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ONE PIECE ONLINE 第17話 「戦争開始」
作者:波良田瑛太   2013/07/04(木) 19:39公開   ID:ic3DEXrcaRw


「はぁあ・・・・・・暇だねぇ・・・・・・」


ワンタがぼやく。
一行は今、偉大なる航路(グランドライン)前半の海の上。
ホルロイ王国を目指し、進んでいる途中だ。


「ねぇ〜、ディルオワ君。あとどれくらいで着くの?」
「1か月くらいだ」
「なにぃ!?」
「1か月か・・・食料はそんなにないぞ」
「うえ〜、1か月もこのままなんて、嫌だな〜」


驚きの日数に、三者三様のリアクションをとる。


「何を驚いている? 襲撃されたのは、1か月前だっただろ?」
「ああ、そうか」
「そういやそうだったね」
「・・・・・・・途中の島で、買い出ししなきゃな」


元からあった食料は、これまでの航海で、そろそろ底をつく。
補充をしなければ、数日で餓死するだろう。


「寄り道するぞ」
「ええ〜、どこに〜?」
「一番近くの島だ。ディルオワ、調べろ」
「はぁ、おれまで顎で使うとか、ルイは大物だな・・・」
「ふん、当たり前だ。オレは“海賊王”になるからな」
「・・・・・・ははは・・・、えーと、一番近いのは、“ミラーボール島”かな」


そして、1日でミラーボール島に着く。
ミラーボール島の海岸に、船を止める。
船から降りて、ルイはシイグとワンタに告げる。


「お前ら、町に着いたら自由行動にする。ただし、2時間後に集合。場所は、この船。海軍への攻撃をする。ある程度、名前を売っておく必要があるからな」
「うーす」
「りょ〜か〜い」


三人はそれぞれ、目的の場所へ移動する。


ルイ。
船長として、船のことはすべてルイがやる。
とりあえずは、3か月分の食料を、スーパーで買う。
続いて、衣類、生活用品を買う。


「まあ、こんなもんでいいか」


腕いっぱいの荷物を抱え、船へ戻る。



―――――――



ミラーボール島

ここは、東の海(イーストブルー)の流行発信地。
町を歩く人々は、みな、最先端の服装をしている。
現在、ダンスコンテストも開催中。いたるところで踊りの練習をした人を見ることができる。
ワンタはそんな人々を横目に街路を歩く。


〈変な格好の人が多いねぇー〉
〈ええ、正直センスが悪いと思います〉


右手には、オレンジ色の飲み物。
左手には、でっかい骨付き肉。


〈ん〜、これからどうしようかな〜。まだまだ時間があるしな〜〉
〈武器屋に行っては、どうでしょう? ワンタは攻撃力が低すぎです〉
〈あ〜、それ僕も思ってたんだよね。結局シイグ君にも、全然通用してなかったし〉


