銀時とプルルートは、とあるホテルに来ていた。
実はこのホテルで、不審な人物がいるという匿名の電話があったのである。
不審人物のいる部屋に入った二人。
果たして、二人が見た光景とは!?
―第十三話:呪いのデーボ―
部屋の中は、とても綺麗なものであった。
銀時「……おいおい、何処にもいねぇじゃねぇか。 ガゼネタじゃねぇか?」
そう思った銀時であったが、プルルートは既に女神化したのだった。
アイリスハート「いいえ銀ちゃん。 ガゼじゃないみたいよ? 出てきたら、冷蔵庫の中に隠れてないで」
彼女の指摘と共に、冷蔵庫の扉が開く。
冷気と共に出て来たのは、全身に無数の傷跡を付けた男だった。
アイリスハート「あらぁ、中々鋭い殺気を放つのね? このアイリスハートにいたぶられる前に、名乗って貰おうかしら?」
そのドS女王様ぷりに、銀時は背筋を凍らせてしまうが、男は動じることなく名乗った。
デーボ「俺の名は、呪いのデーボ。 タロットで、『
悪魔』のカードを暗示するスタンド使い。 『悪魔』は呪いと恐怖、精神状態の異常の表れを意味する。 何故俺が、冷蔵庫の中にいると分かった?」
デーボの問いにアイリスハートは、クスリと笑ってしまう。
アイリスハート「アラ? もしかしてアナタ、銀ちゃんよりオツムが酷いのかしらぁ?」
冷蔵庫の上にある飲み物を指差し、不敵な笑みを見せた。
アイリスハート「冷蔵庫の中身を出しておいて、片付けてないじゃない?」
銀時「というか、サラッと俺に対して酷い言い方してない!?」
という銀時のツッコミもスルーするかのように、二人は戦闘態勢に入った。
先に動いたのは、デーボであった。
デーボ「『エボニーデビル』!!」
彼の体から、一体のスタンドの像が出現するが、
アイリスハート「ファインディングヴァイパー!」
デーボ「ぶっ!」
それより速く、アイリスハートの攻撃が決まった。
デーボ「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アイリスハート「アラアラあっけない。 もしかしてアナタ、オツムだけじゃなく戦闘力もたりなかったかしら? だとしたら、とんだ負け犬ね。 そこでキャンキャン吠えていれば――」
何時もの罵声と共に、チラリとデーボの姿を見た。
デーボ「キヒッ!」
アイリスハート「!?」
銀時「!?」
その瞬間、彼が不気味に笑った。
デーボ「とうとう……やりやがったなぁ〜! イテェ……とってもイテェよぉ〜!!」
銀時「な、何だコイツ!?」
笑いながらベランダの方まで後退していくデーボ。
アイリスハート「な、何なの?」
デーボ「この痛みは……恨みで……晴らさなきゃなぁ〜! たっぷりと、思う存分に、テメェを恨めるぜぇ〜! ギャァァァァァァァ!!」
意味深な言葉と共に、デーボはベランダから落下したのだった。
アイリスハート「はっ!」
銀時「くそっ!」
デーボの姿を確認しようとした二人であったが、そこにはデーボの姿は無かった。
銀時「き、消えやがった!?」
アイリスハート「くっ! 逃げられたわ!!」
しかしその瞬間であった。
スパァッと、アイリスハートの足が切れたのだった。
アイリスハート「な!?」
銀時「何ィ!?」
いつの間にか両足を切られていたアイリスハートは、その場でガクリと膝を着いてしまう。
アイリスハート「ぐっ!」
銀時「プルルート、大丈夫か!?」
アイリスハート「な、何なのよアイツ!? 何時の間に足を!?」
銀時「兎に角、俺の肩に掴まれ」
アイリスハートを担ぎ、銀時は彼女をベッドの上に寝かせた。
