私はどこか、エースオブエースという言葉を甘く見ていたのかもしれない……。
自分に才能がないという事は骨身にしみていた、スバルは私なんかより数段特徴的である種の天才と思える才能を持っていたし、
六課に入った時、隊長格の全員が只者ではない事を感じもした。
しかし、それでも一人で100人を相手にできるなんて思っていなかった。
ううん、違う、彼女は高町なのは一等空尉は……。
私たち100人の魔導師を相手にまだ本気にすらなっていなかった……。
「ごめんね……でも、戦争になるような事はさせられない」
「戦争……そんなのもう遅いですよ。私たちは戦ってしまったじゃないですか!」
「ティアナ……そこにいたんだ。スバルも一緒みたいだね。六課から出たって聞いたけど。
なんでこんなところにいるの?」
私が反論したことで、なのはさんは私に気づいた。
もちろん、気づいてもらったことをうれしくなんて思えない、だって今は敵同士なのだから……。
「私たちはミゼット・クローベル提督の保護を命じられて……」
「ううん、そんなことは聞いていないよ。それに頭のいい貴女の事だもんそれがどういう意味かも知っているでしょ?」
「ぐっ……」
「ねえ、教えてくれるかな? 管理局に戻ったあなたがなぜここにいるのか?」
「それは……」
「まさか、流されてそのまま連れてこられたわけじゃないよね?
私、これでもあなたの事は結構買ってるつもりだよ。
ティアナ、あなたなら事前にこんな場所に来なくてもいいようにできたんじゃないかな?」
「それは……」
私は反論することができなかった。
私はここのところ自分の身の回りにしか目を向けていなかった。
でも……、もっと周囲に目を光らせていればそれくらい察知することもできたかもしれないし、
また少なくとも自分たちの保護を頼むべき人物を誤ったりしなかっただろう。
だがあのときは、近しい人を頼むことを恐れていた、自分の実力を示したかった。
それは、視野が狭まっていたという意味でもあるし、半ば投げやりになっていた事実もある。
そうした自分の過ちに気付いた時、なのはさんの体が一回り大きく見えた……。
「でもっ……なのはさんがやっていることは管理局への反逆行為ですよ!?」
「私……最近分かったんだ。組織がどうっていうのは、言い訳だよ。
目の前に戦争っていう大きな不幸があるのに見て見ぬふりなんてできない、だって。
あなたたちだって管理局の旗の下で戦いたかったわけじゃなくて、管理局の正義を信じていたんでしょ?」
「それは、それはぁ!!」
「選んだことが間違いかなんて結果が出ないとわからないけど。私は私の信念を貫くよ」
「ッ!!」
頭に血が上っていた、なのはさんの生き方が格好いいと思った、でも同時に普通の人間にはできない事だと思った。
大多数を救う正義、でもそれを一人でできる人間はほとんどいない。
なぜなら大多数を救う事は少数を切り捨てることになりかねない、そしてその決断を自分の意思でしなくてはならない。
私にはそんな重い決断を下す自信はない。
私となのはさんの違い、それは強さ、才能、そういった事だけじゃなく、その強い意志こそが決定的な違いなのかもしれない。
最もそんなことを考えたのは後になっての事、その場では必死に銃を向け、そしてあっという間に返り討ちにされ気を失っていただけだ。
「私だって、簡単に選べたわけじゃない。悩むといいよ。きっとそれ自体が経験なんだから……」
意識が切れる前なのはさんの声が聞こえた気がした……。
その頃、すずか達第三班は連盟の門を経由し、第41管理外世界へと到着していた。
連盟の意向により、現地政府に通達が出され、現在連盟に加盟するか外交のみとするかなどいろいろな規定を話し合っているらしい。
実際アキトらが地球外対策局や連盟の立ち上げをした原因の一つが現地への危険に関する非通知だ。
それゆえ連盟は隠さない、パニックになる可能性はあるが、場合によっては報償金を出してでも戦争を止めるために動いている。
もっともこれはカリム・グラシアに同調した非戦派の国々による支援であり、連盟全体の機運としては主戦派が中心であるため評価されてはいない。
レオーネ・フィルスは法務顧問相談役として調停に赴いている間にこの管理外世界に取り残されてしまったらしい。
