ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ネギま!―剣製の凱歌― 第二章-第21話 三日目、永遠循環
作者:佐藤C   2012/11/05(月) 00:00公開   ID:CmMSlGZQwL.



※重要なお知らせ
 現在、シルフェニアはサーバー負荷軽減のために小説投稿掲示板が幾つかに分割されております。
 よってここから先、22話以降をお読みになる場合は、
 「○最新作品集」「○作品集(12/11/12)」「 ○作品集(12/07/06)」「 ○作品集(11/08/14)」のうち、いずれかをクリックしてページを移動してください。
 読者の皆様にご迷惑をおかけする事となり、誠に申し訳ありません。
 どうかこれからも、「ネギま!―剣製の凱歌―」をよろしくお願い致します。






 前回のあらすじ。
 刹那は石にされたけど何とか助かって木乃香に抱きつかれてウハウハ。
 そのままネギ一行は木乃香の実家にお邪魔しに行く事に。



「…皆さん着替えは済みましたか?」

「こっちは終わったわよ」

「よし、じゃあ行きましょう!!」

 貸し衣装から元の服装に着替え、彼らはシネマ村を出て関西呪術協会へ足を向けた。






「……ネギせんせー、どこ行くんだろう………?」


 ………それを遠くから不審げに見つめる、一人の少女の視線があった。









 第二章-第21話 三日目、永遠循環









「えへへへ〜。せっちゃ〜ん♪」

「お、お嬢様っ」

 京都の街中を歩きながら、木乃香はニコニコと顔を緩ませて刹那の腕に抱きついている。刹那の石化が解けた後からずっとの事だ。
 そんな彼女を諌めようとする刹那だが、効果は全く以て皆無である。

 二人のそんな微笑ましい様子を、他の面子が温かい眼差しで見守っていた。


「な、何を見てるんですかお二人ともっ!?
 わ…私達は少しゆっくり歩きますから、前の方にいてくださいっ!」


 木乃香を振り解こうとするものの、刹那の方も喜んでいるのはバレバレである。
 必死に言い訳する彼女に気を利かせ、ネギ達は素直に二人の前を歩くことにした。


(…良かったですね!!二人ともあんなに楽しそうで………)
(二人の友情に俺っち、涙が止まらねえぜ……グスッ)

 ネギとカモが嬉しそうに囁く傍で、
 刹那と木乃香を一番仲直りさせたがっていた明日菜は何も言わない。

 ………時折りこっそり後ろを見て、嬉しそうに笑うだけだった。




 ◇◇◇◇◇




 ――― 一行が辿り着いた先には。

 木々に覆われた山の手前に、「R毘古社かがびこのやしろ」と彫られた古い石碑が立っている。
 その隣りには道…山の奥に続く長い石階段があり、それを覆うように朱色の鳥居が連なっていた。


「千本鳥居ってヤツか。伏見神社ってのに似てるなー」
「…ここが関西呪術協会の本山……?」
「はい。この鳥居を抜けて少し進めば本殿です。そこまで行けば到着、ですが……」

 刹那はそこで言葉を切って懸念を示し、ネギは千草の台詞を思い出していた。



 『小太郎を本山にやったんは失敗やったな』



「……「小太郎」っていう人がどこかにいるかもしれません」

(そいつも撤退してくれてりゃあ楽なんだがな…)

 カモは顎に手を当てて、淡い期待を(木乃香がいるため)小声で呟く。
 …少しして、刹那とネギの視線がぶつかった。

「…ネギ先生、話し合ってもラチがあきません。行きましょう」
「はい、わかりました!」

「アスナとネギ君もウチに来るん?」
「話すと長くなるのよ……」

「よし、行きましょう!!」

 気を引き締めて石段に足をかけ、一同は最初の鳥居をくぐった。




 ・
 ・
 ・
 ・



「………………何も出てこないわよ」

 周囲を警戒しながら恐々と歩き続けて、既に五分近く経過している。
 気づけばネギ達は石段を登り切っていた。
 一行の前には今、変わらず鳥居に囲まれた、平坦な石畳の参道が延々と続いている光景が広がっている。

「変な魔力も感じられないです」

 それでも未だ怪しい気配は現れず、妙な変化は何もない。


「……いけるんじゃないの、コレって?」

「いえ、油断は禁物です」

(説得力ねーぜ刹那姉さん)

「な゛っ。」

 逸る明日菜を抑える刹那の腕には、未だ木乃香がくっついている。
 そして刹那の口角が、にやけるように若干上がっていたのだった。

(カ、カモ君!?ここれはお嬢様をお守りする為であって――)

「よぉし一気に行っちゃいます!!」
「OK!!」

「ああっ!?Σ(゜Д゜;) ネギ先生、アスナさんっ!?」

 威い良く走りだした二人(with一匹)に呆気に取られ、思わず刹那は声を上げた。

(安心しな!俺っち達が先に行って、罠が無いか確かめてくるからよ!!)