その場にあった布でアイリスハートの傷を縛ると、銀時は辺りを見渡していた。
銀時「うん? そういや、この部屋の鍵がねぇぞ?」
ベッドの上や電話の傍にも無かった。
銀時「まさか、洗面所じゃあねぇだろうな?」
そう思い、洗面所まで向かった。
銀時が洗面所に向かったが、アイリスハートも部屋の辺りを見渡す。
しかし、鍵が落ちていた形跡は見当たらなかったが、
アイリスハート「(もしかして……)」
何かを思い、ベッドの下を確認すると、
アイリスハート「はぁ、やっぱりあったわぁ」
そう言って鍵を発見する。
アイリスハート「さっきのゴタゴタで、下に落ちたのかしら?」
鍵を取る為に、ベッドの下に潜ったアイリスハート。
手を伸ばし、鍵を掴んだが、
アイリスハート「!?」
何かがバタバタする音が聞こえた。
アイリスハート「え? 銀ちゃん?」
最初は銀時なのかと思ったが、その時であった。
バシィ!と、電気コードが投げ縄のように彼女の手足を縛りつけた。
アイリスハート「な!?」
驚くアイリスハートであったが、更なる追い撃ちが彼女を襲った。
アイリスハート「キャッ! め、目が!?」
何者かがシャンプーで彼女の視界を封じた瞬間、ギコギコと鋸でベッドの足を斬り落としたのである。
ドガッと支えを失くしたベッドの重みで、アイリスハートは下敷きになってしまった。
因みにこのホテルのベッドは、一つで1200kgはある。
アイリスハート「キャァァァァァ!」
突然の物音に、洗面所にいた銀時も駆けつける。
銀時「おい、プルルート! 何があった!?」
アイリスハート「ダメよ銀ちゃん! 殺されるわ!!」
しかし、その時であった。
銀時「な!?」
何者かが、銀時の目に何かをぶちまけた。
銀時「ぐあっ! コイツは墨汁か!? ちくしょッ、目が!!」
???「ウケケケケ……」
“彼”はベッドの上に乗ると、そのままアイリスハートの前に顔を見せた。
その正体は――、
???「へい! よくも……」
アイリスハート「!?」
以外、それは人形であった。
???「よくも、俺の体に傷を付けたなぁ〜プルルートぉ〜〜〜〜〜!!」
その人形は、デーボと同じ口調で喋る。
否、これこそデーボのスタンドの真の能力である。
呪いのデーボ、スタンドの名は『エボニーデビル』。
能力……己を傷つけた相手への恨みによる遠隔操作。
呪いのデーボは当時、『アメリカインディアンの呪術師』を名乗った殺し屋で、彼の能力を政治家やマフィアの人間が高く評価していた。
彼の全身にある傷、これはスタンド能力を発動する為の条件の一つである。
その条件とは、ワザと挑発した相手に己を痛めつけさせ、スタンドはその恨みのパワーで操る事が出来る。
その為、一般の目には“呪い殺された”ように見えてしまうのである。
そんな彼であったが、一人のスタンド使いを殺そうと能力を使ったが、逆に返り討ちに遭い死亡した。
しかしデスハートはそんな彼の能力を高く買い、甦らせたのである。
銀時「この!」
銀時は声のする方へと木刀を振るった。
デーボ「バァカめ! お前、視界を封じられた状態で、戦えると思ってるのか? このトンチキが!!」
攻撃を避けたデーボは、天井の電気にぶら下がる。
銀時「くそっ! プルルート、今助けるぞ!」
見えない状態でベッドに向かおうとする銀時であったが、
デーボ「させるかぁ!」
背後に回ったデーボが、ガブリと首筋に噛みついたのである。
銀時「ぐあぁぁぁ! ヤロォ!」
デーボ「おっと!」
しかし銀時が攻撃しようとすると、すぐさま回避した。
