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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第弐拾話】因果 仮説
作者:首輪付きジャッカル   2012/11/11(日) 02:46公開   ID:LuursefdGYI
「随分痛めつけたのね?」
呼ばれて香月の部屋に入ると香月は何かに目を通しながら言った。
「逃げ出したくなるほど追い詰めろと依頼したのはお前だ香月」

キャエーデが目を覚ました時、最初に会ったのは207の皆だった。彼女らに事情を聞き、白銀を元気付けて欲しいと言われた。その直後香月に依頼されたのがこの依頼。彼は「仲間」より「依頼主」からの依頼を優先した。そして現在に至る。
「さぁ、約束通り話してもらうぞ?これから白銀のみに起こること」
香月の話しぶりから白銀が逃げた先に救いが無いことだけはわかっていた。だが具体的に何が起こるかはわからない。
「別に、たいした事じゃないわ。白銀という因果導体のパイプを通って向こうの因果、記憶等がこちらに流れ込む。でもこれは『移動』であって『コピー』じゃない。
この意味わかる?」
「向こうの白銀に近しい人間の記憶が消える?」
「主に白銀に関する記憶がね」
このときキャエーデは思わず身震いした。香月の言葉が本当なら白銀は特に近しい人間に自分のことを忘れられていくということだ。大切な人に自分のことを忘れられるのはきっと、身を切られるよりつらい。
「それに何の意味「ストップ」・・・」
キャエーデの言葉を香月が遮る。
「それ以上は教えることは出来ないわ。あんたはただの雇い兵。
あんまり深いところまで知るべきじゃない」
「あぁ、わかった」
納得はいかないがこんなことはよくあること。何も教えられず死地に向かうなどよくある話だ。香月に背を向け部屋を出ようとするが、
「待ちなさい」
呼び止められた。
「なんだ?」
「悪いけど私は雇い主として色々聞かせてもらうわよ。
長くなるからそこに座んなさい」
そういってソファを指す。
キャエーデが座る。
「最初にアンタが戦ったネクスト2機について」
「たいしたものじゃない。向こうの世界の企業の一つ、BFF社の主力ネクストだ。四脚のほうがストリクスクアドロ。二脚のほうがアンビエントだ。
どっちも向こうの世界で殺した相手だ」
「そう。次にアンタのネクスト、シィカリウスについてもっと詳しく教えなさい」
「前にも話さなかったか?」
「いいから話なさい」
「わぁったよ。シィカリウスが他のネクストと決定的に違うのはAIだ。
詳しい話は知らねぇけど、何人も研究の犠牲になったって話だ。ベースの機体はレイレナード社のアリーヤ。つっても中身(ブースターやジェネレーター)は全然別もんだけどよ。あとは・・・唯一つ意思を持ったネクストなんて話もあるな」
「意思を持った・・・ネクスト?」
「あぁ、俺も詳しいことは知らね」
そのとき、影からいつぞやのウサ耳少女・・・社霞が現れた。
社が香月に近づき、何事か耳打ちする。
「そう、わかったわ」
香月が答えると社はまた引っ込んでしまった。
「キャエーデ、隠し事してもばれるだけなんだから話なさい」
「何の話だ?」
「意思を持ったネクストの話。何か知ってるんでしょ」
「・・・チッ」
香月の目は確証を持った強い目だった。これは隠し通せるものじゃない。
「こないだのクーデターの時、ストリクスクアドロにぶち抜かれて意識が飛んだときに実際シィカリウスと対話して・・・乗っ取られた」
「それだけ?」
「あぁ」
「次にあんたの体について。あんたの体は普通じゃないでしょ?」
「別にシィカリウスの鬼機動についていけるように色々いじってもらっただけ」
「じゃぁ次、ストリクスクアドロとアンビエントに乗ってた衛士の名前ってわかる?」
「衛士じゃなくてリンクスだがな。王小龍ワン・シャオロンとリリウム・ウォルコットだ」
