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ネギま!―剣製の凱歌― 第三章-第51話 予期せぬ邂逅
作者:佐藤C   2015/05/24(日) 22:32公開   ID:nuM3zqZvRkI



(……今頃、ネギと明日菜はデートの最中か)

 自分にはそんな相手もいないな、と考えて苦笑する。
 両手の短剣で草木を薙ぎ払いながら歩き続け、彼はようやく目的の場所に辿り着いた。

 そこは、麻帆良学園都市のほぼ全域に広がる地下迷宮の一端。
 大地に草花や苔が自生し、超高層ビルに匹敵する大樹が無数に佇立する巨森。
 地下とは思えぬほど広大で、木々に覆われた薄暗い大空間は、何処からか射し込む柔らかな光に照らされていて穏やかだ。


 ――その階層の果て。
 木の根と蔦に覆われた石造りの大扉。
 それを守護する門番たる飛竜が、一人の男にこうべを垂れて平伏していた。

「……Gururu…」
「よし、良い子だ」

 強大な力を持つ“竜種”が男を恐れる理由。原因は彼の右手に現れた剣に在る。

 黒い柄と黄金の鍔、そこから伸びる細身の直刀を持つ西洋剣。
 竜殺しドラゴンスレイヤーの伝説を持つそれを、“最強の魔剣”――――『太陽剣グラム』と言った。


 その剣威によって強引に飛竜を大人しくさせた彼―――衛宮士郎は、
 以前より気にかかっていたこの扉を調査するため出向いたのだ。

 以前、ネギがのどかと夕映を伴い訪れた…サウザンドマスターの手掛かりがあるというこの場所へ―――。







<第51話 予期せぬ邂逅インパクト・エンカウンター







《こちらは麻帆良祭実行委員会です。
 麻帆良祭まであと六日を切りました。事故や怪我の無いよう準備を…》

 学園街の上空を巡回する飛行船が、紙吹雪を降らせながら学園全域に放送を流している。
 既にあちこちで看板ややぐらの組み立てが進んでおり、幾つかの大学サークルが行うプレ公演に沸き立つ人々の姿も窺える。
 そんな祭り前の活気に溢れた雑踏で、ネギと明日菜が……若干の距離を開けて歩いていた。

「学祭前の最後の休日だけあって、皆さん準備に熱心ですね」
「そ、そーね」

 ネギは高まる祭りの気運と熱心な生徒達を眺めて楽しそうにしているが……少し前を歩く明日菜の方は、それらを楽しむ余裕が無かった。

「いやー、僕、デートってしたことないので。なんかドキドキしちゃいますね」

(だからデートじゃないって!…ていうかなに緊張してるのよ私…!
 そりゃ予想外にカッコよくてちょっとビビったけど…)

「…か、勘違いしないでよねバカネギ」
「はい?」

 未だネギ十五歳のイケメンぶりに頬を赤くする明日菜は、意を決して後ろを振り返ると彼を指差して言い放った。

「いい?これはあくまで予行演習なのよ、よこーえんしゅー!!
 魔法で大きくなってちょっとカッコよくなったからっていい気にならないでよね!!」

「え、僕ってちょっとカッコイイんですか?やった!」

「………そのカオであっけらかんと言われるとかなりカチンと来るわね」

 効いてなかった。
 浮かれたネギを大人しくさせるための台詞いちげきは虚しく空を切る。
 明日菜は「くそう」と悔しげに拳を握った。

「だ、大体、私はガキも嫌いだけど、今のアンタみたいなカッコイイだけのチャラチャラしてる男も嫌いなの!
 ハズかしいから近寄らないでよ!!」

 そう言って明日菜は、すぐさま前に向き直って歩き出した。

(慣れろ、早く慣れるのよ私!時間…時間さえあれば何とか……!)

 そうだ、これは敗走ではない。戦略的撤退だ。機を窺っているだけなのだ……!
 そう信じて立ち向かう明日菜はまだ、ネギのカオを直視することができなかった。

「でもアスナさん、僕のこの姿はアスナさんの予行演習のためなんですよ?
 そんなプンプンしてたらデートの練習になりませんよー」

「うっ…そ、それはそうだけど」


(………別に私が頼んだ訳じゃないもん)


 ……いかん、さっきからどうにも気持ちが落ち着かない。これじゃいつまでも振り回される。
 そう思っている明日菜の顔に、前触れ無くフッと影が差した。

「ですから例えば、こうやってタカミチが顔を近づけてきても緊張しないように」

 有り得ないほど近い声にビクッと肩を揺らす明日菜。
 互いの前髪が触れる距離まで近づいた、ネギの顔が明日菜の目の前にある。

(―――え、う、あ)

 視界いっぱいに広がるネギの顔に体が硬直すれば、
 明日菜は意図せず、自分を見つめる男の目を真っ向から見つめ返してしまう。
 ……その瞳に映る、上目遣いで上気して顔を真っ赤にした少女は誰かと言われれば、当然――――


「――ち、近寄るなって言ったでしょーーー!?」


“ドガンッ!!!”


