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ONE PIECE ONLINE 第16話 「ホルロイ王国」
作者:波良田瑛太   2013/05/25(土) 16:26公開   ID:ic3DEXrcaRw


「シイグ―――おれの仲間になれ」


ルイは、淡々と言ってのけた。


「な、仲間・・・!?」


シイグは理解できていない。
目的は俺を仲間にすることだったのかと、シイグは考える。
ルイは構わず続ける。


「おれの目的は、この世界にいるであろうおれの仲間を探すことだ」


ルイは別に、元偽麦わらの一味に特別な感情があるわけではない。
だが、元の世界には戻りたいと思ってる。そして、元の世界に戻るには、情報が必要である。情報は力のある者が持っている。
なら、情報を手に入れるには力が必要になる。
この世界での力は、《OPO》の力。
なら、面識のある奴で、自分をよく知っている奴がいいと、ルイは考えた。


「仲間・・・・・・」
「仲間を探すには、海へ出なきゃならない。だが、海にはおれたちが想像もできない強者たちがうじゃうじゃしている。・・・今回のように死にかけるかもしれない。だから、強い味方が欲しい。おまえなら、・・・適任だろ?」


仲間ねぇ、そういや、あいつら何してるかな? と、シイグは自分の仲間のことも考える。


「そうだな・・・、わかった。だが、条件がある」
「条件?」
「ああ、俺の仲間もついででいいから探すこと」


シイグの突きつける条件にルイは、顔をしかめる。


「・・・・・・なんて面倒な条件だ・・・」


ルイは考える。
少し考えれば、シイグがこう答えることは予想できたはず・・・くそっ
考えるのもメンドーになって、てきとーに動いた結果がこれか!! どうする?
ここで、こいつに借りを・・・・・・なんか考えるの疲れてきた。
もういいや、メンドイ・・・


もう後悔しないようにと、ルイは考えてみるが、約3秒で断念。


「いいよ・・・おまえの仲間も探そう」
「よっしゃ! これで俺も麦わらの一味か・・・なんかスゲーな。・・・こう、言葉では表現できないがスゲーな!!」


シイグは目をキラキラさせる。
その様子にルイは問う。


「お前、復讐はできたのか?」


その瞬間、シイグの目のキラキラが消える。


「・・・いや、あとちょっとのところで、逃げられた・・・」
「そうか、・・・ま、もういいよな。復讐とかするだけ無駄だろ?」


ピクッ・・・


シイグの中の何かに反応した。


「無駄じゃねぇ。復讐は成し遂げる。復讐をすることによって、俺の心が洗われる。俺の心の渇きが癒える。アンゲロスは必ず――殺す」


シイグの目に黒いものが渦巻いている。


「おーい!」


静寂が苦しくなってきた頃、ワンタの声が聞こえた。
2人が声のした方へ顔を向ける。


「やっぱり無事だったね。まぁ、キミらが簡単には殺られないか」


あまり心配してない顔で言いのける。
シイグ、ルイともにワンタに声をかけた。


「ワンタ、無事だったか。よかった・・・」
「誰だおまえ?」


ルイはワンタとの接点はなかったので、知らないらしい。


「僕の名前は、ワンタ。シイグ君の仲間だよ!」


キメ顔で言う。
2人ともそれぞれの反応を見せる。


「えっ?」と、ルイ。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!???」と、シイグ。


なぜかシイグが、一番驚いてる。


「おいおい、仲間って何? 俺ら仲間だっけ?」
「おい、シイグ。こいつは強いのか? 使えるのか?」
「ん、まあ。そこらの海賊よりは強いと思うぞ。だが今は、そんなことより・・・・・・」
「なら、いい。ワンタ、おまえもおれの仲間になれ」


ルイが、気にするのは、自分の目的のために、使えるのかどうかの一点。


「いやいや、僕が仕えているのは、シイグ君だから。僕はシイグ君についていくだけだよ。ごめんね、その誘いには乗れないや」
「ふぁあああぁ、そうか。別にいい。だが、シイグはおれの仲間になったからな」
「ん? そうなのかい、シイグ君」
「ああ、まあな。そういうことになった。でも、仲間って・・・・・・」
「海岸に行くぞ。船を奪いに行く」


ルイは、会話を続けているシイグとワンタに背中を向け、歩を進める。


「あー、わりぃ。今からとかは無理なんだ。父様の葬式とか、家のことで色々と、やらなければならないことがあってよ。3年。3年待ってくれ」
「3年ね・・・。わかった。3年待とう。まだ、おれら10歳だしな」
「僕は12歳だけどね」
「よし、3年後な。俺はもう行くわ」