銀時「(あんにゃろ〜! 俺が攻撃を止めると、すぐに攻撃しやがる!! ガムシャラにやるしかあ―――ねぇ!!)」
仲間を助けたくても目が見えず、動きまわる敵に翻弄される銀時。
木刀を振るい、デタラメに部屋の中を撒き散らす。
そんな彼を他所に、デーボは冷蔵庫の上の飲み物の瓶を割っていた。
その場で割ったり、ベッドや床に投げ捨てる。
デーボ「ゲヘヘヘヘ!!」
アイリスハート「クッ! 銀ちゃん!!」
手足を縛られたアイリスハートは、拘束を解こうと何度ももがくが、
デーボ「シャッハァー!」
デーボが槍を構え、ベッドに矛先を突き刺した。
アイリスハート「キャァッ!」
ブスリとベッドは刺さったが、アイリスハートの体には刺さらなかった。
するとその時であった。
銀時「調子に乗ってんじゃあねぇぞ! この豆チビがぁ!!」
気配と聴覚を頼りに、一気にベッドへと駆けだした銀時。
彼はそのままシーツを使い、デーボを捕獲したのだった。
デーボ「くそっ! 離せェ!!」
銀時「捕まえたぜ、槍も折ってやらぁ!」
そう言って銀時は、デーボの槍をへし折るが、
デーボ「ヒャッハー!」
スパァと剃刀で左手を斬られてしまう。
銀時「ぐあっ! ヤロォー!!」
デーボ「おっと!」
銀時「待て―――のわっ!?」
逃げ出すデーボを追いかけようとするが、銀時は誤って足を滑らせてしまう。
ベッドから落ちた彼であったが、そのままザクリと肩や腕に瓶の破片が突き刺さってしまう。
銀時「いっって! くそっ!!」
しかし銀時はコードを切断し、
アイリスハート「きゃっ!」
アイリスハートの拘束を解いた。
デーボ「ウケケケケケケ!! ヘイ、銀ちゃんよぉ! 今からテメェのタマキンを噛み切ってやるぜぇ!! その後にプルルート、テメェのデカ乳も噛み切ってやるぜぇ!!」
アイリスハート「くっ! なんて、卑猥な男なの!」
流石にこの台詞には、アイリスハートも頭にきていた。
デーボ「それよりも、お前等ぁ! 周りをよぉく見ろ。 さっきから床が濡れているのに、気付かなかったかぁ?」
アイリスハート「!?」
銀時「そういや、テメェ……さっきから瓶を割って、中身をぶちまけていやがったな」
デーボ「今頃気づいたのかよ? 小便が出りゃ、もっと濡らして、テメェ等の顔にぶっかけてたねぇ!」
再び天井にぶら下がったデーボは、漏電したドライヤーを握りしめていた。
デーボ「さぁて俺はこの濡れた部屋に、漏電したドライヤーをこれからどうすると思う?」
銀時「!?」
アイリスハート「まさか!?」
彼の次の行動に、二人は青ざめてしまった。
デーボ「勿論、部屋を乾かす為じゃあねぇぜ?」
アイリスハート「銀ちゃん!」
銀時「!?」
ドライヤーの電源を『弱』から『強』に切り替え、漏電はさらに強くなり、
デーボ「恨み晴らす置くべきか……死ね」
そしてデーボは、ドライヤーを下に落としたのである。
このままではドライヤーの漏電が液体を伝っていき、銀時もアイリスハートも感電死してしまう。
ニヤリと笑うデーボであったが、まさにその時であった。
銀時「へっ! “人を呪わば穴二つ”ってことわざ、知らなかったみてぇだな!!」
銀時の木刀が、ドライヤーを貫き、
デーボ「うげっ!?」
そのままデーボの頭を突き刺したのだった。
デーボ「な、何故!? 何故ベッドの上の俺の……俺の正確な位置が!?」
驚くデーボであったが、クスリとアイリスハートが笑った。
アイリスハート「アナタ、やっぱりオツムが足りなかったようね?」
続くように銀時も口を開いた。
銀時「俺ァな、鏡を割っていたんだよ。 ベッドの下のプルルートに、テメェを見つけて貰う為になぁ!!」
