ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第弐十伍話】佐渡島攻略の前夜 ブリーフィングルームにて
作者:首輪付きジャッカル   2013/01/07(月) 05:30公開   ID:zfq80gQyq..
「キャエーデさん、何読んでるんですか?」
PXで食後の読書をしていると、いつも通りの笑顔で珠瀬が話しかけてきた。
「ん?これか?これは・・・」
そういって表紙を皆に見えるようにする。
「『これ一冊でよく分かる生態兵器全集』・・・ですか〜ぁ?」
「そ。生態兵器、生態兵器」
「どんなのがいるんですか〜?」
「何々?アタシにも見せなさいよ〜」
突然後ろから声が聞こえる。振り返ると速瀬中尉が本を覗き込むような格好で立っていた。
「何だ、速瀬中尉か」
「何だとは何よ?ご挨拶ね〜!」
速瀬中尉がキャエーデの頬を抓り上げようと手を伸ばす。それを止めるように、
「あ〜、ほれ。これだよ。生態兵器AMIDA」
「何これ?キモチワルイはね〜」
「そうですか〜?私はカワイイと思いますよ〜?」
「おぉ!たま!お前は分かってくれるのか?このAMIDAの可愛さが!?
AMIDAはな、可愛いんだよ。初期型は何と歩行も出来ず、ピョコピョコと飛び跳ねるように群がってくるんだ。
映像でしか見たことないが、その様は本当に可愛くてな・・・」
「カワイイですね〜」
「ちなみに接近した後自爆する」
「え゛?」
「自爆しか攻撃手段を持たない儚い存在・・・可愛すぎる・・・
その後改良され、攻撃手段が酸を跳ばすになったり、飛行型が生まれたり・・・いや本当に可愛いな」
「飛べるんですか〜?可愛いですね〜」
「たまは分かってくれるのだな・・・よし!じゃぁお前にこの本を貸してあげよう!」
「何ですか?コレ」
「この生態兵器全集と同じ、キサラギ社出版の本、『これで理解できる!強化人間の仕組みと歴史と人々』だ!」
「わ〜ありがとうございます〜」
「まったく理解できないわ、この二人の感性・・・」
「まったくだわ・・・」
榊と速瀬中尉が二人で神妙な顔をしていた。



「さて、訓練のブリーフィングを始める前に、貴様達に伝えることがある」
午後の訓練の前、ブリーフィングルームにて伊隅大尉が話し出す。
「本日未明、国連軍第11軍司令部より、極東国連全軍に対し、佐渡島ハイヴ制圧作戦が発令された。
本作戦は、在日国連軍及び帝国本土防衛軍との大規模共同作戦だ。
作戦名は『甲21号作戦』―――これは佐渡島ハイヴの帝国軍戦略呼称『甲21号目標』に由来する。
作戦実施は来る12月25日。
既に国連、帝国両軍は、日本海沿岸部に集結中だ。
当横浜基地からは我がA-01部隊のみが、特殊任務のために参加することになる。
本作戦における我が部隊の任務は、オルタネイティブ計画より試験的に投入される新型兵器の支援及び護衛だ。
我が部隊は明朝04時00分マルヨンマルマル横浜基地を出撃。
陸路にて帝国軍高田基地まで前進し全機起動。
帝国海軍の戦術機母艦『大隅』に移動後、回路にて佐渡島を目指す。
『甲21号作戦』全体の概要は本日の訓練終了後、司令及び副指令から直々にご説明いただく予定だ」
「あ?何でまたわざわざ基地のトップが説明を?あとオルタネイティブ計画の管轄って香月じゃなかったか?」
キャエーデが口を挟む。そんなキャエーデを、生真面目なメンバー(神宮司・榊・涼宮妹)がジロリと睨む。
「詳しい話は私も聞いていないため答えられない。すまんな。
尚、この任務では我々が正面に立ってドンパチやるのは2人だけだ。
残りは国連軍と帝国軍が敷き詰めた赤絨毯の上を、お上品に歩くだけのものだ」
皆がざわめく。2人だけ表立って戦闘に加わる。部隊全員ではなく『2人だけ』、だ。
こんな特異なことは珍しい。さらに、確実に2人は命を危険にさらすということだ。
「その2人って誰かこの場で聞けるか?」
この場の全員が気になる所をキャエーデがストレートに質問する。
「まぁ、予想は付いてるんだけどさ・・・」
「恐らく予想通りだと思うぞ?―――キャエーデ中尉と、その二機編成エレメントである神宮司大尉の2人だ」
「やっぱりだ。ま、死なねぇ程度に頑張るさ」
「出来る限りのフォローはさせてもらうわ」
神宮司大尉が笑って答える。A-01では階級を気にせず会話する風習がある。あと、表向き必要な時ぐらいにしか敬礼もしない。
キャエーデもそういった風習が気に入っていた。
「話はそれぐらいにしろ。さて、他に質問は?」
「あの、念のために確認なんですけどハイヴ突入は任務に含まれますか?」
柏木が恐る恐る尋ねる。どうやら他のメンバーも気になっていたらしく、真面目な顔つきになる。
「最悪の場合はそれもあり得るが、今回の任務では想定外だ。安心しろ」
「柏木。なんなら俺と2人で突入するか?2人っきりの命がけのデートだ。燃えるだろ?」
「あはは。中尉が一緒なら無事に帰ってこれそうに思えるけど遠慮しておきまーす」
「質問は以上か?では訓練の内容を―――」



