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リリカルなのはブレード 第二話 クマとはやてと謎の洋書
作者:鉄   2013/02/16(土) 14:29公開   ID:1egY.m3gOes
第2話
はやての話を聞いた後、その厚意を受け取りとりあえず、しばらく泊まることを決めたケンジ。
「それじゃ、私は客間の準備してくるから、お皿洗いとかお任せしてだいじょぶー?」
「任せて、はやて。」
というと、奥にいくはやて。
残されたケンジは手慣れた手つきで、食器を運び、教えてもらった洗い用具で洗い出す。

ベッドメーキングの途中、ふと自分のしていることについて赤面しつつ、
「うちに友達泊めるなんて、初めてやないのかな?・・・しかも、男の子。」
それでも、器用に車椅子を動かして、要所要所を押さえてベッドをきれいにしていく。
動きがぴたりと止まり、一人ぽつりと紡ぐ。
「でも・・・でもな、お誕生日に一人はさみしかったんや・・・」
誰に弁解しているわけではないが、なんとなくそうまた呟く。
ぽつり・・・
ピンと張ったシーツに一粒の涙が落ちた。

洗いものを終えたケンジは、ふと出窓にあるデジタル時計に目をやった。
そこには、6月3日20時37分とカウントされている。
「6月には無事着けたけど、兄貴・・・どこにいるんだよ、全く。」
ひとりごちる。とそこに、左近から思念通話(念話)が来た。
(若殿、でももし、先代が見つかったらここを出なければなりませんぞ?)
(うん、それは・・・わかってるし、というか、当たり前だろう?)
(しかし、そうすると、八神様を置いていかねばなりませんな。)
(・・・もともとに戻るだけだろ、はやてだってそれはわかってるはずだ。)
(若殿は、まだまだ女性の機微には鈍いようで・・・
あの若殿を引き留める態度。八神殿は脈ありですぞ。)
(左近、脈ありなのは当たり前だろう?)
(おおっ若殿、なんという察知眼。それがわかっていらっしゃるのならば何も口出しはしませぬぞ。)
(お前俺の目を節穴だと勘違いしているな?
お前と違って生きた人間なんだから、脈があるのは当り前だろうが?)
(・・・・・左近超ガッカリ・・・)
(何をガッカリしてるんだ?)
(・・・・若殿が、ベタベタすぎて。)
(ベタ?)
(・・・もういいです。)

それきり黙ってしまった騎士をほっておいて、ついでにテーブルを磨き始めるケンジ。
(はやてをおいていく・・・か。なんかいやだな・・・。)
自分の中ではやての笑顔が浮かんだのを感じた。
たった数時間、一緒にいただけでこんなにもはやてがこんな存在になるなんて思いもよらなかった。
「・・・一応アレ出しておくか・・。」
ふと、縁側に置いてある自分の荷物を眺めた。

食卓の片づけが終わったケンジは、自分の荷物から数枚のカードを取り出す。
「よしよし、まだあるな。・・・と、こっちははやてに持たせておこうかな。」
(若殿、『結界』の配置やってきましょうか?)
縁側にて、すねていた左近は丸くなっていた体から頭をあげると再び念話を送ってきた。
(ん、頼めるか?)
(はっ、お任せを。)
(んじゃ、頼む。)
というと、ケンジは手元にあった『結界』と書かれたカードを4枚、窓から左近に渡す。
そうすると、器用に嘴(くちばし)で挟み、起き上がるとトットットットッという感じで跳ねながら闇の中に消えていった。

「結界はこれでいいな。あとは、っと。」
自分の手元にあったカード2枚残してあとはしまい、その2枚を慣れた手つきで振り、自分の正面で合わせながら言葉を紡ぐ。
「虚ろいし『器』よ、『守』りし人形(ひとがた)となれ、その形は・・・。」
2枚のカードは消え、その手の中には代わりにクマのぬいぐるみが出てきた。
「あ、リボンをつけ忘れた・・・。」
まあいいかと、心の中でぼやいてたら、はやてが戻ってきたようだ。

とりあえず、クマを後ろに隠したケンジに、
「あ、ケンジ君。台所もテーブルもピカピカやね。ありがとう。」
と、満面の笑みを浮かべた。
「(ドキッ)・・!!い、いや、家じゃいつもやってたし、これくらいは当然ですって!」
「そうなんー?」
「そうそう!」
「これだけ台所扱いがうまいとなると、ケンジ君も料理とかしてるん?」
「ああ、家じゃ結構してたし、旅中も野宿の時はいつも自炊してたしさ。」
「そうなんか。じゃ、今度、私に御馳走して?」
「いつでも、言ってくれればやるよ。でも、はやてほどは美味くないとおもうけど・・。」
「照れるわ〜。でも、今日のはやてちゃんの料理が最高と思ったら大間違いやで。
今日は材料が無くて、あれくらいやけど、もっと唸らせる自信はあるで?」
「・・・自信が無くなってきたんだけど。」
「ふふふ、でも楽しみにしてるから。きっと作ってね?」
「・・・御意」
というと、笑い合う二人。