「そうではなくて! 離れるのが危険だと言っ――……ああ……」

 刹那が引き留めようとした時にはもう、彼らの背中はほとんど見えなくなっていた。


「…よーわからんけど、元気出してなせっちゃん」

「………ありがとうございます…………ぐすっ…」

 肩を落として落ち込む刹那には、その優しさが辛かった。




 ・
 ・
 ・



『…へヘッ……!』


 ………少年の様な声が、誰の耳にも届くことなく山の中で木霊した。




 ◇◇◇◇◇



『フェイトはん、本当にこのお仕事続ける気なんですかー?依頼主が捕まってしもたんですよー?』

『…そうは言うけどツクヨミ。
 あなただってこの依頼しごとがこんな所で終わるのは困るだろう?』

『それはもう、刹那センパイとはお預けくらってしまいましたしー?
 贅沢ゆーたら、あの赤毛のおにーさんとももう一度――…♪』

『なら少しだけ僕に付き合ってくれないかな。大丈夫、千草さんを救出する手立てはあるから』

『………本山の結界を甘く見てはるんやったら、エライ目に遭いますよー?
 まあ楽しそーですし、上手くいくんを見届けたら喜んでご協力しますけど〜』

『うん、それで十分だよ』

『それはそうとー……コタロー君は放っておいていいんですかー?』

『ああ。このまま簡単に本山まで着いてしまったら、お姫様達も詰まらないだろう?』


“このまま犬上小太郎には、彼らを持て成してもらおうと思ってね――――”




 ◇◇◇◇◇



 先行したネギ達とは違い、ゆっくりと木乃香の歩調に合わせて進む二人。
 するとその先に現れた見慣れぬ物体に、木乃香は思わず口にした。

「あれー?せっちゃん、「立ち入り禁止」やて」

 今までこんなことあったっけ?と、木乃香はコテンと首を傾げる。

 対して刹那は、自分の顔から血の気が引けていくのがわかった。


(これは……。――罠か…!!)


 ……恐らく、看板の先に進むと結界か何かに取り込まれるのだろう。
 この看板は一般人が侵入しない為の一応の配慮であり、それは言外に…これ以上の獲物・・・・・・・は要らないと言っている。

 ………つまり既に、ネギ達が結界に囚われている可能性が高いと推測できた。


(私達を捕えるためか、足止めするためか……。どちらにしろ閉鎖性が高いのは間違いない)


 「どうする?」と、刹那は自問する。


 ネギ達を置いて……見捨てて木乃香を本山に連れていくか。

 ネギ達を助けるために、木乃香を連れて得体の知れない空間に乗り込むか。

 木乃香を一人残して刹那じぶんだけが助けに行く…等は論外だ。



(―――――………。)






『逃がしませんよ!!このかさんは僕の生徒で、大事な友達です!!』

『このかから…離れなさいッ!!』





(…………大丈夫。大丈夫だ…あの二人なら………!!)






「……お嬢様、こちらへ」

「んー?」

 「立ち入り禁止」の看板が置かれた鳥居を避け、少し険しい獣道を選んで進む。
 そうして木乃香の手を引いて行く刹那は………険しい顔をして口を固く結んでいた。


(お嬢様を送り届けたら必ず……すぐに戻ります……!)


 自分の足がどんどん速くなっている事に気づかぬまま、刹那は足早に木乃香の手を引いていった。




 ◇◇◇◇◇



 ………その頃。


「…あ、このお茶美味しい」
「このサンドイッチも美味しいですよー」

 赤い布がかけられた和風の長椅子に、ネギと明日菜が隣り合って座っている。
 二人はすぐ側の自販機で買った緑茶の缶を握り、サンドイッチを口にしていた。


「うわ!見てくださいアスナさん!ここ川がありますよ!!」
「ホントだわ!キレイねー」

 よく見れば近くの竹林が下りの傾斜になっていて、その下では清らかな水が音をたてて流れていた。


 どこまでも快晴の青空を、白い雲が雄大に流れていく。
 やわらかな風が吹けば、竹林がそれに揺られてザワザワと音を出す。
 同時に下を流れる川から、澄んだ水音が奏でられる。
 暖かい太陽の下、陽気につられて小鳥もさえずりだしていた。



「………平和ね――」
「ですねー……」

 もう一口だけお茶を含んで喉を潤し、二人は「ほぅ…」と息を吐いて、ゆっくり肩の力を抜いた。

「…あ。アスナさん、スズメが寄ってきましたよ」
「サンドイッチのパン屑でも欲しいのかしら。ほーら、チチチ…♪」



「……いい加減にしろよぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」



 ――バサバサッ!!

 カモの怒声が山中に響き渡る。
 当然スズメも周囲の小鳥も、慌てて空に飛んでいった。

「あっ逃げちゃった……はあ。
 どうしたのよカモ?そんなにカリカリしちゃって」

「カモ君、折角の京都なんだからゆっくりしようよ。ほら落ち着いて」

「この状況で何を落ち着いてられんだよ!?」

 二人はいきなり叫んだカモを宥めようとする。
 だが椅子に座る二人を足元から見上げるカモは、変わらずいきり立ったままである。

「いいか兄貴に姐さん!! 俺っち達は今――閉じ込められてるんだぜ!?」


 …そう、いまネギ達が居るのは千本鳥居の中であってそうではない。

 それは鳥居を触媒にして張られた…半径500mほどの半球場閉鎖結界、「無間方処のしゅ」。
 結界の「端」に触れると反対方向の端に出る―――すなわち「無限ループ」である。