「―――諸君も知っての通り、本日未明、国連軍第11軍司令部及び、帝国軍参謀本部より、『甲21号作戦』が発令された。
佐渡島にあるBETAハイヴ『甲21号目標』制圧を目的とする、国連と帝国の大規模合同作戦だ。
尚、本作戦は気象条件に関係なく結構される。
A-01部隊の勤務に先立ち、まず、本作戦の概略を説明する。
本作戦の第1目的は『甲21号目標』の無力化―――第2に敵施設の占領及び、可能な限りの敵情報収集である。
『甲21号目標』は朝鮮半島の『甲20号目標』と並び、BETAの日本進行に於ける前線基地となっている。
西日本全域を緩衝地帯に持つ九州戦線に対し、『甲21号目標』は日本の柔らかい横復に突き立てられた剣である。
この脅威を取り除くことにより、樺太、日本、台湾、フィリピンからなる極東防衛ラインの戦略的安定をさらに強固なものとするのだ」
午後の訓練の後、ブリーフィングルームにてラダビノッド基地司令が説明する。
「では次に、作戦の概要を説明する。
ハイヴ攻略のセオリーに従い、、作戦の第1段階では国連宇宙総軍の操行駆逐艦隊による起動爆撃が行われる。
この時、国連軍、帝国軍の精鋭部隊及びキャエーデ中尉、神宮司大尉の少数部隊で光線級吶喊レーザーヤークトを行う。
迅速に頼むぞ?」
「わざわざ国連や帝国軍まで出張って来る必要ねぇのに・・・」
「むぅ?まぁキャエーデ中尉の実力は私も知っている。先日の頭辺墨での奮闘も見事なものであった。
だが、まぁ、万全を期してだ。目を瞑ってくれ」
「まぁ、いいさ」
「では話を続ける。光線級吶喊の際には、同時に佐渡島周辺に展開した帝国連合艦隊第2戦隊が、艦砲及びロケットによる長距離飽和攻撃を開始。
徹底的な面制圧を行う。
光線級吶喊完了時の艦隊の砲弾消耗は最悪でも7割に抑えたい。
これは極東国連軍と帝国軍の砲弾備蓄総量の50%だ。
ここで作戦は第2段階へ移行する。
信濃、美濃、加賀の戦艦三隻を基幹とした帝国連合艦隊第2戦隊が真野湾へ突入。
艦砲射撃を以って、旧八幡から旧高野、旧坊ヶ浦一帯を面制圧。
同時に帝国海軍第17戦術機甲戦隊が雪の高浜へ強襲上陸し、橋頭堡を確保。
続いて帝国機甲4個師団及び、戦術機甲10個連隊からなる『ウィスキー部隊』を順次揚陸。
戦線を維持しつつウィスキー主力部隊は旧沢根へ西進。ハイヴから出現するであろう敵増援を引き寄せる。
BETA群の増援を真野湾に引き付けた後、作戦は第3段階へ移行。
両津湾沖に展開した、アイオワ、ニュージャージー、ミズーリ、イリノイ、ケンタッキーの5隻を基幹とする国連太平洋艦隊と、
大和、武蔵の2隻を中心とする帝国連合艦隊第3戦隊が制圧砲撃を開始。
同時に帝国海軍第4戦術機甲戦隊が旧大野を確保。
続いて国連軍機甲3個連隊及び、戦術機甲5個連隊からなる『エコー部隊』を順次揚陸。
詳細は後になるが、諸君はこのエコー隊の上陸に呼応して任務を開始することになる。
先行部隊が戦線を構築。エコー主力部隊は北上、旧羽吉からタダラ峰跡を経由して旧鷲崎を目指す。
ここまでの陽動が成功していれば、BETA群は大きく二つに分断されているはずである。
この戦況の現出を待ち、作戦は第4段階へと移行する。
爆撃を終え、軌道上を集会中の国連宇宙総軍艦隊より投下される、第6機動降下兵団が再突入を開始。
佐渡島に降着した後『甲21号目標』内部へ突入、第2目的の達成を目指す」
第2目的・・・BETA施設の占領、もしくは可能な限りの敵情報収集である。
「突入部隊の第4層への到達を確認した後、ウィスキー隊が順次突入、『甲21号目標』の占領を目指す。
この時エコー部隊は突入作戦の支援に当たる。佐渡島周辺の改定に展開しているであろうBETA郡の再上陸に備えるのだ。
さて、作戦がこの段階を迎えるといよいよ諸君の出番となる。突入部隊が消息を絶った場合も同様だ。
大尉、続きをよろしく頼む」
「は」
伊隅大尉が基地司令に敬礼し、壇上に立つ。
「昼にも言ったが、今作戦における我が舞台の任務は直接的なBETAとの戦闘ではない。
オルタネイティブ4司令部より試験的に戦線投入される新型兵器の支援及び護衛である。
本作戦中の如何なる状況においても最優先されるのは新型兵器の無傷での回収であることを頭に叩き込んでおけ。
