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敵であり、獲物であり、友である 第一話 喪うもの、得るもの
作者:時雨   2012/11/27(火) 17:31公開   ID:wmb8.4kr4q6
誰に何を言われようとも、私は自分がこの世で最も不幸な人間だとここに
宣言しようとおもう。
私の不幸は今から10年と少し前から始まった。

「さ〜〜む〜〜いよ〜〜〜〜〜」

12月の寒い夜のこと。
クリスマスも程近いある日・・・・私は振られた。
何が悲しいって、待ち合わせの場所で彼をルンルン気分で待っている時にメール
で別れを告げられたことだろう。
周りはすでにクリスマスムード真っ盛りのネオン街、その中で一人私は凍えながら
泣きそうである。
だが、そう長くもこんなところにいられない上に、クリスマスソングをこれ以上聞いていると発狂しそうだったため、トボトボとしょぼくれて歩き出したのである。
しばらくすると大通りに面した横断歩道が見えてきたので、それを渡ろうとするも
惜しくも赤に変わってしまい、信号機の前で立ち止まり青に変わるのを待つことになった。時間は夜の八時をまわったところか、人通りもそれなりに多く私の周りには信号待ちの人間もままいただろう。
もうそろそろ信号機が赤から青へ変わろうとするなか、あれは向かってきたのだ。
猛スピードで、だが何処か真っ直ぐ走らず蛇行する4tトラックが何人かを撥ね、そしてこちらの歩道につ込んできた。眩しいぐらいの車の光と五月蝿いぐらいのクラクション・・・最後の記憶はこんなものだろう。

そう、あの事故は周りにいた人間の数を考えてもかなり大きなものになったろう。
きっと私以外の人間も大勢巻き込まれたに違いない・・・なのに。

「なんで、私はこんな摩訶不思議体験をしてるんだろう」


あの事故の後、私はあろうことか目を覚ましたのだ。
なんと、奇跡的に生還か!?
自分でもおっかなびっくりで目を開けたらそこは、なにや透明な入れ物のような
物に私は入れられ、それを覗き込むように無精ひげを生やした、マスクと割烹着のようなものをきたまあまあイケメンであろう男が私を見ていた。

「うぎゃ、きゃぁきゃぁ(ちょっとなに覗き込んでるのよ!?)」

言葉を言ったつもりが、言葉にならず、手を伸ばせば私の手は紅葉よりも小さかった。
なんでこんなことになったのかはっきり言ってわからない、てか混乱の絶頂に登ろうとしたその時、透明な手袋をした男の指が入れ物のに開いた入り口のようなところから入ってき私の手を触りながら言うのだ。

「生まれてきてくれてありがとう」・・・と。

このときのことは良く覚えている。
どこか泣きそうな顔でそうつげる男の顔がとても印象的で・・何処か物悲しく
泣き叫ぼうとした私の思考回路の全てを掻っ攫い・・・そしてぬぐった。
後から看護師さんたちの噂話で、私の母親だった人は私を出産後すぐに亡くなったらしい。それでも、あんな顔をしながらも尚、ありがとうといった彼の心はどんなものだったのだろう。
私は事故にあい、そして死んだ。
でも、私はまた生まれ・・・彼の子となった。
一つの命を犠牲にしてでも生まれた私、どんなに取り繕ってもその現実はきっと変わらない。
なら・・私に出来ることは唯一つ・・嘆くのではなく、前に進むことそれしか、今の生にそして自分の娘を抱けなかった女性と、最愛の人をなくしてもありがとうと告げてくれたあの男性に報いることは出来ないのだから。

なんてそんな殊勝なことを考えたのも一時だけだった。

なんてったってそれからが受難の始まりだったんだから。
まぁ、赤ん坊になったんだからオシメなりなんなりは・・・・うん、すこぶる恥ずかしいがまぁしょうがない。
だって、してもらわなくては私とて死活問題だもん。
でもさ・・・。

(あれはないんでないの)

私は早産だったらしくしばらくは病院で入院したが、なんとか無事に退院は出来た。それはいい、何処か小さなマンションの一室には私ようと思わしきベビーベットなりなんなり・・それもうん、てか嬉しい。
部屋の隅になにやらお札らしきものがはってあるが・・まぁ、日本の古い家とかにも張ってあるのみたことあるし、何か縁起でも担いでるのかなとか思うことにした・・が・・・。

(窓の外に有象無象がたかってるんだけど・・あれはなに!!!?)