シイグは、父親の死をその双肩に抱えながら、帰途につく。



―――――――



3年が過ぎ・・・
待ち合わせ場所の海岸・・・
いくつもの船が浮かんでいる。海賊が集まっているのだ。


「ふー、着いた。途中、変なおっさんに絡まれたときは、うざかったな」


ふぁああぁ、と欠伸をしながら言ったのは、麦わら帽子をかぶった、少年。ルイ。
黒白チェックのポロシャツに、黒の短パンという、ラフな格好をしている。
身長は、3年前より、少し伸びている。が、まだ小さい。伸びてくるのはこれからだろう。


「おーい、ルイ―!」


遠くから、手を振りながら走ってきたのは、ワンタ。
水玉のYシャツに、ゆったりとした、水玉の短パンをはいている。
現在15歳。育ち盛り真っ最中のワンタ。身長はかなり伸びている。


「久しぶりだな。あまり、会いたくなかったけどな」
「うわー、ひどいねキミ。僕はキミを監視するためにいるんだからね」
「監視など、いらねぇよぉ。ふぁああぁ」


ワンタの監視とは、万が一、合成系(キメラ)が全員そろってしまうなどの、事態が起こらないように、というものである。


「てかさ、シイグ君は?」
「まだ来てない。ったく、アイツは・・・」


その時、叫び声が聞こえた。


「うぎゃぁあああああああああああああああ」
「まぁてぇええええ、クソガキィイイイイイイイイイっ!!」
「ぶっっっ殺す!」


シイグが、恐いお兄さんに追われていた。
シイグは全力疾走。
お兄さんたちも全力疾走。


「何をやっているんだ・・・」
「あ、あはは・・・」


ルイは、溜息をつき、ワンタは苦笑。


「はあはあ、おっす。久しぶりだな、二人とも」


息切れをしながら、再開のあいさつをする少年。シイグ。
袖なしのミリタリージャケットを着、スラックスを七分まで折っている。
3年前とは比べ物にならないほど、ガッシリとした身体つきをしている。


「・・・で、あの人たちは何なんだ?」
「すごい怒ってるね。シイグ君何したの?」
「なんもしてねぇよ!」
「嘘つくんじゃねぇえええええ!! お前が船長にぶつかって、船長のアイスが落ちたじゃねぇかっ!!」
「船長は、あれからずっと、鬱モードに入っちまって、部屋から出てこないんだぞ!! どうしてくれるんだ!」


この二人は、超新星【奈落(リリース)】セイン海賊団の船員である。
アイスが落ち、気分も落ち込んだ、船長の仇を討つため、シイグを追ってきたということらしい。


「だから、謝ったじゃん。急いでたから、適当だったけど、謝ったじゃん。ごめんって」
「・・・ったく、面倒事を持ち込みやがって・・・」


ルイは、周りに聞こえないように、呟く。
お兄さんたちは、シイグの言葉に耳を貸さず、戦闘態勢をとる。


「ンなもん関係ねぇ。お前の首を手土産に、船長を元気にする」
「だから、素直にシネェエエエ!」


お兄さんたちは、真っ直ぐ突っ込んできて、右腕を突き出す。
シイグは、しゃがんでそれを避け、立ち上がり、右足でお兄さんの顎を、蹴り上げる。
落ちてきたところを、回し蹴り。


「あがっ・・・・・・」


お兄さんは、うめき声を出しながら、吹っ飛んで行った。
そのままお兄さんは、横倒れ、動かなくなった。
残ったお兄さんは、驚き、うろたえる。


「お、お前、何もんだ・・・ぁ・・・?」
「俺か? 俺は、麦わらの一味 副船長 シイグだ」
「む、麦わらの一味? というか、お前が海賊? まだ、ガキじゃねぇか・・・」
「俺だけじゃねぇよ。こいつが船長 ルイ。そんで、こいつが・・・戦闘員 ワンタ」
「ええ!? 少し迷った!? 僕は、参謀とかいいんじゃない? 頭がいいしね」