では、作戦全体の進行に沿ったった形で任務内容を説明する。
我が部隊はエコー部隊と共に上陸を開始、旧上新穂を目標に南下していく。
新型兵器は我々が新型兵器の上陸地点を確保した後に横浜基地を出撃する。
さて、いよいよ我々の出番となるが、効果部隊のハイヴ突入作戦の成否により我が部隊の任務も変わってくる。
突入部隊が制圧に成功した場合、我々も新型兵器と共にハイヴに進入し情報収集にあたる。
逆に失敗した場合は新型兵器の攻撃によりハイヴとその戦力を無効化することになる。
その後、ウィスキー隊が突入し、残存するBETAを掃討。
続いて我々も、ハイヴの情報収集に当たる。
作戦終了後は48時間以内に横浜基地に帰還する。
では、これより副指令から新型兵器についてご説明いただく。
―――副指令、お願いします」
「はいはい、やっと出番ね」
新型兵器については、A-01の中では伊隅大尉とキャエーデしか知らない。
白銀なんかは何か疑問があるのか不思議そうな顔をしていた。
「じゃ、説明始めるわ。
―――あんた達が護るのは、人類を滅亡の危機から救う対BETA戦略の切り札―――」
スクリーンにあの兵器が映し出される。
「MK-00・・・『霹靂神・壱型』よ。
MK-00は、キャエーデがもたらしたまったく新しい技術を取り入れた新型戦術機よ。
戦術機といっても、内側は既に既存のどの戦術機とも違う別物よ。
といっても先日完成したばかりの物だからどこか不具合がある可能性もある。
それを補うのがあんた達ってわけ。
じゃぁ、『霹靂神・壱型』の護衛をするに当たっての注意点を言っておくわ。
キャエーデとの模擬戦で見たことあると思うけど、緑色の光を伴って大きな爆発を起こすアサルト・アーマー。
これ、霹靂神も搭載してるから。しかも爆発規模はキャエーデの戦術機より広い。
戦闘時はある一定の距離を置いて行動することね。
次。荷電粒子砲が発射体制に入ったら、『霹靂神・壱型』より後方に退避しなさい。
ただし、真後ろは駄目。
簡単に説明するけど、荷電粒子砲は一種の運動エネルギー兵器よ。
イオン化した微細粒子を、電気的、磁気的に加速と集束を繰り返して撃ち出す事で、標的を熱と衝撃で破壊する仕組みなの。
では何が危険か・・・まず一つ目―――
射出されたイオン流が射線上の空気と衝突することで、可視光線を含む大量の電磁波が撒き散らされる。
二つ目・・・電荷を持ったイオンが高速移動することで射線周囲の一定範囲に強力な磁界が発生する。
つまり射線軸に隣接する一定の範囲はとんでもない出力の電子レンジと同じ状態になるってこと。
荷電粒子砲発射の瞬間は、発射の反動を打ち消すためにかなり大きいラザフォードフィールドが気体の真後ろに発生する。
万が一この時このフィールドの範囲内に居ると・・・急激な重力偏重に巻き込まれ、コクピットの中でミンチの出来上がりよ。
まぁ注意点はこれぐらいかしら。
この機体、キャエーデのシィカリウスよりも単体での性能は高いから」
「だろうな。人間の限界も考えず、ボトルネックなしに作られた兵器、プロトタイプネクストを基に創ったんだからなぁ!」
キャエーデがほんの少し不機嫌そうに叫ぶ。やはりプロトタイプネクストというのが気に入らないらしい。
「話は以上よ。オルタネイティヴ4の成否はこの作戦の結果が大きく影響するわ。頼んだわよ」
「「「「「「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」」」」」
「既に本作戦は発動している。
諸君は明朝の出撃に備え、万全な準備を整えたまえ―――以上だ」
基地司令の言葉を最後に、基地司令と香月はブリーフィングルームを去った。



―――出撃まで後、8時間―――

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
だまして悪いが駄目作者なんでな
次回で佐渡島攻略!とかいって結局出撃すらしてないよ
でもまぁ次は本当に出撃するよ。
早く霹靂神で大暴れしたいぜ!
テキストサイズ:10226

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.