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青年冒険譚〜武人大国救済伝〜 第六話:飽かぬ少年の冒険心、そして壮大な旅の幕開け
作者:マスカレイド   2014/03/25(火) 14:56公開   ID:8YA7Hr6Ij6Y
「下がっとき、アレク……」
そう言い、私をかばうように、正体を現したアサシンブロスと対峙するアラタ。
……いや、アラタだけにはやらせない。
私のことを大事に思ってくれていたアラタだけを危険な目には合わせない……!
私は全神経を人形に向けて集中させる。
そしてそのまま私の意識は途絶えた―――――――――――――
―――その時、不思議なことが起こった、
少女、アレクが気を失うように倒れた瞬間、彼女の抱いた人形が浮き上がり、光に包まれたのだ。
そのまま、そこには、例の人形をよりリアルに、アレクと同じくらいの身長になっていた。―――――
良し、私は人間の体にステルスをかけておき、アラタの隣へ行く……
「行くよ、アラタ……」
「んあ、駄目やろアレク。下がっとき……って、え―――――――!!!!?」
「な、なんで!?お前本当にアレクか!?」
そう言い、驚き戸惑うアラタに軽くうなずく、まあ、無理も無いか……
「は、オメ、んなこともしらねぇのか!ソイツこそがクライアントの未来の脅威、『モントナー』だよ!」
モントナー、モンスターパートナーの略。
あらゆる時空世界の主が、異世界の勇者の力を貸して欲しいとき、
その存在を導くために送り込まれる存在。選ばれたものだけが、
自分のイメージ通りに姿をデザインできる、不思議なふしぎな魔物……
そうやったんか……アラタが納得したようにそう言う……
「まさか僕みたいなただの一般人がそこまで必要とされてたなんてなあ……ちょい照れるわぁ……」
恥ずかしそうな笑顔で複雑そうな表情を見せるアラタ。
と、不意にアサシンブロスの兄貴分が笑いながら馬鹿にしたような顔を見せる。
「まあ、安心しろよ……どうせテメェラここで死ぬんだ……『選ばれた』とか関係無ぇだろ!!」
そう言い、眼にも止まらぬ速さで爪をアラタに向かって繰り出す―――――――――!!!が、


――――――――――――――――――――!!!!!――――――――――――――

鈍い金属音が草原に高らかに響く。
なんと、彼が鬼樫魔でその爪をはじいていたのだ……!

「おお、忘れてたわ。僕一応……」
そう言い、後ろから迫る弟分に大桐咲の一発をくれてやるアラタが一息おいて言う。
「一応『麻帆良武術祭』優勝したことあるんで、あしからず〜」
不敵な笑みを浮かべ双木刀を構える彼には先ほどまでの非現実的な存在を眼にした恐怖はすでに無かった。
彼は新しい次元(セカイ)へと驚異的な順応力で踏み込んでしまったのであった。
「ほ……ホザケェ!!!!」
弟分は激昂し、爪を外周にして回転技を仕掛けるが、そちらはアレクに弾かれてしまう。
「アラタ、貴方はいつかあげた木の実の効果で簡単には死なないから、恐れないで!青いのは私がやる!」
木の実、その言葉にいったん首をかしげるアラタだが、すぐに思い出し、
「ああ、OK!!こっちは僕に任せぇ!!ってな訳で、いくで!!」
「うるせぇ!」
兄貴分―BR(ブロスレッド)は俊敏なフットワークを生かして爪を振るい、
アラタは威勢良く叫びながらそれに大桐咲で応える。
どうやら、かなり腕力もあるようで、木材とはいえ、仮にも大剣であるアラタの獲物を片手で受け止めたまま、
余裕の笑みを見せるBRは突如アラタに向けて左の爪も向けるが、それさえも鬼樫魔で弾かれてしまう。
両手がふさがっている状態で、どちらかが距離をとるかしない限り状況は打開不可だが、彼らはどちらも一歩も譲らない……


