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漆黒の竜人となりし者 異変の兆候
作者:ゼクス   2012/07/06(金) 22:58公開   ID:EwNqc733l4I
 緑溢れる森の中でデジモン達は仲良く笑い、楽しそうに平穏な日々を過ごしていた。
 だが、突如として深く力強い足音が森の奥の方向から響き始めると、デジモン達はその足音が響く方から迫って来る巨大な気配に恐怖を感じて、我先へと気配が迫って来る方向とは逆方向に向かって逃げて行く。
 そして辺りにデジモン達の気配が感じられなくなった瞬間、二本の巨木が一瞬の内に真っ二つに切り裂かれ、倒れた巨木を踏み砕きながらブラックウォーグレイモンが姿を現す。
 ブラックウォーグレイモンは森の中をゆっくりと前へと進みながら内心で自身について考え始める。

(俺は一体何なんだ?・・・いや、この体に関する知識は浮かんで来た・・俺はこの世界を歪める存在・・世界を護る守護獣デジモンを封じる為にダークタワーから生まれた世界の異物)

 デジタルワールドにダークタワーが建てられている本当の意味はデジタルワールドの位相をずらし、ダークタワーが建つ東方のエリアの守護獣デジモンを封じ込めると言う目的の為に建てられていた。
 その為に今だ東方のエリアに数え切れないほど建っているダークタワーと、百本のダークタワーが集まって生まれた存在であるブラックウォーグレイモンがデジタルワールドに存在する限り、東方を守護しているデジモンは目覚めることが出来たとしても、本来の力を発揮することが出来ない。
 その事を何故か知識として分かっているブラックウォーグレイモンは、自身がこれから如何すべきなのかと悩みながら前へと歩き続ける。

(・・・・・何故俺はこの世界の事を知識として知っている?・・いや、この世界に関する知識だけではない・・これから起きる事さえも知識のおかげで分かる・・一体俺は・・何なん・・・グウッ!)

 森の中を歩きながら今後の方針を決めようとしていると、突如としてブラックウォーグレイモンは歩みを止め、自身の胸を手で押さえ、苦しげに息を吐き出す。

(クッ!またか・・・・・この体の奥底から溢れて来る虚しさと虚無感は一体何なんだ?何故俺は虚しさを感じるんだ?)

 子供達の戦いから数日。ブラックウォーグレイモンは時々では在るが突如として強烈な虚しさと虚無感に襲われ続けていた。
 何故虚しさと虚無感が自身を襲って来るのかは分からなかったが、それでもその虚しさと虚無感はブラックウォーグレイモンを苦しめていた。

(これが知識の中にあるブラックウォーグレイモンを苦しめていた虚しさと虚無感だと言うのか?なるほど、これだけの虚しさと虚無感を味わい続けていれば、確かに自身の存在意義を悩む筈だな)

 そうブラックウォーグレイモンは内心で納得の声を上げると、虚しさと虚無感に襲われながらも歩みを再開し、森の奥にブラックウォーグレイモンは消えて行った。
 だが、ブラックウォーグレイモンは自身の精神が徐々に弱くなって来ていることに気がついていないのだった





 一方、現実世界では大輔達が自分達の通っている学校のパソコン室で、先の戦いでアルケニモンによって新たに生み出されたダークタワーデジモン-『ブラックウォーグレイモン』-について話し合っていた。

「ブラックウォーグレイモン・・・パイルドラモンでも勝てないなんて」

「相手は究極体のウォーグレイモンを模したダークタワーデジモンですもの。残念だけど、完全体のパイルドラモン一体だけでは勝てる可能性は低いわ。私が完全体に進化出来たとしても一人じゃ勝てないもの」

 大輔の呟きにテイルモンが慰める様に声を掛けると、全員が暗い空気に包まれる。
 その空気を変えようと、京はブラックウォーグレイモンの行動で疑問に思った事を呟く。

「でも、アルケニモン達まで平然と攻撃するなんて・・今までのダークタワーデジモンとはやっぱり違うって事なのかしら?」

「多分そうだろうね・・ブラックウォーグレイモンが一筋縄じゃ行かない相手なのは間違いないよ。せめて後一体完全体が居れば、何とかブラックウォーグレイモンに対抗出来るかもしれないけどね」

「・・・・その事なんだけどさ」

 タケルの今後のブラックウォーグレイモンに対する対策に、椅子の上に乗っていた青と白の体に両手足と尻尾を持ったぬいぐるみの様なデジモン-『チビモン』-が声を掛け、全員の視線がチビモンに集まる。

チビモン、世代/幼年期U、属性/なし、種族/幼竜型、必殺技/ホップアタック
青と白に両手足と尻尾を持った幼竜型デジモン、幼年期にしては珍しく両手足と尻尾を持ったデジモン。小さな両手で物をつかみ、両足でぴょんぴょん跳ねながら移動する事が出来る。寝る事が大好きで、目を離すとすぐに眠ってしまう。必殺技は、ぴょんぴょん跳ねながら相手に体当たりをする『ホップアタック』だ。

