
「ぼくみたいな人間は友人と呼べる人間を持ったことはあっても仲間と言う人間を持ったことはなくてね。今は良い目で見られたいと必死なのさ。君を誰かが殺そうとするなら、ぼくは君を守ろう」
 助けるなんて言わない。
 守るだけで、きっと精一杯だ。
「……梨花ちゃん、ぼくは君の味方になることを誓うよ」
「祐二……!」
 梨花ちゃんは突然立ち上がり、歓喜の色を顔に滲ませた。……味方になるだけでこんな喜ばれることがあるのだろうか? いいや、そうそうないだろう。梨花ちゃんとしては、それ程に追い詰められているということなのだろう。例え無力な人間でも良いから、一人でも多くの味方がほしい。無知で無力な人間を味方にすることが、どれほどに愚かな行為であるかを梨花ちゃんは知らないのだろう。
「祐二は梨花と同じで素直じゃないタイプなのですか?」
「おい、オヤシロ様。……梨花ちゃん。そのオヤシロ様の調教はちゃんとしてるかい?」
「あぅ!? ち、調教!?」
「キムチ調教ならしてるわ」
「……なんじゃそりゃ…………」
 そういえば、本場のキムチには寄生虫がいるという話をなにかで見たな。日本製に限ってそれはないと思うけど……。いやだがキムチの本場であるところの韓国も一応先進国らしいし……。まぁ、どうでもいいか。日本だって、江戸時代とかの頃にはリオの回虫カーニバルだったみたいだし。


   *   *   *


「四年連続で一人が死んで一人がいなくなる――ね」
「それも、綿流しのお祭りの日に限定されて、ね」
 梨花ちゃんから聴いた話。
 それは可笑しな可笑しな御伽噺だった。
 一年目。雛見沢ダム建設現場の監督がばらばらにされ死亡。犯人五人が逮捕されたが、主犯は《行方不明》。ついでに言うとばらばらにされた左腕がまだ見つかっていないようだ。既に今から五年前の死体――既に白骨化しているだろう。特にこの時期――夏に殺されたのだから、二十日もたたずに白骨化したのではないだろうか。まぁ、それが見つかっていないのだから、もしかするとなにかしらのマッドサイエンティストがその腕を補完しているかもしれないけれど。
 二年目。沙都子ちゃんの両親二人が、旅行先の展望台から落下し死亡。この際、目撃者は誰もおらず、事故なのか殺人なのかも未だ不明。沙都子ちゃんの父親の死体は見つかったけど、母親は見つかっておらず《行方不明》扱いだ。まぁ、死んでいることに間違いはないのだろうけれど、それでも死体が見つかっていないのだから行方不明で間違いないだろう。
 三年目。梨花ちゃんの父親が病死。母親が遺書を残して行方不明だ。遺書を残したのだから、どこかで自殺したのだろう。自分にとって残酷な話をすらすらと他人事のように話していった梨花ちゃんの姿は――言っちゃ悪いが――少し滑稽だった。母親の遺物と遺書は鬼ヶ淵沼という場所のほとりで見つかったらしいが、その遺書も遺物も、今は行方不明だそうだ。
 四年目。つまり去年だ。殺されたのは沙都子ちゃんの叔母。行方不明は沙都子ちゃんの兄。もう、笑うしかなかった。沙都子ちゃんは、どれだけの死を前にしてきたのだろうか。ぼくは泣けない。もう枯れ果てた。だからもう、笑うしかなかった。
 ただ、もしぼくの涙が枯れ果てていなかったとしても、ぼくはきっと、笑っていただろう。
「ねえ、梨花ちゃん。共通点が、あまりにも少なすぎやしないかい?」
「それは、そうね。だけど、一人が死んで一人がいなくなる。それが毎年お祭りの日の前後に起きる。数少ない共通点だけど、大きな共通点でもあるわ」
 なるほど、――確かにそれもそうだ。
 大きすぎる共通点。
 交り過ぎた類似点。
 それらの点が、それらの連鎖的な殺人と行方不明を《オヤシロ様の祟り》と呼ぶようになった原因だろう。
「で、《オヤシロ様の祟り》なんて呼ばれてるのは、ご本人としては不愉快なのかい?」
「それはそうなのですよ! 不愉快もなにも大不愉快なのです!!」
「うん、ごめん、分かったから床を蹴らないでくれいないかな」
 地団太を踏まれるのは困る。なぜか埃が舞ってるからね? 幽霊で実体がないはずなのに床の埃待ってるからね? ……後で掃除しよう。
 ていうか、大不愉快なんて言葉、あったっけ……?
 羽入ちゃん――聞いた話によると人妻らしいから羽入さん?――をなんとか落ち着かせることに成功したぼくは、時計を見遣った。
「貴重なお話をありがとう。だけど梨花ちゃん、そろそろ帰らないと沙都子ちゃんが心配するんじゃないかな」
「そうね。……お茶、ありがとう。じゃあ、お暇させていただくわね」
「……梨花ちゃん。一応ぼくはきみに味方することにしている。君を一人で夜の道を歩かせるわけにはいかないな。なんせ――君が死んでしまうんだろう?」
「……そう、まぁ、そうね。私に憑いているのは無力な守護霊様だけだものね。あなたがいてくれると助かるわ」
「あぅあぅ……」
 梨花ちゃん、何気にえげつない。……いや、いつものことか。