否、上述の見識はあくまでも素人ぐらいの発想だろう。
しかし、BRはあらゆる戦さえ潜り抜けた存在。
「ソイヤ―――――――――――――――――!!」
「!!!ガッハァ……!」
突如、アラタの腹部にじわりと鈍い苦痛が広がる。
右足を突き出したまま膝を着くこちらを見下す竜族。恐らく競合いに集中している隙に盲点だった腹に前蹴りを決めたのだろう。
「お〜いおいおい。さっきはドヤ顔見せてくれちゃってたけどよ〜?言ったよな?一箇所に気を取られるのは利口じゃねぇってな……
所詮武道大会で勝ったぐらいの腕で大人をナめないでくれよなぁ。所詮遊びだろ?
せいぜい部活で目覚しい功績たたき出したくらいの奴の殴り合いなんざで、給料の為に平気で殺しができる奴に敵うもんかい……」
それを聞き、アラタは顔をしかめるが……
「お前……んなことしてきたんか……!」
「当たり前だ、アサシンだぞ?それに、対象は所詮、悪徳野郎や奴隷使いなんかをもっと偉い奴から殺るように頼まれるんだ。
そのお陰で、奴隷は解放、俺らはヒーロー、稼ぎ口としては正義(ジャスティス)の部類だろ?」
彼はそれを当たり前のように応える。更にそうしながらも間髪入れずに爪を振りぬく。
それを防ぎながらもよけきれずにかする爪の感触に冷々としながらも、アラタは考える。
たしかに、奴隷の存在を聞くと、施行者に対する殺意が湧き上がる。
しかし、それでも、簡単に殺すことなどできるであろうか……?
いや、自分はそんなことしない。仮にも命だ。軽くボコッて同じことをさせないよう脅すくらいだろう。
それをこいつは今までも多くの命を奪ってきた、それは決して許されることではない。
「やっぱお前、今黙らしといたほうが……」
競合い、にらみ合う両者……相手の隙を見つけ、その腹に先ほどの仕返しをせんと試みるアラタだが……
「え え み た い や な !!!!……でぇ!!?」
「自分でやった戦法にかかるかよ!バ〜カ!!!」
後方に一跳びで退避され、バランスを崩して腹を打ちながら地に倒れてしまう……
悔しがり、苦々しい顔を見せながらも立ち上がろうとするアラタ――――――が、

!!!!!!

突如、鈍く思い痛みが背中からぶつけられる―――――――――――!!
「戦場で倒れたら……嵌められるぜ……?」
そう、したり顔で瞳だけ少年に向ける紅き迅雷の暗殺者は軽く足を上げ、また振り下ろす――――――!!
「……!ッガ!……アガッ!ッガ……!!!」
何度も何度もその背を踏まれ、苦しく喘ぐしかできないアラタ。
トチ狂ったかすれ笑いで弱者を踏み荒らすBR。
その痛ましい光景が広がる傍らでは―――――――――――――――――
「でい!ハァ――――――――!!」
勢い良く大斧を振り回す魔物、勇者を導く存在、モントナー・アレク。
「ホイ!よいしょ!ハイ―――――――――!!」
兄貴ことBRに勝らずとも劣らぬ速さで猛攻を仕掛ける弟分こと、青き疾風の暗殺者、BB(ブラザーブルー)
元が人外であるアレクにとっては、相手はそれほど戦いづらい相手ではない。
戦いづらくはないが、やはり、実戦差や、実力格差(ランク)の関係で、多少なりとも苦戦を強いられていた。
「ハン!遅せぇぞガキャァ!!いくら人外(モンスター)でも実戦(シゴト)っつう戦闘を掻い潜ってきたAランクモンスターに
駆け出しのFランク風情が敵うわけねぇだろがよぉ!!神から使わされて、一回でも戦ったことあるか!?」
猛攻ラッシュでアレクに向けて爪を突くBB。
数本がかすり、その体に傷をつけられながらも痛みを抑え、それを弾くアレク。
「うるさい!!ランクなんか関係ない!私はあの御方とアラタの為に負けられない!」
勢い良く、力任せに振るう斧からの衝撃がBBをひるませ、その胸元に勢い良く得物を叩き込む。
小さくうめくBBそちらに鋭い眼を向け、アラタ達に向き直ると……
「!!!!アラタ―――――――――!!!」
先ほどまで優勢と見られていた彼女のパートナーは一瞬の隙を突かれ、嵌められていた。
背骨を折らんばかりの勢いで足を何度も踏み下ろすBRと、その度に悲痛な声を上げるアラタ。
見ているだけで痛々しい光景に、一瞬すくみ、眼を堅く閉じて背けてしまいそうになるが、
「アラタ、今行くよ!!」
逃げるわけには行かない、意を決して踏み出そうとするアレク――
―彼女の渾身の一撃でBRを吹っ飛ばしアラタは体制を立て直す……!!!
「おっと、『青いのは私がやる!』んだろう?決めた仕事は放棄すんなよぉ……」
筈だったが、冷笑を浮かべたBBが彼女が踏み込んだ目先に現われる―――――――――――!!
「うるさい、邪魔スンナ!!アラタが死にそうなんだ、どけ――――――――――!!!!!」
「ったりめぇだ、こちとら殺す気でやってんだよバカ!」
凄まじい怒鳴りあいをしながら、応酬を続ける両者。
「はぁ!そもそも、FランクがAランクとほぼ互角にやり合ってるってことに気付け!」
そう言い、競合い状態だった爪から斧の刀身を滑らせ、BBの肩にヒットさせるアレク……
激痛に耐えられなかったBBはけたたましい声を上げ、後ろへ飛びのき数秒間跳ね出してしまう。
それを見て、彼に斧を向け強く言い放つ……