いつのまにか縁側には左近が戻ってきていた。
ケンジは縁側を一瞥しながら、はやてと話を続けている。
(若殿、設置完了しました。)
(ん、御苦労。・・・・ところで、左近はそこでいいよな?)
(若殿、左近は寒空の中で凍えろというのですか。)
(・・・左近のその暖かそうな羽毛は飾りなのか?)
(嘘です、冗談です。気にしないでください。)
(・・・外敵の排除は任せるぞ。)
(はっ、お任せを。)


「あっ、そうや。お部屋の準備ができたから、とりあえず行こうか?」
「うん、行こう。」
というと、ケンジは部屋の隅に置いてあった荷物を担ぎはやての後に続く。
「ここがトイレで、こっちがお風呂。タオルはそこの棚にあるから好きにつこうて。」
はやては道すがら、家の簡単な部屋を説明していく。
「で、今日からしばらくの間のケンジ君のお部屋や。」
案内された部屋は、クローゼットと窓とセミダブルのベッドが2つ並んだ部屋だった。
「・・・ここ?」
「うん、そうや。何もあらへんのはあんまり使ってないからで、少し埃があるけどそれは明日掃除しような?」
「・・なにからなにまで、ありがとうはやて。」
「っ!いややわ〜、しばらくはウチの家族だと思ってるんやから、当然よ?」
「ありがとう・・・あっ、そういや、はやてに渡す物があるんだ。」
「ん?な〜に?」
というと、ケンジはいつのまにかに荷物に仕込んでおいたクマのぬいぐるみをはやてに手渡す。
「これは?」
「旅の途中でもらったもので悪いんだけど、俺が持ってるよりはやてのほうが合うかなと思ってさ。」
「うれしいわぁ、ありがとぉな。」
「喜んでもらえてよかった・・・。」
安堵する笑みを浮かべるケンジ。
「それじゃ、私はお風呂に入ってくるから、ゆっくりしててね。」
「うん、わかった。またね、はやて。」
そういうと、はやては部屋から出て行った。
残されたケンジは、とりあえず荷物の整理でもと、荷物をあけて確認する。
(うん、特に大丈夫だな。符もまだあるし。
・・・・でも無くなる前に兄貴と合流しないとな・・。
ここでは道具がないから、簡易符しか作れないし・・。
・・・うん大丈夫そうだ。もともと食料なんかは持ってないから腐りそうなものも無いし。)
ちょっと、思ってて悲しくなったこともあるが。
「さて、これでオッケーかな。着替えも出したし。」
と、少しベッドに転がろうかと思った時。

(若殿!)
ふいに左近から声が走る。
(どうした?)
(どうしたではありませんぞ!)
(は?)
(一宿一飯の恩義、返すべき時ですぞ!!)
(今?どうやって?)
(八神様のお背中をお流しに行くのです!)
(・・・・左近、寝ていいぞ。寝ぼけた頭では、いざというときに支障が出る。)
(若殿!左近は大まじめですぞ?)
(・・・聞こえなかったのか?寝てろ。)
(・・・・・・はい。)
消え去った左近の声。

「まったく、何を考えているんだあいつは。」
バスンとベッドに転がると、一人呟いた。
ベッドは柔らかく、ケンジを包みこんだ。
あまり使われてないようなことも話されていたが、実際真っ白いシーツには洗濯した後、
しまい込んでいたような匂いがあった。
とはいえ、ケンジにとって布団は久しぶりのことで、旅の最中は寝袋の中や、公園のベンチで寝ることもあった。こうして寝るのは、簡単にケンジを眠りにいざなえるほどであった。
ケンジは眠りの淵に落ちて行った。