 自身を除いた全員の視線が集まったのを確認したチビモンは、顔を俯かせながらブラックウォーグレイモンに関して気になっていた事を話し出す。

「実はさ・・・あのブラックウォーグレイモン、何だかおかしいんだよ」

「おかしいって如何言う事だよ、チビモン?」

「俺がアイツに襲い掛かった時に、アイツ何だか何も分かっていないみたいだったんだ・・まるで普通のデジモンのように俺に対して叫んで来たんだ」

「ハアア〜〜?」

 チビモンの言葉に大輔は訝しげな声を上げ、他のメンバーも訝しげな視線をチビモンに向けた。
 ブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン。当然ながらダークタワーと言う物から生まれた為に心が在るはずが無い。
 現に今まで大輔達が戦って来た多数のダークタワーデジモンには心など宿っておらず、アルケニモンとマミーモンの指示に従うだけの操り人形のような存在だった。

「アイツはダークタワーデジモンだぜ。多分気のせいだ」

「う〜ん、そうかな?」

 大輔の言葉にチビモンは首を傾げ、何かを考え込むように両手を組む。
 確かに大輔の言うとおりブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン。本来ならば心など持つ筈が無い存在。
 その事が分かっている大輔達はチビモンの勘違いだとこの時は判断してしまった。だが、後にそれは誤りであった事に気がつく時には、“全てが遅かった”。






 数日後。岩山が立ち並ぶデジタルワールドの荒野。
 深い森を抜けたブラックウォーグレイモンは荒野を真っ直ぐに歩き続けていたが、その顔は酷く苦しげに歪んでいた。

「ハア、ハア、ハア・・・・・クッ!一体何なんだ!?」

 ブラックウォーグレイモンは叫ぶと共に近くの岩山を殴りつけ、岩山を跡形も無く粉砕するが、心を襲い続ける虚しさと虚無感を紛らわす事は出来なかった。

「・・・・・何故だ?何故こんなにも虚しいのだ・・・・俺は何故こんなにも虚しさを味あわねばならない・・・・俺は何故存在している?・・・・・・・誰でも良い、答えてくれ!!」

 そうブラックウォーグレイモンが悲痛の叫びを上げた。
 転生してから十数日。ブラックウォーグレイモンの心は限界に近付き始めていた。
 訳も分からずに世界を歪ませる存在として生み出され、その上に虚しさと虚無感に襲われ続けている。
 その上に自身がどのよう存在なのかを知識として理解してしまっているのだから、ブラックウォーグレイモンの心は追い込まれていた。

「グゥッ!!一体どうやったらこの虚しさを消せるのだ?俺は一体如何すれば良いんだ?」

『モオォォォォォォォーーーー!!』

「ムッ?」

 自身の背後から突如として聞こえて来た咆哮に、ブラックウォーグレイモンは背後を振り向いてみると、顔を仮面で覆い長い鼻と二本の巨大な牙を持ったマンモスの様なデジモン-『マンモン』-が二十体ほどブラックウォーグレイモンを睨みつけていた。

マンモン、世代/完全体、属性/ワクチン種、種族/古代獣型、必殺技/タスクストライクス、ツンドラブレス
古代に存在したマンモスの姿をしたデジモン。氷雪エリアで超圧縮され絶滅したと思われていたが、デジタルワールドの温暖化が氷を溶かしその中から復活した。暑さには弱いが原始のパワーで敵をなぎ払う。仮面の紋章には千里眼の力があり、遠くの敵も一目で発見できる。聴覚も発達しており、ボロボロの耳は、遠く離れた場所の音でも聞き分けられるという。必殺技は巨大な二本の牙で相手を突き刺す『タスクストライクス』と、鼻から氷の息を吹き出し、相手を氷づけにする『ツンドラブレス』だ。

「見つけたよ!」

「この前は、よくもやってくれたな!!」

 ブラックウォーグレイモンがマンモンの群れを睨んでいると、マンモンの背後の岩山の上から人間の姿に化けているアルケニモンとマミーモンが姿を現し、ブラックウォーグレイモンに怒りの視線と叫び声を放った。
 それに気がついたブラックウォーグレイモンは心の家から湧き上がって来る怒りに駆られて、右手のドラモンキラーの爪先に赤いエネルギー球を生み出し、アルケニモンとマミーモンを睨み付ける。

「生きていたか・・・やはり、『ガイアフォース』で消滅させて於くべきだった」

「何だって!?アンタ!一体誰のお陰で生まれたと思っているんだい!」

「そうだ!お前を生み出したのはアルケニモンだぞ!生みの親に逆らうのか!」

「ふん、生みの親だと?・・・笑わせるな!!」

 アルケニモンとマミーモンの叫びに、ブラックウォーグレイモンは怒りを顕にした。
 ブラックウォーグレイモンは知っている。目の前のアルケニモンとマミーモンの本当の狙いを。その目的の為に自分を生み出し、利用しようとしている事を。

「貴様らは今すぐに俺の前から消えろ!二度と俺の前に現れるな!貴様らの思い通りにだけは絶対に俺は成らん!!」

「冗談じゃないね!アンタを生み出すためにこっちがどれだけ苦労したと思っているんだい!!だったら無理やりにでもいう事を聞いて貰うよ!その為に貴重なダークタワー二百本を使って、このマンモン達を作り出したんだからね!」

「行け!マンモン達!!」

『モオオォォォォォォォォーーーーー!!!』

 マミーモンがマンモン達に向かって号令を放つと、マンモン達はブラックウォーグレイモンに向かって突進し、ブラックウォーグレイモンはマンモン達の群れの中に飲み込まれて行った。

「どうなった?」

 マンモンの群れの中に消えて行ったブラックウォーグレイモンの姿を見たマミーモンが疑問の声を上げた瞬間。

ーーーバリイィィィィィィィィン!!

