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ネギま!―剣製の凱歌― 第三章-第50話 驚異!年齢詐称薬の力!!
作者:佐藤C   2015/02/25(水) 22:04公開   ID:3FzVk7dSV12



 学園祭もいよいよ迫り、活気と賑わいが日増しに強くなる麻帆良学園。
 しかしその影響で、ここ喫茶店アルトリアの客足は相変わらず少ない。
 とはいえ、きちんと計画スケジュールどおりに準備が進んでいる所もあるようで、そういった生徒達が来てくれるお陰で一定の客数は維持されていた。
 ……何処かの中等部にも見習って欲しいものである。


『…世界樹の魔力……』

(――ん?)

 そう思いながら注文を取り終えて厨房に向かおうとした士郎の耳が、客の会話からその一言を拾い上げた。

『なにってほら、学祭最終日に世界樹の下で好きな人に告白すると絶対うまくイっちゃうってゆーアレだよ』
『あー、あの有名なヤツ。学祭伝説だっけ』
『え?世界樹伝説でしょ?』
『そんなのどっちでもいーから』

(……いかん。“魔力”って聞くとつい魔法使いそっちの思考になっちゃうな)

 職業病とでも言えばいいのか?
 士郎は自分の勘ぐりに苦笑しながら今度こそ厨房に入っていった。



 ・
 ・
 ・



「なにこの新聞…えっと?“世界樹の魔力!?あらゆる困難や障害を突破!”」
「有り得ないカップル成立が多数報告…その後の安定度も非常に高いと追跡調査で判明…」
「ね、スゴイでしょー!」
「ホントかなー。まほスポって嘘記事多いし」
「あ、それまほスポ?ねえねえ占いコーナー見せて」
「今は世界樹の話!!」

「お待たせ致しました。ティーセット四つになります」

 学内新聞を奪い合う女子高生達を尻目に、士郎はさっさと紅茶とクッキーをテーブルに置く。
 するとそれを見た一人の生徒が、唐突に彼に話しかけた。

「ねーねー、士郎さんってなに座?」
「ん、星座か?どうしたんだ薮から棒に」
「いいからー!」
「…牡羊座」

 士郎が答えると女子生徒は、押し寄せる友人達を受け流して新聞を読み涼しい顔で頷いている。

「今日の牡羊座。仕事運。とても良い追い風が吹いています。
 今まで保留していたこと、やりたいと思っていたことを始める絶好のチャンス!
 恋愛うぁー新聞取られたー」
「ふははー!私に勝とうなど二、三年早いわ!」
「なにそのアバウト!?」
「勝てる日が意外と近い!」
「あはははは」

 ……楽しそうだなあ。
 青春を謳歌する少女達を微笑ましく思いながら、士郎はふとして思い出す。


 『ネギには悪いが、あの扉。一度…調べた方がいいかもしれない―――』


 ―――学園の地下にある、飛竜に守られた扉の存在を。


(……潮時、かもしれないな)


「よしエヴァ。俺、近いうちに学園の地下に潜るから」
「…バカだバカだと思っていたが、ここまでとは…」

 カウンターの指定席で栗羊羹を食べるエヴァは、女子高生と学内新聞に触発された士郎を呆れた目で見て呟いた。







 第三章-第50話 驚異!年齢詐称薬の力!!







「ああんアスナ、せっかくチャンスやったのにー」
「あんなに勇敢な明日菜さんが……意外です」
「わっ!み、見てたの!?」

 陽の沈みかけた放課後の校舎前。
 タカミチを学園祭でデートに誘おうとした明日菜だったが………緊張して言い出せずに終わってしまう。
 それを遠目から偶然見ていた木乃香と刹那が、明日菜に近づいてきて声をかけた。

「でも刹那さん……。
 告白するのに必要な勇気に比べたら、化け物相手に暴れる勇気なんてどーってことないよ……」
「あ……そ、それはわかる気がします」
「それはそれでどーかと思うぜお二人さんよ」

