「あれが使徒・・・この世界の歪み・・・」
刹那はモニター越しの使徒を睨んだ。
しかし、すぐいつもの穏やかな顔に戻った。
「刹那・・・?」
アレルヤが心配そうに声をかける。
「なんでもない。気にするな、アレルヤ。」
微笑みながら言う刹那。
しかし、アレルヤにはどこかそんな刹那に違和感を感じた。
「イスラフェルが分裂したですって・・・!?まずいわね、こんなことになるとは想像してなかったわ。」
ミサトは焦りを隠すことができない。
「ミサト!ここは何とかしてやりきるから早く作戦考えてよ!」
アスカの怒号がNERV本部に響く。
「でも相手は使徒よ!?無茶だわ!」
「ああ!もうそないなこと言わんでええって!こっちは三機、向こうは二機!数ではこっちが上や!」
「トウジ君・・・分かったわ、三分間よ。その間、何としてでも切り抜けて!」
「分かったわ!三分と言わず、何時間でも相手してやるわああああ!!!」
「やるしかないで!ここでやれへんかったら、男が廃るで!」
アスカとトウジは既にスイッチが入っている。
「怖いけど・・・僕がやらなきゃ、誰もやらないじゃないか・・・」
先程までの威勢はどこに行ったのか、シンジの手は震えている。
イスラフェルを倒したと思ったら分裂し、更に攻撃の激しさが増していた。
シンジは、その光景に恐れてしまったのだ。
「シンジー!何やってんのよ・・・ってキャア!」
「アスカ!」
アスカがイスラフェルの攻撃を食らってしまった。
「どうしよう・・・アスカが・・・」
シンジはもうエヴァを動かす気力さえなかった。
「(もう・・・ダメだ・・・!)」
「諦めるな!」
NERV本部にいた刹那がシンジに呼びかける。
その場にいた全員が刹那に注目した。
「え・・・」
「お前は何のためにその機体に乗っている。」
「そ、それは・・・」
シンジは黙った。
刹那はシンジの応答を待つ。
「僕は、みんなを守りたい・・・もう誰かが死んでいくのは嫌なんだ。」
「僕が、皆を助けるんだ!」
シンジの叫びとともにエヴァンゲリオンが動き出す。
「刹那君・・・」
「奴の背中を押してやっただけだ。あとは、あいつ次第だ。」
「彼は、面白い子だな、碇。」
コウゾウがゲンドウに話しかける。
「さてな。私には関係あるまい。」
ゲンドウは相変わらず冷たかった。
「うおおおおおおおおお!!!」
シンジが乗るエヴァ初号機のパンチがイスラフェルにヒットした。
「碇!ようやくやるようになったんか!」
「心配かけてごめん。もう大丈夫!」
「ちょっと!アタシにも言うことあるんじゃないの!?」
「アスカ・・・ごめんね。」
「・・・ふん、早くしなさい。作戦時間が過ぎちゃうわ。」
「分かってるよ!」
シンジとアスカとトウジのコンビネーション技がイスラフェルを貫く。
「よし!あと一体―――」
シンジがそう言った瞬間、倒したはずのイスラフェルが復活した。
「なんでや!?あいつは不死身なんか!?」
「解析完了!敵は、二体同時に倒さないと撃墜するのは不可能なようです!!」
マヤが解析したことをミサトに伝える。
「こうなったら・・・」
ミサトが奥の手を出す。
「トウジくんは一旦下がって!」
「はぁ!?なんでや!?」
「いいから!」
「っく、了解や!」
ミサトの掛け声とともに、トウジの乗る参号機が後退し始めた。
「ミサト!何考えてるの!?・・・ってまさか・・・」
アスカはミサトの意図がすぐには読めなかった。
しかし、その後、理由が分かった。
「『シンジ君、アスカとのコンビネーション、できるわね?』」
「【アレ】、ですか?」
「『そうよ。アスカも、それでいいわね?』」
「面倒だけど・・・やるしかないわね。」
「ミサト・・・【アレ】・・・とは?」
「見ていればわかるわ。」
スメラギがよく分からないと言わんばかりの表情でモニターを見つめる。
「いいわね?最初からフル稼働、最大千速でいくわよ。」
「分かってる、62秒でケリをつける。」
そして二人の攻撃が始まる。
二人の攻撃はまるでダンスをしているかのように、優雅で、華麗で、何より美しかった。
分裂したイスラフェルを二人同時に追い込む。
一つになったイスラフェルにシンジとアスカの蹴りが炸裂した。
核を壊し、イスラフェルを撃破。
NERV本部にいた誰もがそのコンビネーションに魅了された。
「ありゃ、すごいな。息ピッタリで敵さん手も足も出てなかったからな〜。」
ロックオンは感動していた。
「なぁ?刹那。」
話を刹那に振る。
「・・・」
刹那は少し黙ってから、
「奴らは俺たちにない何かを持っている。俺たちにはない・・・何かが。」
刹那は真のイノベイターとして進化した。
その力なのか、何かを感じ取ったのだろう。
「ぶっつけ本番だったけど、なんとか行けたわね・・・」
アスカがため息をついた。
「中々やるじゃない。見直したわ。」
「いや、僕だけの力じゃない。」
「え?」
アスカが聞き返す。
「あの子・・・刹那が声をかけてくれなかったら、あのままダメになってたと思う。」
シンジはあの時、刹那に声を掛けてもらったことが嬉しかった。
自分の周りに、そんな人が多くはなかったから・・・
「後で、感謝しなきゃね。」
二人が帰還するその先には、NERVの皆と、ソレスタルビーイングが待っている。
皆が出来る、最高の笑顔で。