 露店が立ち並ぶ街中に突如響いた、鈍い轟音。
 道行く人々が何事かと視線を彷徨わせるが、めぼしい原因が見つからないと徐々に気にしなくなっていった。
 ……すぐ近くに、明日菜に殴られた額から「しゅうぅ」と煙を上げるネギという音源げんいんがいたことを彼らは知らない。

「…す、すいません。
 カモ君が『今の兄貴のツラで迫れば姐さん絶対動揺する』って言ってたので、つい」

(カモ後でひねる―――!!)



(ッ!!?)
(どうしたんカモ君?)
(お二人共、あまり身振りが大きいと尾行がバレます)

 建物の影から二人を尾行すつける一行の中、一匹のオコジョが背筋に走る悪寒にブルリと身を震わせた。



「それじゃあ、そろそろデートに行きましょう!」
「ちょっ、だから予行演習だってばっ!!」

 明日菜は「デートではない」と頑なに主張しながら、自分を追い越し先行くネギを追っていく。
 ……しかし、悲しいかな。
 「喧嘩するほど仲が良い」を地でいくこの二人は、周囲から完全にカップルのデートと認識されていたのだった。





 ◇◇◇◇◇◇




「………これは……凄いな」

 絶え間なく水が落ちる音がする。
 重い石の扉を開けて、明かりのない暗い階段を下りて行った、その先。
 石壁の通路を抜けると、そこには大きな滝があった。

 正確には、滝壺。
 巨大な湖の中に一点だけ、直径三百メートルほどの大穴がぽっかりと開いている。
 そこに水が勢いよく流れ落ちて、辺り一帯が立ち込める水煙と霧に覆われていた。

 湖の周りは上階と似た景色…陸地に樹木や植物が茂っており、光が差し込む点も同様。
 だが何より、士郎の目を引いたのは。


 ―――その大穴、水が落ちる滝壺のほぼ中央。
 周囲の水位より上の位置に、住居と思わしき建造物が存在していた。


(物理法則は…今更だな。あんな細い柱で建物の荷重を支えきれるハズがない)

 眼前に聳える建造物に、魔法の力を感じ取る。
 そしてその建物は、一直線に伸びる細い橋架で士郎のいる階段の踊り場と繋がっていた。

 士郎は早速、眼に魔力を流すと、千里眼を使い建物の観察を開始する。



 ―――隠しきれず動揺し、瞠目した。


「……おいおい…冗談じゃない」

 視線を飛ばす建物のテラスに、間違いなく、白いローブを着た人影を確かめる。
 悪態をつく事を禁じ得ない。
 何故なら………その人物の顔に、士郎は既視感を覚えていた。


(あれは―――)

 義父・詠春の持っていた写真で見た事がある。
 師ラカンから聞いた話に間違いがないのなら、テラスに佇む人影は……おそらく。

 ―――大戦の英雄、『紅き翼アラルブラ』の一員。
 サウザンドマスターの盟友の一人。
 彼の名は、確か―――


「本当に―――――“アルビレオ・イマ”……か……!?」


 知らず零した士郎の頭上に、黒い球体が落下した。





 ◇◇◇◇◇◇◇





(ふ……………。勝った)

 内心で、明日菜は喝采を上げて拳を突き上げた。
 先の撤退は間違いではなかった。今のネギの顔に―――とうとう、慣れた……ッ!

「アスナさん、射的ありますよ射的!やりましょう!」
「ハイハイ、そのソフトクリーム食べ終わってからね」

 初めはネギ十五歳の容姿にかなり緊張していた明日菜だが、如何せん相手の中身は子供である。
 二人のデートはいつの間にやら、『異国の祭りにはしゃぐ弟とお守りの姉』といった様相を呈していた。
 ネギの保護者代わりであるという明日菜の自尊心は、激しい戦いの末に何とか守られたのである。

「よーし、こーいうアタマ使わないヤツなら私だって得意よ」
「おおっスゴイ!よぉし僕も負けませんよ!!」
「ふふん、やろうっての?体使う遊びでアンタには負けないんだから!」

「おいっ見ろよあのカップル!」
「スゲェ!百発百中じゃん!!」
「…にーちゃん達…そろそろやめてくんねーかな…。
 祭りの前に景品なくなったらオジサン困っちまうぜ……」

 ……とまあ、当事者たちはそこそこデートを楽しんでいたのだが。
 その様子に「色気がない」と痺れを切らしたカモが、
 木乃香の仮契約カードで念話を飛ばしてネギに要らん指示を与え始めてしまう。

 結果、ネギが――うっかり――明日菜の胸を揉んでしまったり。
 ――偶然――転んで、明日菜のミニスカートの中を覗き込んでしまったり。

 哀れネギは、羞恥のあまりカッとなった明日菜の鉄拳で一撃の下に沈んだのであった。

「…きゅう」
「ふーーっ、ふー……!」

 …明日菜とて、ネギが自らあんな真似をするとは思っていない。
 故に彼女は、ネギの惨状に悲鳴を上げた尾行者の存在に気づいたのだ。

「アンタの仕業ねこのエロガモーーーっ!!」
「あぶぶぶぶぶ」
「おおっアスナさん、修行の成果が…!」

 力任せにハマノツルギハリセンを振り抜くのではなく、脇を締めた無駄のない動きから繰り出される連撃。
 その烈しさに驚く木乃香、明日菜に剣術を指南した刹那はそのハリセン捌きに見入っていて、
 倒れたネギはしばらく放置されていましたとさ。





 ◇◇◇◇◇◇




“―――ゴガシャァアッ!!ドドドド……!!”

