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蒼穹のファフナーStrikerS 第一話 困惑 〜はじまり〜
作者:朧   2012/09/10(月) 23:50公開   ID:i8Mb.5WCBac
 プロローグ



 かつて、その島は楽園だった。

 蒼い海と空に囲まれ、平和に穏やかな日々を過ごしていた。

 だがその平穏は破られる。

 天より数多の敵が現れ島を喰らう。

 天に輝くは紅と金、地を駆けるは紅紫、赤、灰、紫。

 地を駆ける四色は数の差に怯むことなく持てる力を振るい天より来るものと戦う。

 だが黒き虚無が現れた瞬間、滅びが島を覆い尽くそうとする。

 滅びに立ち向かい、仲間を取り戻すため全てが虚無へ挑む。

 赤は地に伏せ、灰は塵と消える。

 紅紫もその身を斬られ地へ墜ちただ紫が最後の楯とならんとする。



 マークニヒトに両腕共に絶ち斬られ左側のスラスターも大きく欠損したマークジーベンでは最早戦うことができず、島上空からゆっくりと降りてくる敵ミールの一部とそれを受け止めるマークフュンフを見ていることしかできなかった。マークニヒトは依然としてその脅威を保ち、最後の楯・マークフュンフを貫くべく手に持つ剣を向ける。
 手から剣を放とうとした時、その身から現出した数多の結晶が漆黒の機体を覆いつくし、結晶内から白い光が飛び出るとマークフュンフの元に降り立ち島に掛かるミールの手を払いのける。

「真矢、あれは」

「マークザイン、一騎君が帰ってきた」

 殆んど動くこともできなくなった真矢のそばに損傷は酷いがまだ動けるカノンが近寄る。二人が見つめる間にマークザインがマークニヒトに組み付き遥か上空へとへ姿を消し雲の上で大きな緑色の光が急激に膨れ上がった時、闇が真矢とカノンを覆う。
 フェストゥムのワームスフィアとは異なる色を持つ闇に二人の意識は何をする間もなく瞬時に刈り取られる。

 刹那の瞬間で跡形も無く闇は消え去るが、そこに残された機体に二人の姿は残っていなかった……。






 第一話 困惑 〜はじまり〜



「此処は……?」

 眩しい太陽の光と豊かな緑に囲まれた森の一角、そこに倒れていた栗色のショートカットと灰色の眼をした少女が目を覚ました。
 目覚めた彼女は呆然とした顔で辺りを見渡す。彼女のいた島も豊かな緑があった。だが、どこかが違う。何より今は敵の襲来を受けているにもかかわらず静かで戦闘の痕跡も無い。

「此処は竜宮島じゃない……の?」

 そう思わざるを得ないほど辺りの様子は彼女が知るものとは違っていた。
 また異常はそれだけではない。纏っている衣服もまた常とは違うものだった。アルヴィスの制服であれば、普段自分が着ているのは白を基調とした長袖の上着とミニスカートなのだが、今は大人用の黒を基調とした長袖長ズボンの物だった。
 そして最も大きな問題は搭乗していた筈のファフナーの姿が影も形も無い事だった。

「これは、どういう事」

 その時、横手の木陰から現れたのは赤い髪をセミロングに伸ばした青い目の少女、同じ島の仲間にして親友の羽佐間カノンだった。

「真矢、お前もいたのか」

 そう呼びかけるカノンの着ている服も真矢と同じ黒の長袖長ズボンとなっている。

「うん、此処は竜宮島じゃないよね。どこか感じが違う」

 何がどうなっているのか全く判らないが、一人でいるのと親友と共にいるのとでは心持ちが大きく違う。それはカノンも同じだったようで少しほっとしながら答える。

「解らんが確かにここは違うようだ。こんな場所は島には無かった筈だからな。とすれば何故ここにいるか分からないが、ここは竜宮島ではないと考えるのが妥当だろう」

「あの時、一騎くんのマークザインが帰ってきたと思ったら空が緑色に光ったよね……」

「そうだ。そのとき私達は何か闇に飲まれそれで目が覚めたらこんな所にいた。ファフナーも見当たらないが何処にあるか探さなければいけないな。下手に扱われると取り返しがつかない事になるかもしれん」

 二人で覚えていることを確認するが考えても解らないことだらけだった。カノンも真矢と同じく目覚めた際にファフナーは見当たらなかった。簡単に悪用されるものではないが万一を考えると大変だし、何より島を守るための大切な機体で簡単に失っていい物ではない。状況を把握しようにも何も解らないのでどうするべきか考える二人。今着ているアルヴィスの制服にも現在の事態を打開できるようなものは無かった。
 もっとも、いつもの服装であっても携帯できる通信端末の類は持っていない。何故なら緊急事態であれば島全体にサイレンが鳴り響き、そうでなければ個々人の自宅電話で足りるため必要性が全く無いからだ。

 そんな事を考えていると突如森の木立がざわめきその陰から新たな影が飛び出してきた。灰色の円筒形をした機械のようなもので中央にある黄色の球体からビームのようなものを放ってくる。いきなりの事に反応できない二人の顔のすぐ横を抜け後ろに立っていた木に当たると、決して細くはない木をへし折る。
 その様に二人共思わず顔が引き攣り冷や汗が頬を流れ落ちる。一瞬だけ目を合わせると後ろを向いてどんどんと数を増やす機械に背を向け走り出す。

「何あれ」

「私にわかる訳無いだろ」

 幸い敵の移動速度はそう速いものではなく、木立が林立しているため木が盾となり攻撃を防いでくれている。だがそうは言っても真矢は生身で戦うことを想定した訓練等はしておらず、カノンにしても竜宮島に来てからはそんなことはしていないので少し体力がある程度のものである。かつては銃を携帯していたカノンだが今はそんな事をしていない為たとえ私服であったとしても反撃する手段は無く、じわじわと距離をつめられついに敵の攻撃が届きそうになる。中心の球体から発射された攻撃が当たる瞬間二人共来るだろう衝撃に身を硬くする、が敵の攻撃が服の表面に当たるとそのまま四散する。
 敵の攻撃が自分達の服によって弾かれた事に驚くが、その理由を確かめる術も暇も無く幸いとばかりにそのまま走り続ける。
 しかし慣れない状況に二人共体力の消耗激しく、ついに追いつかれ機械の群に囲まれてしまう。

 周囲を包囲されながらもこの場を切り抜ける事を諦めない、が打つ手が無い事もまた事実な二人に攻撃が放たれる寸前、何処からか飛来した赤い球が敵を貫き爆散させる。最初の一つを皮切りに周囲の機械が連続して次々と爆発していく。
 優先度を変えたのか新手を危険と判断したのか、周囲の機械が目標を変えたその先を真矢とカノンも見上げる。その先には空に浮かぶ大小二つの人影があった。



                  これが私たちの旅の始まりだった。

                     もしも私達が生き残れるなら

                        あの島での事を、忘れないでいよう。
 
またいつか、あの楽園へ戻る・・・その日まで



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