「……いい。私…片思いで。ずっと片思いで満足……フ…フフッ……♪」

 いつもの快活な様子は見る影もなく、明日菜は肩を落としてどんよりと息を吐いた。

「そんなぁ、アスナ〜」
「へへへ。なら俺っちにいいアイデアがあるぜ」
「あれ?そういえばカモさんいつの間に…?」



 ・
 ・
 ・



「「ええっ!?アスナさん/ネギとデートしろってーーーーーー!?」」

 その日の夜。
 一同が集まった寮部屋に、ネギと明日菜の驚きの声が響いた。

「そ、いわばデートの予行演習さな。要は“慣れ”よ慣れ。
 場数を踏めば不安も緊張もなくなって、タカミチを学祭に誘うくらいどーってことなくなる寸法よ」

「ええ考えかもなー。丁度明日は休みやし」
「プレ公演などをやっている団体もあるのでデートの下見になりますね」

「だからってネギと歩いてデートの練習になるワケないでしょー!!」

 明日菜の言い分は正しい。
 十歳と十五歳が連れ立って歩いても、それは男女のデートではなく姉弟のお出かけにしか見えないだろう。

「確かにネギ君じゃー高畑先生の代役には無理あるなー」
「しかしネギ先生以外に手近な男の人もいないで……す……し?」

 この時、一同の脳裏にある喫茶店のマスターが思い浮かんだ。

「そうだ!シロ…」
「フ、旦那の手を煩わせるまでもねぇ。コレがあれば万事解決よ!!」

 ネギの声を遮って、カモは赤と青の飴玉が詰め込まれた透明なビンを取り出した。

「ジャーーン♪『赤いあめ玉・青いあめ玉、年齢詐称薬』〜!!」

「…また犯罪ぽい名前のアイテムねー」

 明日菜が白い目で見ているが、カモミールは自信満々に説明を始めた。

「名前のとおり外見年齢を操作できる魔法薬マジックポーションだ。
 もっとも実際に肉体が変化する訳じゃねえ。
 言うなりゃ幻術の一種で、あのエヴァンジェリンが昔使ってたのと同種の魔法さ」
「へえー♪」
「ほう」

 木乃香が面白そうに、刹那も興味深そうに見つめるが、この高級なマジックアイテムを持ち出してきたカモの真意は別にあった。

(ふふふ、兄貴と姐さんがもっと親密になるに越したことはねえ。
 姐さんにはこれからも兄貴の従者でいてほしいからな)

(ナイスやカモ君。
 また士郎がせっちゃん以外の女の子とデートなんて、アスナでもあかんわー)

 思惑は異なるが、それぞれの理由で二人はほくそ笑む。
 しかしそれを知らぬ純真な少年は、拳を握って明日菜を見た。

「わかりました、僕も協力しますよ!アスナさんの恋のために!!」

「うっ……」

 ―――結局、押し切られてデート(の練習)を承諾してしまう。
 自分のためと言われてしまうと、どうにも明日菜は弱かった。

「見て見てみんなー!セクシーダイナマイツ♪」
「「「な゛っ…!」」」
「オホッ♪」

 呼ばれた声に振り向くと、一同が驚愕した。カモは涎を垂らしている。
 そこには―――年齢詐称薬を口にして、大人になった木乃香の姿があった。

「…確かにこれはスゴイわね」
「フ、どんなもんでぇ。
 本人がイメージした幻術だから、将来ああ育つってワケじゃねーがな」

 本人曰く十八歳に変身したらしいが、それでも成人女性と見劣りしないスタイル抜群の美女になっている。

「こらおもろいわー♪でもカモ君、ネギ君この薬でアスナ好みの三十代のおじ様に変身できるん?」
「どうかな、あんまり元々の年齢から離れると厳しいかもな」
「ほな試してみないと分からないんやなー。なら、せっちゃんもあーん♪」
「えっ」

 木乃香は素早く、刹那の口に青い飴玉を放り込む。ついでに自分も同じものを。
 この年齢詐称薬は赤い方を飲めば歳を取り、青い方を飲めば若返る。つまり……。

 ―――ピンポーン。ガチャッ。

「こんばんはー。カモミール居るかー?」

「あ、シロウ」
「どうしたんでぇ旦那」

「キャハハッ♪」
「お、お嬢様っ」
「ちょっと!うちは託児所じゃないのよーっ!」

 寮部屋を訪れた士郎の前で、小学一年生程度に縮んだ小さい木乃香が、小さい刹那の手を引いてドタバタ走り回っている。

「………なんか、すごく懐かしいものを見ている気がする」

 ぼそりと零す士郎。
 具体的には『関西呪術こども協会』時代を思い出した。

「あ。シロウ♪」
「しっ、士郎さん!?」
「ちょ、何でアンタはそうナチュラルに入ってくるのよー!?こないだの教室といいっ」
「む。ベルは鳴らしたぞ」
「こっちがドア開けるまで待ちなさいよ!!」