『なっ!!完全体四体を一瞬で!!?』

 ブラックウォーグレイモンを飲み込んだ筈のマンモンの群れの内、四体が一瞬で消滅し、アルケニモンとマミーモンは驚愕の声を上げた。
 そして最初に立っていた場所から一歩も動いていなかったブラックウォーグレイモンは後方を振り返り、残っているマンモン達に向かって飛び掛かる。

ーーーブザン!!

ーーーバリイィィィィィィン!!

(何故だ!?)

 両手に装備したドラモンキラーを振り向き、二体のマンモンを一瞬の内に切り裂いて消滅させながら、ブラックウォーグレイモンは内心で疑問の叫びを上げ、次のマンモンに向かって飛び蹴りを放って、蹴り飛ばす

(何故なのだ!?消して弱い相手ではない!この前戦った子供達のデジモンよりも数は居る!それなのに!?)

 地面に着地すると同時に別方向から突進して来たマンモンの牙を受け止めながら、ブラックウォーグレイモンは内心で疑問の叫びを上げ続ける。
 そのまま牙を掴んでいた両手に力を全力で込めてマンモンを高く持ち上げ、別のマンモンに向かって投げつける。

ーーードゴオオオオオン!!

「何故だァァァァァァーーーー!!!????」

 投げつけられたマンモンは、別のマンモンへと衝突すると、そのまま岩山の方に吹き飛んで行った。
 しかし、それを行なったブラックウォーグレイモンには喜びなど一切存在せず、逆に疑問と困惑に満ち溢れながら、残っているマンモン達を見回す。

「何故だ!?何故だ!?何故戦っているのに虚しさが消えずに溢れて来る!!この虚しさは一体何なんだ!?」

「虚しさだって?フン、そんな物は錯覚さ!アンタもそいつ等と同じ様にダークタワーから作り出されたダークタワーデジモン何だからね!!」

 ブラックウォーグレイモンの疑問の叫びに対して、岩山の上に立っていたアルケニモンが叫んだ。
 それに対してブラックウォーグレイモンは憎悪に満ちた視線を、岩山の上に居るアルケニモンとマミーモンに向け、両手の間に負の力を集中させると巨大な赤いエネルギー球を作り上げて高く掲げる。

「消えろオォォォォォォォーーー!!!ガイア!!!」

「なっ!!逃げるよ!マミーモン!!」

「分かった!アルケニモン!!」

 ブラックウォーグレイモンがガイアフォースを放とうとしている事に気が付いたアルケニモンとマミーモンは慌てて、岩山から飛び降りる。
 だが、ブラックウォーグレイモンは気にせずにアルケニモン達が居た岩山に向かってガイアフォースを投げつける。

「フォーーース!!!!」

ーーードッゴオオオオオオオン!!

 ブラックウォーグレイモンの投げつけたガイアフォースは岩山にぶつかり、巨大な爆発が起きて岩山は跡形も無く消滅した。
 しかし、ブラックウォーグレイモンは不機嫌そうに岩山が在った場所を睨みつける。

「・・・・逃げられたか」

 アルケニモンとマミーモンに逃げられた事に気が付いたブラックウォーグレイモンは不機嫌そうな声を出すと、自身の後方に立っているマンモン達に顔を向ける。

「・・・・・何故俺は・・此処に居るんだ?・・・誰でもいい・・・答えてくれ・・・・・ウオォォォォォォォーーーーーー!!!!」

 悲しみの叫びを上げながらブラックウォーグレイモンはマンモン達の群れの中に飛び込むと、自身の周りに居るマンモン二体に、両手のドラモンキラーの刃で突き刺す。

『モオッ!!』

 ドラモンキラーの鍵爪の刃が深々と突き刺さったマンモンは、ドラモンキラーの刃から逃れようと暴れる。
 それに対してブラックウォーグレイモンは逃がさないと言うように、更に深くドラモンキラーの爪を突き刺し、二体のマンモンを頭上に掲げると、他のマンモンに向かって投げつける。

「オォォォォォォォーーーーー!!!」

ーーードゴオオオオン!!