「だって私は魔法なんてわかんないし。考えたってしょーがないじゃない」

 前に進むも後ろへ戻るも…もはや彼らが何処かへ向かう事など出来ず。

「陰陽術には詳しくないので…僕もちょっと」

 ……そして…脱出する手段も無い―――。


「「刹那さんの助けを待ってようよ」」


 脱出方法だけでなく、危機感も皆無でした♪(*ゝω・)b⌒☆


「だぁぁぁぁかぁぁぁぁらあぁぁぁぁあああ!!
 俺っち達がこうしてのんびりしてる間にも!このか姉さんが襲われてるかもしれねえじゃねえか!!」

 当然その可能性を憂慮すべき事態である。
 しかしそんな…カモの尤もな物言いに対しても、二人は動揺する事なく平然と言葉を返した。

「大丈夫でしょ。刹那さんがついてるし、あとネギの話だと士郎さんもちゃんといるらしいし」
「カモ君、シネマ村で鬼の矢を撃ち落としてくれたの、あれ多分シロウだよ」


 ………………。


「なるほど、旦那がいるなら安心だな。ふぅ〜焦ったぜ。
 じゃ俺っちもゆっくりするかー。姐さんちょっと、すまねぇがおしるこのボタン押してくれ」


 ……カモミール、お前もか…。


「至れり尽くせりよねー。休憩所にトイレ、無料自販機にお弁当まであるなんて」

 ――ピッ。…ガシャッ、ゴトッ

「多分、この結界を張った術者のためじゃないでしょうか」

「ああ、魔法理論だとこの手の結界は術者も中に居る傾向ケースが多いからな。後は…標的をちゃんと閉じ込めたかどうかの確認とかか?
 おっとサンキュー姐さん。……グビグビ……お、美味え」

「そうだ、ちょっと魔法障壁の調整をしておこうっと。鬼の矢くらい防げるようにしておかないとね」

「ふぅーん?そんなちょちょっと出来ちゃうもんなの?」

「いやいや姐さん、そんなの兄貴くらいのもんだぜ」




「ナメとんのかお前らーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」(゜Д゜#)




 再び和み始めたネギ達の斜め上方、そこから怒号が飛んで来た。
 しかしな声の主よ、叫びツッコミというネタは既にカモがやっているのだ……ふ、遅いな…!




 ◇◇◇◇◇



「だ、誰!?」

 声がした方に顔を向ける。
 するとネギ達がいる休憩所から遥か遠くの竹の上に……白いニット帽を被る学ラン姿の少年がいた。

「…ちょっとネギ。アレってゲームセンターであんたと対戦した子じゃない?」

「あ、そうですね。あの子もここに閉じ込められちゃったのかな?
 ていうかアスナさんよく見えますね。僕は魔法で視力を良くしないと見えませんよー」

 二人は日光を遮るように、揃って目の上に手を翳して会話する。
 明日菜はネギの言葉に気を良くして、腰に手を当てて胸を張った。

「ふふん、体力には自信あるって言ったでしょ?」
「姐さん、それ体力じゃねえ」

「聞いとるんかコラァ!! フン…西洋魔術師のクセに舐めくさりよって。
 ここから出たかったら俺を倒すしかないで!!」

 また和みかけた雰囲気を吹き飛ばすように、少年はネギ達に啖呵を切って挑発する。
 その台詞は少年が、木乃香を狙う一味の仲間という事を意味していた。


「え……という事はまさか、君が「小太郎」くん!?」

 言うとネギは背負った杖を引き抜き、それを両手で握って構えた。

「て、敵ってコト!?じゃあ今頃このかは……!?」

《いえご安心を。このかお嬢様は無事です!》

「「「へ?」」」」

 突然頭上から聞こえた声に、一同は呆けた声を出す。
 ……視線を上にずらしていくと、ネギと明日菜の頭の上に何かが浮いている。
 それは……。



「……せ、刹那さん…なの?」


 そこには白い道着と緋袴姿をした、二頭身の刹那が浮いていた。


《あ・はい。連絡用の分身のようなものです。ちびせつなとお呼びください!》

 言うと彼女は丁寧にお辞儀をして、ペコリと小さな頭を下げた。あああ可愛いなぁもう。(作者の私見が多分に含まれております)


《もうすぐお嬢様を本山にお入れすることができます。
 そうすればすぐに本体が助けに来ますので、それまでなんとか耐えてください!》

「え?でも…」



「あの子をやっつければ出られるのよね?」

《…えっ》

 明日菜の台詞に、ちびせつなは言葉に詰まった。
 必死な様子の彼女とは対称に、明日菜は不思議そうな顔をして学ラン姿の少年を見ている。

 確かに敵はまだ少年だ。しかしそれでも一応、本山の直前に仕掛けられた罠を一人で任せられる程度の力はある……筈なのだが。


「………ええ度胸しとるやんけ姉ちゃん、デカイ口叩けんのもそこまでやで。
 そない簡単に俺を倒せる思うなや……!!」


「お、おい姐さん!!」
「アスナさん!!何かあの子怒ってますよーー!!」
「えっ、ちょっと私の所為!?」
《………。(汗)》

 明日菜の態度に少年は目を吊り上げ、低い声で息を吐く。
 そして彼は掌を上に掲げ、雄叫びを上げるようにしてその名を呼んだ。


「―――来い!!『鬼蜘蛛』!!」


 ―――ザザザザザザザザッ……!!


「キャッ!?ちょっと何!?」
「…な、何か来ます!」

 周囲の竹林を、何かが不気味に走り抜ける音が響く。
 ――音は確実に、徐々に彼らに近づいている。

「き、きやがれっ!!」
《…この気配は……!?》

 ちびせつなが呟いた直後……『ソレ』はネギ達の真上・・に降ってきた。


『わーーーーーーーーーーーーーっ!!?』


 落下してくる何かから逃れるべく、ネギ達は悲鳴を上げて休憩所から参道に飛び出した。


 ―――バキバキッ!!―――ズズゥン!!!