そう答えると香月はパソコンを操作し始めた。ものすごい速さでキーを叩く。
「・・・なるほどね」
数秒たった後、手を止めて言った。
「何がだ?」
「面白いこと教えてあげるわ。今言った二人は間違いなくこの世界に『居た』人物よ。でも何年か前に戦死してるの」
「ハァ?」
「そして、アンタはこの世界には『居ない』し『居なかった』わ」
「なるほど、名前がわかればデータベースかなんかで調べられるのか」
「そういうこと。まぁ、アンタがこの先に生まれる人間の可能性も否定できないけどね」
「いや・・・試しにヘイブン=ユーリーで調べてみてくれ」
「?まぁいいわよ」
数秒後
「いたわよ。ミンスクハイブ五番目のハイブが出来た頃にBETAに殺されたみたいね・・・ってちょっと待ちなさい、この顔って・・・!?」
「ヘイブン=ユーリー・・・これが俺の本名だ」
「・・・そう。それにしても皮肉な名前よね」
「何がだ?」
「あんたの名前よ・・・こんな地獄みたいな時代に、ヘイブン天国なんてね」
「向こうの母親曰く、今は辛くとも、いつかは幸せになれるように、だってさ」
「皮肉な名前ね」
「セレンもそう言ってた」
「セレン?」
「あぁ、俺の恩人。セレン・ヘイズ」
「・・・ちょっと待ってなさい」
香月が再びキーを叩く。数秒後手を止め、
「その人、日本系だった?」
「ん、あぁ、日系女性だぜ?」
「だとしたら・・・」
再びキーを叩き出す。
「・・・ふぅ、居たわよ。でも何年も前に死亡してる」
「・・・そうか」
「なんにしても・・・因果よねぇ・・・」
「どうした?」
「社がいつも居る部屋の脳は見たことある?」
「あぁ」
一度だけ立ち寄った時に、部屋の真ん中の青い円柱状の何かの中に浮く脳みそを見た記憶がある。
「あの脳は鑑純夏という女性の脳。社とあの脳はセットで意味を成す。何が言いたいかわかる?」
「いや・・・」
「っとに鈍いわね。セレン・ヘイズ・・・もしこれが偽名で日本人だとしたら名前は『かすみ すみか』これでわかる?」
「あ・・・なるほどな。」
「話はこんな所ね。もういいわよ。部屋に戻って寝るなりしなさい」
「あぁ」
部屋から立ち去ろうとするキャエーデ。しかしドアの前で立ち止まる。
「なぁ、一つ面白い話を聞かせてやるよ」
「?なにかしら」
「俺と、さっき言ってた王小龍とリリウム・ウォルコットな、死に方がほぼ一緒なんだ」
「具体的には?」
「建造物の中でコジマ大爆発」
「コジマ粒子による爆発・・・ちょっと待ちなさい、もしかして・・・」
なにやらぶつぶつと言っている香月。何かいかん物に触れてしまった気がする。
「これはあくまで仮説なんだけど・・・」
そういって香月は話し始めた。
「複数の世界が並列に成り立っているって話は知ってる?」
「エヴェレットの多世界解釈」
「そう。そしてその世界は普通交わることは無い。だから世界間の移動は出来るものではない」
「しかし白銀や俺は・・・」
「そう、普通はの話よ。あんた達二人は普通じゃない事象の上に今ここに居る。白銀はG弾、アンタはたぶん・・・そのコジマ爆発が、この世界の線を無理やり近づけた。そして今ここに居る」
「王小龍とリリウム・ウォルコットも同じくコジマの力か」
「あんた達三人の共通点で考えるならね」
「まぁ、よくわかんねぇからこの話はこれでいいよ。俺はもう寝る」
「そう、やっぱり小難しい話には付いていけない?」
「うん、無理。ふぁ〜ねむ」
「一応聞くけど、コジマ爆発で殺した人間は他には?」
「居ねぇよ」
「そう、ならよかった。じゃぁね」
「ん、じゃぁな」
そういってキャエーデは自室に戻った。
翌日、他の部位となるべく強度が近い擬似生態を右腕に付けられたキャエーデだった。


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ごめん。
裏表と二つ書くのメンドイからやめた。
文句、誹謗中傷、何でも笑って受けてやんよ
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