―――― 深夜 ――――

ケンジは気がつくと、眠ってしまっていたようだ。
電気は消してあるし、布団はかけてある。
きっとはやてがやってくれたんだろう、明日お礼をと、考えていた時であった。

家を震動が襲った。
瞬間、はやての部屋の方から、よく知っているがだれかは分からない『力』の反応。
左手首の腕輪が発光し告げる、
「マスター!」
「わかってる!!」
ベッドを飛び起き、はやての部屋に駆け込む。
「はやて!?」
部屋に飛び込んだケンジを待っていたのは、ベッド上でおびえるようにへたり込むはやてと、
中空に浮かぶ洋書だった。
(何だ!?デバイス!?威圧感が半端ない!)
内心、驚愕するケンジ。
部屋に入ってきた、ケンジの姿を見たはやては叫ぶ。
「ケンジ君、助けて・・・助けて〜!」
悲鳴がケンジを突き動かす。
(迷ってる暇はない。
手持ちの符だけじゃ、この威圧感からはやてを守りきれない。だから・・・。
あとでちゃんと話すつもりではもともといたし、いつか見せようとも思ってた。
これから一緒に住むうえで隠し事はしたくないし、家族って言ってくれた人だったし、なにより・・・はやてだから。)
(若殿!ヴィンはいつでも行けると言っていますぞ!!)
外の左近から、もうひとつの相棒の状態を教えてもらう。
「当り前だ!」
というなり、右手を左手首の腕輪に重ね、唱える。
「疾風の翼ヴィント=シュターゼン、いくぞ!・・・・合戦準備!!!」
腕輪がケンジの声に応えるように、「御意」と響く。
光がケンジを包み、一瞬の後には、紅い武者鎧を装着したケンジがいた。
ただし、その武者鎧は少し歪だった。
下は和装なのだと思える着物が見え、体を守る胴丸、下半身を守る具足もある。
何が歪なのかと言うと、腕だ。
肩から腕を守るはずの大袖は、弓手(ゆみて)の袖しかなく、右腕を包むのは小さな籠手だけで、籠手も左側のほうが大きく、それはまるでバックラーを彷彿させるものだった。
はやての前に躍り出るケンジ。
「はやては俺が守るから。」というと、洋書と対峙した。

「起動(Anfang)」
洋書はケンジを全く意に介することなく、言葉を発する。
はやての目の前に光脈打つ発光体が出現する。
「ケンジ君!!!」
はやての悲鳴に振り返ると、白く輝く発光体が胸元から宙に浮いていくのがわかった。
「はやて!?・・・くそっ!!」
右手で受け止めようとするも、何の障害も無くすり抜ける。
ケンジの後ろまで浮いていった発光体は、部屋を包むほどのまばゆい光をはなつ。
光が放たれた瞬間、ケンジははやてを光からかばうように抱きしめる。
(はやては、俺が守るんだ!!)
「ケンジく・・ん?」

しかし、いつまでたっても痛みも衝撃も無く、光は収縮していく。
光が小さくなったとき、二人はゆっくりと目を開け、
「はやて・・・無事?」
「ケンジ君こそ・・・大丈夫しないで?」
二人はお互いの無事を確かめあった。
声は震え、泣きそうなはやて。
「とにかく、今のは一体・・・」
洋書に振り返る。

そこには、はやてから出て行った発光体と、紫に輝く魔方陣、
「えっ!?」
そして・・・こちらに傅く、四人の人影。
突然、一番前に傅くピンク色の髪をしたポニーテールの女性が話し始める。
「闇の書の起動、確認しました。」
続けて金髪の女性、
「我ら、闇の書の収集を行い、主を守る守護騎士にてございます。」
そして後ろにひかえる、銀髪の犬耳をつけた偉丈夫、
「夜天の主のもとに集いし、群雲。」
最後に、小柄で赤毛のおさげの少女がぶっきらぼうに話す。
「ヴォルケンリッター、なんなりと命令を。」

はやては、途切れそうな意識をケンジをつかむことによって、何とか持ちこたえさせていた。
「ヴォルケン、・・・・リッター?」
はやての質問に、ピンクの髪が
「はい、私はヴォルケンリッターを率いる、烈火の将、剣の騎士シグナム。」
金髪の女性が、
「私は、風の癒し手、湖の騎士シャマル。」
偉丈夫が、
「盾の守護獣、ザフィーラ。」
赤毛の少女は
「あたしは紅の鉄騎、鉄槌の騎士ヴィータ。」
と自己紹介をする。
「主、ご命令を。」
シグナムが促す。
「・・・・そんなら、詳しい説明をしてくれへんか?」
はやては、震える体を心で奮い立たせながら、そう聞いた。


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■作者からのメッセージ
見て下さってる方ありがとうございます。

3話以降は完全書きおろし、ストック貯まったら投稿します。
実は、保存してたと思ったらしてなくて、3話以降の元データが無くなってしまったでヤンス・・・(涙)
思い出しながら、時間が許す限り書いていきますので、よろしくお願いします。

感想ももしよろしければどうぞ。
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