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蒼穹のファフナーStrikerS 第二話 出動 〜であい〜
作者:朧   2012/09/27(木) 23:57公開   ID:i8Mb.5WCBac
 シグナムとヴィータは自分達が所属する時空管理局機動六課、その隊舎の一角にある訓練スペース、今はなのはと新人フォワード陣が使用している、を見渡せる場所でなのはがフォワードの四人に訓練を課しているのを見ていた。

「お前は参加しないのか」

「何言ってんだ、四人ともまだよちよち歩きのヒヨッコだぜ。あたしが教導を手伝うのはもうちょっと先、せめて基礎ができてからだな」

「そうか、まあ今お前まで出て行っても手持ち無沙汰なだけか」

 なのはによる初教導の景色を二人が眺めている所へふらっとヴァイスが暇そうに寄ってくる。

「さっそく訓練始まってんすか、若い奴らは元気があっていいっすねえ」

「お前な、こんな所にいていいのか。ヘリの整備は終わってるんだろうな」

 本来ヘリポートかその近くにいるべきだが離れた所まで顔を出しにきた男にあきれた声で応じるシグナム。

「勿論すよシグナム姐さん、何時でも何処へでも飛べるよう準備万端です。てな訳で暇潰しに見に来たって訳っすよ」

「ならお前も参加してみるか、八年前は随分と元気がよかったじゃないか」

「いや、シグナム姐さん。それは言わねー約束で……」

 そんな話をしていると三人の眼前にモニターが浮かび上がり、その中には機動六課の課長にして現在は部隊長室で書類決済に追われているはずの八神はやてが映し出された。

「シグナムにヴィータ、出動や。ミッドチルダ郊外の森でガジェット反応が出た。やから二人には掃除を頼みたいんや」

「別に構わねえけどなんであたし達なんだ」

「そんなん他に人が居らんからや。新人達はまだまだ初陣には早いやろ。でもってなのはちゃんはその訓練、フェイトちゃんは別の用件で出掛けたまま。フェイトちゃんが出先から行くよりこっちからの方が近いからな」

「ガジェット反応ということはレリックの反応もあったのですか」

 レリックがある場合とない場合ではガジェットの数も大きく異なるため現場情報の最低限の確認を行うシグナム。

「いや、レリックの反応は今のところ確認されてへんしあの辺りはただの森やからな。レリック絡みやないと思う」

「出動ってことは八神部隊長、俺の出番っすか」

 出動という事なら早速最新のヘリを使えるとあってかヴァイスが嬉しそうな声を上げるのに、ヴィータが突っ込みをいれる。

「ヴァイスお前な、幾らなんでも事があって喜ぶのはどうかと思うぞ」

「いや、シグナム達なら自力で飛んだほうが早いからな、飛行許可ももう取ったから直接飛んでってな。でもヴァイス君には別の用件があるからヘリで待機しとって」

 意味ありげにほくそ笑むはやて、だがシグナムとヴィータが突っ込む前に話を続ける。

「まあレリックがある可能性を完全には否定できんけど現段階ではただの様子見かなんかや思うよ。けど勝手に動かれてるのも良くないから急いで頼むで」

「解りました、行くぞヴィータ」

「おうよ、じゃあはやて行って来る」

「御二人とも頑張って下さ〜い」

 ヴァイスの気の抜けるような声援を背にシグナムとヴィータは送り出された。



 シグナムとヴィータが指定されたポイントに到達すると先に知らされていたガジェットだけでなくそれに追われる二人の少女を見つけることになった。

「あれか、ガジェット……だけではない、誰かを追いかけているな。事情は判らんがあの二人を見捨てるわけにはいかん」

「わかってる、まずはあいつらの注意を引き付けねえとな」

 そう言うとヴィータは取り出した鉄球を左手の指に挟みこみ魔力を纏わりつかせると右手のグラーフアイゼンを振りかぶり、振り抜く。

「ぶち抜けぇ!」

 撃ち放たれた弾は高速で飛翔し少女達を囲むガジェットに反応する暇を与えず命中・貫通・破壊する。

「レヴァンティン、カートリッジロード」

 シグナムはデバイスからカートリッジを排出し炎を纏わせると一気に突貫、地上に降り立った瞬間居合いの要領で振り抜く。

「紫電・一閃!」

 その剣身は正面のガジェットを容易く切り裂き、周囲に展開するガジェットすらその余波で破壊していく。爆散したガジェットの欠片が飛び散り辺りの木に炎が燃え移りそうになるが、剣圧によって巻き起こった風が炎をき飛ばし燃え移る事はなかった。