 石造りの踊り場は呆気なく崩壊した。
 石レンガの構造物は、一度バランスを崩すと自らの重さでみるみるうちに湖へ崩れ落ちていく。

「……侵入者ですか。十年ぶりの来客を歓迎することも叶わないとは、残念ですね」

 その水音を聞きながら、白いローブを着た魔法使い―――アルビレオ・イマは読んでいた本をパタリと閉じた。

「おや?」

 アルビレオは何かを察して、椅子から立ち上がると崩壊した踊り場に視線を向けた。



「……っ!」

 踊り場から僅かに進んだ地点の橋架で、士郎が後ろを振り返った。
 さっきまでいた場所が、見えない何かに押し潰された光景に彼は絶句する。

「……フフフ、咄嗟に反応して逃げましたか。
 あの門番を出し抜いてやって来ただけの実力はあるようですね」

 愉快げに薄く笑う。
 スッ…とアルビレオが軽く腕を振ると、先ほどと同じ黒い球体が士郎の頭上に出現した。


“―――ズシンッ!!!”


「っ!!くそっ!!」

 さっきと同じだ。
 士郎はそう直感したが、それが判ったからといって逃れられるものではない。

(―――体が重い…重力魔法か!?)

 階段の踊り場を押し潰した“見えない力”。その正体は何ら特別なものではない。
 この地球ほしの生物が、生まれた時より例外なくその身に受ける―――“重力”という名の絶対不偏のことわりだ。

 しかし今の士郎に降りかかる重力は、通常のそれより十倍以上。
 魔力でいくら筋力を強化しようと、強化した肉体そのものを重くさせられては効果が薄い……!

 黒い球体が現れてからここまで、二秒弱。
 敵を圧殺せんとする重力を防ぐ魔法障壁はとうに悲鳴を上げ、石橋は既に士郎の足元から崩壊を始めている――――!!

“『戦いの旋律メローディア・ベラークス』!!”

 士郎は咄嗟に身体強化呪文を行使する。
 重いままの身体に無理を強い、彼は崩壊する足場から無理やり前方へ跳躍した。
 だが、足りない。

(ちっ!!)

 崩れ落ちようとする箇所を駆け登り、着地しようとした橋架の先。
 さっきと同じ黒球が、宙に鎮座して獲物を冷たく見下ろしていた。

「――っ、のぉおおおおっ!!」

 咆吼し、己に檄を飛ばし、脚に更なる力を籠めて爆発的に開放する。
 重力圏―――魔法の射程範囲に捕まることはもう出来ない。
 囚われれば今度こそ、衛宮士郎という物体は原型を留めることなく圧壊してしまうだろう。

 潰される前に駆け抜ける。
 走った先に待ち伏せされる。
 士郎は息を切らせて加速して―――それを幾度となく繰り返す。

 それでもまだ、アルビレオ・イマの居る建造物にはほとんど近づけていなかった。
 そんな僅かな距離を走らされただけで、士郎は額から玉の様な汗を流して体力を消耗させられている。



 ……単純な話、重力場を発生させるあの球体をいくつも出せば、士郎など簡単に潰せるだろう。
 だがそれは士郎も望む所。
 大技を出そうとすれば必ず、技の“溜め”―――魔法の発動まで一瞬の空白が生じるハズだからだ。

 その間隙を突いて反撃に転じることは士郎には容易い。
 それが解っているからであろう、アルビレオは威力は小さくとも―――並みの魔法使いなら既に圧殺されているほどの重力だが―――出が早く隙のない攻撃を間髪入れずに撃ち込んでいるのだ。

 派手な火力はないが、堅実かつ確実。
 好機も隙も与えない、冷徹なほど容赦のない古強者ふるつわものの戦い方。

 これが歴戦の魔法使い。
 これが、先の大戦を勝ち抜いた猛者。
 これが――――世界を救った英雄、『紅き翼アラルブラ』の一翼か。

「……っ」

 己の師を見て解っていたつもりだが―――やはり“本物”は違う。
 呼吸すら容易ではないこの状況で、畏怖と畏敬に思わず息を呑むしかない。
 士郎は自然と、テラスに立つアルビレオに視線を飛ばした。



(――――あ。)



 千里眼が、遠く離れた光景を鮮明に映し出す。
 それを視界に収めた瞬間、士郎の頭でカチリと何かが切り替わった。


 ………笑っている。
 アルビレオ・イマは士郎を眺めて、薄く笑みを浮かべている。



(――――ああ、そうか)