そういえば、病院にいたときから首にお守りみたいなのが掛かってるし!?
もしかして、あぁいうのを近寄らせないようなものだった・・り〔汗〕

窓の外にいるものたちを目を見開きながらも、そ〜っと父親の顔を見るも、彼の顔はニッコニコであれが見えてる様子はない。
ちなみに、最初にみたあの顔以外、彼から悲しみの色はみえなくなり、いつも満面の笑みしか見せなくなった。
無理をしているのかもしれないが、私にはどうにも出来ない。
まぁ、とりあえず父親には何も見えていないのなら・・あれは・・。

「凪ちゃんはきっとママににて美人さんになるよ。ママは何か心配していたみたいだけど大丈夫、君のことは僕が絶対に守るからね」

暖かい眼差しを向けながら、ベビーベットに降ろし言葉をかけるちちお・・
いや、父さん。その眼差しは正に娘を愛する父親の眼差し。
でも、今はそれよりも・・。

(何かを心配?)

早産のことなんてわかるわけないし、別段体に支障があるわけもなく五体満足に生まれきた、出産前の鬱ってことも考えられるけど・・・。

(もしかして、あの窓の外にいるやつらを懸念してたとか?)

もしかしたら、私は前と似て似なる世界に生まれてきたのかもしれないと思ったのはこの時であった。

この時の私の思考が当たっていたと認識するまでに時間は掛からなかった。
外に父親と散歩に出れば有象無象はうようよいる世界なんて、私のいた世界と同じだとは絶対に認めない。

しかも、周りの人間にはあの妖怪?かどうかも判らない何かが見えないようで素通りである・・・ということは、あれが襲ってきても助けは期待出来ないということだ。

(なんか私を見る目がギラギラしてるんだよね・・〔汗〕)

多分今はこのお守りが私を守ってくれているのだろうが・・確か、お守りの効力って一般的に期限付きだったような・・・。
しかも、なにやらお守りを覆っている何かが一日を過ぎるとほんの少しずつ薄くなってるような気がするんだよね・・。

(多分・・この膜みたなのがお守りの効力の源だとおもうんだよね。・・というこ とは、私もこの膜を使えれば、身を守ることができるかもしれない?)

もし、お母さんに懸念がこのことなら・・もしかしたらこの光景をお母さんも見ていたのかもしれない・・・なら、この光景は遺伝の可能性だってある。
なら・・・あいつらから身を守ることももしかしたら可能?

(もし、お守りにこの膜を張ったのがお母さんなら・・)

もし、他の人にこの膜を覆ってもらったとかならアウトだが・・・・そんなこと考えてたらきりが無いということで、頭から排除した。
だが、そう判断したところで、赤ん坊の身の私に何が出来るのであろうと思ったのだが、不意に思いついたのが漫画やゲームで出てくるあれ的な力・・。

(魔力とか、念とかそんな感じの力ならもしかして、同じように発現できるか・・も?)

だって、なにやら有象無象がばっこするこの世界とそれから守るお守りなんかあるんだもの、RPG的な力がもしかしたらあるかもしれないし!?

自分でも頭の片隅でんなもんあるわけないじゃんとか思いながらも、年齢が退行しているせいか、常識が思考を止める力も退化していたのかもしれない・・うん己でもびっくりするぐらい、そのときの考えが爆走していた。
だが、その暴走思考は当たっていたらしく、なにやら力んだり、目を瞑り瞑想したりしてたらなにやら自分にも湯気のうものがでてきたので、これはもしや噂の念というやつでは!?と思い一生懸命からだにとどめるイメージをしたらとどまったので、私の考えはあたってた!!と思いきや・・・なにやら慣れていくうちにこれは念ではないのでは?
と思い始めてきた。基本的にイメージしたことが出来るという便利な力だったから。
例えば、爪楊枝を折るイメージをすると、目の前の爪楊枝が折れたり、壁をイメージすれば、なんとな〜く有象無象がとうざかったりなんだり。こんなことは例え念でも初期段階では出来ないのでは?とか思ったりなんだり・・。
まぁ、べらぼうに集中力を使うのだが、とりあえず己を守る取っ掛かりになるに違いないのだから、何であろうとかまわないかと思いなおすのであった。
そんな、普通の赤ん坊とはかけ離れた赤ん坊時代をすごした私。
だが、受難はまだまだ続く。