むしゃむしゃ。
もぐもぐ。
お肉を食べながら、武器屋へ進路を変える。


〈ここが、武器屋・・・〉


武器屋は割と近くにあった。
刀二本が交差した看板がついている。
とりあえず、扉を開ける。


「えいっ、らっっっしゃい!!」


店に入ると、おっさんの機嫌のいい声が、店内に響いた。
おっさんは、ワンタを確認すると、そそくさと近づき、手を揉みながらいう。


「お客さ〜ん。何かお探しで?」
「え〜と、攻撃力が高いのが欲しいんだよね〜」
「なるほど。それでしたら、これはどうでしょう?」


おっさんは、店の壁にかかっていた切れ味のよさそうな、戦斧を見せてくる。


「ん〜。もっと動きやすいのはない?」
「んだよっ。・・・・・・それでしたら、これは?」


今度は、装飾がかかった二刀のダガー。
赤と緑で、クリスマスカラーだ。


「ん〜。なんか違うな〜。もうちょっとシンプルで、使いやすそうなものは?」
「チっ。んじゃ、これ」


次は、2メートルほどの、槍。
先が鋭く、良く切れそうだ。
だが。


「あ〜。僕槍とか苦手なんだよね〜」
「あ? じゃ、これは!?」


若干キレ気味のおっさんが取り出したのは、籠手だった。


「え? おじさん。これは防具じゃない?」
「うるせぇ!! この籠手をただの防具だと思うな!! 名を、“迅皇の籠手(じんおうのこて)”という。これを、手に装備すれば神速のスピードを手に入れられる。てめぇはパワーが欲しいくせに、機動性も捨てたくないとか、わがままばっか言いやがって。いいか?  パワーとは、力×速度だ。てめぇに力は合わん。見た感じそうだ。なら、速度を極めろ。力が0じゃなきゃ、幾らでもパワーは上がる。・・・まったく、最悪の客だぜ。だがな、そんな客の願いをかなえるのが、店員てもんだ」
「お、おじさん――」
「全部で5万6千ベルになります」
「たかいよ!!」
「バカヤロー! 神速のスピードは、籠手だけじゃ手に入れられねぇ。具足もセットじゃなきゃダメなんだよ!」
「んなっ!?」


さすが、店員の鏡である。


「ちぇっ、しょうがない」


しぶしぶといった感じで、お金を払うワンタ。


「5万6千ベル、ちょうどお預かりいたしまっす」


ワンタは店を出るため、扉を開ける。


「ありあとございやした〜。またのご来店を、おまちしておりま〜す」


おっさんの機嫌のいい声を背中に浴びながら、ホントに買ってよかったのかな、と考えるワンタ。


〈買ってよかったと思いますよ〉
〈ホント?〉
〈ええ。とても良い目です。あの店員さんは。今のワンタに合った武器です〉
〈そっか。レヴィが言うなら、良かったんだね〉


ホッと、安心しながら、店の前で、新たな武器を身に着ける。


“迅皇の籠手”と“迅皇の具足”
銀色に輝く籠手と具足は、ワンタに、狼の鬣を彷彿とさせた。


満足といった感じで、ワンタは船へ戻る。



―――――――



人通りの多い、広場へと続く道。
シイグはそこを、ウキウキしながら歩いていた。


「もうすぐじゃん! もうすぐじゃん!」
〈落ち着けよ・・・〉


サタンの声すら届かない。
修行を終えての、初の実戦。
もうすぐ訪れる海軍との戦闘を、シイグは待ちきれずにいた。


「やべぇー、やっべぇー。まてねぇ、ちょっと様子見に行こう」
〈おい! ・・・ちっ・・・〉


我慢の限界がきたらしく、海軍駐屯所へ走り出すシイグ。
ここ、ミラーボール島海軍駐屯所を任されたのは、“爆弾男(ボムお)” トシゴ大佐。
ボムボムの実の能力者。酒が大好きでいつも酔っぱらっている。


「うぃ〜、酒がたりねぇ〜。やば〜、なんか爆発しそ〜」
「うえぇっ!? ちょっ、大佐! また飲んでるんすか!? いい加減にしてくださいよ。いつ海賊が攻めてくるかわからないんですよ!」


そんなトシゴを注意しているのは、“磁剣” ナマ准佐。
シイグはその様子を、屋根裏部屋から見ている。


「おいおい、何だあのおっさん・・・。ホントに海軍かぁ〜?」
〈シイグ、あまり奴らを舐めるな。それとあまり大きな声を出すな〉


シイグは、サタンの言葉に口をすぼめる。


・・・んっ!?


