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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史改変の章その32
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/12/08(日) 19:50公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1997年 初夏 日本帝国技術廠

 「以上が、AL4の技術部からもたらされた超弩級万能型機動要塞『雷雲』の仕様です」

 小塚三郎少佐の説明に、一様に帝国技術廠が誇る頭脳陣達が押し黙った。
 「雷雲」、その名を持つ機動要塞がそれだけ破格の性能だったのだ。
 航続可能距離実に3万Km以上、最高巡航時速1000Km/h、通常巡航速度800Km/h、内蔵可能戦術機16機。
 武装は主砲の荷電粒子砲、これは凄乃皇弐型の実に1.8倍の出力を持つ。次にサブで小口径荷電粒子砲が4門ときた。オーバーキルもいいところだ。
 電磁投射砲240mmが4門、電磁投射砲120mmが16門、M314搭載自律誘導弾発射口が36、と他の武装も充実している。
 ただこれを聞いた誰もがただ一つ思い描いたこと、つまり、どう考えても大艦巨砲主義すぎるだろ。
 この武装の前では、最低でも戦術機でなければ姿形が残らずに粉みじんになってしまう。
 対人類戦には決定的に向かない兵器、それが今回「雷雲」の説明を聞いた技術将校たちの感想だった。

 「我々が派兵する兵力、帝国軍海外派兵部隊第十三大隊はこの機動要塞に積み込まれるのかね?それにしては搭載可能戦術機が16機と少ないようだ?」

 質問をしたのは帝国技術廠の第壱開発局副部長、巌谷榮二帝国陸軍中佐である。
 技術廠という地味な部署にあってその名が広く知られているという意味では、小塚三郎少佐と双璧をなす。
 とはいえ、実績という面で言えば、小塚三郎少佐のほうがぶっちぎっているのだが、彼には隠れたブレインがいるため、一概に巌谷榮二が劣っているというわけではない。

 「それについては、こちらに別の資料があります」

 続いてスライドに映し出されたのは、陸上輸送艦「疾走」。この計画の前に中国大陸の最前線に如何に効率よく戦力を送り込むかを検討した結果、小塚三郎少佐から提案されたものである。
 これをAL4の技術部と共同で改良、開発したのがこの陸上輸送艦「疾走」である。
 ホバーとはいえ、その出力はとんでもなく高く、時速500Kmで陸地から約2mの上空を走り回るというびっくり玉だ。
 これほどのものがまだ実戦配備されていないのはひとえに、その継続時間だ。現在の試作品ではじつに稼働時間20分。全く役に立たない。
 そこで、注目されたのが雷雲との共同運用だ。
 必要な動力を雷雲から直接ケーブルを使って送り込まれることでその稼働時間を飛躍的に延ばすことに成功した。
 運搬可能戦術機も最大36機、つまり大隊規模の戦術機を運搬可能である。

 「『雷雲』とは、あれを稼働可能にするほどの余剰出力を持つのか」

 「はい。ただし、戦闘中まで牽引は不可能ですので、作戦空域以降は戦術機は自力での移動になります」

 「なるほど、だがそうなると補給の問題が残るのでは?」

 巌谷の鋭い目線が小塚三郎少佐に飛ぶが、彼は平然と受け流す。

 「戦術機がいなくなった陸上輸送艦『疾走』であれば、戦闘中の余剰出力でも十分随行が可能です。補給物資は『疾走』に積んでありますので、特に問題はありません」

 「む、そうか。ならばいい」

 巌谷が納得いったとばかりに頷くと、モニタに映し出された資料を見つめる。

 「作戦開始まであと三日。すでに九州防人基地には、作戦参加要員が集まっています。作戦開始の12時間前に基地を出発、『疾走』の最高速度に合わせて巡航、作戦開始領域まで到達する予定です」

 「なるほど。ところで軌道降下を行わない理由は何なのだ?」

 「やはり、地上からのレーザーによる迎撃を考えてのことだと思われます。ですが本当の目的は、おそらくAL4の実力、つまり本気になれば地球上のどんな勢力に対しても対応可能なことを知らしめる意図もあるかと」