 明日菜と話しつつ、士郎は彼女の背後の惨状を見ない事にした。
 それは…身体が小さくなった時に脱ぎ散らかしてしまったのだろう、服の山。
 そこに―――たぶん、木乃香のブラジャーとか。たぶん―――刹那のショーツとか。
 そういうものを慌てて片付ける幼女達の姿なぞ。士郎は決して見てはいないのだ。

「ホラ、カモ。これお前の煙草だろ。
 ったく…うちはほとんど学生しか来ないんだから、吸う人もいない店に煙草があると不審がられるって何度…」
「いやーアハハすまねえ旦那。今度から気をつけるからよ」

 煙草をわざわざ届けに来たと言うより、士郎は直接文句を言いに来たようであった。
 しかしそれだけではあんまりだと思ったのか、持参したビニール袋をガサガサと漁り始める。

「流石に手ぶらじゃどうかと思ってな。
 はい明日菜。店の残り物で悪いけど、中にビーフカレー入ってるから」
「ぅわっ」
「ほいネギ、ケーキ。六個入ってるからうまく分けるんだぞ」
「ぅわっ」

 ―――鍋と、紙製のケーキ箱が二人に手渡される。
 明日菜とネギは、そんな士郎に若干引いた。

(…あの薄いビニール袋一枚に、一体どうやって入ってたんだろう……?)
(ちょっとしたお土産とかお裾分けにしては量が多いわよコレ…)

((――――美味しいからいいけど))

 二人の舌と胃袋は、士郎によってとっくの昔に陥落していた。
 …餌付けされた人数で言うなら、被害者はもっと多いのかもしれなかったが。

「うん、ありがと。それでどーする?狭いけど少しゆっくりしてく?」
「いや、今日はやめておく。
 事前に何も言ってないからな、急に用事を入れたり遅くなるとエヴァにまた怒られる」
「…あっそ」
「尻に敷かれてんなぁ、旦那」
「なんでさ」

 鍋とケーキを運びながら明日菜が訊くと、士郎は空になったビニール袋を丸めてポケットに仕舞いながら断った。

「えへへー、シロウ。ウチ、どお?」

 じゃあな、と帰りの挨拶を口にしようとして、可愛らしい声に遮られた。
 視線を若干下に向けると、士郎を見上げてくる小さい木乃香の向日葵のような笑顔があった。

「…なんだ、気に入ったのかソレ」
「うん♪ウチこーいう魔法の方が好きやわ♪」
「そっか。よかったな」

 昔の木乃香が重なって、士郎はついつい懐かしくなって彼女の頭に手を置いた。

「えへへー。もっと撫でてー♪」
「はいはい」

 中学生の木乃香ならもっと気を遣うのだが…今は子供だしいいかなと、士郎は少し乱暴に彼女の髪をぐしぐし撫でる。

「むふー♪」

 可愛らしい義妹の様子に口元が緩んでいると、視線を感じた。
 兄妹を微笑ましい目で見ているネギ達……ではない。

「……………。」

 小さい刹那が、物欲しそうな目で士郎を見ている。
 ……仕草や嗜好まで幼児化しているのか?と士郎は思ったそうな。

「なんだ、刹那もか?」
「っ!!? い、いえ私は」
「いいからほら、こっちに来い」

 士郎が言えば小さい刹那は、躊躇するような素振りを見せた後、ぺたぺたと歩いて木乃香の隣まで歩いてきた。

 ―――なでなで……。

「………〜♪」

 両手でそれぞれ別のロリ…ごほんごほん、小さくなった幼馴染みの頭を撫でる士郎。
 二人は揃って照れくさそうに頬を朱に染め、満足げに目を細めて彼の為すがままにされている。



(………平和だ……)


(懐かしいなあ。二人にこんな時代があったなあ。
 最近厄介事ばかり続いてたけど…こんな時間がないと嘘だよなあ)

 ……衛宮士郎。
 部屋に充満する和やかな空気に、のほほんと思考を毒され始めていた。

 ――がしっ。

「えっ?」


 ――――その隙を。彼の幼馴染み達は逃しはしない!!


「なんだ、どうした?」

 木乃香と刹那がそれぞれ士郎の手首を鷲掴みにする。
 訝しげに見下ろす士郎。
 木乃香はにぱーと笑っていて、刹那は顔を赤くして申し訳なさそうに眉尻を下げている。

「シロウ、“あ”。あー」
「ん?あ?」
「――スミマセン士郎さんっ!」
「もがっ!?」

 木乃香の誘導で口を開けた士郎の口内に、“気”で腕力を強化した刹那が何かを放り込む!

