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Job Frontier つんデレ?な妻と陽気な夫
作者:マスカレイド   2013/08/29(木) 17:08公開   ID:AOI9vdoxrJI
時は魔族がはびこる就職時代。
人々は騎士(ナイト)や格闘家(ファイター)、
魔道士(ソーサリア)などの『超級職』を身に着けなくては、
世渡りもままならぬ時代だった。
そんな時代を生きる、一つがいの男女の話。

『Job Frontier』
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今作は、いずれ私がブログ上で書きたい一次創作の、
1話分を試しにここに投稿してみようと思った単発物です。
ゲームの『汎用キャラ理論』を用いています。
○以下注意、備考
・この世界のギャンブラーは、手の内を読まれぬ為に、
常に笑みを浮かべています。
・ツンデレ好きの方は色々と注意したほうがいいです。

最初に言っておく、これはかーなーり、ヒドイ。

でも、より多くの人に楽しんでいただけるよう、頑張ります!
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 ハロウ、エブリワン、僕はアルカード、しがない賭博者
(ギャンブラー)さ。
 今、僕は酒場(バー)に居る。
ま、たまには夫婦で飲み明かすのもありって思っただけだよ。
「お、おい!聞いてんのかお前!」
おっと、突然耳元で立てられた大声に驚きながら我に帰り、僕は声の主である、
ショートヘアで活発そうな顔立ちの女騎士(レディナイト)もとい「最愛の妻」に笑顔を向ける。
「あ〜、ごめんごめん。な〜あに?」
「なあ、やっぱり、この格好、やめないか?性に合わん。」
そう言い、頬を赤らめながら、スカートの裾を軽く持ち上げる彼女を見て、僕はつい吹き出してしまう。
折角のバーだからと、僕は男勝りな彼女に似合うはずも無いドレスを着せたんだ。まあ、僕の趣味が大半だけどね。
「まあ、確かに僕みたいなのは都会派(アーバン)で礼的(フォーマル)なスーツで充分決まるけど、
君みたいに戦場を駆けるのが売りの女には野蛮(ヤーバン)で辺境的(ルーラル)な方が、
断然似合ってるからねぇ〜……ふ、フフハハハハハハ!」
 つい自分で笑ってしまった僕に彼女は突っ込みを入れる。
「馬鹿やめろ!なに一人でつまらない事言って笑ってるんだ」
 続けて顔を赤くしながら更衣を要求する彼女を、僕のS心は解放してはくれない。終いには僕を睨みつけ
「お前……私がナイトって忘れてないか?斬るぞ?」
そう剣を抜きかける彼女に、僕はウサ耳と接着剤を見せつけ、笑顔で無言の圧力をかける。
「そもそも、食事くらい、家で摂れば充分だろ!」
 まあまあ、たまにはこういうのも良いじゃん。
無愛想な声を出す彼女に僕はそう返す。
 僕にとって恩人である彼女へのお礼だなんて、直接言ってあげるつもりは無いさ。
 そう思い、僕は彼女との出会いを思い出す。
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「君、ヤバイじゃん!大丈夫?」
 何気なく山中を歩く僕は膝が血だらけの彼女に出会った。
それを見た僕はたまたま知り合いの医師(ドクター)からもらっていた
救急具を取り出し、彼女の前にしゃがみこむ。
「な、離せ!自分のことなど、自分でどうにかする!」
彼女はそう言うが、僕にはとても放っておけなかった。
だって、人が……しかも、女の子が大怪我してるんだよ?
尚更見捨てられないよ。
 始めはただの人助けのつもりが、気がつけば、僕は彼女と別れるのが辛くなっていた。
彼女とずっと一緒にいたい。
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そんな僕のわがままを嫌がりながらも聞いてくれる彼女に僕はお礼を果たしたい。
今回、彼女と外に出たのはそんな理由だ。
もしかしたら……僕はふと思い、彼女に向き直る。
そして、不思議そうにこちらに眼を向ける彼女に僕は言う。