シイグは華麗にスルー。


「ちっ・・・こんなガキどもが海賊とは、世も末だな。『麦わらの一味』覚えたからな。次会ったら、殺してやる」


恐いお兄さんは、倒れているお兄さんを抱え、捨て台詞を残し、去って行った。


「さて、改めて久しぶりだな。シイグ、ワンタ。これで、麦わらの一味、結成だ。おれらの目的は、仲間を集め、帰ることだ。故郷へ」


ワンタは、一人複雑な顔をしている。
故郷の意味が解らず。
シイグの仲間集めも、破滅しか生まない。
だが、シイグは気にせずルイの言葉を聞いている。


「さて、まずは、船でも奪おうぜ」


ルイは悪い顔をしていた。


「てかさ、シイグ君って、さっきもだけど、蹴り技ばっかだよね」
「ん? 確かにそうだな。自覚してなかったわ。いやさ、昔の知り合いで、戦いでは、手を使わないのがモットーとかいう奴が、近くにいたからだと思う。アイツの蹴り技は、凄いぞ」


ワンタと、シイグは楽しく談笑しながら、歩く。
ルイは、欠伸をしながら、一人で船を探している。
そして、ある船を見つけたようだ。


「ふぁああぁ・・・ん? おい、あそこに良いのがあるぜ」


ルイはにやにやしながら、二人に告げる。


「おお、デカいね」
「確かに、人の気配がしなくて、奪うなら、ちょうどいいな」


人のいない、海賊船。
シンと、静まりかえった辺り・・・
音を立てずに、乗り込む三人。


「ワンタ、錨を上げろ。シイグ、船内に人がいないか、見てこい」


ルイは、てきぱきと、指示を出す。
こういうのを、簡単にできるところを見ると、ルイは、人の上に立つ器があるのかもしれない。


「ルイ! 錨上げたよ!」
「よし、帆をはれ!」
「りょーかい!」


次々と、命令する。
その時、シイグの声が響く。


「ルイ! 中に人がいた!」
「なんだと? ・・・こっちに連れてこい!」
「帆、はり終わったよ!」
「そうか、とりあえず、出るぞ。出航!!」


船は、海岸を離れる。
少し離れた後、シイグが、船内に残っていた人を、連れてくる。


「こいつがそうだ」
「・・・・・・くっ・・・・・・」


縄で縛られ、動けない様子の青年。
青年は、鋭い目つきで、三人を睨みつける。


「ガキがこの船に、何の用だ? この船は海賊船だぞ。帰れ!」
「ふぁああぁ、うるせぇよ。この船は、もうおれたち、海賊『麦わらの一味』が、もらった。おまえは何者だ? 名前を名乗れ」
「ふん、お前らが、海賊? 遊びなら、なめてんじゃねぇよ」
「遊びじゃねぇ。真剣だ。そして、おれの質問に答えろ」


青年は押し黙る。
ルイの、あまりの目つきに、怯んだせいだ。


「・・・へっ、おれの名前は ゴーム ある国の王をやってた・・・」
「やってた? 今はもうやってないということか・・・?」
「アイツに、奪われた。くっ・・・」


青年は、唇を噛み、悔しそうに顔をゆがめる。
ルイは、その様子を見て、しばし考える。


「ふん、よし、めんどうだが、おまえを助けてやろう。事情を話せ」
「はぁ? 何言ってやがる。お前らみてぇなガキが、首突っ込める話じゃねぇよ」
「だから、おれたちは、ガキじゃないと、言っているだろう?」


ルイは、また眼を鋭くする。
青年はまた、怯む。


「わ、わかった。もう、お前たちをガキ扱いしない」
「わかったなら、いい。それで、おまえは、誰に王の座を奪われたんだ?」
「お前らは、海賊じゃないのか? なぜ、おれを助けようとする?」
「目的のためだ。おまえには、関係ない。黙って話せ」


青年は、ルイの真意を図ろうとするが、ルイは答えない。
ルイは、ただ、淡々と、行動するだけだ。


「はあ。・・・・・・まず、おれの国は、一か月ほど前、海賊に襲撃され、滅ぼされた。」
「ええっ!? 滅ぼされた!? 国が、たった一海賊団に?」
「そんなことって、できるのか・・・・・・?」