 投げ付けられたマンモン達は、他のマンモン達に激突し吹き飛んで行く。
 即座にブラックウォーグレイモンは更なる攻撃をマンモン達に加えるために駆け出そうとする。
 しかし、駆け出そうとした瞬間に、幼いデジモン達の泣き声がブラックウォーグレイモンの耳に届いて来る。

『フエェェェェェェン!!フエェェェェェェェン!!』

「ハッ!!」

 突如として聞こえて来た泣き声に、ブラックウォーグレイモンは慌てて泣き声が聞こえて来た方に目を向けて見る。
 すると、赤い尻尾を九本持ったデジモンに、手足が無く、体が体毛に覆われ頭に角が一本だけ生えたデジモンが、互いに抱き合いながら大粒の涙を流して泣いていた。

エレキモン、世代/成長期、属性/データ種、種族/哺乳類型、必殺技/スパークリングサンダー
ツノモンの哺乳類的要素を残して進化した九本の尻尾を持った哺乳類型デジモン。好奇心が旺盛でいたずら好きな性格はツノモンから引き継いでいる。必殺技は尻尾から強力な電撃を放つ『スパークリングサンダー』だ。

ツノモン、世代/幼年期U、属性/なし、種族/レッサー型、必殺技/泡
プニモンの頭部の触手の1つが硬化した小型の幼年期デジモン。プニモンからより動物的進化をとげ、フサフサな体毛に体は覆われている。必殺技は、口から泡を吐き出して敵を怯ませる『泡』だ。

「モオォォォォォォーーーー!!!」

 エレキモンとツノモンが互いに抱き合いながら、泣き続けているとエレキモン達の後方からマンモンが走って来た。

『ヒィッ!!』

 自分達に迫って来るマンモンの姿を見たエレキモンとツノモンは恐怖の声を上げ、来るであろう衝撃に恐怖に震えながら目を瞑った。
 だが、何時まで経っても衝撃は来る事が無く、恐怖に震えながら目を開けて見ると、自分達に覆い被さるようにマンモンの圧し掛かりを受け続けているブラックウォーグレイモンの姿を目にする。

ーーーガアン!ガアアン!!

「グウッ!・・・・ウオォォォォォォーーーー!!!」

 マンモンの圧し掛かりにブラックウォーグレイモンは苦痛の声を上げるが、すぐさま力を振り絞り自身に圧し掛かって来るマンモンを弾き飛ばした。
 同時に残っているマンモン達に顔を向けながら、両手の間に巨大な赤いエネルギー球を生み出し、マンモン達に向かって投げつける。

「ガイアフォーーース!!!!」

ーーードッゴオオオオオオオオオオオン!!

 ブラックウォーグレイモンが放ったガイアフォースに寄って、残っていた全てのマンモン達は消滅した。
 それを確認したブラックウォーグレイモンは、自身が助けたエレキモンとツノモンの様子を確認しようと顔を向ける。

「大丈…」

『ウワァァァァァァーーーー!!!!』

 ブラックウォーグレイモンが声を掛けようとすると、エレキモンとツノモンはブラックウォーグレイモンの巨大すぎる力に恐怖を覚えたのか、悲鳴を上げながら逃げて行った。
 そして二人の姿が見えなくなると、ブラックウォーグレイモンはエレキモン達が向かった方向とは別方向に足を向け、悲しみに満ちた表情を浮かべながら歩き始める。

(・・・・・・・俺は何故この世界に居るんだ?・・・こんな虚しさと虚無感を味合い続けなければいけないほどの罪が俺には在るのか?・・・いや、そもそも俺は何故この世界の知識を知っているんだ?)

 ブラックウォーグレイモンの心は限界に近づき始めていた。
 最後の手段で在った戦えば虚しさと虚無感が消えるかもしれないと言う手段さえも無意味だった事に絶望し、自身が生まれた理由を考え続けながら当ても無く荒野を歩き続ける。
 そして夜が近づいて来たのか、夕日が荒野を照らし始める。だが、ブラックウォーグレイモンの足は止まることはなく前へと進んで行く。すると、突如として前方から声が聞こえて来た。

「やっと見つけた」

「・・・・・・お前は・・・・」

 聞こえて来た声にブラックウォーグレイモンは俯けていた顔を上げ、声を掛けて来た黄色い小型の肉食恐竜の様な姿をしたデジモン-『アグモン』-に顔を向けた。

アグモン、世代/成長期、属性/ワクチン種、種族/爬虫類型、必殺技/ベビーフレイム
獰猛でとても勇敢な性格で頼りになる爬虫類型デジモン。怖いもの知らずだが体はまだ成長の途中なので力は弱いが、成長期デジモンの代表的な存在でもあり、個体差も大きく、亜種もいくつか確認されているデジモンである。必殺技は、口から高熱の火炎の息を吐き出す『ベビーフレイム』だ。

 気がついてくれた事にアグモンは笑みを浮かべながら、ブラックウォーグレイモンに話しかける。

「ずっと君を探して居たんだよ。ああ、自己紹介が遅れたね、僕はアグモン。ワープ進化して」

「ウォーグレイモンに進化出来るのだろう。知っている」

「ッ!!」

 アグモンの言葉を繋ぐようにブラックウォーグレイモンは言葉を言い、アグモンは目を見開いた。
 会った事も無い筈のブラックウォーグレイモンが、自身の最終進化を知っていたのだから、驚くのも当然だろう。
 だが、ブラックウォーグレイモンはアグモンの様子に構わず、話を続ける。