 “アレは、師匠と同じだ”。
 それを実感したと同時―――衛宮士郎の雑念煩悩良心のたぐいすべてが瞬時に取り払われた。



 ―――強者は、その性質ゆえに弱者を理解できない。
 持っている価値観が違い過ぎるからだ。

 故に『千の呪文の男サウザンドマスター』―――ナギは他人の目から傍若無人と映り、
 『千の刃』のジャック・ラカンはデリカシーが無いと受け取られる。

 ならば、アルビレオ・イマは。
 人を食ったような性格が滲み出て、常に湛えた微笑が胡散臭く感じられ―――結果、他人を馬鹿にしているように映るのだ。


 衛宮士郎は、ジャック・ラカンの弟子である。
 無神経な師の発言に怒りを覚えたこと幾星霜の弟子にとって。
 アルビレオの余裕の笑みは“起爆剤”として十分すぎた。


(あの人の同類に、情け容赦をかける・・・・・・・・なんて馬鹿馬鹿しいにも程がある―――――!!)


“バキャンッ!!!”


「!!」

 初めて、アルビレオの微笑が消えた。
 侵入者を押し潰す筈だった自らの魔法、黒い重力球が砕け散る。

 彼の魔法は、彼のものではない別の重力球と衝突して相殺されたのだ。
 だがその魔法は、アルビレオの魔法と酷似した術式―――否。

 それはアルビレオ・イマの重力魔法そのもの。
 まるで光を受けて落ちた同一の影のよう。


“―――――『無銘の剣匠エグコスミア・シディロルゴース』”


 現象の正体は、士郎の独自呪文オリジナルスペル・『無銘の剣匠』。
 発動している相手の魔法構成を解析・理解し、術式を模倣して再現・相殺する即時複写迎撃呪文カウンターディスペル
 それがアルビレオに与えた少なくない驚愕が、彼に0,1秒にも満たない意識の空白を生じさせた。

 自身の魔法が自身の魔法で破られる。その現実こうけいに、さしものアルビレオも我が目を疑ったのだ。
 そして意識を切り替えた時、既に彼は士郎を見失っていた。


  我が骨子は捻じれ狂う。
「I am tha bone of my sword」



 ――――ゾクリと、アルビレオの全身が粟立つ。

 静謐な森林の大気が瞬く間もなく沸騰する。
 当然だ、それほどの熱。滾る魔力に世界が軋んで悲鳴を上げているかのよう。
 あまりに強大過ぎるそれ・・は、とうに臨界点を超えていた。

 その根源。力の出処は、学園地下大空洞に蓋をする天蓋近く。
 身体強化した脚で跳躍し、大空洞の上空に足場となる魔法陣を展開して宙に立つ、赤髪の男。
 アルビレオは嫌でも感じ取る。
 あの男が墨染めの洋弓に番えた銀の矢こそが―――この威圧の元凶だと。


「“カラド螺旋剣ボルグ”ッ!!」


反重力障壁アンチグラビティフィールド×5”


 数珠繋ぎで五つの重力球を直列に置くアルビレオ。
 それは飛来する流星とは真逆の方向へ重力を発生させた反重力壁。
 士郎の放った『偽・螺旋剣』はその力場の境界面に触れた瞬間――――空間ごと捻じ切って五重障壁を貫通した。

「……!」

 アルビレオが息を呑む。あと一瞬もしない時間ののち、銀光は彼の元へ到達する。
 彼の体は矢によって抉られながら跡形もなく捩じ切られ、その衝撃波によって周囲の物体は悉く破壊され尽くすだろう。

 だが、その前に。
 螺旋剣の射線上に、ごく自然な動作でアルビレオは右手を翳した。


「――――『小さく重く黒い洞スペーライオン・ミクロン・バリュ・メラン』」


Voウォ ―――――ガキュッ!!!”

 テニスボール大の黒い球体が唸りを上げて渦を巻く。
 偽・螺旋剣カラドボルグUがそれに着弾するまでの刹那―――その球体は、人ひとりを飲み込むほどのサイズに巨大化した。

 否、膨張。超圧縮された重力が解放される時、
 膨張しながら周囲の物体を空間ごと削り取り、最後は極大に達した重力場みずからの重さに飲み込まれて消滅する。

 『小さく重く黒い洞』。
 万物を無明の深遠へと誘う、暗黒の洞穴……!!


“―――ガキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ……!!”
“ガギギッガギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!”


 空間を捩じ切る剣矢は“矛”と、空間を削り取る重力場は“盾”と機能する。
 同性質を持つ盾と矛が、相反する力でせめぎ合う………!!


“…ガギュッ―――……ボッ―――!!”