ワンタは、ありえないという顔で、驚きを表現する。
シイグは、到底受け入れられない、という感じだ。


「普通は、できることではない。だが、奴らは、やってのけた」
「その、海賊、船長の名は?」
「超新星【稲妻】テル・・・・・・」
「「!!??」」


シイグと、ルイは、同時に驚きの声を上げる。


「て、テルだと・・・・・・」
「アイツも来てたのか・・・・・・」
「え? え? どうしたのさ、二人とも」
「お前ら、奴のことを知ってるのか?」


青年は、ルイに掴みかかろうとする。が、縄で縛られているため、動けない。
代わりに、ワンタが訊ねる。


「ねぇ、どういう事だい? 知ってるの、二人とも」
「えっ、ああ、まあな。古い旧友だ」
「シイグ、意味かぶっているぞ。・・・テルはな・・・・・・知り合いだ・・・」
「知り合いだと? お前ら、奴の何を知っている」
「し、知ってると言っても、能力と、強いという噂だけ」


《OPO》のことを、知られると色々と面倒なので、慌てて誤魔化す。
青年は、その様子に少し訝しむが、テルの情報の方が大事なので、情報を得ようとする。


「ちっ・・・奴の能力なら、もう知ってる。なんたって、目の前で見せつけられたからな・・・」
「テルの能力って、いったいなんなの?」


1人だけ知らないワンタは、ルイに聞く。


「テルの能力は、自然系(ロギア)『ゴロゴロの実』・・・・・・数ある能力の中でも、最強と謳われる力。“雷”の力だ」
「か、雷・・・・・・」


災厄の自然現象、雷の力。
その力を想像し、ワンタは顔を青くしている。


「だが、おれらなら、勝てる。おい、おまえ、おまえの国の名は?」
「えっ? 本当か!? 勝てるのか!?」
「質問に答えろ」
「あ、ああ。おれの国の名は、“ホルロイ王国”」
「ワンタ! 船内に地図があるか見てこい」
「りょーかい」
「シイグは、そいつの縄をほどいて、情報を聞き出せ」
「オーケー」


ルイは、指示をだし終え、船内に向かう。
シイグは、それを見て、声をかける。


「おい、ルイ。どこに行く?」
「食料が、どのくらい余っているか、見に行く。お前は黙って、仕事をしろ」
「はいはい」


ルイは、一瞬後ろを向き、すぐに歩き出す。
シイグはため息をつきながら、青年の縄をほどく。


「ありがとう・・・・・・?」


青年は、とりあえずで礼を言う。
その様子を見て、シイグは青年への、取り調べを開始する。


「まずは、あなたの名前から」
「おれの名は、ディルオワ」
「年齢は?」
「18」
「つーかさ、何で捕まってたんだ?」
「民を救うため、戦ったが、テルに負けた。そして、奴の仲間に縄で縛られ、島流しにされた。流れている途中に、この海賊船の船長につかまり、売られるところだったんだ」



―――――――



一か月前

ホルロイ王国海岸。
一人の男が、船に積み込まれている。


「くそっ、くそっ、放せぇええええっ!! 民を! この国の皆を! お前らなんかに支配させるかぁああああっ!!」


男は、自由になろうとジタバタするが、縄で縛られているため、上手くいかない。
そんな男の姿を見て、船の中へ投げ入れた海賊ら三人は、ゲスい笑みをうかべる。


「うひゃひゃひゃひゃ。残念だったなぁ。お前のその願いは叶わねぇぜ」
「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」
「恨むんだったら、お前の弱さと、船長の強さを恨みな!」
「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」
「まぁ、船長はあの、超新星【稲妻】の“テル”だから、お前に万が一の勝ち目は、元からなかったんだけどな」
「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」


海賊たちの、ゲスい笑いが、癇に障ったが、今の男には気にならなかった。
【稲妻】のテル。
男はその名前を、胸に刻み付ける。
復讐の時のため。


「うひゃひゃひゃひゃひゃ、じゃ、良い旅を」
「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」


終始、ゲスい笑いの男は、船を海岸に縛り付けていた縄をほどく。
ほどなくして、船は海岸から、離れていった。
中の男は、船が動いているのを感じ、さらに強く暴れまわる。
だが、船は止まらない。
どうにもならない無力感が、男を叫ばせた。


「お前らは、ぜっってぇ、ゆるさねぇぇええええええ―――――っ!!!」






さらに、1日前〈ホルロイ王国〉

空が暗く
淀んだ空気の中
降りしきる雨に交じって
雷が降りしきる。


「敵襲! 敵襲です! ディルオワ王!」


王の間に、大臣が急ぎ足で、入ってくる。
本当なら、無礼で罰するところだが、状況が違った。
大臣の持ってきた情報に、王の間がどよめく。
だが、王は落ち着いていた。


「何人だ?」
「ひ、一人です」
「なら、おれが出る」
「お、王が・・・・・・」
「見張り役たちはどうした?」


見張り役とは、島を囲むように配属されている人のことである。
敵が進行してきたなら、見張り役が見逃すはずがない。


「見張り役は、全滅しました・・・・・・」
「・・・・・・っ!? なら、今敵に最も近いものは誰だ?」
「・・・・・・ヘンギスト守備隊長ですっ!」
「なら、周囲の兵を集めろ。特に、長槍兵と、銃兵だ。数が集まったら、ヘンギストに預け、敵を足止めさせろ。それが終わったら、お前らは、住人避難の指揮をとれ。任せたぞ」
「ぎょ、御意に」


