〜3年Z組銀八先生〜
銀八「はい、これから本編の第14話に入りたいが、今の内に先生に質問したい事がある奴は手ェ挙げろ」
すると、神楽が手を挙げた。
神楽「はい、先生」
銀八「ん、何だ?」
神楽「第13話なんですが、普通“スタンドを攻撃できるのはスタンドのみ”の筈なのに、どうして先生は簡単に『エボニーデビル』を倒せたのですか?」
その問いに、銀時は少し考えた後に答えた。
銀八「…………それはあれだ。 大人の事情だと思ってくれ、以上!」
新八「全然答えになってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
この光景を眺めていた浜面は、窓を眺めながら呟いた。
浜面「………転校しよう」
―第十四話:月の半魚人―
暗い暗い闇の中、DIOは一人の老婆と会話をしていた。
その老婆の両手は、両方とも右手という奇怪なものだった。
彼女の名はエンヤ婆、DIOの配下で『魔女エンヤ』とも呼ばれている。
彼女もまた命を落としているが、デスハートによって蘇生された。
DIO「エンヤ婆よ。 嘗てと同じ事を聞くが、お前にとって『生きる』とはどんなものだ?」
その問いにエンヤ婆は答えた。
エンヤ婆「何度でも答えましょう。 欲するものを手に入れる……“愛が欲しい”、“金が欲しい”、“食べ物が欲しい”……人が生きる理由というのは、ただそれだけですじゃ」
DIO「ふむ。 しかし欲する物を手に入れると、必ず戦いが起きるな? エンヤ婆」
エンヤ婆「確かに」
DIO「そして人は、戦いに敗れ、傷つき、挫折感を味わい、次なる戦いに対し、恐怖を感じるようになる。 俺は、恐怖を克服する事が『生きる』事だと思う。 世界の頂点に立つ者は、ほんのちっぽけな恐怖をも持たぬもの。 分かるな、エンヤ婆」
エンヤ婆「しかしDIO様。 アナタ様をも葬ったあのジョースター家の連中は、このゲイムギョウ界にはおりませぬ。 なのに何か恐怖する事があるというのですか?」
DIO「そうだ」
エンヤ婆「何を案じておられるのですか?」
その問いに対し、DIOはハッキリと答えた。
DIO「我が息子、ジョルノ・ジョバァーナの存在!!」
ジョースターの精神を宿した、己が息子の名を。
エンヤ婆「ジョルノ!? あの小僧!? アレはただの青臭いガキじゃ! 彼奴はアナタの敵ではありませぬDIO様!!」
DIO「フム。 しかしその青臭いガキが、いずれこのDIOにとって最大の障害となる可能性があるのだ。 正確に言おう、ジョルノに恐怖しているのではない。 ジョルノの中にある、ジョースターの精神を侮れんと言っているのだ」
仮にジョースター家を根絶やしにしたとしても、ジョルノが第二の障害となって己の前に立ちはだかる――DIOはそう確信していたのだった。
DIO「だからこそ、ジョルノだけはこのDIOがこの手で葬る必要があるのだ」
エンヤ婆「“侮れない”というだけで、わざわざアナタ様が出向かれるというのですか!?」
DIO「そうだ」
そんな彼に対し、エンヤ婆は一蹴する。
エンヤ婆「くだらん! アナタはそのような下らん事をしてはならん御方じゃ!! 常に、デスハートによって甦ったスタンド使い達が奴等を抹殺しに向かっておりますじゃ!!」
果たして、今回の刺客のスタンド使いとは!?