 あっという間にガジェットの群を潰し終えると追われていた二人の少女に向き直る。シグナムは剣を鞘に納めヴィータは鎚を地面に向け臨戦態勢は解除しているものの十分な距離をとって向かい合う。

「さて、我々は時空管理局機動六課の者だがなぜこんな場所でガジェットに追われていた?」

 返答次第によっては一触即発、一戦交える事になる可能性を考慮し緊張するシグナムとヴィータに対して二人の少女は訝しげな顔を隠さず疑問の声を上げる。

「すまないがここは何処なんだ? 時空管理局と言うものも聞いたことがないが」

 シグナムは赤い髪の少女の言葉ともう一人の少女も同じ事を思っているのを見てとると頭を抱えたくなった。

(主はやて、急いでと言うのがこういう事ならはっきりと仰ってください)

 それは横にいるヴィータも同じだったようだがこちらは実際に口に出して呟いている。

「はやてぇ、こういう事なら初めっからそうだと教えてくれよ」

 一気に脱力したシグナムとヴィータの様子を感じ取ったのかきょとんとした様子の二人を見ながら、シグナムはつい溜め息を吐きそうになるのを押し留める努力をするのに忙しかった。



「つまりだ、お前達はどうやってか世界を飛び越えて来た事になる。我々はお前達の様な者を次元漂流者と呼んでいるがその者達を本来いた世界に還すことも仕事の内だ。だが今ここで出来るものではないし、出来たとしてもする事は出来ん。一度私達の所に来てもらってから、段階を踏んで手続きをする必要がある」

 途中、細かい所は飛ばしながら大まかに説明し反応を待つシグナム。

「なるほど、それで元の世界に戻るのにどれくらいかかるんだ」

 また赤い髪の少女が質問を返し、栗色の髪の少女はじっと遣り取りを聞いている。

「ハッキリとした事は言えん。我々が認知している世界ならすぐに出来るが、知らない世界だった場合まず見つけるところから始めなくてはならん。だが、いつ見つかるかは運次第のようなものだからな。管理局が把握している世界としていない次元世界はどちらも非常に多い。今日か明日か、あるいは一年後かそれ以上かは誰にもわからん。そういった元の世界へ戻るための諸々の手続きをするためにも我々に付いてきてもらいたい」

 言葉だけの協力要請で、機動六課としてそういう役割を背負っている以上放置するという選択肢はありえない。が、出来れば無意味に手荒な真似は避けたいというのもシグナムの本音である。戦闘狂バトルマニアと称されるように戦う事は好きだが相手は選ぶのがシグナムの流儀であり無節操に誰とでも戦いたいわけではない。例としては相手にその気があり尚且つ自分と互角程度には戦える相手でなければ楽しくはない、のだが目の前の二人はそういった条件には合致しなさそうだということもある。

「わかった。あなた達にお願いしてもいいかな」

「待て真矢、大丈夫なのか」

 今まで口を開いていなかった栗色の髪の少女が答えると赤い髪の少女が少し慌てた様子を見せる、がそっちの方が普通だろうとシグナムは思う。逆にシグナムとヴィータの方が拍子抜けしてしまいそうだ。