まとまった指示をだし終え、王は、装備の確認をする。
国一番の鍛冶師に作らせた、動きやすい鎧。
腰には、ホルダーをつけ、愛用の二丁拳銃をさす。
何度か、出し入れをし、動きの確認をする。
問題がなかったので、もう一度銃をしまい、予備の銃弾を、ホルダーの後ろに引っ掛ける。


「よし、行くか・・・」


王の間にある窓から、城の屋根へ飛び移る。
その時、部屋の中から声がかかる。


「王様、御武運を!!」


屋根から屋根へ、飛び移りながら、戦いの場へ赴く。
段々と、その喧騒がはっきりと聞こえてくる。


「あはははははは!! ただの人間が、オレ様に敵うわけがねぇだろ!!」
「くっ・・・・・・」
「も、もう、動けません。たいちょぉぉ・・・・・・」


足止めは成功しているが、力が拮抗しているわけでは、無いようだ。
あと少し、あと少しだ・・・・・・
気持ちばかりが、焦る。


「お前らで遊ぶのも、飽きてきたわ。ぶっ壊すか・・・・・・」


敵は、腕を前に突き出す。


「100万V(ボルト)・・・・・・」


敵の手のひらに、雷が溜まる。
だが、それが放たれる前に、敵が王の、射程範囲内に入った。
入った瞬間、王は敵の身体を、その二つの銃口でとらえ、神速の早撃ちを見せる。
銃弾は、敵の手に当たり、すり抜けた。


「なんだぁ? 痛ぇじゃねぇか」


王は、驚く。
だが、同時に理解した。
自らが、丹念をこめて育て上げた自慢の兵が、こんなにも無残な敗退をしている理由を。


「自然系(ロギア)の能力者か・・・」
「誰だ、てめぇ」


王のつぶやきが、敵に聞こえ、敵は王の姿をとらえる。
同時に、兵たちも王の登場を知る。


「お、王様!!」


敵は、その言葉を聞き取り、ほくそ笑む。


「あんたが、王か・・・・・・」


兵たちは、満身創痍で苦しいが、王に、伝えなければいけないことを、言葉にする。


「王様!! 早く、お逃げください!!」


王の耳が、兵たちの声をとらえた時には、敵は目の前にいた。
そして、雷の柱が、王を貫く。


「“神の裁き(エル・トール)”」


王の身体を、雷が焼き尽くす。
王は、背中から倒れた。
もう、動かなくなっていた。


「あはははははは!! この国の王は、オレが倒した!! この国は、もうオレ、“テル”様の物だ!!!」


敵改め、テルは、国全体へ響き渡るように、勝利宣言をした。
兵たちは、テルを見つめ、身体を小刻みに震えさせる。
“絶望”
そう表現するのが、一番しっくりくる、そんな表情の兵たち。


「さぁ、出てこい!! オレの仲間よ!! この国はオレの物だ! 好きに暴れろ。奪い、殺し、残虐の限りを尽くしても、いい!!」


テルの声に反応し、海岸の方から人が現れた。
船で待機していたテルの仲間の、海賊たちだ。
海賊たちが現れてからは、ひどかった。
国中から、悲鳴が途切れない。
ついでに、海賊たちの笑いも途切れなかった。


そして、この男の笑いも―――


「あはははははははは!! 最高だ!! 神とはこういうことか!!」


いつの間にか、国中を見渡せる、王城の屋根に上った、テル。
今、口にした自分の言葉に、テルはニヤける。
そして次の瞬間、天まで届け、とばかりに大きく叫ぶ。


「ヤハハハハハハハハハ!! 我神也(かみなり)!!」




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■作者からのメッセージ
どーも、波良田瑛太です。
感想質問誤字脱字の報告、待ってます。
あと、副題つけてみました。
それについても、これは違うんじゃないなどの感想も待ってます。
それでは。
テキストサイズ:15k

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