「この世界に起きた出来事を俺は何故か知っている。選ばれし八人の子供達とお前を含めた選ばれし子供達のパートナーデジモンの事を知っている」

「・・・・君は一体?ダークタワーから生まれたダークタワーデジモンだって聞いていたけど。何か違う。君からはダークタワーデジモン達が持っていない何かを感じるよ」

「だろうな。俺にはどうやら心があるらしい・・・・だからこそ、お前に頼みがある」

「僕に頼み?」

「あぁ・・・・俺を破壊してくれ」

「ッ!!!」

 突然のブラックウォーグレイモンの申し出にアグモンは目を見開く。
 しかし、ブラックォーグレイモンはアグモンの様子に構わずに、アグモンが立っている岩の前で胡坐を汲むように座り込む。

「俺を破壊すればこの世界を守護するデジモンが目覚めるかも知れん。だから、俺を破壊しろ」

「・・・・・如何してそんなに生きる事に悲観的なんだ!?君には心が在るんだろう!?」

「・・・・・俺は疲れたんだ。訳も分からずにこの世界に生まれ、虚しさと虚無感を味わい続けるぐらいなら、死んだ方がマシだ。それにこのまま行けば俺は全てを憎んでしまう。そうなればこの世界を破壊する為に何をするのか分からん」

 ブラックウォーグレイモンは疲れ切っていた。
 最初はたまに襲ってくるだけの虚しさと虚無感だったが、今は絶えず虚しさと虚無感に襲われ続ける上に、先ほどのエレキモンとツノモンの事が心に堪えた。
 自身は世界に悪影響を与えてしまう存在。そんな存在を受け入れてくれる世界など存在していない。自らの知識もそれを語っていた。知識の中で自身ではないブラックウォーグレイモンは自らを受け入れてくれる世界を探すためにデジタルワールドを去ったが、結局デジタルワールドに戻って来た。
 故にブラックウォーグレイモンは自らの消滅をアグモンに願い出た。

「俺は生まれた時点で何処にも居場所が無い。だから殺せ」

 そう言いながらブラックウォーグレイモンは目を瞑った。
 目の前に居るアグモンに殺されるのなら悪くないと心から思っているのだ。

(此処で俺が死ねば歴史は大きく変わるだろうが、それでも構わない。俺はこのまま行けば世界を憎んでしまう。そうなれば、より世界に悪影響が起きるかも知れん。それだけは絶対に阻止せねば成らん)

 そう、ブラックウォーグレイモンは憎み始めていたのだ。自分と言う悪影響しか及ぼす事が出来ない存在を生み出すことになった全てを。
 そんな時にアグモンと出会えたのは僥倖だと思い、アグモンに心からの死を願った。
 しかし、何時までも攻撃は来ず、疑問の表情を浮かべて目を開けて見ると、悲しげな表情を浮かべて自分を見つめているアグモンが存在していた。

「・・・何故攻撃しない?」

「・・・・君は生きるべきだよ。僕には君を攻撃出来ない」

「何だと?・・・・言った筈だ。俺が存在する限りこの世界を守護しているデジモンは目覚めないと・・・そうなればこの世界の位相はずれ続け、滅ぶのかも知れんのだぞ?」

「うん、君が言う通りそうなのかも知れない。だけど、君には心が在る!他のダークタワーデジモン達とは違って心が!!だったら僕らの仲間に成れるかも知れない!」

「・・・・・仲間?」

 アグモンの言葉にブラックウォーグレイモンは呆気に取られたように呟いた。
 まさか、世界に悪影響を与えると告げたのにも関わらず、アグモンはブラックウォーグレイモンを仲間にすると言ってきたのだから、呆気に取られるのも当然だろう。

「お前は言っている意味が分かっているのか?俺は世界に悪影響を与え続ける存在。それを仲間にするだと?貴様は世界の敵を受け入れるというのか?」

「そんなの関係無いさ!君が心を持って生まれたのは僕らの仲間に成る為だよ!だから一緒に!!」

「馬鹿な!?俺は絶対にこの世界には受け入れられる事は無い!!」

「・・・・・僕には難しい事は分からないけど。君は君だよ。君は優しい人だ。だから僕らと友達に成れる!」

「・・・・・・世界を滅ぼすのかも知れんぞ?」

「その時は絶対に僕が君を止める!そして君に居場所を作って見せるよ!」

(甘い事を言う。そんな事は不可能だ。俺は存在自体が忌み嫌われる存在。それを受け入れる事など出来はしない!・・・・・だが)

 アグモンの言葉にブラックウォーグレイモンは内心で否定の叫びを上げるが、自身の手を突如として見始め、アグモンの言葉を深く考え始める。

(こいつ等は最終的には・・俺の知識の中にあるブラックウォーグレイモンの心を動かした。成らば、こいつ等と共に歩めば、虚しさと虚無感が無くなるかもしれない)