その頃、ラステイションでは、
ノワール「ふう、しかし荷物の輸送依頼があったなんてね」
ギルドの仕事で、鉱石を船で運ぶ事になったのである。
しかし、今日は異常なまでに暑く、猛暑と呼ぶべきな程であった。
その気温は、なんと43.6度。
夏に匹敵するほどの暑さなのである。
因みに輸送船に乗っているのは、ノワール、ジョルノ、新八、美琴、ベールの5人。
猛暑ゆえに、殆どの者は薄着や半袖服に着替えていた。
ノワールとベール関しては、水着を着るという判断に至るほど。
特にベールはなんと、ビキニ姿になっていた。
新八「お〜!」
これには新八も、鼻血が出てしまう。
因みに美琴は、「敗北を感じた」と呟いていた。
そこは読者の想像に任せます。
ベール「それにしても、今日はホントに暑いですわね」
ノワール「確かに、汗がダクダクね」
美琴「そうね」
そんな女子3人は、ジョルノに視線を移す。
ジョルノ「ん、何か?」
椅子に腰かけ、読書を嗜んでいただけに見えるのだが、
ノワール「「何か?」じゃ、ないわよ! アナタ、その学生服は何とかならないの!?」
美琴「まさか、この暑さで仕事をする気!? その格好で!?」
ベール「その格好、暑く感じないのですの!?」
実際はそうではなかった。
彼女達が指摘したのは、ジョルノの服装であった。
原作でもお馴染みである学生服。
この暑さなのにも関わらず、ジョルノは学生服のままなのである。
ジョルノ「これでも学生なので、学生らしくするものですよ――というのは、流石に口実かな」
当の本人は、全く気にしていなった。
その証拠に、この猛暑でも汗をあまり掻いていなかった。
船が出発して数分がたった。
未だに目的地までは、時間がかかる。
するとそこへ、ガタイの良い男が現れた。
テニール「私の名はテニール、この船の船長を任された者です。 船はまだ到着しないので、少し麦茶を飲んで下さい」
そう言って彼は、お盆で運んだカップをテーブルに置く。
ノワール「助かったぁ〜」
ベール「では、頂きますわ♪」
美琴「良かった、喉がカラカラだったのよ」
新八「頂きます」
ジョルノ「…………」
5人はカップの麦茶を飲み干した。
ノワール「ぷはぁ! 生き返るぅ〜」
ベール「ひんやりしてて、とても美味しかったですわ」
美琴「やっぱ、こういう時は麦茶よねぇ」
新八「いやぁ〜、助かりました」
ジョルノ「………」
5人がカップをテーブルに置くが、まさにその時であった。
5人「!?」
彼等の体に、突然異変が起きたのである。
膝を着いてしまい、5人は倒れてしまう。
その光景を見たテニールは、ニヤリと笑っていた。
テニール「クククク……こうも簡単に引っ掛かるとはな」
それを聞いた5人は、全員でテニールを睨んだ。
ノワール「まさか、アンタが敵!?」
テニール「その通りだよ。 流石にお前等5人を相手にするのは骨が折れるからな。 悪いが小細を使わせて貰った」
テニールは懐から何かを置くと、それのスイッチを押した。
間違いなく、それは時限爆弾だった。
テニール「神経薬入りの麦茶でお前等の動きを制限させ、後は時限爆弾でこの船を吹っ飛ばす。 因みにこの海には、凶暴な人食いサメがいるから死体は骨も残らんだろうな。 勿論俺は、爆発の前にこの船をトンズラさせて貰うぜ」
ベール「正気ですの!? この船には脱出用のボートは積んでませんし、飛び込めばアナタ自身がサメの餌ですわよ!?」
ベールの意見には、誰もが同意した。
しかしテニールは、そんな彼女の意見を覆す台詞を言った。
テニール「お忠告を有難うよ、お姉ちゃんよ。 だが折角の忠告を切り捨てるようで悪いが、俺のスタンドは水中でこそ本領を発揮できるタイプでな」
まさにその瞬間であった。
船に上がり込むように、テニールのスタンドが姿を露わした。
その姿はまるで、半魚人そのものであった。
水のトラブル、嘘と裏切り、未知の世界への恐怖を意味する、タロットで『月』のカードを暗示するスタンド。
その名は、『
暗青の月』!!
テニール「というワケだから、爆破までの余命をじっくりと味わいな」
そしてテニールは、己のスタンドと共に海中へと飛び込んだ。
――が、まさにその時であった。
ジョルノ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
ジョルノの『ゴールド・エクスペリエンス』が、飛び込むよりも速く『ダークブルームーン』に蹴りのラッシュを叩き込んだのだった。
スタンドを通じてダメージを受けたテニールは、口から血を吐いてしまう。
テニール「ゲホッ……ま、まさか……他の4人と一緒に飲んでいた筈なのに……そんな……」
どうして普通に動けるのか?
