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運命戦記リリカルEXTRA.AC改 STS編36、託される想い
作者:起源くん   2014/04/19(土) 11:56公開   ID:QN2MgvJGT2A
揺りかご内で再会したエヴァンジェと優人達。
なのはは未だ混乱しているが、優人とアーチャーは既にエヴァンジェを敵として認識していた。

「一応、理由を聞かせて欲しい。どうしてフライトナーズに?」

優人がそう問うと、エヴァンジェは静かに口を開いた。

「・・・八年前、カラードが解散した後、私は管理局の腐敗を目の当たりしたのだよ」

「腐敗・・・最高評議会か?」

アーチャーの言葉に頷くエヴァンジェ。彼は言葉を続けた。

「それだけでは無い、自身の利益だけを望み、他者を食い物にし続ける愚か者達。そして、邪魔になると知れば平気で人を殺し、それを隠蔽する。
法では裁けない悪を、私はずっと指を加えて見続けていた」

「だから・・・フライトナーズに加担したの?」

「そうだよなのはくん、彼は私に約束してくれた。
全ての悪の根絶、理不尽の無い世界を」

エヴァンジェはクラインの事を盲目的に心酔していた。

「君達もこちら側に来い。共に新世界を創ろうではないか」

そう言って、エヴァンジェは手を差し伸べる。しかし、それを取ろうと思う人間はここにはいなかった。

「エヴァンジェ、お前の言い分はわかった。だけど、賛同は出来ない」

「・・・・・・なに?」

「確かに、クラインの提唱する世界に争いは起きないかも知れない。だけどそれは単に、歩みを止めただけだ」

「・・・・・・」

「変化を拒絶し、変わらない日々を過ごすなんて、生きる事を放棄しているようなものだ。俺はそんな世界は望まない」

「そうだよエヴァくん。そんな悲しい世界、誰も望んでいないよ」

優人となのはは懸命の言葉をエヴァンジェに言う。しかし、その言葉は彼には届かなかった。

「そうか・・・ならば排除するしかないな」

エヴァンジェはオラクルを起動させると同時に、ディソーダー数体呼び出した。
それを見た優人達は直ぐに臨戦体勢をとる。

「なのは、ここは俺とアーチャーに任せて、ヴィータと一緒に別ルートから行ってくれ」

「え? でも優くん・・・・・・」

「大丈夫、友人の目を覚まさせるだけだから」

「・・・うん、わかった」

「気をつけろよ二人とも」

そう言って、なのはとヴィータは別ルートへ進んで行った。
残された優人とアーチャーは、敵を見据える。

「俺はエヴァンジェを相手にする。雑魚は任せたアーチャー」

「了解したマスター。きつい一発で、あの馬鹿の目を覚まさせてやれ」

「元より、そのつもりだ」

「舐められたものだ。いいだろう、ドミナントの力、思い知らせたやる!」

エヴァンジェはディソーダーを引き連れ、二人に戦闘を仕掛けるのであった。




その頃、揺りかごの外では、大規模な空戦が繰り広げていた。

「これより広域魔法を放ちます! 指定された空域から離脱して下さい!」

はやては念話で、仲間の離脱を呼び掛け、広域魔法を放つ。

「デアボリック・エミッション!」

黒い球体が、多数のディソーダーとパルヴァライザーを飲み込んでいく。

「ロングアーチ、周辺の状況は?」

《奇襲が成功した事もあり、現在は優勢です。しかし、揺りかごから次々と敵が出てきています》

「潜入チームが防壁を解除するまでの辛抱や、皆頑張ろう」

そう言って、再び広域魔法を放とうする。その時、リィンが叫ぶ。

《高速で接近する敵影感知! こっちに真っ直ぐ来ます!》

その影は、はやての目でも確認出来た。
閃光のような輝きを放ちながら、はやてに迫る。

「これ以上行かせるな!」

敵の進行を阻止しようと立ち塞がる管理局の魔導師達、しかし―――。

「邪魔だ」

目にも止まらない剣速で、魔導師達を瞬く間に切り伏せた。そこでようやく、相手が誰だがわかった。

「アルバート・セイバー!」

《不味いですよ! 接近されたら勝ち目無いです!》

アーチャーや優人の話によると、セイバーはサーヴァントのクラスの中でも最優と呼ばれる物である。恐らく接近戦になってしまえば、自分など秒殺されてしまうのは明白である。

「近づかれる前に撃ち落とす! リィン! サポートを!」

《は、はいです!》

リィンのサポートと共に、A・セイバーを迎撃を試みるが、放った魔法はことごとく切り伏せられ、あっという間に距離を詰められた。

「終わりだ」

二本の剣が、はやてに迫る。受ける事も、かわすことも出来ないはやては、思わず目を瞑る。しかし、剣ははやての体に来る事は無く、かわりにガギンと鈍い音が鳴った。
恐る恐る目を開けると、そこには自分の騎士であるシグナムの姿があった。