 ――ボウンッ!
 音を立てて士郎の体が煙に包まれる!
 そう、木乃香と刹那が協力して士郎に飲ませたのは―――青い方の年齢詐称薬―――!!


「……な、なんだこれーーーーー!?」


 上がった悲鳴は、少年特有の高い声。
 煙が晴れるとそこには、木乃香達と同程度に小さくなった士郎の姿があった。

「…このか、刹那さん。あんた達ね……」
「だってウチらだけなんて不公平やんかー」
「――あ…あはは!シロウが小さい!なんか面白いや!!あはははははははっ!!」
「ネ、ネギーーーーーー!?」
(私もこの頃はシロウって呼んでたなー…)

 呆れる明日菜。口を尖らせる木乃香。昔を思い出す刹那。
 そんな少女三人を尻目にネギは腹を抱えて大笑いし、士郎は自分の扱いに絶望した。

 ……ネギと士郎!二人のショタが集いし時、新たな地平を照らし出す!光射す道となれ!!
 『ネギま!―剣製の凱歌―』改め『魔法剣製シロネギ!』、はっじまーるよー!!

 ―――ボウンッ!!

「………え」

 嫌な予感に士郎の体が硬直する。
 ……覚悟を決めて後ろを振り返るべきだ、それは彼も理解している。
 でなければ聞こえた音の正体への対処も出来まい…だが―――。

 ふよんっ。

「!!?」

 懊悩する士郎の後頭部に、柔らかい何かが押し当てられた。

「ウフフ、かわええなー。ちっちゃいシロウ♪」

 年齢詐称薬で変身した、近衛木乃香二十六歳が士郎を背後から抱きしめていた。
 その斜め後ろには、中学生に戻った刹那が羨ましそうに二人を見ている。

(…え、あ、あれ。という事は…俺の頭に当たってるのは……)

 精神は肉体の影響を受ける、とはエヴァンジェリンの弁だ。
 若いまま吸血鬼になった彼女は自身が、他の下手な長命種族より精神的には若いだろうと。

 ……それを正しいと受け止めるなら。
 少年となった今の士郎に、今の木乃香の行為はあまりに過ぎた毒であった。

「や、やめろこのかっ!やめろよー!放せよーー!」
「ああん、じたばたしたらアカンえー。
 でもえーなー、シロウめっちゃかわええなー♪」
「…っ!!お嬢様、次は私です!ですから早くっ、私にも小さい士郎さんを!!」
「せつなーーーーー!?」

「………僕っていつも、クラスだとあんな感じなのかな…。ケーキ美味しいねカモ君」
「……ああ、そーだな」
「…だ、大丈夫よネギ。あんたが頑張ってるのはみんな知ってるから…」

「…ふふ、小さい士郎さん、カワイイ(ぎゅっ)」
「せ…せつなぁ…(うるうる)」

 すぐ隣の喧騒を無視してテーブルに座るネギ、カモ、明日菜。
 ボソボソと美味しくなさそうにケーキを食べ進めるネギの背中を、二人は静かに慰める。

 そして「もう勘弁してくれ」と、潤んだ瞳で懇願する少年士郎。
 しかしその表情すら、今の木乃香と刹那には餌にしかならないのだった……。



 ……後日、士郎が一切口を利かなくなって涙目になった木乃香と刹那は、必死に頭を下げて彼に謝り倒したという。





 ◇◇◇◇◇◇




 年齢詐称薬が引き起こした騒ぎから一夜明けた、翌日の午後二時前。
 学園内は、学祭準備や本番前のプレ公演で既にかなり賑わっていた。

「えっと、待ち合わせは工科大前のカフェだったよね……。
 それにしても…うーん。なんか周りが小さく見えて気持ちいいなー」

 その雑踏の中を、中学生ほどの赤い髪の少年が、一人悠々と進んでいる。
 …そんな、ただ歩いているだけだというのに、周囲の方が彼を放っておかなかった。

「げ!?ちょっと見てアレ!!」
「わわっ、カッコイー…♪」
「今のカッコイイ人誰!?」
「ん…あのにーちゃんかなりデキるな。でもどっかで見たコトあるよーな」

 悪く言えば優男、よく言えば色男。
 甘いマスクを持つその少年は、十分に二枚目と言えるルックスを誇っていた。
 体の線は少々細いが、背筋は伸びて重心も安定しており、見る人が見れば腕も立つと判るだろう。