「もし君がナイトで無かったら、こんなに長続きしたかな?
あるいは、僕らは出会えずに生きていたかもしれない。」
それを聞いた彼女が驚愕の表情を浮かべる。
そりゃそうだ。酔って何を言いだすかと呆れる筈だ。
 ――! 不意に僕の肩に痛みが走る。
僕の両肩を掴んだ彼女の手が小さく震えている。
そして、その顔は……とても悲しそうだった。
「ならば……私じゃなくても良いのだろう……?」
涙をこらえるような震え声で彼女が口を開く。
唐突過ぎて僕にはよく意味が分からなかった。
「私が格闘家(ファイター)や女魔道士(ウィッチ)であれば、
お前は私にここまで言い寄ってこなかったって事だろ!
お前が求めているのは『私』ではなく『レディナイト』なのだろ?このッ!」
 彼女が僕の胸倉を掴み、拳を僕の頬に見舞おうとする。
覚悟を決め、口を硬く結ぶ僕―――だが、彼女が手を止めた。
何事か小声で呟いた後、僕のシルクハットをとり、床に強く叩きつけてから一言、
「バカ!」
そう言い、バーから飛び出していった……て、ちょっと!
唖然とした周りも気にせず、慌てて帽子を被った僕はギャンブラー特有の笑顔を崩し、
慌てて店主(マスター)に財布を投げ渡した。
「なるべくジャストに会計しといて!すぐ戻るから!」
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店を飛び出す一人のギャンブラーを見送り、柔和な笑みで手を振るマスターはにこやかに一言、
「若いって……良いですね。」
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バカ!バカ!バカ!
今の私の気持は最悪だ。
勝気と謳われる女騎士がドレス姿で泣きながら、当てもなく街を駆け抜けていくのだ。とんだ笑いものだろう。
 何故だ?何故私は泣いている?何故、あの時手を止めた?
元々向こうが勝手に私に言いよってきたのだから、殴ることなど簡単だったはずだ。
散々私に好き放題やっていた男が私の「人格」を否定するような事を言ったから悪いはずなのに……私は殴れなかった。
ソレだけではない、「人間」より「外見」を重視したような、あんな事を言われた事が私でさえ、
屈強で勝気な「レディナイト」の「私」でさえ、泣くほど悲しかった。
プライドとかではない、ただアイツからその程度の存在としか認識されていないと思えたのだ。
いつもいつも、私はあのバカに「愛されている」などと思うつもりはなかった。
果敢な女騎士が「愛」など馬鹿げているではないか。
 別にあいつの発言など、
「ああ、そうか。じゃあ、コレっきりだな。じゃあな……」
 そう言い、その辺をうろつき、他の女騎士を探すよう
言い放ってサヨナラすれば、すぐに終われたはずだ。
だが、私はアイツとの関係を終わらせたくなかった。
裏付けるように、今まで、そして今も私はアイツと接したり、
アイツのことを考えたりするたびに頬も胸も熱くなり、高鳴りさえも感じるのだ。
……ふと、私は立ち止まり、街外れの森に居る事に気付く。
いくら無心だったとは言え、街のバーから郊外の森まで
突っ切っていたとは、自分でも驚きだ。
「グゥ……ルルルルガアア……」
――――――!
私は気配に気付き、剣を抜く。
姿を見せた正体は、獅子の頭にワシの前脚や蛇の尾、
そして漆黒の翼を広げた魔獣(キマイラ)系魔族、鵺(ヌエ)だ。
大方、人の臭いを嗅ぎ付けてきたのだろう。
私は剣を構え、翼を広げ飛び掛る奇獣を迎え撃つ。
暫くは剣捌きで奇獣を撒いたかに思えた。だが……
「ハアァ――――――――――――!」
―――!私の腕に熱がこもり、濡れた感覚を覚える。
地味に広がり行く痛みと鉄分のどぎつい臭い。
簡単な話だ。激昂した鵺が私の隙をついて腕を引っかいた。
それだけの事、ナイトである以上、そんな事は日常茶飯事だ。
剣を失った真っ赤な右手を見て、私は諦めたような気持ちになった。
所詮、私は母国が廃都と化した時に、戦いの重症を引きずったまま逃げた、いわば落ち武者。
そう思いながらも尚、私は襲い来る凶獣をぎりぎりかわし続ける。……が、その時であった。