 小塚三郎少佐の発言に場の空気が凍った。

 「ばかな、AL4は、世界に喧嘩を売るつもりか?」

 「いや、あの計画は国連の肝いりだ。まさか、国連の思惑が?」

 「この計画、横浜の魔女が私物化しているという噂があったが、まさか…」

 さまざまな憶測が飛び交う。それだけに「雷雲」という人類の切り札は、それが逆に人類に牙を剥けば脅威となるのだ。
 騒然とした雰囲気の中、火種を放り込んだ小塚三郎少佐だけは平然としていた。
 なにせ彼は、隆也を通じてBETA大戦が終了するまで「雷雲」が人類相手に動くことはあり得ない、と保証しているのだ。
 彼の保証がなにほどの効力を持つか?
 第三者から見れば、単なる口約束であり、一技術者の言葉であり、根拠とするには乏しいと移るであろう。
 だがそれは彼を知らない人間の意見であり、見方である。
 立花隆也、確かに彼は変た、もとい変じ、でもなく紳士である。だが、それでも彼ほどの能力を持つ人間はいまい。
 そしてその影響力は当然、AL4の最高責任者である香月夕呼にも及ぶ。おそらく世界で彼女に影響力を持つ人間は彼を入れてほんの数人。そしてその中でも最大の影響力を持つのが彼であるのは間違いない。



1997年 初夏 米国ホワイトハウス

 「桜花作戦に我が軍を共同で展開する案は受け入れられたか?」

 大統領の声に、大統領補佐官は複雑な顔で頷く。

 「好きにしろ、とのことでした。何があっても保証はしない、との念押しもありましたが」

 「ふむ、相変わらず香月副司令は食えん人物だな」

 大統領のため息混じりの声に、大統領補佐官が不思議そうな顔を浮かべる。

 「我々がアトリエを狙っていることは、相手も当然知っている。それでも我々を自由にさせる、その意味がわかるか?」

 「いえ」

 「我々とソ連を食い合わせるつもりさ」

 「ソ連と?」

 「ああ、CIA経由で、香月副司令がソ連の要請にOKを出したことが報告で挙がってきている」

 大統領補佐官が渋面をつくる。

 「我々とソ連の両方に恩を売りつつ、後は実力で手に入れろ、と?」

 「そういうことだろう。いや、正確には違うな」

 「どういう事でしょう?」

 大統領補佐官が問いかけるのを、笑って答える大統領。

 「単純だよ。この作戦、彼女は我々の助力を欲してはいない。つまりある意味我々は足手まとい、邪魔者それ以外の何者でもない。そこでアトリエを差し出すことで、その邪魔者の意識を逸らせておく。自分は一番美味しいところをいただくつもりだ」

 「反応炉ですか?」

 「ああ。科学者である彼女が、異星人の頭脳とも言える位置づけにあるオリジナルハイヴの反応炉との接触に、他の人間の横やりを許すとは思えない」

 「なるほど、それで我々にはアメをくれてやる代わりに邪魔をするなと、そういうことですか」

 「おそらくそうだろう。あとは…」

 そう言って、大統領は深いため息をついた。

 「あとは、人類が結束して戦うべき時になお、己の国だけの利益を求めるのか、それを見極めるつもりだろうな」

 「!?我々は試されていると?」

 「うむ、おそらくな。我々は確かに日本帝国と同盟を結んでいるが、AL4との技術交流については全くない」

 「ですが、AL計画は国連主導のものです。その結果を国連が接収するのに何の問題も無いはずです」

 大統領補佐官が技術接収について触れるが、それを大統領は手で押しとどめた。

 「それ以上は言わないほうがいい。相手は香月夕呼副司令、極東の魔女と言われる傑物だ。それに、00ユニットについては、完全に香月副司令しか制御し得ないものだという報告がある。彼女を敵に回すつもりかね?」

 「い、いえ、そんなつもりは」

 「よろしい、ならば話はここまでだ。桜花作戦に関する我々の作戦行動の立案に関しては軍司令部に任せる。当然、ソ連との不幸な鉢合わせがあった場合の対応もな」

 「承知しました」

 「ただし、これだけは注文をつけておいてくれ。人間相手に、決してこちらから手を出すようなことをするなと。これは大統領命令だ。例えそれで命を落とすようなことがあってもだ」