テニールは驚きを隠せなかったが、ジョルノは肩をくすめながら言った。
ジョルノ「『ゴールド・E』の能力で、予め歯をクラゲに生まれ変わらせておいたんだ」
因みにクラゲの体は、90%以上は水分でできている。
お茶を出された時から不信感を抱いたジョルノは、すぐに能力でそれを回避したのである。
その為、5人の中でクスリを飲まずに済んだのだ。
ザパァンと海に流されるテニール。
美琴「どうやら、先にサメの餌になったのはアイツだったわね」
その光景を眺めていた4人であったが、ジョルノの様子がおかしかった。
ジョルノ「ぐっ!」
まるで、何かに引きずり込まれるような状況だ。
よく見ると、『ゴールド・E』の腕に何かがビッシリと付いていた。
美琴「な、何よこれ!?」
それはフジツボだった。
あの時テニールは、殴られた際に『ダークブルームーン』の能力でフジツボを付けていたのである。
しかもフジツボは、相手のパワーを吸い取る事が出来るのである。
ジョルノ「まずい……このままじゃ………うわっ!」
パワーを吸い取られ、ジョルノはそのまま海中へと落ちてしまった。
ノワール「ジョルノぉぉぉ!!」
海中へと落とされたジョルノを待っていたのは、既に『ダークブルームーン』を構えていたテニールであった。
テニール「ククク、ようこそようこそ。 『ダークブルームーン』の独壇場、海中へ」
ジョルノ「…………」
テニール「この俺を舐めとったらいかんぜよ、お兄ちゃん。 海中とはいえ、スタンド同士の会話は可能だ。 何か言いたい事があるなら、今の内に言って皆、お兄ちゃんよぉ!」
スタンドを通して、ジョルノは冷静な口調でこう言った。
ジョルノ「何になりたいんだ?」
テニール「ああ?」
ジョルノ「寿司か? 刺身か? かまぼこか? 今ここで、なりたい魚料理を言ってみろ。 アンタのスタンドをリクエスト通りに料理してやるよ。 僕としては刺身にしたいけどな」
テニール「バカかお前? 強がってるようだがお兄ちゃんよ、オタクは今こんな事を心の中で思ってるんじゃあないか?」
そう言ってテニールは、ジョルノが思っている事を口に出した。
テニール「“コイツはどれだけ潜っていられるんだ? 自分の限界は長くて2分だが、先に潜っていたコイツはどこまで海中にいられるんだ”と。 クククク…教えてやろう、俺の肺活量は普通の人間の3倍よ!」
ジョルノ「な!?」
テニール「そして訓練されて、今では潜水の自己ベストは6分12秒まで耐えられる。 そしてぇ!」
すると『ダークブルームーン』は、船のスクリューの片方を水かきで破壊した。
テニール「『ダークブルームーン』の水かきは、スクリューよりも速く動く水中カッターになっている」
危険を察知したジョルノは、すぐさま海面へと向かった。
これには理由が2つあった。
一つはフジツボの繁殖が『ゴールド・E』の体の半分を覆い尽くし、パワーも予想以上に吸い取られていた。
もう一つは、肺活量が限界を迎えていたからだ。
だがそんな暇を与えるほど、敵もバカではない。
『ダークブルームーン』が巨大な渦を作り、ジョルノを引き寄せたのだった。
しかも渦の中には、『ダークブルームーン』の鱗が鋭い刃となって斬り裂いていく。
まさにこれは、“水の蟻地獄”と呼んでもおかしくは無かった。
その頃、船の方では、
新八「な、何だ!?」
美琴「嘘でしょ!? 巨大な渦が出来てるじゃない!?」
巨大な渦が出来ている事に、4人は驚きを隠せなかった。
ベール「はっ、見て下さい! アレを!!」
更に、渦の中のジョルノがぐったりしているところを発見した。
助けに行きたいが、クスリの所為で思うように体が動かない。
時限爆弾も、残り30分を経過していた。
ノワール「マズイ。 ジョルノのあの状況、かなり弱ってるわ。 もがく気配が全く無かったし」
このままでは、ホントにジョルノが殺される。
4人は祈るしかなかった、ジョルノの勝利を―――。
渦の回転も速度を増していき、ジョルノは既に抵抗する素振りがなかった。
完全にぐったりしていたのだ。
テニール「刺身にしてやるとぬかしてくれたなぁぁ!」
距離は縮んでいき、『ダークブルームーン』も水かきを構える。
テニール「もう一度聞くぜ、お兄ちゃん。 果たして、スライスされて刺身になるのは―――」
まさに、その時だった。
覆っていたフジツボを突き破るかのように、『ゴールド・E』の人差し指と中指が槍のように伸びたのである。
ジョルノ「URYYYYYY!!」
この技は『
流星指刺』と呼ばれ、嘗てDIOを倒した男・空条承太郎のスタンド『
星の白金』の必殺技である。
しかしジョルノの場合は、残りのパワーで倒す為に偶然編み出したに過ぎなかった。
テニール「ほげっ!?」
ブスリと突き刺した瞬間、ジョルノは『ダークブルームーン』の顔面を斬り落としたした。
ジョルノ「やっぱりアンタだったようだな。 刺身になったのは」
スタンドが攻撃された反動で、テニールの顔にも同じ傷が付いていた。
パクパクパクと口を動かすテニールに対し、ジョルノはよく聞こえないという動作をする。
ジョルノ「何だって? 水中だから、もっとはっきり言ってくれ」
テニール「す、吸い取られていたのに……残り僅かな力を指の一手に集中するために……ワザとぐったり………していたのか………」
ジョルノ「違うね。 僕が考えていたのは、“仲間を心配させたくないから、一撃で片付けよう”と思っただけさ。 無駄なんだ、何をしても無駄なんだ。 無駄無駄」
テニールが海中へと沈んでいくのを確認したジョルノは、すぐさま爆弾を解除し、その場で破壊したのだった。
こうして、鉱石も無事に輸送され、ギルドの仕事は無事に達成されたのだった。
TO BE CONTINUED