 そうブラックウォーグレイモンは考えると、自身の事を見つめるアグモンに目を向け質問する。

「出来るのか?俺の虚しさと虚無感を無くした上に、俺の居場所を作る事が?」

「して見せるさ!どんなに大変でも絶対にやり遂げて見せるよ!ちょっと時間は掛かるかもしれないけどね」

「・・・・・・フッ・・・馬鹿な奴だ・・・・だが、もう少しだけ・・・考えてみるか」

 アグモンの差し出して来た手と言葉にブラックウォーグレイモンは僅かながらも笑みを浮かべてアグモンに向かって右手を差し出し、互いの手が触れようとした瞬間。

(・・・・キサマノ・・・・・クツウヲ・・・・モット・・・・・ワタセ)

「ッ!!何ッ!?グアァァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

「如何したの!?」

 突如としてブラックウォーグレイモンの頭の中に声が響き、ブラックウォーグレイモンは驚愕の声を上げて辺りを見回そうとするが、その直前で信じられないほどの激痛が胸に走り、ブラックウォーグレイモンは胸を押さえながら苦痛の叫びを上げた。
 それを見たアグモンは心配そうにしながらブラックウォーグレイモンに質問するが、ブラックウォーグレイモンは答えずに最後に理性ある言葉をアグモンに告げる。

「グアァァァァァァァァーーーーー!!!頼む!俺を!俺を止め、ウワァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!」

「待って!?何処に!何処に行くんだ!ねえ、待ってよ!!」

 苦痛の叫びを上げ続けながらブラックウォーグレイモンは空へと飛び立ち、残されたアグモンはブラックウォーグレイモンの背に向かって叫び続けるが、ブラックウォーグレイモンは答えずにアグモンの前から飛び去って行った。





 その頃。とある場所では巨大な石-ホーリーストーンを護る為に戦う大輔達と、ホーリーストーンを破壊しようとする蜘蛛の様な足を持ったデジモン-『アルケニモン』、全身に包帯を巻いて、銃を右手に構えたデジモン-『マミーモン』、そして全身を白銀の鎧で覆い、巨大な剣を装備している騎士のようなデジモン‐『ナイトモン』が互いにぶつかり合っていた。

アルケニモン、世代/完全体、属性/ウィルス種、種族/魔獣型、必殺技/スパイダースレッド、プレデーションスパイダー
ギリシャ神話に登場する『蜘蛛の女王』の姿をした魔獣型デジモン。全てのドクグモンを統べる女王であり、知性が高く非常に狡猾なデジモン。人間のような姿に変身するのが得意で気を許して近づくとアルケニモンの餌食となってしまう。赤い服の女、アルケニモンの真の姿である。必殺技の『スパイダースレッド』は、両手から切れ味バツグンのワイヤーを出し、敵を切り刻む技であり、もう一つの『プレデーションスパイダー』は、腹部に隠れている、無数のドクグモンを相手に襲い掛からせる技である。

マミーモン、世代/完全体、属性/ウィルス種、種族/アンデット型、必殺技/スネークバンデージ、ネクロフォビア
エジプトのミイラの様な全身包帯巻きのアンデッド型デジモン。志半ばで消滅したデジモンの霊(残留データ)を召喚し操るところから別名『死霊使い(ネクロマンサー)』と呼ばれている。攻撃されると武器を振り回し徹底的に敵を叩きのめし、追い詰められると愛用の銃『オベリスク』を乱射する危険な存在である。青い服を着た片目の男、マミーモンの真の姿だ。必殺技は死霊を呼び出し、敵に攻撃する『ネクロフォビア』と、両腕の包帯を自由に操り、敵の体を締め上げる『スネークバンテージ』だ。

ナイトモン、世代/完全体、属性/データ種、種族/戦士型、必殺技/ベルセルクソード
重量級のクロンデジゾイド製の鎧で全身を覆った巨体の戦士型デジモン。甲冑を着込んでいても愛用の大剣を軽々と操るパワーを持っている。マスターの命令によっては、善にも悪にもなってしまうため悩んでいる。強大なパワーで自分の身長ほどもある大剣を軽々と振り回す。一度、主人と認めた者には忠実に従う頼もしいデジモンだ。必殺技は、敵めがけ、巨大な剣を振り下ろす『ベルセルクソード』だ。

「クソッ!!」

 マミーモンは悔しげな声を上げてホーリーストーンに向かってオベリスクから光線を発射するが、ホーリーストーンはマミーモンの攻撃を受けても傷一つ付かなかった。
 それを見たアルケニモンは幾ら攻撃を受けても傷一つ付かないホーリーストーンに焦りを覚えてマミーモンに質問する。

「マミーモン!!アンタ、ちゃんと事前に調査したんでしょうね!?」

「ウッ・・・・・いや行けると思ったんだけどな」

「何ですって!?」

 マミーモンのばつ悪そうな言葉を聞いたアルケニモンは、事前にちゃんと調査していなかった事に気が付き、怒りの叫びを上げた。
 その隙を逃さずに、目の辺りにヘッドスコープの様な機械をつけ、腰にベルトを巻き、両腕に鳥の翼を想わせる様な羽を付けた獣人型デジモン-シルフィーモンが両腕を合わせながら、アルケニモンに向かって突き出しエネルギー弾を放つ。

シルフィーモン、世代/完全体、属性/ワクチン種、種族/獣人型、必殺技/トップガン、デュアルソニック
アクィラモンとテイルモンがジョグレス進化した事によって生まれた獣人型デジモン。空高く飛び上がり、両腕を広げて滑空することも出来き格闘戦が得意でも在る。両耳の部分にあるレーダーで捕えた情報を画像処理し、頭部に装着されている『ヘッドマウンドディスプレイ』に表示されるため、昼夜関係なく敵を正確に捉えることができる。必殺技は両腕を前に突き出し、エネルギー弾を打ち出す『トップガン』と、超スピードで相手に向かって飛び、その衝撃波で攻撃する『デュアルソニック』だ。

「トップガン!!」

ーーードオオオオン!!