〈やべっ・・・いま目が合った〉
〈ちぃ、だから言っただろうが、逃げろ〉


シイグは、屋根裏部屋から転がり出る。
その一瞬後に、屋根裏部屋が爆発した。


「うぃ〜、ナマちゃん。海賊だ〜。水くれぃ〜」
「了解です」


ナマは、奥の部屋から水を持ってくる。
トシゴはそれを受け取り、一気に飲む。


「・・・よし、狩りの時間だ。絶対逃がすな。メンバーを招集しろ」
「はいっ!」


トシゴの目が仕事モードに入る。


「集めた野郎どもを、俺とお前の二つの部隊に分けろ。挟み撃ちにして確実に仕留める」


海軍は二手に分かれ、シイグを追い詰めていく。
そして、シイグは広場にて海軍に囲まれてしまった。


「あーあ、下見のつもりだったのに・・・」
〈お前が下手くそすぎなんだよ〉


シイグはため息をつく。
結局戦うことになってしまったので、


「お前、何もんだ?」
「俺か? オレは、麦わらの一味副船長 ルーラ・シイグ」
「麦わらの、一味だと?」



―――――――



「くそっ・・・」
「ん? どした?」
「遅い。何をしてるんだアイツは」
「あー。シイグ君のこと?」


ルイとワンタは船でシイグを待っていた。
だが、約束の時間になってもシイグは一向に来なかった。


「アイツはいったいどこに行ったんだ?」
「えーとねー。確か、海軍駐屯所を下見してくるか言ってかな〜?」


それを聞いて、ルイは舌打ちをする。


「・・・・・・・」


ルイは考える。
シイグが海軍駐屯所へ行ったとしたら・・・。


確実に見つかる。
アイツのことだ、どうせ大声でも出して気づかれることだろう。
そこまで考えて、ルイは行動へ移した。


「ワンタ、行くぞ」
「え? えっ? どこへ?」
「シイグのところだ」


歩き出してしばらくすると、がやがやとした喧騒が聞こえてきた。
ルイはその喧騒の中心にいる人物を目にする。


「あっ、シイグ君だ・・・」


そんな声が隣から聞こえた。
ワンタも見てしまったらしい。
ルイはため息をつく。
本来のルイの作戦は、こっそりと駐屯所に潜入し、頭を暗殺し、その首を残りの海軍に見せつけ、ルイたちの危険性をわからせる、という非常に最小限の戦闘だけを行う、スマートな作戦だった。
だが、シイグのせいで水の泡。
こうなっては、相手の戦意が亡くなるまで、殺さなければならなくなった。
その事実を噛みしめ、


「ったく、めんどくせぇ」


と、ルイは呟いた。


「どうするの? ルイ君」
「・・・・・・」


ルイは考える。
この状況を打破する、スマートな作戦を。
とりあえずはあの馬鹿(シイグ)を助けなくちゃ意味がない。
だが、全員が囲まれたら、かなりめんどくさいことになる。
ならば、


「ワンタ。おれはとりあえずアイツを助けに行く。ここの海軍の頭と殺り合ってるようだしな。お前は、周りの雑魚共を蹴散らし、おれらの退路を作ってくれ」
「ん。りょーかい」


作戦を伝え、海軍の方へルイは突っ込む。
零距離まで近づいたら、両手を後ろに伸ばし、一気に前まで持ってくる。


「ゴムゴムのぉ、バズーカっ!!」
「「「げ、ぶぉっ・・・・・」」」


射程範囲に入っていた、数十人が、吹き飛ぶ。
中に入るための穴が開いたのを、ルイは見逃さず穴に向かって飛び込む。
ゴロゴロと、転がりながら着地すると、中では


「爆弾(ボム)ストライク!」
「一刀流 秋桜(コスモス)!」


シイグと、トシゴの攻撃がぶつかり、辺りが爆風に包まれる。
だが、爆風はすぐに晴れた。
・・・・・・まずいっ!?
シイグは、頭上にいるトシゴに気づいていない。
トシゴは両手を打ち合せようとしている。
ルイは、小さく、「ギア2」とつぶやき、走り出す。


「ったく。馬鹿が・・・」


強く地面を蹴り、ジャンプする。
トシゴの高さまできたら、後ろに伸ばして、捻っておいた右手を、すばやく打ち出す。


「爆弾(ボム)っ・・・・・・」
「ゴムゴムの、JET回転弾(ライフル)!!」


空中で何回転もしながら、トシゴは吹っ飛んでいく。
シイグらを、取り囲んでいる雑魚数人を巻き込みながら、地面に激突(ちゃくち)した。


「えっ!? ルイじゃんっ!?」


驚いた表情を浮かべながら、シイグは言った。
麦わらの船長の名を、シイグは呼んだ。


「助けに来てくれたのか。いやー、さすがの俺でも、この人数はちょっとなー、とか思ってたんだよね」
「黙れ。お前のせいで、計画が台無しだ。とりあえず、敵の頭をつぶし、撤退だ。わかったか?」
「・・・・・・お前が、船長のルイか。クソみてぇな帽子をかぶってやがる」