 しかしそれほどハイスペックな本人は、周囲の女子生徒が黄色い悲鳴を上げている事など露知らず。
 「遅れたらアスナさんに怒られちゃうなー」などと呟きながら、待ち合わせの場所に急ぐのだった。



 ・
 ・
 ・



「もー……。このかや刹那さんまで一緒になって」

 明日菜がぐちぐちと不平を漏らす。
 麻帆良工科大前のカフェ『スターブックス』、その壁に寄り掛かって彼女はネギを待っていた。

「予行演習なんていいって言ったのに。
 大体ネギと練習したって緊張なんてするわけないし、意味ないんじゃないかなぁ?」

 溜め息が漏れる。言うまでもなく乗り気ではない。
 それでも一応、デートとして恥ずかしくない程度の私服は選んできた明日菜だが、あまりに気乗りしない彼女は既に「バックレようかな」とまで考え始めている。

 そんな明日菜に近づいていく、一人の少年の姿があった。

「すいませんアスナさん、お待たせました」

「…な゛っ……!!」

 声をかけてきた少年の容姿に、明日菜が赤面した。

「やっぱり三十代のオジサンは無理だったので、
 アスナさんと同じ十五歳なんですけど………ど、どうでしょうか?」

 十五歳に変身した、ネギ・スプリングフィールド。
 父親に瓜二つの、誰もが認めるイケメンになっていた。

 こうして、明日菜は強硬に予行演習だと主張する、二人のデートが始まった。







<おまけ>

エヴァ
「まったく…毎年毎年、学祭準備に付き合わされて堪るか」

 『登校地獄の呪い』によって麻帆良に封印され、通算十五年も中学校に通っているエヴァンジェリン。
 彼女は頭の後ろで手を組んで、堂々とサボり宣言をして3−A教室から出て行った。

 そうして喫茶店アルトリアを訪れたエヴァだったが、ここでも彼女の気分を下降させる話が聞こえる。
 恋愛成就の都市伝説、『世界樹伝説』だ。

エヴァ
(フン…くだらんガキどもめ。よくも毎年同じよーな会話を飽きもせず…)

 だがその感想は、自分が“待ち人”から十五年も置いてけぼりを食らっている証左であり。
 エヴァンジェリンはアンニュイな気分で抹茶を啜ってやさぐれた。

『ねーねー、士郎さんってなに座?』
『…牡羊座』

 ―――ぴくっ。

 ある声に露骨に反応して、彼女の耳がピクリと動いた。

『今週の牡羊座。仕事運。とても良い追い風が吹いています。
 今まで保留していたこと、やりたいと思っていたことを始める絶好のチャンス!
 恋愛うぁー新聞取られたー』

 …………竹串で栗羊羹を切り分けながら、エヴァは思う。

エヴァ
(……士郎の恋愛運か。どうだったんだろーな)

 噂話をくだらないと一蹴しつつ、(特定人物の)恋愛運は気になるその思考。
 間違いなく、彼女も現役の女子中学生であった。





〜補足・解説〜

>第50話 驚異!年齢詐称薬の力!!
 まさか年齢詐称薬だけで一話書けるとは思わなかった件。
 当初は「年齢詐称薬ってこんなものだよ!」という軽い説明だけして、本来予定していたエピソードを書こうと思っていたのに……な、何が起きたんだぜ!?
 「士郎がロリこのせつの頭ナデナデ」、「ショタ士郎がもみくちゃにされる」などというネタを思いついてしまったばかりに……ちくしょう……。

>学内新聞
>まほスポ
 麻帆良学園都市全域で配布される新聞、という意味での学内新聞。
 おそらく規模的に考えて毎日刷られて販売している。学内新聞ってレベルじゃねえ。
 つーか『麻帆良市』まるごとが学園になってるんだよな…今更だがこの世界おかしい。

>潮時、かもしれないな
 「潮時」とは、物事を始める、行動を起こすのに良い時期という意味の言葉です。
 昨今では悪い意味で使う場面が多いですが、こちらが本来の使い方。
 つまりこのセリフは「そろそろ丁度いいかな」というニュアンスです。

>寮部屋を訪れた士郎
 寮の出入り口に受付とか管理人室があるハズなので、そこで「○○号室の近衛木乃香の身内です」とか言ってちゃんと断って女子寮に入ってます。
 どっかの悪魔伯爵と違って不法侵入なんてしないんだぜ!