一人で歩けるようになったのが一歳半ぐらいだったか、それからは父さんと少しばかりの遠出をするよになった。まぁ、遠出といっても近所の散歩や公園への遊びの延長だったが。それでもお、自分の世界が広がるようで嬉しかった。
最近ではまだまだ、力は弱弱しいがなんとか操る程度は出来てきたし、気分を一新!!とか思ってた矢先・・。

「凪、これはお地蔵さんっていうんだよ」

父さんは、道の片隅にある木でできた社の中にいる地蔵をさしながらニコニコと教えてくれるが、・・私の興味は地蔵というより、地蔵を覆う膜とその中の・・何かだ。

(地蔵の周りをあの力にに似ているものがおおてっる・・・でも)

「お父しゃん、お地蔵さんてなぁに?」

「お地蔵さんはね、道をとおる人を守ってくれる神様だよ」

『供え物もしない奴を守るほど奇特でないわい』

(・・・・今、お父さんの言葉をつなぐように何かがしゃべっ・・た?)

私は顔が引きつるのを何とかこらえ、その地蔵をじ〜っとみつめた。

「凪?どうかしたのかな?」

『なんじゃ娘っ子、わしの声が聞こえるのか?』

(やっぱりしゃべった!?)

よもや地蔵までしゃべりだすとは・・・本当に奇妙奇天烈な世界である。
頭のを片隅で考えてると、クイッとお父さんとつないでいた右手が引かれた。

「凪、そろそろいこうか」

あまりにもジッと見ていたのが面白かったのか、クスクスと笑いながらも腕を引く父さんに私はコクリと頷き歩き出そうとするも・・。

『またんかい!娘っ子』

地蔵に呼び止められてしまった。
反射的に足を止め、地蔵を見ると、地蔵はなにやら慌てたように言うのであった。

『娘っ子なにか供え物を置いていけ!そしたら道中をまもってやるぞ』

地蔵って物乞いをするものだったけ?
つうか、地蔵の癖にせこいってどうよ。

まぁ。とりあえずそこらへんは置いておくとして、とりあえず地蔵がしゃべることが判った記念として、何か置いておくか。

「お父しゃん」

「ん?」

急に止まった私を不思議そうに見ていたお父さんのズボンをクイクイと引っ張って一言。

「アメちょうらい」

ずいと片手を出し言うと、父さんはしゃがみこみ私の手を握った。

「凪、アメさん食べるのはおやつにしないかい?」

苦笑いしながらもちょっと嬉しそうに言った。
まぁ、今まで我が儘一つ言わなかった私だからね、なんだかんだと嬉しいのだろう。

「お地蔵さんにあげりゅの」

「そっか、お地蔵さんにあげるのか。凪は偉いな」

地蔵にあげるというと、父は満面の笑みを浮かべ私の頭をなでると私のてにアメを幾つか握らせた。

「それじゃ、一緒にお地蔵さんにあげようか」

「うん」

私は父さんと一緒に地蔵の前にアメを数個置くと、父さんが地蔵の前で手を合わせたので、私も真似するように手を合わせた。

(アメあげたんだから、ちゃんと守ってよね)

内心かなり不謹慎なことを考えていたが、まぁいいってことにしといてよ。

『なんじゃ、アメとはしけてるのぅ』

(おい)

『まぁ、よかろう。道中の加護をやろう』

そう地蔵が呟くと、私とお父さんの周りを淡い光の膜が包み込んだ。

本当に地蔵の加護なんてあるんだ、とか罰当たりなことを考えながらもその日は
お父さんと手をつなぎ帰ったのであった。

大変だったのは次の日から。
それからというもの、神社の前を通ればやれお賽銭が少ないだの、やれ神主が境内の掃除を怠っただの、招き猫のある店にいけばやれ埃をかぶったまんまで客なんぞ呼べるかだの、狛犬の前を通れば神様の愚痴をぶつぶつと・・。
ようは、私は神仏やそれに類似するものやらなんやらと意思疎通が出来るようになったらしい。まったくもっていらん能力である。

だがしかし、役に立たなかったわけでもなく、神様やら妖怪からなどなど私に害がなさそうなあれやそれやに情報を聞き出すことに成功したのである。

曰く、私は霊崩れや悪逆非道の妖怪、まつろわぬ?神様、なんやかんやにとってとっても美味しそうな存在なんだとか・・ようはかっこうの獲物である。

(うっわ、神様とかに狙われたら私死ぬんじゃね?)