 ……舞い散る竹の葉、立ち込める土煙。
 竹を折り散らかし、地面を揺らし、轟音を響かせて彼らの前に姿を現したのは……!!



「………デ、デカイ蜘蛛……!!」

「見たまんまの感想だなオイ」

 それは胴体に梵字が描かれた、巨大なクモだった。
 ただし通常のそれと違い、毛に覆われた十本の太い足を持ち、頭部に鬼を思わせる二つの角を生やしている。
 そして最も顕著な違いが―――その蜘蛛が、人間を遥かに越える巨体の持ち主だという事だ。

 気づけば少年…小太郎も、粉砕された休憩所の残った屋根に下り立っていた。
 自信に満ちた笑みを貼りつけたまま彼はネギ達の様子を見ている。


(あのおサルのお姉さんと同じなら…あのクモは式神の「護鬼」?
 という事は一昨日と同じで、護鬼VS従者、陰陽術師VS西洋魔術師の戦いになるってことか………!!)

 そう考えて、ここから先の戦略を立てようとしたネギに、



 ――――誰かが、警鐘を鳴らした。



『……これで勝ったつもりなのか?さあ、呪文を唱えてみるがいい』

『く……先生、この前も言ったよな?この程度で勝ったつもりなのか・・・・・・・・・・・・・・と。
 15年の苦渋を舐めた私が、この類の罠になんの対処もしていなかったと思うか?』





「…ネギ!!」
「! ハ、ハイ!!」

 明日菜の声でハッとして、ネギは思考に沈んだ意識を浮上させた。


(そうだ、今は考え事をしてる場合じゃない…!)


「契約執行90秒間!!ネギの従者『神楽坂明日菜』!!」

 主人の魔力を従者に与える、仮契約カードの「契約執行」。
 明日菜の身体が仄かに輝き、身に纏う魔力の鎧が攻防一体の力を現す。


 不気味に佇む鬼蜘蛛と、不敵にこちらを見下ろす小太郎。
 ネギ達は戦闘準備を整えて、臨戦態勢で彼らに向けて視線をぶつける。

「よーし、いくわよっ!!」


(―――………。)






“……ラス・テル・マ・スキル・マギステル―――”


 明日菜が駆け出すと同時、ネギは静かに呪文を唱えた。




 ◇◇◇◇◇



 刹那と木乃香が去った後。
 立て看板の前で立ち止まった赤い髪の青年は……嬉しそうに言葉を漏らした。

「………成長したな、刹那」


 その台詞は、刹那が選択した行動によるものだ。

 ……かつての刹那なら、ただ木乃香を優先するためだけの理由で判断を下しただろう。

 だが今回は違う。
 刹那は…ネギと明日菜を「信頼して」判断した。
 盲目な考えによらず、大事なものを秤にかけ、事態を十分に吟味して。

 信頼しているが故に、信じるに足る大切な人間を、危険の最中さなかに置いて進む。それは辛く、不安もある。

 だが…それでも刹那は前に進む。

 彼女が選んだのは、「信じること」だからだ。


「さぁて、可愛い幼馴染みの為にいっちょやるか」

 そのまま彼――士郎は、立て看板の一番近くの朱い鳥居に手を触れた。

(術式解析……開始。)


同調、開始トレース・オン

 ネギ達を捕らえた結界、その正体を見極める―――。






「…ええと、あの人は――……。…あれ、立ち入り禁止ー…?」


 彼の背中を後方から見つめて、紺色の髪の少女が呟いた。





 ◇◇◇◇◇



「ガキだからって手加減しないわよ―――!!」

(うお!?あの姉ちゃん速っ!!?)

 一般人離れした速度に小太郎が目を瞠る。
 しかし彼はこの直後、さらなる驚きに目を見開く。


 ―――バガァンッ!!!


 明日菜が走る勢いそのままに突き出した、力任せの右ストレート。
 ただそれだけで鬼蜘蛛の巨体が宙に浮いて仰向けにひっくり返った。

 ――ズシィイン……!!

「おおっ!?」

《くも〜、クモぉ〜!!》

 鬼蜘蛛が足をバタつかせて足掻く間に、明日菜は仮契約カードを手にして叫ぶ。

来たれアデアット!!えーーーーい!!」


 ――ボシュウウゥゥゥ………!!


 『ハマノツルギ』を一振りすれば、鬼蜘蛛は呆気なく送り還され一枚のお札に戻る。まさに瞬殺だった。


「うおおっ!や、やるじゃんあたしってば!!」

《おお!》
「アスナさんスゴイ!!」
「さすが姐さん!!いくら契約執行してるからって普通はあんなパワー出ねえよ!!」

「へっへーん♪どんなもんよ!!」

 いや明日菜さん。
 体力自慢としては誇るべきかもしれませんが…女子中学生としてはどーよ?