「あなたの敗因は私を何倍もの格下となめて懸かって心の隙が生まれたこと、それにッ……!アッ……!」
しかし、不意に背中に激痛が刺さる。一瞬の痛みに顔を歪め、恐る恐る、見据えた先……
なんと、そこに敵の姿はなかった……

「じゃあ……テメェの悪いとこぁ、まぐれ当りを真に受けて喜び、調子に乗ることぉ……
俺が負けるってよぉ……いつ言った……?」
眼は真赤に光、瞳は焦点が合っていない逆上状態の青き迅雷、アレクの背には、深々と己の爪を突き刺していた。
薄れ行きそうな意識の中で、彼女はパートナー、アラタの身を案じる……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「や〜れやれ、もう終わりだなあ……お前の!お連れさんも!やべぇんじゃ!ねぇ!の!?」
もう足が疲れても言い頃だろう……しかし、ペースを崩さずに何度も足を踏みおろすBR。
しかしここに来て、あることに気付く……
「……?お〜い、クソガキ?褒めてやるよ、俺に直接対決を強いるくらいにてこずらせてくれたんだぁ。」
「・・・・・・」
へんじがない ただのしかばねのようだ。
アラタは一言も言わずにそこに伏せたまま固まっていた……
それを見て、喚起の声を上げるBR。
ついに邪魔者を殺したのだ、意気揚々と軽く蹴り飛ばし、豪快に吹っ飛ぶ少年の遺体を見届け、BBの元へ歩みだす。
「おい、そっちをヤッても、人間に戻られちゃアウトだ。ガキの体は俺がヤル!」
そう言い、なかなか骨のあった人間を殺した晴れやかさを噛締めながら、軽快に歩き出す……
「そ……んな……アラ…タ……」
そう言い、絶望の表情を見せた後、ある疑問に気付く。
何故自分は未だ死なないのか?
それを察したBBは彼女コバカにしたように笑い、見下しながら説明する。
あえて、ゼツボウを見せ付ける為に、じわじわとなぶり、傷を抉ることを。
高らかに笑うアサシンブロスに、力が抜けて、抵抗ができない自分に涙を流すアレク。
自分のせいで一般人を死なせてしまったことを、自分の世界を破滅に導いてしまうことを……
彼女はすべてに絶望し、涙を流した。
「ゴメン……アラタ……ヒメ……サ……」

―――――――――――――――――!

その時、不思議なことが起こった!
BRの頭に鈍い衝撃が強く走り、不快な音が響く。
その痛みに悶絶しながらも後ろを振り返る彼の眼に映ったもの、それは……
「何、諦めとんねんアレク……誰も死んじゃおらんでぇ……」
それを見てBRは青ざめ、息を呑む。
お前は死んだのではなかったのか、そう言いたそうな眼をする彼に、
殺されたはずの少年、和泉アラタは彼の頭部から大桐咲をずりおろし、膝を突いたまま不敵に笑う。
「誰が死んだっていったんよ?正直、苦しい中で息殺すのクッソ辛かったわ〜。
どお?倒れたときの……勢い乗せたまま振り下ろす大木刀……効いたやろ……?」
そんな彼の姿に、頭の痛みからふらふらとしながらも、BRは生まれて初めて戦慄を覚える。
「……なあ、なんで……あんだけやられて……口から血ぃ垂らしながらそんなに喋れんの……?」
アレクが……最高のパートナーが危険だから、そう言いながら痛む足を引きずり、大桐咲に身を委ねて立ち上がり、
最早戦意が無く、足元がふらつく紅き迅雷……と呼ばれていた目の前の竜人に鬼樫魔の切先を構える……!
「疾風突き、五連!!」