『凪なら大丈夫そうだけどねぇ』

「何を根拠にそんなこと」

私がいるのは近所の公園
近くのベンチにはお父さん、そして砂の山の向かいに座り私と話しているのは、近所の稲荷神社に使える狐の銀子さん。
この前散歩途中に御揚げを供えたら仲良くなった、私のよき情報提供者の一人?・・いや一匹。

『凪って殺してもしななさそうだし』

「私、不死身になった覚えがないんだけど」(確かに、死んでも転生したけどさ)

砂の山を作りながら、狐としゃべる姿はなかなかにシュールだが回りにみえていないのだから別にかまわないだろう。
それに、子供とは敏感だからねこうやってこの世のものじゃないものと話している所為か、近所の子供は私に自然と近寄らなくなった。
まぁ、大人たちは不思議がっていたけれど。
なにせ私はご近所でも有名ないい子だからね。

『ん〜そういうんじゃないんだけどね。・・なんていうか、凪ってしぶとそうって いうか神経が図太いていうか・・まぁ、そんな感じかねぇ』

「・・結構これでも繊細で神経のか細い人間なんだけど」

『おや、繊細って言葉の意味がいつかわったのか私にはてんで記憶にないんだけどねぇ』

喉元でおかしそうに笑いながら言われた言葉にムカッときたが、何百年と存在しているこの狐に口で勝てるわけもなく、私は先の見えてる勝負はあきらめ口をつぐむ。

『まぁ、冗談はさておき・・当面あんたが頭をなやませるのは神というよりもその 結界のほうじゃないのかい?』   

銀子さんが尻尾でさすのは私がいつも首からぶら下げているお守り。
神社かなにかのお守りみたいだけど、神社の名前も何も書かれていないもの。

「このお守りがどうかした?」

『どうか、というより多分呪力が持たないと思うんだけどねぇ』

「この前、力を補給したばかりだけど」

そう、この対話能力をえてから近所の神社などに行くたんびになにかお供えをし、
情報をききだしていた。
そのうちの一つが、私の能力についてである。
どうやら、私はこの日本にもあまりいない巫女の力と魔力が強い人間らしい。
だから、神様とかと話しができるんだとか。
まぁ、そこらへんはどうでもいいとして、問題はこのお守り。
このお守りは呪力をそんなに溜め込めないものらしい。
だからもって1年ぐらいで力がなくなってしまうとか、だからそうなる前に私の力をお守りに注ぎ込んで力の補充をしているのだ。
その補充の仕方も教わったけど、ようはイメージが大事とのことらしい。
てか、他にごちゃごちゃ言ってたけど、それしか理解できなかった。
まぁ、ちゃんと補充は出来てるんだし問題はないと思う。

『ん〜力うんぬというよりも、その結界じゃあんあたを守りきれないと思うんだ』

「なんで?」

今までだって弱いやつならこのお守りで大丈夫だったし、少し強いやつでも私の魔力とお守りで大丈夫だったのに・・。

『そうさね、多分みっつまでなら大丈夫。だが、よっつ目は節目の数字。縁起のい い数字じゃないってことさ』

「みっつとかよっつって歳のこと?」

『そう、もともと四の数字があらわすのは死だからね。多分その結界じゃあんたの
 気配は隠しきれないだろうさ。それに成長するにつれて呪力も育つ、どっちにし ろあんたの目立つ魔力を隠しきれないだろうね』

「私、魔力も目立つの?」
 
ただでさえ目立っているようなのにこれ以上そんなリスクなんてしょいたくないんだけど・・ね。

現実は上手くいかないみたい。

『そうさね、言ってしまえば白の中に赤が混じってるような・・そんな感じ?』

首をかしげながら可愛く言う銀子さん・・。

「可愛くない」

『・・・食い殺すよ』

「すんません」

(・・・今、目がマジだった・・・)

『まぁ、というわけで代わりの物を探すこったね』

「代わりのもの?」

『そう、もっと呪力を溜め込めて強固なものにね』

強固ねぇ・・・。

「凪、そろそろ帰ろうか?」

「は〜い」

お父さんが声をかけてきたのでこの話しはこれで中断。

(早々簡単にそんな特殊なものが見つかるとも思えないけど・・・まぁ、あと1年ちょいあるしなんなんとかなるかな)

とその時は、高をくくりそそくさとお父さんと帰ったんだけど・・後回しにしたらとんでもないことになってしまうことをまだ私は知らない。


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■作者からのメッセージ
初めての投稿なうえ小説を書いたこともあまり無いのであまり上手くかけていませんが、それでも頑張って書いたものなので楽しんでいただけたら幸いです。
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