トシゴはすぐに立ち、ルイの麦わら帽子を見て、あからさまに嫌そうな顔をした。
ルイはその言葉に、カチンっときて、


「なんだ貴様は。その馬鹿みたいな顔からすると、馬人か? それとも鹿人か? 悪いが、人語で話してくれ」


と、答える。
挑発するように、
馬鹿にするように、答える。


「・・・・・・てめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞ。新星(ルーキー)の分際で。その帽子を見てると、思い出すんだよ!! あのクソ忌々しい海賊を!!」
「黙れよ」
「・・・・・・ああ?」
「ピーピー喚くな。・・・クズが。そんなことは聞いてない。殺すぞ?」
「・・・・・・だから、図に乗んなって言ってんだよっ!!」


頭に血が上ったのか、顔を赤くしながら突っ込んでくるトシゴ。
ルイはその様子に、口元に笑みを浮かべる。
だが、すぐ表情をもとに戻し、トシゴの攻撃を正面から、受け止める。


「爆弾(ボム)・ダブルストライク!!」
「ゴムゴムの、JET戦斧(ハンマー)!!」


トシゴは、両手を突き出してくるが、ルイは、しゃがんで避け、顎を蹴りあげ、そのまま高速かかと落としを食らわせる。


「ぐふっ・・・・・・!!」


両手を伸ばした形で、地面との接吻をするトシゴの首をつかみ、自分の目線まで持ち上げるルイ。


「・・・・・・て、・・・めぇ・・・・・・な、に・・・」


首をつかんだままの左手を伸ばし、右手を引く。
ルイは、無意識に、
笑う。
嗤う。
嘲笑(わら)う。


「・・・・・・JET銃(ピストル)」


殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る。


「・・・えぐぅ・・・・・・あぅぁ・・・」


トシゴはもはや、虫の息。
鼻の骨が折れ、血が垂れている。
顔中が赤く腫れて、ふっくらしている。
もう死ぬ。
ぼんやりとする意識の中で、トシゴはそう、感じていた。


「・・・ふん。もう落ちたか」
「貴様ぁあああああああああああ!! よくも、よくも!! トシゴ大佐をぉおおおおおおおおおおおおお!!!」


トシゴの部下、ナマは、叫ぶ。
いや、叫ばずにはいられなかった。
ナマがまだ、海軍養成学校の学生だったころからの、先輩であり、上司であるトシゴを、目の前でボロ雑巾のように、なぶり殺しされるところを、見せつけられたのだから。


「お前は!! 必ず!! 殺してやるぅううううううううううううううううううう!!!」


ナマは、大声を張り上げる。
そのまま、何かの能力を使う。
すると、ナマの手に、金属が集まり始める。
その金属は、剣の形になった。
ナマは、金属でできた剣を振り回しながら、ルイの方へ走る。


