そして次の日。
昨日何とか逃げ切って、今日も授業の時間まで、うっかり鉢合わせしないように引きこもっていた。
その甲斐あって、今日の三限の実習の時間までは、ごく普通の一日を送ることに成功していた。
つまり、
「俺とデュエルしろ!旭敦!!」
二年の実習にガチホモ(三年)乱入。
◆
恐い。何が恐いかっていうと、目だ。あれは人殺しの目だ見たこと無いけど。でも、殺意100%無香料無添加だということは一目でわかる。既にリスペクト精神(笑)の欠片も無いヘルカイザーになっているかもしれない。今ならどんなデュエルでも闇のデュエルになりかねない。
「(ねぇ、見て見て、カイザー亮よ)」
「(あの ――って噂の?)」
「(そうそう、なんだかちょっと......)」
「(うん、ドキドキするよね)」
「(うんうん、キモチワル......えっ?)」
「(え?)」
「「(......)」」
なるほど、どんな社会にでも腐女子はいるもんだ。みんな、気をつけようね。気づいたら感染してたりするかも。
「おい、聞いているのか!」
「おk」
「む?」
「デュエルしてやるよ、カイザー。適当にボッコボコにしてやんよ」
◆
俺がカイザーを避けていたのは、リスペクトリスペクト五月蠅いからで、それさえ無ければ、デュエルするのもやぶさかではなくもなくもなくもなくもなくもなくも何回言ったか分からなくなったから言い直すけど、やぶさかではない。
つまり、カイザーにホモホモ言って怒らせたのは作戦だったのであるごめん、出まかせ。まあ、何はともあれ
「「デュエル」!」
「先攻はくれて「まさかカイザー、自分に有利だからって後攻選んだりしないよな?」......いいだろう。俺のターン、ドロー!俺は手札から、サイバー・フェニックスを守備表示で召喚。ターンエンドだ」
≪サイバー・フェニックス≫:効果モンスター/星4/炎属性/機械族/攻1200/守1600
このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する機械族モンスター1体を対象とする魔法・罠カードの効果を無効にする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
なるほど、先攻で出すには悪くないカードだな。
でも、カイザーにしては立ち上がりが遅......あ、俺のせいか。
「俺のターン、ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。
俺は手札から、神獣王バルバロスを召喚。バルバロスはレベル8の最上級モンスターだが、生贄無しで妥協召喚できる。ただしその場合、攻撃力は1900となる。
バトル、バルバロスで、サイバー・フェニックスを攻撃」
「サイバー・フェニックスの効果。戦闘で破壊された時、カードを1枚ドローする。ドロー」
「メイン2 。俺はカードを2枚セットし、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー。俺は手札から、プロト・サイバー・ドラゴンを召喚。このモンスターは、フィールド上に存在する場合、サイバー・ドラゴンとして扱う。
そして俺は、手札から、融合を発動!」
やっぱ来たか。サイバー・ツインか?サイバー・エンドか?
「俺は手札のサイバー・ドラゴンと場のプロト・サイバー・ドラゴンを融合。サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
あー、ツインか。正直サイバー・エンドの方が楽だったのに。
「バトル、サイバー・ツイン・ドラゴンで、バルバロスに攻撃、エヴォリューション・ツイン・バースト!」
「ダメージステップに、俺は、速攻魔法 禁じられた聖杯を発動。対象はバルバロスだ。」
「む、たしかそのカードは、GOLD SERIES に収録されることが決定しているカードだったな。」
「おおっ、さすがカイザー。一応、新しいカードはチェックしてるんだな。効果は知ってるだろうけど、ギャラリーには説明しておこう。このカードは、場のモンスター1体を対象に発動し、そのモンスターの効果を無効化する代わりに、攻撃力を400ポイントアップさせるナイスカードだ。」
「なるほど。バルバロスは自身の効果によって、攻撃力が1900になっている。だが、その効果が無効になれば、そのカードの効果と合わせて、攻撃力は3400となる、という訳か。
ならば俺は手札から、速攻魔法 リミッター解除を発動!自分の場のすべての機械族モンスターの攻撃力は、このターンのエンドフェイズまで倍になる。そして、エンドフェイズ時に、この効果を受けたモンスターは破壊されてしまう。だが、サイバー・ツイン・ドラゴンは一度のバトルフェイズ中に二回の攻撃力が可能だ!」
「これでサイバー・ツインは攻撃力5600の二回攻撃......」
「旭敦でもカイザーには勝てないのか......」
「おい、うるさいぞ、ギャラリーA、B」
全く、まだ伏せカードは残ってるってのに。
「くっくっくっ」
「何が可笑しい!」
「さてカイザー、ここで楽しいクイズの時間だ。俺の残り1枚の伏せカードはなーんだ。ヒントは今がダメージステップ中だってことと、使うのが俺だってこと、そしてこれで俺は大逆転ってことだ。制限時間は5秒!よーいスタート!」
「............!!まさか!!」
「はい、ここで残念時間切れ!じゃあ答え合わせと行こうか。俺は速攻魔法 禁じられた聖槍を、リミッター解除にチェーンして発動!対象はサイバー・ツイン!さてカイザー、何か発動できるカードはあるか?」
「くっ......何も......無い。」
「そうかそうかそれは重畳。では効果を処理するぞ。聖槍の効果により、サイバー・ツインの攻撃力は800ダウンして2000。更に、このカード以外の
魔法・
罠カードの効果を受け付けなくなる。よってリミッター解除は全くの無意味!迎撃せよ、バルバロス!」
「ぐぁあっ!」
カイザー:6000→4600
「どうした?もう終わりか?」
「くっ、俺は、カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。俺は手札から、永続魔法 次元の裂け目を発動。バトル、バルバロスでカイザーにダイレクトアタック!」
「俺は、カウンター
罠 攻撃の無力化を発動!攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる」
「ちっ、俺はこれでターンエンド」
「俺のターン、ドロー!