デーボ「グゲッ!」
豪快に木刀を振るうと、突き刺していたデーボは壁に叩きつけられた。
目の墨汁を拭い取った銀時と、ベッドから脱出できたアイリスハート。
銀時「はい、ご対面」
アイリスハート「ウフフフ……お・待・た・せ♪」
デーボ「ゲェェェェ!!」
これを観たデーボは、形勢逆転を感じて逃走を図るも、
銀時「逃がすかよ!」
スバァと銀時に両足を切り落とされてしまったのだった。
デーボ「ギャァァァ!」
足を落とされたデーボは、もはや逃げる事は出来ない。
そんな彼に、銀時はこんな質問をした。
銀時「おいデーボ、俺達ァデスハートってヤツの事について聞きてぇ事がある。 ヤツの能力を喋って貰うぜ?」
その問いに対し、デーボはすぐに答えた。
デーボ「バカかお前は? 自分の手口を簡単に教える殺し屋はいねぇぜ!! 教えるのは、自分か相手が死んだ時だけだ!!」
更に何かを言おうとした彼に対し、銀時は不敵に笑いながらこう言った。
銀時「お前は次に、“鏡のない部屋だったら、お前等を簡単に始末で来たのによォ”と言う!!」
まさにその時であった。
デーボ「鏡のない部屋だったら、お前等を簡単に始末で来たのによォ―――ハッ!!」
銀時の予想した通りの台詞を言ってしまったデーボは、動揺を隠しきれなくなってしまった。
そんな彼に、銀時は鬼が如き鋭い目付きで睨む。
銀時「じゃあ、やってみろよ?」
デーボ「え!?」
銀時「どうした? オメェ…俺のタマキンとプルルートのデカ乳を噛み切るって言ってたよなぁ? やってみやがれ、このド低俗ヤロー!!」
木刀を構え、何時でも戦える体勢に入ると、
銀時「俺はテメェの……」
デーボ「ウガァ!!」
両腕の腕力だけで跳びかかったデーボとすれ違うが、
銀時「ソコ以外を切り刻んでやらぁ!!」
ズバァと人形を切り刻み、彼のスタンド『エボニーデビル』を消滅させたのだった。
その頃、このホテルの男子トイレでは、
デーボ「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァァァ!!」
デーボの叫びが、外まで響いたのである。
清掃員「お客様、長い事トイレに入られてますが、大丈夫ですか――」
ホテルの清掃員が、ノック後に個室トイレの扉を開けると、
清掃員「ヒィ!」
局部以外を切り刻まれたデーボの最期の姿があったのだった。
その後、デーボを撃破した銀時は、
銀時「イテテテ……畜生、あのヤロォ〜。 部屋中に割れた瓶なんか撒き散らしやがって」
アイリスハート「ほら、破片を抜くからじっとしってて」
肩に刺さった瓶の破片をアイリスハートに抜いて貰い、同時に彼女の治療を受けて貰っている。
銀時「つーかプルル−ト。 オメェ、そろそろ変身解かねぇの?」
デーボ戦から変身を解いていないアイリスハートであったが、
アイリスハート「ええ、まだやり残したがあるの」
銀時「やり残し?」
首を傾げた銀時に対し、彼女は驚くべき行動を取った。
銀時「んぐ!?」
アイリスハート「ん♪」
なんと、自身の唇と銀時の唇を重ねたのである。
唇をゆっくりと放し、そして彼女は告げた。
アイリスハート「あたしぃ、銀ちゃんの漢気に惚れちゃった////」
銀時「え!?」
紅潮した頬は、間違いなく“ホの字”の証。
アイリスハート「だから必ず、銀ちゃんを
虜にしてあ・げ・る////」
それを聞いた銀時は、青ざめた顔と冷や汗と供に、
銀時「(えええええええええええええええええええええええええ!?)」
心の中で叫んでしまったのだった。
TO BE CONTINUED