「シイグ」
「ほいほーい」


ルイの一声で、シイグがナマとルイの間に入り、ナマを切り捨てる。


「・・・くっ」
「お前じゃ、まだ俺らの相手になんないよ」


と、シイグは言う。
悔しそうに顔をゆがめる、ナマに。


「じゃ、行こうぜ」
「ああ。そういうことだ、雑魚共。今すぐ道をつくれ。邪魔だ」


と、ルイは言うが、周りにはもう、人がおらず、


「道ならもう、作ってるよー」


と、ワンタが答えるだけだった。
その様子に、ルイは、フッと笑い。


「ああ、よくやった」


と、言った。



―――――――



場所は移り、
時間も少しさかのぼる。
ディルオワは船で一人、皆の帰りを待っていた。


「・・・・・・おかしい。ここに集合のはずなんだけどな」


と、呟くが、一人っきりの船内では、むなしく響くばかり。


「もう、先に行ったか?」


と、もう一度呟くが、声はまたも、むなしく響くだけ。
そのことに、ディルオワは顔をしかめる。


「・・・・・・じゃ、おれも行こっと」


と、言う。
寂しさを紛らわすように、言う。
ディルオワは今や、完全に仲間外れだ。
だが、今回は返答があった。


「・・・・・・それは、いけませんね」


少し高い男の声。
その声が聞こえた瞬間、ディルオワは驚きながらも、後ろへ飛び、腰の二丁拳銃に手をかける。
・・・・・・が、


「お前には、ついてきてもらう」


という声が、後ろからした。
少し低い男の声。
はさまれた、と認識した時には、息ができなくなり、意識を失った。



―――――――



場所は同じだが、
時間は進み、
ルイ、シイグ、ワンタは船へ戻ってきた。


「あれ? そういえば、ディルオワ君は?」


と、ワンタは突然そんなことを言い出した。
その言葉に、


「ん? 便所でも行ってんじゃないのか?」


シイグは、何ともマイペースな感じで返すが、


「・・・・・・」


ルイは、険しい顔つきをしていた。
クソッ、ディルオワを忘れてた。
守るべき対象を放っておいて、名を売るのに、明け暮れるなんて、本末転倒もいいとこだ!!
シイグが、なんか馬鹿みてぇなこと言ってるが、今回ばかりはそうであってほしい。
ルイは船内を走り回る。


「・・・おいっ、ルイ! どうしたいきなり!?」


と、シイグがなんか言ってるが、


「お前らも探せ!! ディルオワはたぶんさらわれた。中探し回って、敵の情報を見つけろ!!」


と、言っておく。
すると、二人は、驚いて一瞬動きを止めるが、すぐに動き出し、船内を探し回る。
誰がさらった?
まずはそれを突き詰めるところからだ。


ほどなくして、ルイの求めていたものは見つかった。
場所は、ディルオワが使っていた部屋。
男くさい臭い漂う、ベッドの上に、一枚の紙が置いてあった。
おそらく、ディルオワは、ここで襲われ連れていかれたんだろう。
だが、今はそんなこと、どうでもいい。
中身は、

やぁやぁ、“麦わら”のルイくんと、その配下の諸君。
早急にディルオワが、必要になってね。きみらを待てなくなった。
だから回収させてもらったよ。
けどね、船長はきみらと殺り合いたいらしいから、ホルロイ王国に来るといいよ。
じゃあ、気長に待ってるね。
                         稲妻海賊団4番隊隊長 ズミ


「・・・・・・」


ルイは紙を、思いっきり握りしめる。


「くくく、ふざけるなよ・・・。おれの仲間に手を出して、生きていられると思うなよ。・・・テル!!」



―――――――



時間はかなり進み、
ここは、ホルロイ王国、王宮の最上部。
王の間。
そこでテルは、王座に座り、一枚の手配書を見ていた。

“麦わら”ルイ
懸賞金 2400万ベリー

麦わら帽子をかぶり、冷たい目をしているルイの写真を見て、
テルは、にやり、と笑う。


「ヤハハ、来いよ。“麦わら”おれのすべてが、お前を求める。なぜかは知らんがな」


ヤハハハと、テルはもう一度笑った。


―――――――



・・・鉄(てつ)
・・・鉄

鉄!


誰かが、おれを呼ぶ。
ああ、母さんの声か。


「なんなの? この順位は! 1位じゃなきゃ意味がないと、あれほど言ったじゃない!」


またか。
またなのか。
頑張って勉強したのに。
頑張って、学年2位をとったのに。
部活だって、バスケ部で、全国大会でスタメンに選ばれるほど、上手くなったのに。


なのに、


―――褒められない。


いくら頑張っても、
いくらおれが満足する結果を出しても、
母さんは、


―――満足しない。


次第におれは、疲れていった。
母さんの期待に応えるのに、
母さんを満足させようと、
努力するのに。


そして、出逢ったのが、このゲーム。
《ONE PIECE ONLINE》
強くなれば、それが懸賞金として、表示される。
そして、その金額が高ければ高いほど、ほかのプレイヤーに認められる。
そのことに、おれは、とても魅力を感じた。