>決して見てはいないのだ。
 幼馴染み(♀)に対する、幼馴染み(♂)のお情け。
 一瞬目にしただけとはいえ、どっちが誰の下着だとか冷静に見当を付けられるレベルで光景を網膜に焼き付けていた点はツッこまないで頂きたい。お情け。

>お土産とかお裾分けにしては、ちょっと多いわよねコレ
 今どきカレー鍋はやり過ぎ。ケーキだけでよかっただろ、という話。
 ふと思ったのですが、昨今の世の中では、お隣さんや近所同士、親しい間柄で、鍋に入れたままの料理をお裾分けするという行為はどこまで珍しくなっているんでしょうね?
 両親が不在になりがちでほぼ一人暮らしをしている男子の家に、隣に住む幼馴染みの女の子(家族ぐるみの付き合いをしている)が「これウチのお母さんが作ったの!よかったら食べて!」と言って鍋を持ってくるパティーンは王道の一つ。だが通りを挟んだ向かい側に同い年の幼馴染みの女の子が住んでいた私にそんな出来事など無かった。

>餌付けされた人数で言うなら、被害者はもっと多いのかもしれなかった
「紅茶派。千雨レッド」
「スイーツ派。愛衣ピンク」
「あんみつ派。真名ブラック」
「プリン派、楓ブルー。ニンニン♪」
「て…店主派…?た、高音イエロー!」
『五人揃って!“Xファイブ・アルトリア”!!』
士郎
「………恥ずかしいからやめてくれ」
エヴァ
「…店主派。聞き捨てならんな」
フィンレイ
「よし少し話をしようじゃないか。なぁ」
刹那
「結界、ただいま張り終えました(チャキッ…)」
高音
「ま、待ってください!私はこの台本どおりに言っただけで…キャーーーッ!!?」
愛衣
「……私、ブラックはお姉様だとばかり思ってました」
真名
「本来のバk…イエローは古だったんだがな」
千雨
「今バカイエローって言おうとしたろ」
バカブルー
「それには拙者も苦笑い」
愛衣
「あれ?古菲さんなら、私がここに来る前にすれ違いましたけど」
千雨
「ああ、“私は超包子を裏切る訳にはいかないアル…!”とか言いながら走っていったぞ」

「食い意地が張ってる古にも、譲れないプライドがあったでござるよ」

>今の士郎に、今の木乃香の行為はあまりに過ぎた毒であった。
 そもそも木乃香26歳モードは、本来の士郎(19歳)すら越えているという高火力であった。

>小さい士郎
 子供の体では、大人の木乃香どころか、中学生の刹那の腕からも逃げられない。
 木乃香の柔らかいものを押し当てられて冷静さを欠いたショタ士郎には、刹那のように身体強化して幼い体の筋力を補うという発想は無かった。
 ぶっちゃけ年齢詐称薬を飲ませる所からずっと木乃香さんの作戦勝ち。この娘…策士か!?

>「せ…せつなぁ…(うるうる)」
 うっかり新しい世界の扉を開きかけたのはここだけの秘密だ。慌てて閉じたがな!
 作者は至ってノーマルです。特殊な性癖はありませんし、もちろん変態でもありません。
 私はロリババアが大好きです。

>必死に頭を下げて彼に謝り倒した
 結局、士郎から「年齢詐称薬を使う時は絶対に俺に関わるな」と念を押されて許された。
 だが彼女達の心中には、無念とか残念とかそういう感情が渦巻いていたそうな。反省してない。
 しかし木乃香たちが幼児化+猫族化する姿がデフォになる(時期もある)魔法世界編では、なんやかんやその約束は反故にされる模様。

>十五歳のネギ
 身長は明日菜より高くなり、人の良さは柔らかな表情となって爽やかさを演出する。
 内面の子供っぽさ―――実際に子供である―――はあどけない雰囲気となり、周囲の女性達からは可愛いと受け取られる。
 父親とはタイプが違うが、彼もまた紛れもない美男子であった。砕けよ。

>士郎の恋愛運
『今は嵐の前の静けさ。もっと周りをよく見てみて。素敵な出会いはすぐ傍にあるハズ!』



 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 『第51話 ダブル・エンカウンター』(仮)

 それでは次回!

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