この世界の文明レベルは高く、既に宇宙に向けて開発が始まっており、アキト達の知る未来世界よりも巨大な宇宙コロニーも開発されていた。
そして人々は人型の巨大なパワードスーツに乗り込み、宇宙と地球の勢力にわかれて争っている。
ありていにいえばガン●ムのような世界観だった。
レオーネが取り残されたのは、そんなコロニーの一角、そう宇宙だった。
「ははは、まさかこの年になって、SFの世界に紛れ込むことになるとは本当に世の中何が起こるかわからんものだ」
「SFですか、それではあなたたちの世界はさしずめファンタジーという事ですかな?」
「そうですなぁ、我々の世界はどちらかといえばそちらよりかもしれません。
ところで艦長、あの渦はあとどれくらいで発生するかわかりますかな?」
「観測上は20年周期らしいということしかわかりませんな。それで、どうされるつもりです?」
「20年……その時まで生きていられるかわかりませんな。別の場所を探すことにします」
「しかし、我々は任務などもある。貴方につきあえるのはせいぜいここまでです。かまいませんかな?」
「いえいえ、十分です。連合軍の勝利をお祈りしていますよ」
「同盟なぞ少数勢力にすぎません、いずれは駆逐されるでしょう。伍長いるか?」
「はっ!」
「客人をお送りしろ」
「了解しました!」
とまあこんな感じで、かなりなじんでいたようでもあるが……。
どちらにしろ、彼が帰還するのは難しい状況であることには変わりなかった。
「しかし、今の情勢では、あまりのんびりもしていられんでしょうな。何とかせねばならない」
門の向こうの情勢が緊迫してきていることはつてを通じて知ってはいる。
とはいえ漠然としたものにすぎないが。
もっとも、この人物は自分が最重要人物の一人であるという自覚は低いのかもしれない。
なぜなら、同盟から襲撃を受けるまで自分が標的であることに気付けなかったのだから。
そう、彼が降り立ったコロニーはそれからわずか数日後には宇宙独立者同盟なる軍の襲撃を受けていた。
その襲撃目的はレオーネ・フィリスの確保、そしてその理由はある組織からの軍事供与を取り付けるためだった。
ここにもすでにスカリエッティ一一味の魔の手が及んでいたのだ……。
「本当に無人兵器を一万体供与してくれるのでしょうな?」
『もちろん、既にサンプルとして千体供与しているのですし、おおよそその意味合いはわかるでしょう?』
「はい、確かに十分役に立っています。しかし、今の十倍、それだけの価値がその男にはあるのですかな?」
『ええ、もっとも貴方達には意味のないものでしょう、ただし、護衛が来る可能性があります。
護衛はかなり強力なので気を付けてくださいね』
「……わかりました」
実のところ同盟にとってはこの軍事提携ともいえるこの話に乗らないわけにいかなかった。
某組織と同様、同盟は戦争初期、圧倒的優位に立っていたが、今やマンパワーに押されて逆に宇宙の片隅に追いやられようとしている。
そこからの逆転を行うためには無人兵器による優位性の逆転しかないというのが現状であり、
千体供与されている無人兵器は大型パワードスーツ程の性能はないものの、
人間が乗り込むわけではないため保身的な行動をしない分、相手にプレッシャーを与え、連合の物量作戦相手にはよく戦えていた。
つまり、現状この兵器が一万あれば戦局の逆転、少なくともこれ以上押し込まれるのを止めることができる。
もちろん100%の信用が置けているわけではない、胡散臭いことは事実なのだ。
しかし、他に手がない以上やるしかない、まさにわらをもすがる思いであった。
「コロニーに対する襲撃を行う」
「お言葉ですが、あのコロニーは中立コロニーであるため、襲撃すればコロニー内に不穏分子を作る結果になりかねません」
「分かっている、しかし、上層部の命令だ。あの兵器を一万も手に入れれば戦局は逆転する」
「しかし、彼らが本当の事を言っているという保証はありません」
「否定はせん、それでも他に手がない以上やるしかないのだよ」
「ですが……」
「我々は戦争をしているのだよ……」
いかめしく言う艦長を前に士官な何も言えず。
しかし、心の中で、もうこの国は終わりだなと思っていた。
そんな状況の連合政府に連盟は声をかけ、第三班ことすずかの部隊はレオーネの救出に向かうことにしたのだ。