おれはゲームを買い、
何時間もプレイした。
松尾 鉄(まつお てつ)じゃなく、
テルとして、
努力した。
強くなろうとした。


結果、おれは強くなった。
“七武界”テル、といや、そこらへんの海賊じゃ、相手にならんほど、
強くなった。
認められた。
仲間には、頼りにされる、


―――ゲームの中では。


現実の、松尾 鉄は、何も変わらない。
母さんを、満足させられない。
認めさせられない。
会話をしても、母さんからは、褒め言葉一つ出てこない。
母さんの、要求に応えられない。


そのことに、鉄は、耐えられなかった。
逃げるように、ゲームにこもる。
ゲームの中は、鉄に優しかった。
プレイすればするほど、強くなる。
強くなれば強くなるほど、認められる。


が、一番にはなれなかった。
上には上がいた。
懸賞金ランキングでは、全国第106位。
鉄より強い奴が、まだ、105人いる。
そのことに、鉄は耐えられなかった。

だから、一人ずつ、潰していくことに決めた。
1人目は、ランキング105位、
“殲滅蟲(ヒドゥンプレジャー)”あーりー
スキル ムシムシの実 モデル 蝿

2人目は、ランキング104位、
“猟奇連斬(ブルーブラッド)”雷刃
スキル 双龍

3人目は、ランキング103位、
“轟雷(ライトニングカーニバル)”ソテー
スキル 雷迅剣

4人目は、ランキング102位、
“鎖状挽歌(チェインカウントダウン)”ズズズ
スキル 死神の抱擁

5人目は、ランキング101位、
“切断廃墟(ゴシックコラプション)”零
スキル スパスパの実

6人目は、ランキング100位、
“漆黒拡散(エンドレススパイダー)”しぇー
スキル ムシムシの実 モデル 護姫武裏(G)


この6人は、ギリギリだが、勝てた。
しぇーは、かなりキモくて、きつかったが、何とかぶち殺した。
そして、

7人目、ランキング99位、
“麦わら”ルイ
スキル 麦わらLv5


こいつには勝てなかった。
能力的問題があるみたいだが、そんなのは関係なかった。
誰が相手でも、おれは勝たなければならなかった。
上に行きたかった。
高みへ。



だから、努力を続けた。
毎日毎日、ゲームにもぐり続けた。
そして、その日も、鉄は、ゲームをプレイしていた。
事件に巻き込まれ、“この世界”に来て、
記憶を、なくした。



―――――――



麦わらの一味一行は、海の上。
ホルロイ王国へ向け、船を進めている。


「途中で襲った商船に、ホルロイ王国への“永久指針(エターナルポース)”があって、よかったね〜」
「そうだな」
「あとどれくらいで着くんだろうね〜」
「そうだな」
「かれこれ一週間は、あれから経ってるよね〜」
「そうだな」
「僕の話、聞いてないよね〜」
「そうだな」
「・・・・・・・・・」


ワンタは唖然としている。
開いた口がふさがらないとは、このことだろう。


「・・・おいっ、ルイっ」
「お前ら。ホルロイ王国に着いたら、たぶん、戦争になる。テルは強い。しかも、自然系(ロギア)集団だ。死ぬかもしれない。・・・・・・覚悟しとけ」


真面目な雰囲気でしめて、ルイは、自分の部屋へ戻って行った。
残された二人は、立っていることしかできなかった。



―――――――



そして、船は、ホルロイ王国に着いた。
島の外装は、内側が大きく陥没しており、中央に大きな城が建っている。
城の周りに、市場や民家が円状に、広がっている。

三人が、島に降り立つと、


「はいはーい、ようこそ、ホルロイ王国へ」


と、声がした。
声のした方には、シルクハットを胸に当て、深々と礼をしている男が一人いた。


「初めましてですね、私の名は、テミヤモ。役職は、テル王護衛隊3番隊隊長。ちなみに、あなた方は、もう逃げられません」


テミヤモが、そう言った瞬間。
三人を囲むように、人が現れた。


「・・・囲まれたか」
「どーする? キャプテン?」
「フルボッコでいいんじゃない〜?」


各々が、それぞれの考えを出す。
ルイは思考する。


「君たちが来るのは、わかっていました。私たちには、準備ができています。・・・・・・戦争の。それでも、殺りますか?」
「へっ、最初から決まっていたことじゃないか。考える必要なんかない。さぁ、ディルオワの場所を、教えてもらおうか。お前ら、戦闘準備だ!!」


