「旭敦、俺とデュエルしろ!」
カイザーに絡まれた。
◆
話は十秒ほど前に遡る。いや、それ、遡る意味ないじゃん、という言葉は無視無視。廊下歩いてたら目の前からカイザー歩いてきてカイザーも俺に気付いて、で、突然ものすごい形相で睨んできて「デュエルだ!」だ。
はて、俺が何かしただろうか。脳内検索を実行。該当数6 。
1.未来融合禁止カード化
2.サイバネティック・フュージョン・サポート禁止カード化
3.サイバー・ドラゴン準制限カード化
4.パワー・ボンドの裁定変更
5.ドローカード軒並み禁止カード化
6.エクシーズ
〜旭敦のQ&Aコーナー(カイザーのデッキ+α編)〜
Q.未来融合がどうしていけないの?
A.この世界の未来融合はOCGとは別物です。
≪未来融合-フューチャー・フュージョン≫:装備魔法←ここ重要!
デッキから融合素材モンスターを墓地に送って融合デッキから融合モンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できず、デュエル中に生け贄に捧げることもできない。
このカードが破壊されたとき、装備モンスターを破壊する。
つまり、1.アームズ・ホールで持って来れる
2.手札一枚から好きな融合モンスター
3.先攻ならデメリットほぼ無し
4.非常食等で墓地に送れば出したモンスターはこのカードの効果では破壊されない
5.墓地にモンスター(カイザーの場合はサイバー・ドラゴン)を送れる
というチートカードです。仕方ありません。
Q.サイバネティック・フュージョン・サポートとは?
A.≪サイバネティック・フュージョン・サポート≫:速攻魔法
自分のライフポイントを半分払って発動する。
このターンに機械族融合モンスター1体を融合召喚する場合、手札または自分フィールド上の融合素材モンスターを墓地に送る代わりに、自分の墓地に存在する融合素材モンスターをゲームから除外する事ができる。
これも色々笑えないのです。チェーンマテリアルと違って攻撃できるし、場に残るし。
Q.サイバー・ドラゴンはなぜ準制限に?
A.嫌がらゲフンゲフン、試練。そう、試練だ。
Q.パワー・ボンドの裁定変更とは?
A.《パワー・ボンド》 :通常魔法
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
このカードによって特殊召喚したモンスターは、元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。
発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
OCGとは違い、この世界のパワー・ボンドのダメージ効果は、融合召喚した融合モンスターがいなくなったら無効、という訳分からん強さ。これも笑えない。
Q.エクシーズモンスター?
A.第六話十三行目のインフィニティ・キャノン
-以上-
どうしよう。思い当たる節が多すぎて逆に分からない。
ここは大人しく逃げよう。大丈夫。催涙スプレーもスタンガンもスタングレネードも持ってるからきっと逃げ切れる。逃げ切ってみせる。最終手段として
あれもある。いや、実は無いけど。真っ赤な嘘だけど。
あ、でも、準備運動も柔軟もしてない。最近運動不足だし、ちょっと困った。しょうがない。スタンガンで戦おう。
「おい、聞いているのか!」
うおっ、いつの間にか肩掴まれてる。くそっ、スタンガン取り出せん。
......かくなるうえは。
すぅーーっ
「ぎゃぁぁぁあぁぁあー!!」
「な、なんだ!?」
驚いて手を離すカイザー。しめた。
「助けてくれー!」
全力で走りだす俺。
「お、おい、待て!」
追いかけて来るカイザー。馬鹿め。
「誰か!助けてくれー!カイザーに襲われるぅー!」
「ちょ、ちょっと待て、俺はデュエルを......」
ちっ、まだ着いてくるのか。しつこいな。
「おーい、旭センパーイ!」
お!十代だ。丁度いい。巻き込んでやろう。
無視して横を通り過ぎようとすると、予想通り並走し始める。
「なんで逃げるんだよ、センパイ!」
「後ろを見ろ、後ろを」
ちなみにまだ追いかけて来ている。
「誰だ、あれ?」
「カイザー亮。丸藤翔の兄貴」
「あれが翔の兄貴!?」
「ああ。学園最強と言われている」
「ホントか!?すっげー!デュエルしてみてー!!」
「やめとけ。あいつはおそらく............ホモだ」
「ほも?なんだそりゃ?」
「ホモはホモセクシュアルの略で、同性愛者という意味だ。つまり、男のことを本気で―それこそ結婚したいほど―好きな男のことだ。」
「ハァー!?か、からかわないでくれよ、センパイ。そんなやついるわけないだろ」
「世界は広いのだよ、十代。
いいか、あいつは廊下で偶然出会った俺に突然、火傷しそうなほど熱い(憎しみらしき)視線を向け、(デュエルしろと)声をかけてきて、肩を抱いて(というかかなり強く掴んで)、顔を(ほんの少しだけ)近づけてきた。
ヤツは、状況から見て明らかに、俺に特別な(負の)感情を抱いている」
「......マジかよ」
十代は再びカイザーの方を見た。心なしか、顔が青ざめているような気がする。
「アニキ〜!」
「翔!」
「アニキ、なんで走ってるのさ。あと、なんで兄さんが追いかけて来てるの?」
こいつも一緒に走り出す。次のターゲットはこいつだな。
「いいか、翔、お前の兄はホモで俺を火傷しそうなほど熱い視線で以下略!」
「そ、そんな、そんなの嘘だ!」
「俺だって......学園最強(笑)のデュエリストがホモ野郎だなんて信じたくないさ......でも、」
「待て、旭!俺とデュエルを」
「あんなに情熱的に、『俺がデュエルで勝ったら俺と付き合え』と言ってくるんだ」
「兄さん......」
「なぁ、翔」
「何?アニキ?」
さきほどまで押し黙っていた十代が口を開く。何を言うつもりだろう。
「翔、お前は、違うよな?」
「......え?」
「同い年なのにアニキって呼んだり、妙に俺の後について来たりするけど、違うんだよな?」
なるほど。面白い考察だ。
「何バカなこと言ってるんだよアニキ!そんなわけないじゃな「いや、ありうる」ハァー!?何言ってるんですか、旭先輩!」
「いや、似たような環境で育って、更に弟はホモ兄貴を尊敬している。自分でも自覚せずにそんな考えを持っている可能性は0じゃない」
いや、ねーよ。自分にツッコミたい。しかし我慢だ。
「......」
「ア、アニキ、なんで無言で僕から少し離れるんすか!」
「旭敦、いい加減、止まれ!」
「助けてくれー!ホモカイザー亮に、襲われるー!犯されるー!」
「黙れ!!」
「なんで僕が近づくとちょっとだけ離れるんすか!」
「い、いや、
悪い。体が勝手に......」
「来るな、カイザー!俺はノンケだ!お前みたいなガチホモとは違うんだ!」
「殺す!!」
こんな感じで校舎内を駆け回りましたとさ。めでたしめでたし。