 高まるエネルギーに重力球は内部で稲妻を走らせ、重力場を穿ち切らんとする銀光が同じく稲妻を発散し。
 目も眩む閃光を放ったのち――――二つは、道連れに消滅した。


「―――ふむ」

 唯一残された風に前髪を煽られながら、アルビレオは周囲を見て満足そうに頷いた。
 彼の住居、テラスの床、テーブル、椅子、紅茶のカップに至るまで、全て無傷。
 宝具と重力魔法は完全に相殺し、塵も残さず消えていた。

「お見事…と言っておきましょうか」

 アルビレオ・イマは賞賛する。
 背後から、己の首に刃を当てる青年を。

「そいつはどうも。だが、歓迎にしちゃ随分と過激じゃないか。
 無断で入って来た無礼は承知だが…それにしたってやり過ぎだろう」
「―――ですが、まだ甘い」


“―――トン。”


「こちらにもまだ手はあるのですよ?」

 アルビレオの左手が、首に刃を回す士郎の右手の甲に触れる。
 するとそこには、先ほど士郎の宝具を飲み込んだのと同じ球体が貼り付いていた。

 瞠目しながらも士郎は咄嗟に後退する。―――しかし無駄な抵抗だった。

 腕を引き抜いても黒い球体は剥がれない。士郎の右腕に追従してくる。
 このままでは右腕…どころか半身まるごと持っていかれる――――!

「駄目押しです」

 言うが早いか、士郎の周囲に大小無数の重力球が散乱した。

「――ッ」

 唇を噛んで息を呑む士郎を見て、アルビレオ・イマは微笑を浮かべる。
 そして彼がゆっくりと、目の前の青年に降伏を促そうとした時だった。


“ダンッッ!!!”


 ―――大地が揺れた。
 それは魔法使いの眼に映る、双剣使いの左脚が生んだ音と振動。
 『紅き翼』のアルビレオ・イマは今度こそ、存外の出来事に呆気に取られる。


(―――まさか。今、この状況で―――)


 その、左脚。
 衛宮士郎の踏み込みは、紛れもなく。


(瞬動の、“入り”――――!!)


 ―――衛宮士郎じしんの周囲に漂う重力球、その数二十七。

 ―――解析。重力により押し潰すモノではない。
 直前に見た、重力場によって触れた物体を削り取る類の魔法だ。

 ―――投影の射出、却下。到底間に合わない。
 代案。攻撃魔法の発動。想定――却下。魔法障壁で防がれる。
 代案。前進し斬撃を放つ。想定―――

 ―――周囲に漂う重力球との接触により左腕、断裂。
 同様の理由で右腹部、損傷。右脚、脛より先の喪失。
 他全身の損傷と出血多数―――。


 ―――アルビレオ・イマへの接近。間合いまで充分に侵入可能。

 既に投影している宝具『干将・莫耶』による魔法障壁を徹しての斬撃到達―――可能性、大。

 これらを実行した後の、自身の生存を確認した。


 それは『心眼』。
 修行・鍛錬により培った経験から活路を見出す戦闘論理。
 それが直感となり士郎の体を一瞬の思考で行動させる。

(その障壁カベごと―――叩き切らせて貰う!!)

 掴んだ大地と足の間に溜まった爆発寸前のエネルギー。
 それが音を立てて放出される時、彼は音を置き去りにして赤き流星と駆け抜ける――――!!


「―――少々、おふざけが過ぎましたか」

 突如、張り詰めていた空気が霧散した。

 戸惑う士郎を尻目に、アルビレオが両手を挙げて降参の意を示す。

「とんだ無礼をしたようで申し訳ありません。今度こそ、本当におしまいです」

 ……士郎は胡乱な眼でアルビレオを見た。
 しかし彼を包囲していた重力球は、術者の戦意を表すかのように既に姿を消している。
 士郎の視線に苦笑しながら、アルビレオは自然な所作で背を向けた。

「……どうぞ、そちらの椅子に腰掛けてお待ちになるといいでしょう。
 無論、そちらがよろしければの話ですが。お詫びに自慢のお茶を出しますよ」

「…!?待っ…」

 制止の声を意に介さず、アルビレオはテラスを引き返し建物の中へ姿を消した。

「…………。」

 困惑と、呆然。
 士郎はその場に立ち尽くしたまま、数秒後、どうしたものかと頭を悩ませた。


 ………あの、胡散臭い魔法使いを信用することは出来ないが。
 少なくとも、「これでおしまい」という先の言葉は嘘ではないと士郎は感じた。
 アルビレオの戦意が健在なら、今ごろ士郎じぶんの体はボロ雑巾のようになっていただろうから。

 とはいえ、あのまま続けていた場合。
 士郎はアルビレオに深手を負わせて捕らえたのちに、アーティファクトで自身と相手の傷を回復させる腹積もりだったが。


(………手加減されて、あの強さか)

 あれがアルビレオの本気とは到底思えない。
 「まだまだ自分は、師の域に達するのは難しいらしい」―――士郎は天を仰いで複雑な気持ちで息を吐いた。




 ・
 ・
 ・



 久方ぶりの客人に少しばかり気分を高揚させて、アルビレオは棚からカップを取り出す。
 茶の準備をしながら彼は、侵入者―――士郎の事を考えていた。

(……どうやら、容赦をしてくれたようですね)