   *   *   *


 今思えば、夜の雛見沢を歩くのは初めてだった。蛍が所々にいるようだが、それほど多くもないらしい。時折視界の端に映る程度だ。本来六月中旬にゲンジボタルが飛び始めるらしいが……まぁ、六月下旬に出てくるはずの蜩が六月上旬に出てくるというのだから、なにも不思議なことではないのかもしれない。
 梨花ちゃんは、子猫のような軽い足取りでこのくらい夜道を歩いていく。梨花ちゃんくらいになると、もうこんな道に恐怖を覚えることもないのだろう。ぼくとしては、夜道を歩くという行為それ自体が珍しすぎることで……まぁ、恥ずかしい話、結構怖かったりする。足元が見えないから、なにかを踏んでしまわないかと不安なのだ。そんなぼくを小馬鹿にするように梨花ちゃんはどんどん歩みを進めていく。その腰にはやはり、長い髪の毛に隠れているしなやかな尻尾が見え隠れする様だった。
 歩いていると見覚えのある場所へと出た。今日お昼に行ったあの長い階段だ。
「ここを登れば後は私の家。沙都子もそこにいるわ。じゃ、おやすみ、祐二」
「……梨花ちゃん、どうしよう」
 ぼくは、今、とても困っている。
「…………?」
「どうしたのですか、祐二?」
 無言ではてな顔な梨花ちゃんと、浮遊しながら受け答えをしてくれる羽入ちゃん。
 そんな二人にとって、僕が今から告げる一言はあまりにも衝撃的なことだっただろう。
「今日、泊めてほしいんだ」