「………あっははは!!やるな姉ちゃん!!
 式祓いの力を持つ妙な中学生がいるゆーから防御の固いの連れてきたのに、あっさりお札に戻されてしもたわ」

 式神が倒されたにも関わらず、小太郎には焦りが見えない。
 …どころか逆に、明日菜を認め称える程の余裕があった。

 だが突然彼は一転して、不機嫌そうな表情でネギを指差した。


「でもお前は大したことないなチビ助。スゴイんは姉ちゃんだけや。
 女に守ってもらって恥ずかしくないんか?……だから西洋魔術師はキライなんや」

「ムッ……!」

 その言葉が何故だか、ネギには無性に腹立たしかった。


「ふんっ、護鬼ちゃんやられちゃったからって負け惜しみね!カッコ悪いわよボク!!」

「おうよ、もうてめえに勝ち目はねえ!!降参するなら今のうちだぜ!!」

 そんな事を言われても、小太郎は未だ笑みを崩さない。
 追い詰められたにも関わらず、ニット帽を被り直して余裕の表情を浮かべていた。


「アンタら何かカン違いしてへんか。俺は術士とちゃうで」

「――へ。」

《!! 気をつけてください、もしや奴は……!!》




 小太郎が屋根を蹴ったと思うと、―――彼は次の瞬間には・・・・・・明日菜の目前に迫っていた。

「わ…っ!?こ、このぉ!!」

「ははっ、動きは素人か!ンなモン当たらんわ!!オラァッ!!」

「キャッ!?」

 小太郎は振り回される明日菜のハリセンを容易に躱し、足払いで彼女を転倒させる。
 間を置かず直ぐさま体勢を入れ替えて彼はネギに突進した。

「っ!! ラス・テル・マ・スキル・マギステル!!『風花フランス武装解除エクサルマティオー』!!」

 対象が身に着けている――武装どころか衣類も含む――全ての物を花弁に変えて敵を無力化する『風花・武装解除』。
 光線状に放たれたその呪文は、呆気なく小太郎に命中して弾かれた・・・・

「えっ!?」

 ネギは驚愕するより先に混乱した。一体何故。何が起こったのかと。
 とはいえ全く効果が無かった訳ではない。
 しかし『風花・武装解除』によって花弁と消えたのは……何故か小太郎のニット帽のみに留まった。

 ネギが混乱から立ち直れずにいる隙に、小太郎は接近して右腕を大きく振りかぶる。

「…! デ、『風盾デフレクシオ』―――あぐっ!!」

 魔法障壁で威力が緩和されたにも関わらず、ネギの体は地面をワンバウンドして吹き飛んだ。
 それを見て明日菜が悲鳴を上げる。

「ネ、ネギっ!!」

「まだまだぁっ!!」

 追撃の手は緩まない。
 吹き飛ぶネギに、獲物を見る眼で視線を飛ばす小太郎と――――ネギの視線が、交差した。


「――風精召喚…っ!!」


 追い打ちをかけようとする小太郎の前に、七人のネギが立ち塞がった。

 その呪文は、術者の姿を模倣して戦う風の精霊…それを喚び出して使役する召喚魔法。
 風精召喚『剣を執る戦友コントゥベルナーリア・グラディアーリア』。


迎え撃てコントラー・プーグネント!!」

「よーやく本気かチビ助!!けどなんや、こんなもんっ!!」

 迫り来る精霊を視界に収めても気圧される事なく、小太郎は気炎を吐いて駆け出した。




 ◇◇◇◇◇



 繰り出す拳打、肘打ち、蹴りによって、一度に三体の精霊が倒される。
 そのまま彼は懐からクナイを取り出し、それを投げつけて更に三体撃破する。
 そして最後の一体を、力任せに殴って消滅させる。

 小太郎は三秒かからず、七柱の精霊を撃破した。


「ちょ、ちょっと!!あの子すごく強いじゃない!!」
「メチャクチャ戦い慣れしてやがる!!」

 明日菜とカモは揃って驚愕の声を上げる。
 しかし小太郎が風精と戦っている間にネギも、距離をとって呪文の詠唱を終えていた。


「『魔法の射手サギタ・マギカ』・連弾セリエス光の11矢ルーキス!!」

「うおおっ!?」


 ―――バキキキキキキキキキキキンッ!!!!


「なっ、またかよ!?」

 その光景にカモが叫ぶ。
 魔法の十一矢は激しい音を上げながらも、武装解除と同じように小太郎から弾かれた。


(危なっ!魔法の矢か、なんちゅー威力や!! ……っ!?)


「闇夜切り裂く一条の光、我が手に宿りて敵を喰らえ!!」

「あ、しまっ…」

「『白き雷フルグラティオー・アルビカンス』!!!」


 ―――ビシャアァァンンッ!!!


「ぐぁぁあああああっ!?」

 『魔法の射手』を受けて速度を落とした小太郎に、ネギの魔法が直撃した。
 掌から放たれた雷撃が炸裂し、辺りが一瞬閃光に覆われる。

 ……視界が戻ると、弾けた雷電によって、ネギの正面には土煙が立ち込めていた。


「…す、すげえぜ兄貴!!吹き飛ばされながら"風精召喚"、それで時間を稼いで"魔法の射手"に"白き雷"!!
 初めての対戦士魔法戦闘とは思えねえ!!」

「か、雷!?何よネギも結構スゴイじゃない!!」

「っ……! …ゼェ…ハッ…!」

 ネギは右手を前に突き出したまま、肩で荒い息をしていた。
 吹き飛ばされて切った額から、一筋の血が滴っている。

 ちびせつなはその様を、思案顔をして顎に手を触れながら見つめていた。


《(殴られながら呪文を準備して迎撃するなど、10歳の戦い方とは思えません。
 そしてそれを実行する気力と、成功させる才気……ネギ先生の一体どこから…)》



 そうしている間にも、辺りに立ち込める土煙は未だ晴れず…小太郎の様子も窺い知れない。


「………にしても出て来ねえな。やったんじゃねえか?」

《…いえ、まだです!!》


 ―――ボフッ!!