 士郎が放った強烈な一射、『偽・螺旋剣カラドボルグU』。あれは、アルビレオを狙ってはいなかった・・・・・・・・・・・・・・・

(まさか私ではなく、私の家を吹き飛ばそうとするとは)

 彼の住居を狙った一撃に対し、アルビレオは右手を翳して防御した。それが先の攻防の真相だ。

 ギリギリで宝具を外す。
 発生する衝撃波や吹き飛んだ家屋の破片では、魔法障壁を越えてアルビレオを傷つける事は無い。
 先ず何より、優位と余裕を崩さないアルビレオのペースを強引にでも破壊する必要があると考えたのだ。
 士郎は可能な限り、アルビレオを負傷させる事なく戦いを終わらせたいと思っていたから。

(しかし、アレは中々……面白い人物ですね)

 彼にそう評される―――好まれるという時点で、衛宮士郎は間違いなく異常者と言えた。

 出来うる限り他者を傷つけたくない癖に、こうと決めたらそんな矜持は容易く捨てられる。
 衛宮士郎はそんな矛盾を裡に飼う人間なのだと、アルビレオはほぼ正確に把握していた。


 歪んでいるし、狂っている。
 アルビレオには衛宮士郎が、壊れた精神こころを継ぎ接ぎにして無理やり延命しているように見えた。


(最後の魔法は私なりのジョークだったのですが……フフフ。
 止めなければ躊躇いませんでしたね、アレは)

 士郎の行動は、アルビレオが降参してまで止めてしまったほどのものだ。

 ―――自身の身体を抉る死地に迷わず飛び込み、敵を打倒せんとした。
 そんな男が常人である筈がない。

(彼を除けば十年ぶりの客人が“アレ”ですか。フフフ、これは………何とも興味深い)

 好感以上に興味が湧く。
 ただの人間などつまらない。

 アルビレオは喜々として、盆に載せた紅茶と茶菓子を運んでテラスに歩を進めた。





 ◇◇◇◇◇◇




 学園都市の中心から離れた丘。
 そこに、木陰でネギを膝枕して介抱する明日菜の姿があった。

「…ご、ごめんネギ。いつもと違っておっきいから、つい手加減ナシで…」
「あ、あはは…」

(……いつも手加減してもらってたんだ…アレで)

 初対面で締め上げられたり、風呂に放り投げられたり、殴られたり蹴られたりと。
 それらに子供相手ゆえの容赦があったという驚愕の事実に、ネギは顔を青くしながら乾いた笑いを浮かべていた。

「……アスナさんは、どうしてタカミチのことを?」
「う゛っ?イキナリくるわねアンタ…」

 というか、こんな事くらいしか今は話題がない。
 あんなに好意を隠してない癖に気持ちを言い出せず、果てはこんな“予行演習”までする遠回りっぷりである。
 ネギはそれに巻き込まれたり付き合ったりしている当事者なのだ、気にならない筈がない。
 むしろ訊く権利があるとさえ言えるだろう。
 それにネギとしては、明日菜とタカミチの進展はずっと前から他人事ではないのだ。

「だって、僕が学園に来た初日に言ったじゃないですか。
 タカミチに勇気出して告白してみるって」
「…え、えーと……アレはー…その……勇気出すとは言ったけどー…」

(あ、ダメだこれ)

 目を泳がせながら頬を染めて両の人差し指をツンツン突き合わせる明日菜を見ていると、
 ネギは彼女の周囲が気掛かりに思う気持ちがかなり理解できてしまうのだった。


「………この髪飾りなんだけどね」

 唐突に話題が変わる。
 だがそれは、話を逸らそうとしたのではない。

「子供の頃、高畑先生がくれたの」

 いつも明日菜のツインテールを飾る、金の鈴がついた赤い髪紐。
 それは幼い頃から彼女の保護者代わりだったという、タカミチからの贈り物であるらしい。

「高畑先生からの……最初で最後のプレゼント。
 私…まだ子供だったし…。勘違いしちゃったのかなーって……」

 好きになってしまったのだから仕方ない―――そんな風に受け取れる、自分に呆れた自嘲の声。

 後ろ向きな言葉だが、ネギはそこに明日菜の悲哀を感じなかった。
 彼女はきっと、その気持ちを大事に抱えて、今も諦めていないのだろう。

「…さ、もう行こっかネギ。私お腹空いちゃった、どっかで何か食べよ」
「あ……ハ、ハイ」

 促されて起き上がるネギ。
 明日菜は立ち上がって足についた砂を手で払うと、そそくさと彼を置いて先に歩き出して行く。

 おそらく、今の話が照れくさかったのだろう。
 それを察して大人しく後をついて行くネギは、明日菜の背中を見て思う。

(……アスナさんとタカミチ、上手くいくといいけどなー)

 初めは誤解もあって、乱暴に扱われたり、暴力を受けたりしたけれど。
 ネギ・スプリングフィールドは、神楽坂明日菜という少女の魅力を人一倍理解しているつもりだった。





 ◇◇◇◇◇◇




 口をつけた紅茶のカップを静かに置くと、「ふむ」とアルビレオ・イマは頷いた。

「詠春の養子でラカンの弟子とはまた…君も随分と数奇な人生を送っていますね。
 とても興味深い。是非ともその人生を収集したいものです」

(……人生の、収集?)