   *   *   *


 泊めてほしいと言った理由は、単純明快で至極簡単なことだ。
 ――道が分からない。
 まさか、梨花ちゃんに道案内をさせて《はい、さようなら》というわけにもいかないだろう。ぼくという人間は記憶力が悪いから口頭で道の案内なんて不可能だから、道案内となると梨花ちゃんについてきてもらうことになる。登下校の道を覚えていたのは、恐らく奇跡だ。あのときも結局、レナに助けられてたし。
「なんで祐二さんと一緒に寝なくちゃなりませんの……」
 などとぶつくさ呟いているのは、勿論沙都子ちゃんだ。
「仕方ないだろう。散歩してたら偶然会った梨花ちゃんを保護してここまで連れてきたら道を忘れてしまったんだから」
 勿論これは《設定》だ。
「そうなのですよ沙都子。もし僕と会わなかったら、祐二は今日野宿で可哀想可哀想なのですよ」
 梨花ちゃんは《にぱー》なんて笑いながら、そう言った。この村で野宿と言っても、どうせ危険はないのだろう。いやでも、田んぼとかがあるから、ヒルに襲われるかもしれないなぁ。ぼくはそう思いながら、濡れた髪をタオルで拭いた。
 親には既に《友達の家に泊る》ということを伝えてある。柔和で順応性の高いぼくの母さんは《じゃあ今夜の夕ご飯はインスタントかしらね……。折角泊るんだったら、……押し倒しなさい。それが男よ、裕ちゃん。あ、でも裕ちゃんは男の娘だか》なんて言う始末だったりする。なんで中途半端なところで切れたのかと言うとぼくが電話を切ったからだ。
 相手が小学生であることを伝えるべきだったかと今更ながら思う。
「まぁ、別に良いですけど」
 沙都子ちゃんはまだなにかを言いたげな眼差しをこちらに向けてから、布団の中へと入っていった。
 シャワーは既に借りているし、歯磨きは仕方ないと言えるだろう。明日は朝早くに起きて家に帰ることになっている。梨花ちゃんと沙都子ちゃんに道案内を頼むことになっていたりする。
 晩御飯は御馳走になった。客であるぼくがせめてものお返しにと作ろうと思ったが、人の家でご飯を作ることの難しさを考慮してお世話になることにした。しかし梨花ちゃん、さすがというべきか、料理がとても上手だったな。いや、学校でのお弁当なんかを見れば、それは既にわかりきっていることだったが。それでも、あの手際の良さは最早プロレベルだろう。あれで大人になれば、きっと料理ができる良いお嫁さんになることだろう。
「祐二さん、少し離れてくれませんこと?」
「仕方ないだろう? 梨花ちゃんと沙都子ちゃんだけならまだしも、ぼくが入るとこの部屋だと狭いんだ」
 まるで物置のように狭い。
「だったら御自分の家に帰ってはいかがかしら?」
「だから道が分からないんだって」
 不毛なやり取りがいくつか続いた。
 しかし明日は学校だということを思い出したのか、沙都子ちゃんは布団に頭まで潜って眠ってしまった。そんな沙都子ちゃんの、布団から少しだけ出ている金髪の頭を、梨花ちゃんが撫でた。まるで沙都子ちゃんの姉のように――まるで、聖母のように。
「祐二、あなたも早く寝なさい。明日、寝坊しても知らないわよ」
「ぼくはどんなに遅く寝ようと六時に起きれるから問題ない」
 学校が始まる時間が八時なので、恐らく、なんの滞りもなく登校できるだろう。しかし、だからと言っても、夜遅くまで起きてれば翌日眠くなるのは確かで、眠気というのは頭の回転を遅らせる。
「まぁ、お言葉に甘えて、さっさと寝させてもらうことにするよ」
 ぼくはそう言って、目を閉じた。畳の上で寝るというのは、初めてではない。小さい頃、祖父の家に行ったときに寝たことがある。そんな遠い昔の記憶を脳裏で浮かべながら、ぼくは意識を手放していった。


   *   *   *


 カチ、カチ、カチ、カチ――。
 定期的に秒針が鳴る。
 定期的な寝息の音。
 時折、誰かが寝返りを打って布が擦れる音がする。
 そんな空間で、梨花は祐二の寝顔を見ていた。
「……本当、女みたいね」
 整ったその顔を少しだけ眺める。それにつられて、羽入も祐二の顔を覗き込む。
「いつもはワックスとかで少しでも男らしくしようとしてますが……自然な髪形だと違和感なく女なのですよ……。むしろ男なのか疑わしいほどなのです!」
「そうね」
 そう言いながら、梨花は窓から月を眺めた。いつもと変わらない空。それが、少しだけ不安に拍車をかける。 
 ――また、同じ結果になることを案じているように見えてしまう。
「羽入、大丈夫……よね、これで」
 梨花はその不安を払拭するかのように、羽入のそう問うた。
「ええ、これで、《あの世界の圭一》のようにはならないはずなのです」
 事前知識として、《オヤシロ様の祟り》を全て教えた。
 そして、これからの梨花の運命も。
「それにしても、この男。圭一とは全く違うタイプだったわね」
 圭一の代替品となる人間かと思っていた梨花にとって、それは少し意外だった。
 この一週間で分かったことは、《普段から暗い性格》《賭け事に弱い》《意外と天然ジゴロ》《男の娘》とまぁ、圭一との共通点は少なかった。
 圭一も天然ジゴロであるところがあるように見えたが、どちらかというとあれは計算されていただろう。それに比べて祐二のそれは本当の意味で天然である。レナに対するそれは、しかし、圭一と同じく計算している様だが。しかしレナや魅音や梨花には、無意識のうちに優しく接している。それは、沙都子にも同じだった。
「……悟史の替わり、なのかもしれないわね」
「え、梨花。なにか言いましたですか?」
「いいえ、なんでもないわ。じゃあ、私も寝るわ。言った本人が寝坊したら、良い笑い物だものね」
「そうですか。では、良い夢を、梨花」
「ありがとう、羽入」
 古手神社の余が更けていく。
 歯車は回転を続ける。
 連結して、
 凍結して、
 結ばれていき、
 解かれていく。
 






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