「大丈夫だよカノン、心配いらないって。それに私達だけじゃどうにもならないでしょ、戻れるなら急いだ方がいいって」

「まあ、そうだが。なら改めてよろしく頼む」

 大抵の場合世界が違うことを受け入れることができず話がこじれたり、時空管理局の下に来ることを拒んだりして武力制圧せざるを得ないといった事態になることも珍しくない中、これほど簡単に話が進むということは非常に稀な事態だといえる。
 故に後半はよく聞こえなかった事もありあっさりと説得された様子に少し疑問を感じるシグナムだが、これ幸いとばかりにヴィータに合図して迎えを寄越してもらう。ヴァイスに連絡を繋げヘリを飛ばさせようとするが、返ってきた答えに二人とも唖然とする。

「ウッス姐さん、あと少しで到着しますんで待っててください」

「ちょっと待てヴァイス、てめぇ何でんな早くこれんだよ?」

 ヴィータもシグナムと同じ疑問を抱いたようで問い質す。

「や、だってあのあと部隊長に皆さんを迎えに行くように言われたんすよ」

 シグナムの脳裏にニヤニヤと笑う部隊長(なぜか茶色の耳と尻尾がついている)が再生され、頭を押さえ今度こそ隠す気もなく盛大に溜め息を吐いた。



「てんめぇヴァイス、本当は最初から知ってやがったんじゃねえだろうな」

 ヘリが到着し、ヴァイスが操縦席から顔を出した途端にヴィータが噛みつく。

「そんな事はないっすよ。俺だってあの後部隊長に聞いたんですから、ヴィータさんだって一緒に聞いてたじゃないですか。勘弁して下さいよ」

 ヴァイスも身に覚えのない罪に困っているが、目の前の少女達はそれ以上だ。いきなり目の前で言い争いを始められても対応に困るだけだ。シグナムとしてはここでヴィータとヴァイスが揉めていてもしょうがないし面倒事は早く片付けたい。

「ヴィータ、そのくらいにしてさっさと戻るぞ。ヴァイスに文句を言っても始まらんだろう」

 シグナムが声を掛けるとヴィータは渋々と、ヴァイスは露骨に助かったという顔をして嬉々として従う。二人の少女にもヘリに乗り込むよう声を掛けようとした時今更ながらに名前を知らないことに気付く。

「そう言えばまだちゃんと名乗ってなかったな。私はシグナム、あっちにいるのがヴィータで後からヘリで来たのがヴァイス・グランセニックだ」

 それで二人とも初めて思い当たった様な顔で(最初は互いに名乗っていなかったが、シグナム達はしっかり名前で呼びあっていたため失念していたのだろう)名前を告げる。

「私は羽佐間はざまカノン、こっちが遠見真矢とおみまやだ」

 赤い髪の少女、羽佐間カノンが名乗り返すとシグナムが二人を促してヘリに乗り込み機動六課隊舎へ向けて飛び立つ。



「今向かってる先、機動六課に着くにはまだ多少時間がかかるから好きに休んでて構わねえよ」

 ヴィータが声を掛けると余程疲れていたのか座席に腰掛けたまま二人、肩を寄せあって安らかな寝息をたてはじめた。突如二人が光ったかと思うと、収まった後の二人は今までとは別の服を着ていた。

「バリアジャケット……だったのか」

 思わずシグナムが漏らした呟きにヴィータも頷く。二人に魔力があることは感じ取っていたがバリアジャケットであるかまでは調べていなかった。

「だったようだな、後で聞かなきゃなんねえ事が増えちまったってわけだ。面倒くせえところだが今起こして聞いてみるか」

 その提案にシグナムは首を横に振る。

「止めておけ、それに本気で言ってるのでもないだろう」

 最初から敵対姿勢を見せている訳でもこれまでの行動を危険視しているわけでもなく、寧ろその点で言えば安心している、それにもし問題が起きても実力で押さえ込めるという自信も実績もある二人である。
 後で聞く、面倒だと言っているように寝ているのをわざわざ起こしてなどとはしないだろうと言えばあっさり頷いた。

「まあな、後ははやてに任せようぜ」

 機動六課へ向けヴァイスの操縦に任せたヘリに乗っており対象が寝ているため、暇な二人はそんな風に勝手に押し付けることを本人のいないところで適当に決定していた。


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