このモンスターは、相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。来い、サイバー・ドラゴン!」
この場面でサイバー・ドラゴン?オネスト......は有るけど無いよな?
「更に俺は、手札から、
魔カード、死者蘇生を発動!」
「え?サイバー・ツインじゃ勝てないよな?」とか何とかギャラリーは言ってるけど、俺にはこの先の展開がなんとなく読めてきた。
「俺は墓地から、サイバー・ドラゴンを特殊召喚。いくぞ!俺は、レベル5のサイバー・ドラゴン2体をオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!出でよ、No.61 ヴォルカザウルス!
ヴォルカザウルスの効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手の場のモンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。バルバロスを破壊しろ、マグマックス!」
旭:6000→3000
「次元の裂け目の効果により、バルバロスは墓地へ送られずに、ゲームから除外される」
「更に俺は、ヴォルカザウルスをオーバーレイ。カオスエクシーズチェンジ、迅雷の騎士ガイアドラグーン!」
あー、やっぱそいつも入れてんのか。
ガイアドラグーンは、自分の場のランク5・6のエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる特殊なエクシーズモンスターだ。
ヴォルカザウルスは、効果を使用したターン、ダイレクトアタックできない。だが、ガイアドラグーンになれば万事解決オールOK。
「バトル、ガイアドラグーンで、旭にダイレクトアタック!」
旭:3000→400
「俺はカードを1枚セット。ターンエンド」
うわ、やっべ。あいつのことだから、このターンで決め切れないと確実にぷち殺される。
頼む、俺のデッキよ、応えてくれ。精霊なんて見えないけど。
「ドロー!あ、来た」
「なんだと!?」
「スタンバイ、メインフェイズに入る。俺が引いたのはこいつだ。ガーディアン・エアトスを特殊召喚。このモンスターは、自分の墓地にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる」
「攻撃力は2500か。手札に強化カードでもあるのか?」
「残念なことに、こいつは今回は引き立て役だ。主役はこれから登場だ。
俺は手札から、装備魔法、
D・
D・
Rを発動。手札を1枚捨て、除外されている俺のモンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備する。帰還せよ、バルバロス!」
「攻撃力3000!!だがそれでも、合計ダメージは2900だ」
「ならもう1体バルバロスを追加だ。これで合計ダメージは4800 」
と、いきたいところだが、カイザーの目線一瞬伏せカードの方に向いた。何かあるな。表情からすると、余裕で耐えられる、という感じか。
「さあ、来い、旭敦!」
「......おいおい、なーに勘違いしてんだよ、カイザー。主役はまだ登場してないぜ?」
「!?バルバロスではないのか!?」
「同じような奴2体いて、片方主役でもう片方は脇役ってのは、さすがにないだろ。
さあ、いくぜ、これこそが、対エクシーズモンスター最終兵器だ!俺はレベル8の、妥協召喚した神獣王バルバロスとガーディアン・エアトスをオーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!No.15!地獄からの使者、運命の糸を操る人形...... ギミック・パペット−ジャイアントキラー!」
「こ、攻撃力1500?」
「攻撃力なんてもの、こいつにとっちゃあ付いてて嬉しいおまけみたいなもんだ。効果発動。メインフェイズ1でこのカードのオーバーレイユニットを1つ使って、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊する。そして、破壊したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。
ガイアドラグーンを破壊し、2600ポイントのダメージだ!」
「くっ」
カイザー:4600→2000
「さあ、ファンサービスの時間だ。ギミック・パペット−ジャイアントキラーで、プレイヤーにダイレクトアタック、ファイナルダンス!」
「ぐぁぁっ!」
カイザー:2000→500
「とどめだ!神獣王バルバロスで攻撃、トルネード・シェイパー!!」
「ぐぁぁぁぁあぁー!!」
カイザー:500→0(−2500)
◆
デュエルの後、カイザーは放心した様子で立ち竦んでいた。
という訳で、伏せカードチェーック♪えーっと、収縮か。お次はデッキトップ〜♪オーバーロード・フュージョン......怖っ。色々と怖っ。