「ガアッ!!」

「アルケニモン!クソッ!!」

 シルフィーモンの放ったトップガンを受けたアルケニモンは苦痛の声を上げながら吹き飛び、それを見たマミーモンは怒りの表情を浮かべて、オベリスクをシルフィーモンに向けて乱射しようとする。
 その前にパイルドラモンがマミーモンに向かって右手を構え爪の部分からワイヤーを放ち、マミーモンの体に巻き付ける。

「エスグリーーマ!!!」

「なっ!?」

 自身の体に巻き付いてきたワイヤーにマミーモンは声を上げるが、パイルドラモンは気にせずに力を振り絞り倒れているアルケニモンに向かってマミーモンを投げつける。

「ウオォォォォォーーー!!!」

ーーードゴオン!!

『グエッ!!!』

 パイルドラモンに投げ付けられたマミーモンは悲鳴の様な声を上げながら、倒れていたアルケニモンに激突し、二人は揃ってカエルの潰れた様な声を上げて倒れ伏した。
 そして苦痛に苦しみながらもアルケニモンは子供達とパイルドラモン達を睨み付け、怒りの声を上げる。

「クソッ!!ブラックウォーグレイモンの奴さえ私達の言う事を聞けば!こんな奴ら敵じゃないって言うのに!!」

「全くだぜ。アイツ、俺達の言う事を聞く所か、俺達を殺そうとまでしやがった」

 アルケニモンとマミーモンはこの場には居ないブラックウォーグレイモンに悪態を付くが、そんな事は構わずに自分達に向かって来るパイルドラモン達に、慌ててアルケニモンが立ち上がろうとすると、遠くの方から位相の乱れが起き始めている事に気がつく。

「ブラックウォーグレイモン!!ヤバイ!退くよ、マミーモン!!」

「ああ、今度会ったら今度こそ殺されちまう!!」

 ブラックウォーグレイモンの接近に気が付いたアルケニモンとマミーモンは慌てて立ち上がり、その場から全力で逃げ出した。
 それを見た大輔達は笑みを浮かべて、逃げて行くアルケニモン達に向かって叫ぶ。

「ヘッ!もう現れんなよ!」

「私達の力に逃げちゃったみたいだね」

「そうみたいだね」

 京の言葉にヒカリは頷き、他の者達も笑みを浮かべて残っているナイトモンを倒そうと行動しようとした瞬間に、アルケニモン達が最後に見ていた方向を見ていた賢が否定の言葉を叫ぶ。

「いや!違う!!」

『エッ?』

 賢の言葉に全員が呆気に取られた表情を浮かべて、賢の見ている方向を見てみると、位相のずれを巻き起こしながら高速で接近する目を赤く光らせた漆黒の竜人-ブラックウォーグレイモンが存在していた。

「アレはッ!!」

「ブラックウォーグレイモン!!!」

 伊織の叫びに答える様にヒカリが叫んだ瞬間、ブラックウォーグレイモンは更にスピードを上げ、ホーリーストーンに向かい出し、ホーリーストーンを斬り付けていたナイトモンは自分に向かって来るブラックウォーグレイモンに剣を振り下ろそうとする。
 しかし、ブラックウォーグレイモンはナイトモンが剣を振り下ろす時間など与えないというようにスピードを上げて突撃し、ナイトモンを一撃で粉砕して地面に着地する。

「なっ!!アイツを!?」

「一撃で!!」

 ブラックウォーグレイモンの一撃で粉砕されたナイトモンを目撃した大輔と賢は目を見開きながら叫んだ。
 パイルドラモンですら梃子摺った相手がたったの一撃で、しかも必殺技などではなくただの体当たりで倒した事に驚愕と僅かな恐れを感じながら、地面に着地したブラックウォーグレイモンを大輔達は見つめる。
 しかし、大輔達の驚愕に構わず、ブラックウォーグレイモンは目を赤く光らせながらホーリーストーンに向かって歩き出す。

「・・・・・・コワス・・・・・コワス・・・・・オレニクツウヲ・・・・アタエルモノ・・・・・コワス」

「うん?アイツ、あんな喋り方だったか?」

 機械的な声で呟き続けるブラックウォーグレイモンの言葉を聞いたパイルドラモンは疑問の表情を浮かべて、ブラックウォーグレイモンを見つめた。
 以前に戦った時は、もっと感情が溢れていた様な気がしたのだが、今のブラックウォーグレイモンは機械的な声で呟き続けているのだから、疑問に想うのも当然だろう。
 しかし、ブラックウォーグレイモンはパイルドラモンの疑問に構わず、負の力を集中させ、巨大な赤いエネルギー球を生み出し、ホーリーストーンに向かって投げ付ける。

「ガイア・・・・・フォース・・・・・・ガイア・・・・・フォース」

ーーードゴオン!!ビキビキッ!!