 そんな疑問が浮かぶが、それよりも。


 テラス中央に存在する長方形のテーブルに、それを囲むソファと椅子。
 テーブルの上には紅茶のポットと二人分のカップ、そして洋菓子が並んでいる。

 ―――今の二人の状況は、まるでお茶会のようであった。
 つい先ほど死闘を演じた相手と茶を飲む、この状況の方がよほど疑問を覚える所である。
 …一応、士郎は対毒・解毒の魔法術式を脳内で待機させていた。

「フフ、解らないという顔をしていますね。無理もありませんが。
 私の趣味は、他人の人生を収集することなんですよ」

 ……確かに、聞いただけでは全く実態が見えない“趣味”であるが。
 「人生の収集」とは、一体――――?

「ならばお見せしましょうか。口で言うよりも実演した方がてっとり早い」

 おもむろにソファから立ち上がった彼は、既に懐から仮契約カードを取り出している。
 警戒する士郎を気にする素振りも見せず、アルビレオは呪文を口にした。

来たれアデアット

 言霊と同時、出現したのは無数の“本”。
 全く同じ表紙を持つ無数の白い本が、アルビレオを取り巻く二重螺旋を描いて浮遊する。
 アルビレオは目を細めてそれらを一瞥すると、その内の一冊を迷わず手に取った。

「………!?」

 士郎は、無数の白本を見て気づく。
 ―――ただの本ではない。全ての本に魔力が宿っている。
 その正体はアルビレオのアーティファクトの一部であり、『半生の書』と呼ばれるもの。

 アルビレオは自身が手にした書を無造作に開くと、そこに栞を挟んで再度本を閉じる。
 そしてその挟まれた栞を――――勢いよく引き抜いた。

“―――ボボボボボ……ッ!!”

 アルビレオの手にある栞が、導火線のように光と音を放ちながら短くなっていく。
 遂に栞が消滅すると――――辺り一帯を眩い閃光が包み込んだ。

「……っ!!」

 鋭い光に視界が眩む。
 腕で顔を覆い目を守るも、士郎はあまりの光量にアルビレオを見失った。

「くそ―――なん…」

 困惑を口にするより先に、眼前の光景に絶句した。

 アルビレオの姿が無い。
 代わりに、妙な既視感を覚える人間が士郎の前に立っていた。


 逆立つが如く後ろに撫で付けた黒い短髪。
 眼鏡の奥に隠れる、鋭くも穏やかな双眸。
 タートルネックの黒いセーターにズボンという出で立ち。
 そして、その人物が手に握るのは―――白木の柄に赤紐が結ばれた野太刀、“夕凪”。

 奇しくもそれはアルビレオと同じ。
 士郎が見た写真に写っていた、ある人物に相違無かった。

義父とう……さん……!?」

「―――フフフ、如何にも。
 より正しく言えば、今から二十年前の詠春…という事になりますね」

 近衛詠春の姿のまま、アルビレオはそう口にした。

「これが私の言った“人生の収集”。アーティファクト『イノチノシヘンハイ・ビュブロイ・ハイ・ビオグラフィカイ』の能力です」

 それは命の紙片/生命の詩篇。
 AF『イノチノシヘン』は二つの能力を持つという。

 一つは、『半生の書』に記録した“特定人物の身体能力と外見的特徴の再現”。
 アルビレオが若かりし詠春に変化しているのはこの能力によるものだ。
 そして二つ目は――――


「………まさしく、『人生の収集』だな」


 驚愕の能力に、士郎はやっとその台詞を絞り出した。

(しかし…義父さんのデコの広さは昔からだったのか。てっきりハゲてきてるのかと……)

 士郎が失礼な事を考えている間に、アルビレオは元の姿に戻っていた。

「フフフ…しかし士郎君。
 君はこんなものを見る為にわざわざ、危険を冒してこの場所に来た訳ではないでしょう?」

「………。」

「フフ、構いませんよ。
 先程の無礼もありますし話があるならお聞きしましょう。ただし―――」

「こっちが出すものは……俺の半生、って所か?」

「…ほう、話が早い。
 しかし人ひとりの『半生の書』を作るには儀式が必要でして、多少の準備と時間が入用なのです。
 先に君の用事を済ませてしまいましょう」

 ソファに腰を下ろしたアルビレオは、紅茶で口を湿らせるとカップをテーブルの上に戻す。

「それではお聞きしましょう。―――君は、私に何を訊きたいのですか?」

 薄く笑ったままのアルビレオ。
 士郎は、厳しい表情を崩さぬまま静かに口を開いた。





 ◇◇◇◇◇◇




 夕暮れに染まる世界樹前広場の高台で、明日菜は一人、陽が沈みゆく街並みを眺めていた。


「ア、アスナさんっ!!どうしたんですか、イキナリ走り出して…!!
 ……や、やっぱり…あの・・タカミチとしずな先生を見たから……?」

「それは………、…うん」

 ようやく追いついたネギが言った“ある出来事”が原因で、明日菜は酷く打ちのめされていた。


 タカミチとしずなが二人きりで食事をしていて。
 煙草を吸うことを咎められたタカミチが、気まずそうな顔をすると。
 しずなは慣れた様子で、彼の口から煙草を取って灰皿に移したのだ。
 ごく自然な、彼らにとっていつもどおりであるかのような、親しげなやり取りで―――。