ッ!ッ!ッ!ッ!ッ! BRのミゾオチに立て続けに入る鈍い衝撃、何も考えていないような無表情で、力なく口を開き、

「……な……なんで……?」

「ア、兄貴―――――――――――――――――!!!!!て、アッ!」
力なく倒れたBRを目の当たりにして衝撃を受けるBB、と、彼の手元が光り、
半殺しにした獲物は人形に戻る……
「兄ちゃんがいっとらんかったかぁ!?『一箇所に捉われすぎるのは利口じゃねぇ』って!」
威勢良く叫び、タンマタンマと目を泣き腫らして叫ぶ弟分に問答無用といわんばかりに鬼樫魔を向ける!
おえぇ……、喉を突かれ、吐き気を催す彼に人間の少年は容赦ない、大切なパートナーを殺されかけた怒りを
足にこめて、相手のミゾオチに一気に蹴り込む。

紅き迅雷、青き疾風と呼ばれたやり手の暗殺兄弟だが、地に這いつくばる姿にもはやその栄光は見出せず、
「ちくしょう……ちくしょう……」
「折角……一攫千金、の……ビッグチャンス……だたのに……」
悔しそうに、しかし、痛みに耐えられず呻きながら悶絶する二人は時空のゆがみに消えていった……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
アレク―――――――――――――――――!!!
僕は一心不乱に彼女の元に駆け寄った。
「遅れてごめん!大丈夫だったか?」
そう言い、痛みを抑えて必死な僕に、アレクは弱々しく応える。
「ゴメン……ね、アラタ……助けるつもりが……逆に……」
何言うてんねん!君がおらんで二対一だったら、マジで死ぬんどったわ!
でも……なんで、刺された時にさっさと魂を人間体(コッチ)に移さんかったの!?
思わず涙声で叫んでしまう僕に彼女は時間稼ぎだったと応えた。
……そんなアホな話があるか!君が死んでもうたら、僕は……僕は……!
!!不意に暖かい感触が僕を包み、口元に塞がれるような、それで居て甘く、淡い感覚に捕われる。
「んぐ、ごめんねアラタ……でも、私だって、あんな無茶したアラタに怒ってるんだからね……」
そう言う彼女に僕はハッとする。確かに一気に決めるためとはいえ、本格的な死んだふりに徹しすぎた。
せやな、君にまで辛い思いさせてもうたかもしれん、それはゴメ……ン!?
「アモールの水……傷を癒す効果がある聖水だよ。」
そう言い、無理やり僕の口にボトルを突っ込む彼女。
イカンな、また僕のこと優先にして……そう思うなり、僕は彼女にそのボトルをつき返す。
「駄目やで、アレク。僕は死んでもエエけど、君には新しい勇者を探す使命があるんやで?」
でも……おおきにな。そう微笑みかける僕に小さく頷き、何故か赤面しながら水を飲むアレクは、
一息つきながら「でも、死んでいいなんていっちゃ駄目。」そう言い返してきた……

しばらく傷を癒すことに徹していた僕達だが、不意に彼女が立ち上がり、僕を見る……
本当に幼い子がするような目やろうか?雰囲気も大人びており、怜悧な目が僕を見据える。
「イズミアラタ……貴方は『ある世界の主』にその力を求められ、勇者として選ばれた……
今日の出来事こそが、今後貴方に降りかかる全てのこと。だから、死ぬかもしれない……」
そういう彼女に僕は一瞬呆然とするが、でも、そう続ける彼女の声で我に返る……
「今の貴方はその道を選ばずにありふれた日常を歩む権利も資格もあるわ、さあ、どうするの……?」


人生には分岐点っちゅうもんが付物や。

「は、今まで、どこ旅しても何かが物足りなかったわ……」

そしてその道はそれぞれに違うモノがこめられておる……

「けど、今ので足りなかった『何か』が分かったで。それに……『誰か』はやらんとあかんのやろ……?」

ならば、僕の選んだ道はかつて無いほどに恐ろしく、それでいて……

「なら、この和泉アラタ!世界の一つ救う、命を懸けたビッグトラベルに行こうや無いか!!」

今までのどの旅よりも、面白い道なのかもしれへん……

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■作者からのメッセージ
さて、まだ異世界には行きませんが(早く行きたいけど)
せっかくネギま!も題材としてるので、その辺のアイデンティティも重視した
話を書くべきかな〜とか。では、ありがとうございました。
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