 ブラックウォーグレイモンが連続で投げつけるガイアフォースによって、ホーリーストーンに次々と罅が走って行く。
 それを見た大輔達はこのままではホーリーストーンが破壊されてしまうと思い、慌ててパイルドラモン達に向かって叫ぶ。

「やばい!皆!アイツを止めるんだ!!」

『オオォォォォォォーーーー!!!」

 大輔の言葉に答える様に、パイルドラモン、シルフィーモン、アンキロモン、エンジェモンはブラックウォーグレイモンに向かって突撃する。
 自身に突撃して来るパイルドラモン達に気がついたブラックウォーグレイモンは背後を振り返り、パイルドラモン達に向かってガイアフォースを投げつける。

「ガイア・・・・・フォース」

ーーードッゴオオオオオオオン!!

『ウワァァァァァァァーーーーーーー!!!!!』

 ブラックウォーグレイモンの放ったガイアフォースに寄って巨大な爆発が起き、それに飲み込まれたパイルドラモン達は悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、幼年期や成長期にまで退化してしまった。
 それを見た大輔達は信じられないと言う表情を浮かべて、ホーリーストーンにガイアフォースを放ち続けるブラックウォーグレイモンを見つめる。

「パイルドラモン達が・・・・一撃で」

「まさか・・・・」

「プルルモン!!」

「プロットモン!!」

 大輔と賢が信じられないと言う表情を浮かべて言葉を呟くなか、京はピンク色の体に嘴の様なものを付けたデジモン-『プルルモン』に駆け寄り、ヒカリも犬の様なデジモン-『プロットモン』に駆け寄って、二人は悲痛な表情を浮かべながらそれぞれのデジモンを抱き締める。

プルルモン、世代/幼年期T、属性/なし、種族/スライム型、必殺技/酸の泡
ホークモンが幼年期Tまで退化してしまった姿。ポテっとした体はシリコンのようで、這うように前進するとタプタプとゆれるスライム型デジモン。小さい両ヒレは案外器用で、かゆい所にも手が届くがまだまだ飛ぶ事は不可能。必殺技は、酸性の泡を口から敵に飛ばして怯ませる『酸の泡』だ。

プロットモン、世代/成長期、属性/ワクチン種、種族/哺乳類型、必殺技/パピーハウリング
神聖系デジモンの子供で、デジモンの研究者たちがペットを元に実験として作った哺乳類型デジモン。本来ならば首に『ホーリーリング』を巻き付けているのだが、テイルモンの時に失ってしまった為に、『ホーリーリング』は失われている。テイルモンが成長期にまで退化してしまった姿。必殺技は超高音の鳴き声で、かなしばり状態に相手をして動けなくしてしまう『パピーハウリング』だ。

 京とヒカリがプルルモンとプロットモンを抱き上げる姿を見た大輔、賢、伊織、タケルもそれぞれ自分のパートナーデジモンを抱き上げ、ホーリーストーンの破壊を続けるブラックウォーグレイモンを見つめると、遂にホーリーストーンの罅は限界まで広がる。
 それと共にブラックウォーグレイモンは、最大のガイアフォースをホーリーストーンに向かって投げ付ける。

「ガイア・・・・フォース」

ーーードッゴオオオオオオオオオオオン!!

「・・・・・ホーリーストーンが」

「壊れる」

 ブラックウォーグレイモンの放った最後のガイアフォースに寄って巨大な爆発が起き、それを見た大輔と賢が悲痛な表情を浮かべて言葉を呟いた瞬間。

ーーーバキィィィィィィィィン!!!

 ホーリーストーンは粉々に砕け散った。
 それと共にホーリーストーンが在った場所から巨大な黒い竜巻が発生し、大輔達は慌て始める。

「やばい!!皆逃げるぞ!!」

『うん!!』

『はい!!』

 大輔の言葉に賢達は答え、自分達のパートナーを連れてその場から全員逃げ出した。
 そして残されたブラックウォーグレイモンは黒い竜巻の前で赤く輝かせていた瞳から、元の金色の瞳に戻ると共に、黒い竜巻と自身の両手を見つめ、ワナワナと震え始める。

「・・・・・俺が・・・・俺がやったのか?・・・・・何故だ・・・・・何故なんだアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーー!!!!!!!!?????」

 目の前で起きた惨状が信じられず、悲痛の叫びを黒い竜巻に向かってブラックウォーグレイモンは上げ続けるのだった。


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■作者からのメッセージ
第二話投稿です

漆黒の竜人シリーズを楽しみにしている人様
・全ての作品は残念ながら投稿は無理ですが、二作品だけは完結まで投稿します!

黒い鳩様
・此方こそ申し訳ありませんでした。
扱い的にはダークヒーローのままです。原作の流れは必ず変化して行きます。
最も本人はとある事情で人間だったことも生前のこともデジモンに関して以外は全く覚えていないんですけどね。これから宜しくお願いします。
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