つい先日までレオーネが保護されていたと知った時は初動の遅れに唇をかんだのだが、どうやら中立コロニーに今はいるらしい。
彼女らは連合の艦を一隻借り受け自らのパワードスーツを輸送することにした。
こと宇宙戦闘に関して言えばこの世界の技術は重力制御ではない分制御が遅い。
攻撃兵器の出力に関しては見劣りするものもあるが、そもそも戦闘をすることよりもレオーネの救出を優先している。
兵器の性能差をあまり気にしても仕方ない。
それにビーム兵器は光学系のためディストーションフィールドで何とかできるという目算もあった。
「すずか……大丈夫か? 前に無茶したのがまだ響いているんじゃ……」
「ううん、大丈夫……。私はね、まだ少し左手にしびれが残ってるけど、戦闘には支障はないよ」
「まだ治りきってねぇんじゃねぇか! 無茶しやがって、あんな未完成な技使うからだろ……」
「うん……でもね、私魔法は覚えたけど、一流の人に対抗するようなものは何も持っていないから……」
そう、すずかは以前使った魔力エネルギーと重力波エネルギーをスパークさた必殺技とでも言うべきものを使った。
しかし、それは魔力異常を引き起こすかなり危ない技であった事も事実だ。
いまだに右腕のしびれが完全には取れていない。
魔力と重力波を融合するというその考え自体彼女しか持ちえないものだったからだ。
「そう言うのはアタシらに任せればいい、そもそも、パワードスーツってのは魔法を使わないで戦うためのものだろ?」
「それは、そうだね……出来るだけ使わないよ」
「全く、そういう所は誰もかれもそっくりなんだからな。影響したアキトが悪いのか、元々なのか……」
「それはもう、影響されたんですよ。彼と一緒に歩みたいと考えたら嫌な子になんてなれないじゃないですか」
「ふん、そういう事にしておいてやるよ」
そうはいいつつも、恐らく生来の性質だろうとは思っていた。
すずかは控えめで大人しかったが同時に酷く頑固でもあった。
アキトに影響されたのは否定できないだろうが、同時に元々持っていた性質を表に出す手助けをした程度だろう。
どちらにしろ、それは精神的には気高い人間となったと言う事だが、同時に抱え込みすぎる性質も獲得したと言う事でもある。
ヴィータとしては余りそういう人間は多くないほうが心配しなくて済むのにという思いはあった。
「兎に角、ガジェットが投入されないなら今回はおとなしくしてろ。もしされたらその排除だけ頼む」
「一応、私が隊長なんだけど……」
「実戦経験が違う! それに100%の実力を出せないんだろう?」
「……善処します」
「ったく……」
ヴィータはその小さな肩にデバイスをこんこんと打ちつけながらイライラとして見せる。
すずかは心配してくれることにうれしさを感じながらも、急がねばならないと感じている。
アキトはおそらく並行作業で行わねばならない事はわかっているだろう。
しかし、その人員が足りているとは思えない。
しかもそれとは別にスカリエッティ一味を一気に追いつめるには後1手必要になる。
必ずではないかもしれないが、そのための人員は今存在していないと思われる。
だから、すずかはできるだけすばやくこの作戦を終わらせる必要があった。
「だんだん複雑にばかりなっていく戦況にはうんざりしてるんです」
「そうだな、ここらでそろそろ事態を収拾しないとな……」
「だから、作戦はプランAで行きたいと思います」
「……アタッカーがアタシならOKだ」
「分かりました。お任せします」
作戦を話し合ったいる間にも目指すコロニーがウィンドウに映るようになってくる。
すずかとヴィータは各々の小隊を臨戦態勢に持って行った。
『今回のミッションは特殊任務だ、客人レオーネ・フィリス氏の救出を最優先とする。
遠方の友軍も今回は参戦してくれている、敵味方を間違えて誤射することのないように。
尚、コロニーを包囲している敵軍はガドラム特殊部隊と思われる』
「げっ、それって金色の流星のいる部隊じゃ……」
「なんてこった……」
「遺書かいとかなきゃ……ははは……」
「おかーちゃーん!!」
「俺は不幸だー!!」
金色の流星……それは同盟一のエースパイロットを指す言葉だ。
いつも、金色に塗り込めたカスタム機で出撃してくるためそう言われている。
機体能力はせいぜい30%前後のカスタムにすぎない。