ルイは、両腕を回し
シイグは、花恋を抜き
ワンタは、籠手と具足の様子を確かめる。


「・・・・・・はぁ、あまり賢い選択では、ありませんね。行け」


という言葉に、三人を囲んでいた、3番隊の奴らが、突っ込んでくる。
始めに動いたのは、ルイ。
近くの敵を殴り飛ばし、足で薙ぎ払い、敵の中心に立つ。
腕を円形に振り回し、周りの敵を吹き飛ばす。
次は、ワンタ。


「よっと、おニュ〜の、装備を試させてもらうね」


と言いながら、後ろから襲ってきた敵1人を、裏拳でオトス。


「すげ〜、一発じゃん」


気をよくしたワンタは、敵を薙ぎ倒しながら、動き回る。
薙ぎ倒し
薙ぎ倒し
薙ぎ倒しては、薙ぎ倒す。


「いいね〜、この籠手と具足。アレやってみよ。《ジェットブースト》!!」


籠手の横から、小さなジェットエンジンが2つ出てきて、高エネルギーを、噴出する。
腕の振りの速度が、先ほどとは、段違いに上がる。
相手に当たった瞬間、


「ぐぅぇっ・・・・・・」


ひねりを加えた。
相手は回転しながら、吹き飛んでいく。
だが、ワンタはまだまだ、止まらない。


〈レヴィ〉
〈りょーかいです〉
『剛撃・氷結』


ワンタの打撃に、氷結が付加された。
足に力をため、一気に力を爆発させ、走り出す。


「結氷縁(フロストエッジ)!!」


その攻撃は、いわば、氷の舞。
敵の合間を縫っては、踊り続ける。
ワンタの通った後には、凍った道ができ、凍った敵もできる。


「雪の歯車(スノウギア)!!」


今度は、立ち止まり、その場で回転。
周囲の敵が、次々に凍っていく。
そして、最後に動いたのは、シイグ。


「さてさて、俺らも行きますか」


敵の方へ、スタスタと歩き出す。


〈サタン、アレやるぞ〉
〈マジで!? キタキター!!〉
〈いくぞ?〉
〈おうよ!〉
〈〈主体変更(メインチェンジ)!!〉〉


身体の操作権を変える掛け声を叫ぶ。
道中、二人で考えたものだった。


「クククククッ・・・・・・。いいねぇ、この戦場のにおい」


今は、シイグに変わり、サタンがシイグの身体を、操作している。


「あ〜あ〜。シイグ君じゃなくて、えーと、サタンくっ〈サタン様です〉・・・はいはい。サタン様。目がイッちゃってるよ」
〈それでこそ、サタン様です〉
「おいおい、オメーら、手ぇ出すなよ。こっからは、オレが殺る」


サタンの目つきが変わる。
笑みを浮かべる。


「ククク、ヒャッハ――――!!」


走り出す。
敵を切り崩す。
斬って斬って斬りまくる。


「ヒャッハハハハー!!」


甲高い声を上げながら、花恋を振りまくる。
斬っても斬っても、敵が減らない。


〈おい、サタン。これ以上は、不味い。これ以上は・・・俺の、身体が・・・〉
「あーあー、鬱陶しいな。飽きてきたわ。もっと強い奴はいないのー?」


雑魚はもういい。
強者をダセ。
血ガ疼クンダヨ。
この戦場で、一番強い敵を探す。
どこだ。
どこダ。
どコダ。
ドコダ?