 そんな、それはつまり兵たちに死ねというのか?
 大統領補佐官が抗議の声を挙げようとしたとき、大統領の口から全く感情の見えない声がこぼれだした。

 「そして、もし手を出してきたのならば、正当防衛の名の下に徹底的に叩けとな。一匹たりとも生かして返すなと、米国というものがどういうものかを思い知らせろと」

 「はっ!」

 かくして各国の思惑を載せ、桜花作戦の開始の時は徐々に迫ってきていた。



1997年 初夏 柊町

 「第4回、ヘタレ争奪戦をこれより開始いたします!」

 「「「おおーー!!」」」

 「ヘタレ死ね!」

 「リア充爆発しろ!」

 「くそヘタレ、もげろ」

 物騒な声と共に、わき上がる歓声。
 今は夏、横浜基地において、これから第4回を数える名物が始まった。

 「えー僭越ながら司会は、私、玉川美千恵、玉川美千恵、彼氏なしが行わさせてもらいます」

 長い髪を襟元辺りで一房にまとめた女性が、マイク片手に哮っている。

 「というわけで、今回で4回目となるヘタレ争奪戦を開始したいと思います。では、商品のヘタレさんに登場してもらいましょう!」

 バコン、という音と共に司会者の頭上につるされていた大きなくす玉が割れると、亀甲縛りにされたヘタレこと鳴海孝之がそのくす玉の中から宙に投げ出される。
 このままではヘタレが地面に落ちてしまうと誰もが思ったとき、くす玉とヘタレを連結したロープがピンと張った辺りで中空に留まりぶらんぶらんと、空中を揺れていた。

 「う゛ーう゛ーう゛ー!」

 口には猿ぐつわが噛まされている。一言でいってひどい、二言で言っても酷い。
 ちなみに服装はなぜか97式衛士強化装備だった。

 「「「ぶわははははは!」」」

 「「「あはははははは!」」」

 「ああ、鳴海先輩にお仕置きしたい」

 会場が大歓声で覆われる。その中で1人だけぽつりと呟かれた怖い台詞。口にしたのは緑の髪とカエルの髪留めの似合うメガネッ子だった。

 「さて、賞品が出てきたところで、両陣営に御出陣願いましょうか!」

 美千恵がオーバーアクションで会場の両袖に向かってカモン、と手を向ける。

 「まずは青コーナー、麗しのポニーガール、速瀬水月!」

 「おっしゃー!JPY!」

 片手を高々とあげ、会場に入場する速瀬水月。

 「「「JPY、JPY」」」

 速瀬親衛隊が大声で唱和する。その声を背後に悠々とした足取りで水月が孝之の下辺りまで足を運ぶ。
 上を見上げて、にやっ、と笑うと、

 「待ってなさい、今日こそ決着をつけるからね」

 と不敵に勝利宣言を行う。

 「おーと、早くも速瀬選手の勝利宣言か、さて、では続いて、赤コーナー、おっとり天然癒し系、涼宮遙!」

 「あははは、みんなー元気かな?私は元気だよー」

 右手を振り振りと、先ほどの水月と比べると控えめな態度で会場に入場する涼宮遙。

 「「「天然どじっこ萌えー!!」」」

 涼宮親衛隊が大声で唱和する。その声を背景に恥ずかしげに小走りで水月の隣、つまり、孝之の下辺りに足を運ぶ。
 上を見上げて、きっ、と決意の籠もった顔をすると、

 「待っててね、今日こそ決着をつけるから」

 と、こちらも水月に負けずの勝利宣言を行う。

 「ふふ、遙もやる気満々のようね!」

 「み、水月だからって負けられないもん!」

 こうして第4回ヘタレ争奪戦が幕を開けた。
 ちなみに、これは桜花作戦開始二日前の出来事である。
 あと結果は、第1回から延々と続く両者ノックダウンによる引き分けにより、またもや決着は次回に持ち越されたのであった。
 え?競技の内容?
 いやだなー、奥さん。そんな18禁コーナーじゃないのでここで書ける訳ないじゃないですか。

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