しかし、乗り手の技量がすさまじいため、同種のパワードスーツ10対1でも互角以上に戦う。
そして、撃墜スコアは戦艦、パワードスーツ、戦闘機合わせて400に届くと言われている。
連合にとって悪夢の代名詞だった。
「相手のエースか……こりゃ気張っていくしかねぇな」
「でも、ヴィータちゃんは宇宙戦闘には向いてないと思うんですけど……」
「否定はしないけどな、コロニー内なら何とかなると思うぜ」
「……せめて半分パワードスーツ部隊を率いて行ってくれませんか?」
「……だがそれじゃ……」
「大丈夫です。私は防衛に徹しますから」
「……わかったよ」
この作戦がうまくいくかどうか、それは突入部隊にかかっていると言っても過言ではない。
それだけに、ヴィータはすずかの言う事を無碍にすることもできなかった。
そうして、突入部隊が編成されこの世界のパワードスーツ、ヴィータの乗るランチ、護衛のパワードスーツの順で出撃する。
大きさがまるで違うため、不思議な光景ではあった……。
「ヴィータちゃんがんばって……」
すずかは祈るような形で見守る、彼女は艦の直営として残ることにしたのだ。
帰還するにも門まで行く艦が必要になるのは間違いないからである。
とはいえ、艦はそれなりに離れた位置にいたし、ステルスをはって隠れてもいた。
だが世の中はそれほど甘くはなかったらしい。
ほんの数機、周辺の偵察を行っていたパワードスーツが宙域まで侵入してきていたのだ。
そして、さらに運が悪いことに4機編隊のうち一機は金色の流星という二つ名を持つ存在だった。
『んっ? プレッシャー……●▼ロか……いや、違うな……だが!』
金色のパワードスーツはステルスをかけている艦に向けて見えていないにもかかわらず大体の目算でライフルを撃った。
ライフルのビームは艦の隔壁を貫通することができるほどのものではなかったが、その衝撃でステルスは解除されてしまった。
『やはりな、既にコロニー内にスーツを送り込んだ後か……だがこれをつぶせば帰還はできまい』
そういって金色の流星は部下を引き連れ艦を攻撃するために接近しようとしていた。
まさかの展開に艦内は騒然とし、このまま艦が破壊されるのを待つのみかと思われたその時。
『プレッシャー!? そこか!!』
艦の影から出撃してきた小型で青いパワードスーツはクルリと回転しつつビームをよける。
その大きさは本当に比較するのもばかばかしいほどで、2.5mほどしかない。
彼らのパワードスーツが18mである事を思えば、高さでも七分の一、質量に至っては四百二十三分の一にすぎない。
しかし、そんな比較するのも馬鹿らしいそれはビームを回避するだけではなく、逆に攻撃も主なってきた。
肩に担ぐ大型ランチャーが火を噴く。
だが、金色の流星にとってそんな遅い飛び道具は止まっているも同じにすぎない。
とはいえ、その程度の事は小型のパワードスーツも理解していたのだろう。
さらに艦の影から12機のパワードスーツが飛び出し、同じようなランチャーを構えている。
『数で押すつもりか、甘いな……』
一斉に放たれた砲弾を巨体が次々に回避していくのは傍目から見ても鬼気迫るものがあった。
実際、後続の大型パワードスーツ達は追いつく事も出来ず、距離を取ったままマシンガンを構えている。
応射したマシンガンはしかし砲弾に命中するでもなく、
艦に傷をつける事も出来ずそのまま砲弾を受ける格好となっている機体もいる。
機体性能を考は大型のほうが明らかに非効率であるのにもかかわらず、金色の機体は艦に対し、バズーカを構えながら突進してくる。
「あんなのを食らったらひとたまりもない……DFで防げるかしら……」
『すずか隊長! 我々に任せてください!』
『アレがビーム系なら問題ないでしょうし、実体弾でも防御しきれなくはないはずです』
「ですが……」
『残念ですが、我々ではアレの相手はまだ荷が勝ちます。
だからこそ、すずか隊長がここで傷つく可能性はつぶさないと』
「……そうですね、頼みます。分かっていると思いますが直撃は避けるように」
『了解!』『ラジャー』『イエスマム!』
「統制はまだまだ出来てないですね……」
少し溜息をついたすずかは、しかし、隊員達が状況判断を自ら行えるようになった事をどこかで喜んでもいた。
言っている間にも、艦の前面にパワードスーツ達が展開していく。