 ちびせつなの言葉通り、土煙から無傷の・・・小太郎が飛び出した。



「やるやないかチビ助……!今のはちょっとヤバかったで!!」


 どうやら本当に危ない所だったらしく、彼は額に青筋を浮かべてネギ達の前に現れた。


(ただの一撃がアホみたいな火力しとるからに…!
 千草ねーちゃんにぎょーさん貰った護符、もう使いきってしもたやんか!!)

 ……それが手品のタネだった。
 小太郎は事前に用意していた『護符』を使用する事により、ネギの呪文の悉くを防いでいたのだ。

 …だがそれももう尽きた。
 西洋魔術師…魔法使いの攻撃呪文は砲台に例えられるほど強力だ―――次は無い。
 しかしそれも、魔法を喰らう前に…ネギが呪文を唱える前に潰してしまえば脅威ではない。

 ただしそういった敵から魔法使いを守るのが、「魔法使いの従者ミニステル・マギ」の役割なのだが……


「こ、このぉ!さっきからネギばっか狙っちゃって!
 同じ戦士タイプ同士、今度は私が相手になるわよ!!」

「アホか、弱い奴から狙うんは常識やろ!俺は女は殴らん主義やし」

 明日菜は小太郎のスピードに、全く対応し切れていない。そもそも彼女は普通の女子中学生である。
 だから先程から、ネギに容易く攻撃の手が及んでしまっているのだ。


 小太郎は再度、ネギを標的に狙いを定める。
 それは「弱い奴から狙う」、「女は殴らない」というだけの話ではない。
 ネギを潰せば仮契約の『契約執行』―――明日菜を強化している魔力供給を断つ事にも繋がるからだ。


(もう護符はあらへん、けどこれで決めれば問題ない!)
 さっきので決められなかったんは致命的やで、チビ助!!)


「これで―――……終いにしたる!!」

「!!」


 小太郎がネギに迫る。今度は呪文を唱える暇など与えない。
 目にも止まらぬ速度スピードで駆け、明日菜を軽く振りきって―――射程距離にネギを捉える。


「え――」


 明日菜が呆気に取られた声を出し、カモが叫んだ。

 これ以上ないほど"気"を籠めればその拳は、魔法障壁を容易く貫通する威力を現す。
 魔法障壁のないネギはただの子供。気を纏った攻撃など……到底耐えられない。

 その右腕は、まさしく必倒の一撃だった。


「いくで―――トドメ!!」


 迫る神速の剛腕が、ネギの顔面目掛けて突き出される―――!!





“――――――――――――――――『瞬く雷精』エフールゲンス・フルグラーリス



解放エーミッタム



 紫電一閃。走る稲妻、輝く雷光。
 拳がネギの鼻に触れる瞬間、敵を穿つ一条のいかずちが彼の手から炸裂した。





 ――――ビシャァァアアアアンンッ!!!!


「がぁぁあああああああああああああああああっ!!?」


 雷鳴が轟き、次いで山中に絶叫が響き渡る。
 ネギの魔法『白き雷』が今度こそ、小太郎の体を貫いた。


(このチビ何をしたんや!?詠唱もせんで魔法を…いや何をされた!? 体が…動か……ッ!?)


 直撃を受けた小太郎はぶすぶすと煙を吐き…音をたてて石畳に倒れ伏した。




 ◇◇◇◇◇



「…はっ――はぁ……っ!!」

「ネ、ネギ!!大丈夫!?」
「いや兄貴、良くやったぜ…!」

 息を荒くし、杖を握ったままネギは疲労で膝を着く。
 そんな彼の元に明日菜達が急いで駆け寄った。

(吹き飛ばされるほどのパンチを喰らった直後から、四連続での魔法行使……。
 おまけに最後のアレはおそらく練習中の「遅延呪文ディレイ・スペル」………これじゃ息が切れて当然だぜ…)


 「遅延呪文ディレイ・スペル」。それは時間差で呪文を発動する魔法技術。
 これによりあらかじめ呪文を「溜めておく」ことで、詠唱を簡略・及び行わずして魔法を行使できるのだ。
 ……ただし有用性が高い反面、習熟するのが困難とされ、魔法界全体を見ても使い手は非常に少ない。

 ネギもこれを完璧に修得したとは言い難かった。
 彼はまだ複数の呪文を遅延待機させておく事ができず、また遅延呪文を使用する際に通常魔法の数倍の負担を必要としていた。


「体力と精神力をいっぺんに削られたようなモンだからな。兄貴、ゆっくり休……」
「…ちょっと、ネギ?」

 カモの言葉を聞き入れず、ネギは杖を頼りに立ち上がった。
 そして明日菜の声も無視して彼は…フラフラと覚束ない足取りで小太郎に近づいてゆく。


「ぐ………な、なんやチビ………!! トドメ刺す気か!?」

「……そんなことしないよ」

 うつ伏せに倒れたまま動けない小太郎は、自分を見下ろすネギに顔だけ向けて鋭い視線で睨みつける。
 そんな彼を変わらず静かに見下ろして………ネギは淡々と口を開いた。


「………僕、ついこの間……スゴク強い人と戦ったんだ。その人は…君や僕なんかじゃ、全然敵わないような魔法使いで……。
 ……それが無かったら僕は…君に勝てなかったかもしれない」