「大丈夫ですか? 我が主」

「シグナム!」

「ここは私にお任せを」

「わかった、頼んだでシグナム」

《気を付けてください!》

ここをシグナムに任せる事にしたはやては、一時離脱を図る。それを追おうとするA・セイバーだが、シグナムに邪魔をされる。

「お前の相手は私達だ! 行くぞアギト!」

《おうよ!》

「・・・・・・排除する」

シグナムとA・セイバーの剣がぶつかり合う。




揺りかご内部を進んでいるフェイトチームは、静けさで支配されている廊下を走っていた。

「おかしい・・・・・・ここまで敵が出ないなんて」

「罠か?」

《十中八九間違いないね、だけど進むしかない。見取り図によると、しばらく一本道だからね》

「嫌な地形だな・・・挟まれたら逃げ場が無いな」

「そんな姑息な真似はしないぜ」

突然発せられた声に、一同は立ち止まる。その前方には、A・ランサーが立っていた。

「早速お出ましか」

四人は臨戦体勢を取るが、ランサーは構えも取らずにこう言った。

「行きたきゃ行け」

予想外の言葉に、四人は驚きを隠せず、彼の真意を問いただした。

「どういう意味だ?」

「そのまま意味だ。俺にはアルバートやフライトナーズの目的にはこれぽっちも興味が無いのさ」

「だったら、どうして彼等に協力する?」

「それは単に、俺の速さを証明するためさ。それ以外は興味は無い。ただ一つを除いてな」

そう言って、A・ランサーはフェイトに槍を向けた。

「フェイト、お前との決着だ。ただそれだけの為に、俺はここにいる。他は眼中にねぇ」

《つまり、彼女以外は素通りをさせて貰えるという訳かな?》

「おう、二言はねぇ」

「そんな話に乗る必要は無い。ここは全員で戦うべきだ」

「四体一なら、絶対に勝てる」

《トーレ、セッテ、私達の目的を忘れてはいけない。ここはフェイトくんに任せて、我々は進むべきだ》

「し、しかし・・・・・・」

するとレイヴンが、フェイトの肩を叩きながら、言った。

「・・・ここは任せたぞフェイト」

「――――うん!」

その言葉は、フェイトへの信頼の言葉であった。
それを理解したフェイトは頷いて返事をした。

「それじゃ、俺達は先に行く。早く追い付いて来い」

「御武運を」

「頑張って」

こうして三人は、先へと進み。残されたA・ランサーとフェイトは御互いに構える。

「それじゃ行くぜぇ!」

「来い!」

神速の風と金色の雷光。
互いのプライドを掛けた戦いが始まった。




エヴァンジェとの戦いは既に雌雄を決していた。
彼が喚んだディソーダーはアーチャーによって倒され、彼自身も優人に圧倒されていた。

「くっ!」

ブレードを振りかざすエヴァンジェ。しかし、あらゆる攻撃も優人に当たらず、逆にカウンターを喰らう一方である。

(何故だ! 何故当たらない! 何故勝てない!)

動揺で、更に動きが鈍るエヴァンジェ。そこから強烈な右ストレートがエヴァンジェの顔にヒットした。

「ぐあ!」

エヴァンジェは吹き飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられる。

「俺の勝ちだエヴァンジェ」

そう言って、優人はエヴァンジェに近寄る。
エヴァンジェは片膝をつきながら、優人を睨み付ける。

「何故だ・・・何故お前になんか・・・・・・」

「・・・・・・エヴァンジェ」

「私はドミナントなんだぞ・・・たかがAランク程度の奴なんかに――――」

「いい加減目を覚ませ!」

優人はエヴァンジェの顔を叩いた。そして言葉を続けた。

「確かに世界は理不尽なのかも知れない。お前のいう通り、裁けない悪がいるかも知れない。だけど、それが世界の全てじゃないだろう?」

「・・・・・・」

「貧しい人に分け与える人、死に行く命を救うひと、世界をより良い物に導こうとする人だっている。
全てを救えるとは思わない。でも、そんな温かい人達を俺は守りたい。そうすれば、いつか世界だって変えられる」

「そんな・・・絵空事」

「絵空事かも知れない、幻想かも知れない。でも、俺はそれを信じていたい。人を信じていたいんだ」

「・・・・・・」

「お前はどうなんだエヴァンジェ? 今の自分の行動に納得出来るのか?」

「・・・・・・私は―――」

すると突然轟音が鳴り響いた。そしておびただしい数のディソーダーとパルヴァライザーが現れ、優人とエヴァンジェに目掛けて砲撃を放つ。

「なっ―――!?」

「ちっ! ローアイアス!」

アーチャーは二人の前に立ち、宝具で砲撃を防ぐ。

「味方ごととは・・・どうやらお前は用済みと判断されたらしい」

「クラインが・・・・・・私を?」

「ああいう手のタイプは、使えなくなった道具は問答無用に切り捨てるものだ。それがかつての仲間であっても」

「・・・・・・」

「エヴァンジェ・・・・・・」

「どうするマスター? 流石にこの数は骨が折れるぞ」

「一旦逃げよう。エヴァンジェ、お前も一緒に――――」

「お前達と馴れ合うつもりは無い!」

そう言ってエヴァンジェは、優人とアーチャーを部屋の外へと突飛ばし、ドアをロックした。

「エヴァンジェ!? 一体何を―――!?」

「ここから先にインターネサインがある。それを破壊すれば、揺りかごの機能と全てのディソーダー及びパルヴァライザーが停止する」

「エヴァンジェ、お前まさか―――」

「この道は私自身が選んだものだ。後悔は無い。だがもし、お前の言う道があるのならば、私はそれに賭けてみたい」

「エヴァンジェ・・・・・・」

「険しい道だろうが、お前なら出来るかも知れない。
後は任せたぞ、“ナインブレイカー”」

それを最後に、エヴァンジェの声は聞こえなくなった。
立ち尽くしている優人の肩をアーチャーが叩いた。

「行こう、彼の意思を無駄にしてはいけない」

「・・・・・・ああ」

二人はエヴァンジェの言葉に従い、奥へと進むのであった。

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■作者からのメッセージ
いつの間にか春になってしまいました・・・。
現段階では投稿スピードは上げれず、またしても開くかも知れません。
取りあえず、ボチボチ進めて行こうと思います。
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