この場合敵を倒す一番の方法はDFをまとっての超高速度攻撃。
当然防御にまわった者たちにはそれをする事は出来ない、すずかは艦から距離をとる。
視界内の配置が変わった事に気付き金色のパワードスーツは連続でバズーカを放つ。
実体弾のようだったが、隊員達はよく持ちこたえていた。
それでも、2、3発くらえばオーバーヒート確実であるため、時間がたつと隊員達は負傷や故障などで離脱してく。
金色のパワードスーツがそれを許すわけもなく、フォローに回った隊員も同様につぶされるという悪循環で、
数分もしない間に大勢は決していると言ってよかった。
『弱いものが前に出るからそうなる!』
「それはどうでしょう?」
しかし、その時間のおかげで加速距離を手に入れたすずかのアリアは、
青い機体に赤い光をまとわせながら音速を数倍する速度で金色のパワードスーツに突撃をかける。
2.5m程度の小型とはいえDFそのものの衝撃吸収性能と、反発力で金色のパワードスーツの肩を打ちぬき腕を一本持って行く。
「素早いですね……胴体を分断するつもりだったんですが……」
『ほう、やるな。だがまだ甘い!』
腕を撃ち抜かれた金色のパワードスーツはそのまま、引きちぎられた腕をアリアにたたきつける。
「カハッ!?」
『人間の体ではないんだ、痛覚があるわけもあるまい?』
それは本来正しい考えではあった、しかしどこかで体の破損を気にするものだと思っていたすずかの甘さであった。
戦争を多く経験したわけでもないのだ、むしろ当然でありそういうカンを養う事が出来ると言う事は不幸でしかない。
しかし、この場合はそれが災いした。
たたきつけられた場所が重力制御の機関であったため出力が低下してしまった。
『悪いが、ここで終わりにさせてもらおう』
アリアに何らかの不調が出たことを悟った金色のパワードスーツはとどめを刺すべく、ショルダータックルの要領で突撃してくる。
元々質量差が大きいうえに、先ほどの攻撃でDFを張る事が難しくなっているアリアでは防ぎようもない一撃だ。
そういう選択をする能力は明らかに彼の方が勝っていた。
すずかは、このままでは負ける事を悟る。いや、死が目前に迫っている事を知ったと言う方が正しいだろう。
しかし同時に、今ここで死ぬ事は出来ない、何より彼女の望んでいる事は戦いでもなければ知り合いのいない世界の平和でもない。
だから彼女は、最後の手段に打って出る。
機体はもうすでに動かない、そして動く必要もない。
そして、正面から金色のパワードスーツの衝突を受け止め爆発した。
『生きる時代を間違えなければこうなる事もなかったろ……ッ!?』
「その悟ったような語り、あまり好きではありません」
そう、しかし、彼女はインナースーツ一つで金色のパワードスーツの中に出現していた。
コックピット内の狭い空間で、仮面の男が驚愕の表情で背後を見ている。
すずかは、左手に集中した魔力を仮面の男にぶつけていた。
「……戦争なんて、私嫌いです」
気絶する男を尻目に、すずかは飛ぶ。
ボソンジャンプが可能なC・Cは隊長格数名は既にいきわたっている。
つまりはそういう事だった。
結論から言えばレオーネは簡単に保護する事が出来た。
魔道師の存在を知らない人間ばかりなのだ、ある意味蹂躙と言う形に近い。
パワードスーツを面白いように破壊していくヴィータを前に、同盟の軍は割に合わないと早々に引き返して行った。
「ちっ、また美味しいところをすずかに持っていかれた……」
「そんな事を言わないでください、私も今回は大人しくしているつもりだったんですから」
「まあいい、今回は機体以外はさほど傷ついてないんだろ?」
「はい」
「じゃあ、レオーネのじじいをさっさと管理局につれていくとすっか」
「そうですね、レオーネ・フィリス法務顧問相談役、よろしいでしょうか?」
「ああ、私としては渡りに船と言う所だねぇ、まあ後で少々つつかれそうではあるが」
「それくらい我慢しろ! 戦争がおこっちゃ何にもならねぇだろうが」
「そうですね……巻き込まれる世界の事を思えば」
ただ同時にレオーネはもし戦争をすれば管理局に損はないかもしれないという考えもあった。
もちろん止めるつもりではあるが、止められなくても致命的にはなるまいと言う事である。
それは危険な考えではあるが、管理局としてはそれは当然だったかもしれない。