――――イ、タ。


〈・・・くっ、もう、もたねぇ〉
「ミツケタ!! 強者ノ臭イダ。強キ者ノ臭イダ!!」


テミヤモに向かって、突っ走る。
敵に攻撃されようが、お構いなしに。
ただ、敵に向かう。


「オレト、戦エ。強キモノヨ!! オレノ糧トナレ!! アノ方ノ、目的ノタメニ!!」


狂ったように叫びながら、テミヤモに花恋をふるう。
今のシイグは、自分を制御できていない。
サタンの力に、飲み込まれている。


「七久佐(ななくさ)一刀流 菊!!」


シイグの動きが、数段速くなった。
その動きで、テミヤモをぶった斬ろうとする。


「オゥウルゥァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「邪魔だ」


が、その一歩手前で、攻撃は遮られる。
横から、ルイに殴り飛ばされた。


「こいつは、おれが殺る」


ルイが、テミヤモの前に立つ。
薄く笑う。
指を、コキコキッ、と鳴らし、


「さぁ、始めようか」


と、言った。


「痛たたた、やり方が力尽くすぎだろ」
「何言ってんだ? 感謝しろよ。助けてやったんだから」
「・・・ああ、助かった」


ルイが思いっきり殴ってくれたおかげで、サタンの力の暴走が、止まった。
不味いな、ちゃんと扱えるようにしとかないと。


「ふむ、船長があなた方を、気に掛ける理由がわかったような気がしますね。・・・・・・中々にお強い」


テミヤモが、顎に手を当てながら、そう言った。
そして、右手を前にだし、こう言った。


「ですが、もう、終わりです」


ルイの身体が浮き、テミヤモの方へ飛んだ。


「!? んなっ・・・!?」
「さようならですね、“麦わら”」


左手で、懐からナイフを取り出し、ルイに突き刺す。
ルイは、それを身体を引いて、避けた。


「っ! 危ねぇな・・・」
「避けるなよ。死んでくださいよ」


なんだ? 今のは。
身体が、いきなり引き寄せられた。
何の能力者だ?
うがっ・・・


「くっ、またか・・・」


先ほどと同じように、テミヤモは、ナイフをルイに突き出す。
ルイはまた避ける。
もう一度、突きだす。
また、避ける。


「ちぃ、死ねぇ!!」


もう一度、ナイフを突き出す。
それをルイは、つかみ、砕く。


「あっ・・・」
「ふん、その程度か。なら、そろそろ殺す」


足を引く。


「ゴムゴムのぉ、スタンプ!!」


テミヤモは、踏み飛ばされる。
背中を強く打ちつけたみたいで、口から血を吐きだした。


「げはっ・・・。くぅ、貴様ァあ!!」
「うるさい黙れ。おれの力を見誤った、お前が悪いんだろう?」


テミヤモは、ふらふらしながらも、何とか立ち上がる。
そして、必死の顔で言う。


「わかっているのか? もうここは、ホルロイ王国だ。ここから先に進めば、おそらく全面戦争になるぞ!! その覚悟が、お前らにはできているのか!!」
「・・・覚悟・・・だと?」


腕を伸ばす。


「お前らこそ、覚悟できてんのか? おれら“麦わらの一味”を敵にまわす覚悟が」


伸ばした腕を、捻る。


「おれらは、仲間のためなら、国だろうが、世界だろうが、敵にまわす。それが―――」


捻った腕を、テミヤモの腹に、ねじ込ませる。


「――――それが、“麦わら”だ!!!」


めりこみ、骨を潰した感触を味わいながら、腕を振りぬく。
テミヤモは、またも、壁に背中を強く打ちつける。


「覚悟が、足りねぇんだよ」


そう、吐き捨てた瞬間、3番隊の奴らが、悲鳴を上げながら逃げ始めた。


「わァあああああああああ!!」
「ば、バケモンだァああああああああああああああ!!」
「隊長が!! テミヤモ隊長がァあああああああああああああああ!!」
「はんっ、雑魚共が」





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■作者からのメッセージ

はい、どーも、お久しぶりです。
波良田瑛太です。
今回は、1万時超えましたよー。
これからもがんばっていきたいです。
応援よろしくです。
それでは。
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