「……?」


 ――そう。大停電の夜、エヴァンジェリンと戦った経験が…ネギに遅延呪文ディレイ・スペルを使わせた。

 「この程度で勝ったつもりか」。その言葉を言われる都度にネギは窮地に陥って、己の浅はかさを嫌というほど思い知る。
 …結果、それがネギに「次善の策」を仕込ませた。


「…君、言ってたよね。「西洋魔術師のクセに」とか、「西洋魔術師は嫌いだ」って。
 でも。………魔法使いの中には、スゴイ人だって一杯いるんだ」


 目を瞑ると浮かぶのは、タカミチ…士郎……エヴァンジェリン。
 …そしてネギが越えるべきと定める存在……「千の呪文の男サウザンドマスター」――――。


「…………。」

 小太郎は先程と打って変わって静かになり、ネギの話に黙って耳を傾ける。
 そんな彼を見下ろしたまま、ネギは弱っているとは思えない力強い声で言い放つ。


「……どうだ。これが西洋魔術師の、僕の力だ…!!」


 小太郎の言葉に、無性に苛立った理由はそれだ。
 自分もその"スゴイ人達"と同じ「魔法使い」であることが………ネギにとっての、誇りだった。

「ネギ………。」

「……フフ、成長したな兄貴」

《(……士郎さんが「優秀だ」と言っていたワケが、ようやく解った気がします)》





「……すまん。悪かった……訂正するわ」

「え?」

 …小太郎が、謝罪の言葉を口にした。
 まさか謝ってくるとは思いもせずにネギは面喰らう。

「チビ…言うんもやめるわ。それにな……」

 そこまで言うと言葉を切り、小太郎はネギの視線に目を合わせる。
 そして彼は二ヤリと………獣染みた不敵な笑みを作って言った。


「そんな話を聞かせられて大人しくぶっ倒れてんのは―――失礼やろ!!」

『っ!!?』

 小太郎から噴出する力強い威圧感プレッシャー
 ネギは咄嗟に後退し、明日菜達は目を見開く。

 小太郎の姿が陽炎の如く揺らぎ始める。
 それは彼が発散する濃厚な"気"が具現化したもの。

 溢れだす気の量に比例して、小太郎の身体が音をたてて変貌していく……!!

 ――ザワザワッ……!!
 ―――メキ…メキ……ッ!!

 少年のそれとは思えない、筋骨隆々の逞しい肉体。
 全身から獣毛が生えだし、髪が伸び、頭に生やした犬耳を覆うほどのたてがみに。
 手足の爪を鋭く伸ばし、獣の如き尾が揺れる―――。


「な、何よコレぇっ!?」

「変身した!!人狼ワーウルフ!?」

《やはり…!!アレは狗族です!!》

「言われてもわかんねえよ!!」


 『白き雷』で体が麻痺していた筈の小太郎が……ゆっくりと上体を起こして立ち上がる。
 彼は窮屈だと言わんばかりに上半身の服を剥ぎ、自らの鋼の肉体を露わにした。


 ―――それは人間と「狗族」のハーフである…犬上小太郎の“狗族獣化”。

 獣の野生と身体能力を解放し、戦闘能力を爆発的に上昇させる彼の奥の手。
 また発動と同時、それ以前に負った傷が回復する副次作用をも発揮する―――。


「ナメてかかって悪かったな、ネギ・スプリングフィールド。こっからが本番や」

 全身に気のオーラを纏わせて…小太郎が、再びネギの前に立ちはだかる。


「さァ…もっと戦ろう!!」


 終わりの無い螺旋の結界に封じ込められたネギ達。

 そして戦いもまた、終わらない――――。









<おまけ>
「茶屋にて」

フェイト
「少しだけ僕に付き合ってくれないかな。大丈夫、千草さんを救出する手立てはあるから」
月詠
「……本山の結界を甘く見てはるんやったら、エライ目に遭いますよー?
 まあ楽しそーですし、上手くいくんを見届けたら喜んでご協力しますけど〜」

月詠
「…あ、お姉さ〜ん♪お団子もう一皿くださいな〜♪」

店員
「はい、かしこまりました」

フェイト
「うん、それで十分だよ。
 ……済まないけど、僕も抹茶を貰えるかな」

店員
「はいただいま」

月詠
「それはそうとー……コタロー君は放っておいていいんですかー?(もぐもぐ…)」
フェイト
「ああ。このまま簡単に本山まで着いてしまったら、お姫様達も詰まらないだろう?
 このまま犬上小太郎には、彼らを持て成してもらおうと思ってね。(ズズ…)」

月詠
「…うふふ。フェイトはんも中々、イイ性格してはりますな〜♪(にこにこ)」
フェイト
(………君に言われたくない)

月詠
「ほんなら次はあんみつを〜」
フェイト
「じゃあ僕も宇治金時でも頼んでみようか」

 のほほんとして物騒な連中であった。



〜補足・解説〜

>永遠循環
 「無間方処の呪」こと無限ループの結界ということで。
 他のサブタイトル案として「無限連環」もありましたが、決定稿の方が字面的に好みだったので。

>二人は「ほぅ…」と息を吐いて、ゆっくり肩の力を抜いた。
 刹那の心配を返せお前ら。

>半球場閉鎖結界「無間方処の呪」
 術を発動させるためのお札が貼られた鳥居を入口とした、脱出不可の「異界(=結界)」を形成する。
 それにしても、無関係な人を閉じ込めないための処置が「看板を立てる」という非常にお粗末なシステムなのは何故か。そこまで気を配ろうよ。