「!バカな!」
突如、背に鋭い爪が食い込み、体を押さえつけられた。
執念深い奴だ……でもまあ良い。
どうせ、落ち武者な上、フられた女の身だ。
もはや誰も欲しまい。
私の身体を品定めする、空腹で物好きな獣のほかは……

 そう思いながらも、アイツの顔が浮かぶ。
女騎士なら何でも良い、それで普通あそこまで気にかけるだろうか?そして、
剣に苦し紛れに手を伸ばしながら自分の勘違いに気付く。
「私は……まだ、終われない!」
「ギャ―――――――――――!」
いや、気づいた時には、その前脚を物ともせず奮起し、異形の顔を斬りつけていた。
私にはアイツが居るんだ。
自惚れかも知れないが、アイツの私への想いはきっと本物だ、
逆もまた然り。そう気付いた時には……
鋭い痛みに耐え切れず、森の奥へと飛び去っていく凶獣を見送り、一息つく。
―――――ごん。
……?背後で鳴った鈍い音に目を向ける。
吹っ飛ぶ影と、吹っ飛ばした影。
「も〜、駄目だよ〜。たとえ鵺を倒せても、活死体(グール)族の気配ぐらい気付けなきゃ。
でも、素晴らしかったよ。」
杖を拭きながら拍手をする影―――アルカードの顔もスーツも濡れている。
汗か?こんな私なんかの為に、本当にバカな奴だ。
そう考えていた矢先、私の肩に彼が優しく手を添える。
「ドレスの女騎士だから、探し易くて良かった……」
それを聞き、私は汚れ、裂けたドレスに気付き、そして謝った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
良いんだよ。僕は一息ついてから続ける。
「ごめんね。僕の発言はすごく語弊があったよ。」
別にもし、君がファイターだったらとか、そんな万に……
いや、二つに一つもない話は無しで、僕には君しか居ないって。
ただ目の前に居る君だけを大切にしていたいって。
そう言いたかっただけだったんだ。本当にごめんね。
ナイトだからじゃない。君が「君」だから、僕は君が好きなんだ。
「……バーカ……」
うっすらと涙を浮かべ、頬を紅潮させる彼女が僕の胴に腕を回す。
返り血に染まる白スーツさえもが美しい。
―――――――――――――――――
全く、早とちりな性格には我ながら呆れたものだ。
勘違いして叫んだ自分が余計馬鹿げていて恥かしい……
柄にも無く泣けてしまうよ。
私は、ちょうど自分と同じ高さにある彼の胸元に頭を寄せた。
そして小さな勇気を出して顔を上げ、目の前のギャンブラーの目を見て口を開く。
「まあ……その、なんだ……?やっぱ……その、言い辛いが、
私も……お、お前が好きだ!」
ああ、そうさ、好きだから好きさ。
理由なんて要らないし、開き直ったって良い。
お前ほど上手くいえる柄ではないが、この気持は変わらない。
「だから……良いだ、う……!」
突如アイツがきつく抱きついてくる。でも優しく暖かい……
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やっと言ってくれたね。ずっと君から聞きたかった言葉。
でも、言われずとも.……
「僕は知っていたよ。許してくれるのであれば、いまここで、
永遠の契りを……」
―――――――――――――――――
コイツの言葉に対する動揺は正直抑え切れない。
だが、彼の気持に応える為、私は爪先立ちになり、少し屈んだ彼の首に腕を回し、
私なりに精一杯の……女性的(ガーリー)と言うのか?そんな笑顔で応える。
「ああ、受けて立つぞ……」
―――――――――――――――――
街外れの森の中、口唇を重ねあう男女の様子を木にもたれかかりながら窺っていた男、
バーのマスターは満足気に微笑みながら、タバコをふかして去っていった……
―――――――――――――――――
彼にはレディナイトの妻が居る。
自分の気持に素直になれず、不器用だが彼のことを誰より気にかけてくれる妻が……
彼女にも又、ギャンブラーの夫が居る。
悪ふざけが過ぎて、図々しいながらも、自分なりの至高の方法を以て
彼女を愛してくれる、陽気で優しい夫が……

「こんな僕といつも一緒にいてくれてありがとう。」
「お前こそ、こんな私を愛してくれて……ありがとう……」

ツンデレな妻と陽気な夫の、そんな淡い一夜の話……

―――――――――fin――――――――――――


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