シンジがNERVに帰還したとき、真っ先に会いに行ったのは刹那だった。
「刹那君。あの時はどうもありがとう。」
「礼には及ばない。ここに死んでいい命なんて一つもないんだ。」
「うん・・・ところで、刹那君はこれからどうするの?」
「葛城ミサトの指示があるまでここで待機するそうだ。」
「ガンダムでは使徒の攻撃に対応できないだろう」という理由で、現在は出撃を禁じられている。
それと同時に、別の世界から来たロボットということを知られパニックになることをを抑えるという理由でもある。
「それじゃあ、しばらくは戦闘には出ないってことだね。」
「ああ、そうなる。それと、一つ聞きたいことがある。」
「え・・・?うん、いいよ。」
いきなり質問をされ、シンジは戸惑ったがそれを許可する。
「この世界に、人間同士の戦争は起こってはいないのか?」
対話をして戦争根絶を目指す刹那にとっては、一番に聞きたい問題であった。
「どうだろう・・・そういうニュースはあまり聞かないね。昔からだけど。」
「この世界は・・・平和なんだな。」
刹那が安堵の表情を見せる。
「とりあえず、ありがとう。次も・・・頑張るよ。」
シンジは決めたのだ。
もう誰も傷つけないと・・・すべて自分が守るのだと・・・
「無理はするなよ。」
刹那の一言を聞いてからシンジはエヴァの格納庫へと向かった。
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「これがエヴァンゲリオン・・・」
目の前にある初号機の顔を見て、スメラギはほとんど言葉が出なかった。
「人造人間エヴァンゲリオン・・・これは人類を使徒から守るために作られた決戦兵器・・・」
「あなたは?」
「私は赤木リツコ。NERV技術開発部技術局第一課所属、エヴァンゲリオン開発総責任者をやっているわ。」
「私はスメラギ・李・ノリエガ、あの艦の艦長をやっています。」
お互いが自己紹介を交わす。
「知っているわ。大体のことはミサトから聞いたわ。」
「それはどうも。お二人は、どういう関係で?」
スメラギがリツコに聞く。
「同じNERVに所属する仕事仲間よ。」
案外あっさりとリツコは答えた。
あっさり過ぎて、スメラギは、数秒もの間呆然としていた。
「どうかした?」
「いや、なんでもありません。それより、エヴァについて聞きたいことが。」
「大体のことは碇指令に聞いたんでしょ?」
「それ以外のことです。」
聞いておけることは今のうちに聞いておく、スメラギはそんな行動をとった。
「エヴァンゲリオンを、人造人間にした理由はなんですか?」
リツコはエヴァを見つめ、
「知らないわ。」
と答えた。
「・・・え?」
思わずスメラギは聞き返す。
「知らないって、あなたは開発責任者なんでしょ?」
「責任者だからって、すべてを知っているわけじゃないわ。それは、あるお方が決めたことだから。」
「あるお方?」
「それも言えないわ。とりあえず、喋ることはできないわ。それじゃ、また後で。」
「ちょ、ちょっと!!」
振り返りもせず、リツコは格納庫を出て行った。
「一体、どんな秘密が・・・・それに【あるお方】って・・・」
スメラギの中には疑問だけが残った。
考えているうちに時間だけが過ぎていく。
使徒が接近していることにも気づかずに。
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「敵機接近!敵の情報は未だに掴めておりません!」
NERVの指令室に警告音が鳴り響くと同時に、職員の声が飛び交う。
「敵はまだ近くに来てはいないわ!今のうちにエヴァの修理を急いで!」
ミサトも焦りを隠せない。
急に襲来してきたため、対応が追いつけていなかった。
「レイ、マリ!出撃準備出来てる!?」
「大丈夫。」
「いつでも行けるよ!ちゃちゃっとやっつけるからさ!」
レイもマリも準備は出来ていた。
「よし、零号機、甲号機、発進!」
零号機と甲号機が出撃して、敵に対しての準備をする。
「確認しました!パターン青、使徒です!」
「あれは・・・何なの・・・?」
そこにいたのは、蒼き水晶のような形をした第五使徒、ラミエルだった。
「初号機と弐号機と参号機が未だに修復中、相手の力量も分からない・・・かくなる上は・・・」
ミサトが唇を噛み締め、決断したことは、
「刹那君、一つお願いがあるの。」
「なんだ?」
「もし・・・もしあの二機でも勝てなかったら・・・・」
「ソレスタルビーイングの機体、ガンダムにも・・・・力を借してほしいの。」
ミサトは絶対に口にしたくない言葉を言ってしまった。
他人を巻き込みたくない。
その気持ちが強かった。
しかし、刹那達の答えは決まっていた。
「スメラギ・李・ノリエガから言われている。もし力を借してほしいと頼まれたときは、そのまま戦えと。」
「スメラギが?」
「ああ。大変になる時もあるだろうから、困ったときはお互い様・・・と。」
「・・・ありがとう。」
ミサトが泣きそうな声で言った。
「よし、まだ出撃はしなくていいわ。でも、準備はしておいて頂戴。」
「了解。」
刹那の言葉とともに、ソレスタルビーイングの面々が、格納庫へと向かった。
「ミサトさん・・・」
マヤが心配そうに声をかける。
「大丈夫よ。彼らのことは信用できる。私はそう信じてる。」
修理が終わらないエヴァ。
過ぎていく時間。
そして、レイとマリが操るエヴァによって、使徒を撃退することができるのか。
果たして、その運命は・・・・