>旦那がいるなら安心だな
 しかし士郎は木乃香達から離れた所にいるという(汗)。とはいえ何か起きたらすぐに駆けつけられるよう、木乃香達との距離は「少し」離れた程度ですが。
 それにしてもネギ達は他力本願ですね…。

>「あの子をやっつければ出られるのよね?」
 それが一番カンタンなんじゃないの?とゆー明日菜さんのお考え。口は災いの元。

>《くも〜、クモぉ〜!!》
 原作から引用。単純すぎる鳴き声ですな…。

>『風花・武装解除』
 小太郎に当たっても実は意味が無いという。
 彼は裸なんて気にしないでしょうし、主武装は己の肉体ひとつですし。

>「あ、しまっ…」
 彼が油断するのはお約束です、様式美です。

>ただの一撃がアホみたいな火力しとる
 陰陽術師の火力に比べれば、という話です。それに小太郎は西日本からほとんど出た事が無いでしょうし、高レベルな西洋魔術師の戦いを見た経験はないでしょうから。
 ただしネギはこの時点で既に、(見習いにも関わらず)攻撃力だけなら並の魔法使いと同等以上だと思われます。封印状態だったとはいえ、エヴァンジェリンもネギの魔力量や技量(召喚した精霊の数の多さなど)には驚いていましたし。

>そもそも彼女は普通の女子中学生である。
 にも関わらず、中途半端に魔法戦闘で通用してしまう能力があるのが問題ですね。
 ただしそれを夏休み開始当初に痛感する訳ですが。

>明日菜が呆気に取られた声を出し、カモが叫んだ。
「マッ…マズイ!! あれだけの"気"を纏ったパンチを喰らったら――兄貴の魔法障壁なんて意味がねぇ!!」
《そ、そんな!?》
「――ネ、ネギィっ!!」
 ……という会話があの一瞬でありました。本編で書くと間延びしてしまうのでw 「お前らあの一瞬の中でどんだけ速く会話してるんだよw」となっちゃいますから…。
 さらに補足すると、明日菜は小太郎の動きを目で追う事はできていました。しかし思考と身体がついていかなかったという。まあこの後どんどん実戦経験を積んで勝手に成長していきますけど。

>『瞬く雷精』
 これの正体は、原作でネギが武道会のvsタカミチ戦で使用した遅延呪文(特殊術式)と同じモノ。
 発動キーワードが原作タカミチ戦と違うのは、ネギがその場で咄嗟に思いついた言葉をキーワードにしていると思ったため、原作とは異なる言葉が出るだろうと考えました。

 この時点でネギはまだ「遅延呪文は練習中」だったため、詠唱や術式に手間がかかる「特殊術式」でなければ、成功する確信を持って使用できなかった(その気になれば通常Ver.も使えるが、確実性を重視した)という設定です。

 今回使用した特殊術式版・遅延呪文の詠唱文は以下の通り。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!!
 特殊術式「夜を裂く稲妻ノクティス・トニトルス」・リミット120!! 詠唱発動鍵設定、『瞬く雷精』エフールゲンス・フルグラーリス!! 『白き雷』、術式封印!!」

 効果は「120秒以内にキーワードを唱えることで、呪文詠唱を行わずに遅延呪文として『白き雷』を使用できる」。

>エフールゲンス・フルグラーリス
 =Effulgens Fulguralis.
 ラテン語で「明るい稲妻」。

>ノクティス・トニトルス
 =Noctis Tonitrus.
 ラテン語で「夜の雷」。
 そもそも雷には「夜を裂く」という意味があるんだとか(※出典不明)。

>体が…動か……ッ!?)
 『白き雷』のスタン性能による「麻痺の呪い」。
 魔法によるものなので解呪によって回復でき、また時間経過でも自然と治る。

>「狗族」のハーフ
 狗族や小太郎の生い立ち等の設定は、原作で僅かに語られている程度なので補足しません。
 ですがもしかしたら、いつか本編内で改めて書くかもしれません。

>犬上小太郎の“狗族獣化”
 原作の魔法世界編では、某キャラが『豹族獣化チェンジ・ビースト!!』とカッコ良く獣化します。
 でも小太郎の場合は、普通に「獣化」と言わせた方がかっこいいと私は思います。



【次回予告】


「そうだ。危険の全く無いファンタジーなんて本の中にすら無い。何時だって何処だって、多くの危険が満ちている。
 魔法の世界というのは……物語以上に、簡単にはいかないんだ」

「………だ、大丈夫ですー、きっと……。
 わたし知ってるんです。ネギせんせーは、ホントはスゴく頼れる人なんですー………」

 魔法使いの従者ミニストラ・マギ―――宮崎のどか。
 称号は〈恥ずかしがり屋の司書PUDICA BIBLIOTHECARI〉、与えられしアーティファクトは『いどのえにっきディアーリウム・エーユス』。
 それは悪意ある者には発現しない、善き者のみを主に選ぶ伝説の読心魔道書。
 魔法使いネギ・スプリングフィールドとの契約の力により…優しき司書はあらゆる心を読み暴く――――!!



 次回、「ネギま!―剣製の凱歌―」
 「第二章-第22話 三日目、螺旋極点」

 それでは次回!

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 今話は少し、作りが粗いかもしれません。
 誤字脱字・タグの文字化け・内容の矛盾等にお気づきの方は、感想にてお知らせください。
テキストサイズ:31k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.