「で、でも二人はただ食事をしてただけだし、アスナさんが想像してるようなことじゃ……」

「それは…そうなんだけど、あの雰囲気がさ……」

 柵に手を付いて俯いたまま、明日菜はぽつぽつと弱音を零した。

「……私バカだし…乱暴だし、友達も多くないし…。
 性格的にあんまり人に好かれるタイプじゃないし…、きっと高畑先生も」

「そ、そんな事ないですよ!!
 アスナさんはしっかりしてるし強いしキレイだし、ぼ、僕は………」



『このまま頑張れば、あんたもいつかはいい先生になれるかもね』

『頑張り過ぎて体壊しちゃ何にもなんないのよ〜?』

『私、心配なのよアンタのことが。無関係なんて言わないでちゃんと見てよ』

『………なに悩んでるのか知らないけどさ。今日は安心して眠りなさい』



「僕はアスナさんのこと、ずっと好きでしたよ」

「―――え?」


「それに、このかさんも刹那さんもカモ君もアスナさんのこと好きだし、
 いいんちょさんだってホントはアスナさんのこと大好きですよ!!
 だからタカミチだって絶対大丈夫です!!」


「………ぷっ」

「……へ?」

 先程まで、ずっと暗い表情を変えなかった明日菜が、口元と腹を手で抑えて体を震わせている。
 その様子を見て、ネギはポカンとした顔で呆然とした。

「ふふっ…くすくす……。
 ホント………あんたガキね。………バーカ………」

「ええっ!?なな、何でバカなんですか!?
 僕はアスナさんを励まそうとして……!」

「バカだからバカって言ったのよ」


(―――もう、とっくに励まされたってのにね)


「バーカ♪」
「むむ〜っ……!」

 顔を真っ赤にして口ごもるネギを楽しげに見下ろした後。
 明日菜は吹っ切れた顔で再び夕焼けの空を見た。

「……大丈夫。ダメでもちゃんと告白するわよ。
 ―――ありがとネギ。私やっぱ頑張ってみるよ。勇気出してさ」

「……ア、アスナさん…!」


「どうしたんアスナーっ!?急に走りだしてーー!?」
「アスナさんっ!!」
「姐さーん!!」

「うわっ!?」
「げ。みんなまでっ」

 ……結局、予行演習はそのままなし崩し的に終了した。
 ネギと明日菜は合流した木乃香達と横に並んで、四人と一匹は寮への帰路に就いたのだった。





 ◇◇◇◇◇◇




 ――ガチャッ…バタン。


「ただいま、キティ」
「うむ、よく帰った」

(………あれ、気づいてない)

 夕方を回る時刻に帰宅した士郎。
 いつもと違う彼の挨拶にエヴァンジェリンは気付かない。


『ああ、士郎君。帰ったらエヴァンジェリンを『キティ』と呼んでみてください。きっと喜びますよ』
『……あんた、それ絶対に嘘だろ』

 むしろ逆だ。命の危険が押し寄せる禁句的な香りがした。
 ……なのに好奇心に負けて、アルビレオの口車に乗ってしまった士郎も大概であったが。


(まあ、いいか)

 肩透かしを食らった気分だが、何も起きないに越した事はない。

(案外アルビレオさんの言ったとおり、エヴァも内心で歓喜してるのかもしれないし)

 冗談めかしてそんな風に思いながら、リビングの奥から顔を出した茶々丸に声をかける。

「ただいま茶々丸。今日の夕食はどうしようか」
「おかえりなさい士郎さん。そうですね…本日は」

「―――――士郎」
「ん?――うわあ」

 士郎の脚は、既に氷で床に接着されていた。
 動けないため顔だけ向ければ、封印されている筈の魔力を振り撒くエヴァンジェリンの姿が見える。
 彼女の足元には割れた試験管が二つ転がり、僅かに魔法薬が溢れていた。

「誰だッ!!誰からその呼び名を聞いた!?」
「あばばばばばばば」
「ああっマスター、それでは士郎さんが…」

 飛び上がったエヴァは両足を士郎の胴に回して固定し、襟元を掴んで彼の頭を激しく揺さぶる。
 茶々丸が制止に入った時には手遅れで、士郎は顔を真っ青にして泡を吹いていましたとさ。




 ・
 ・
 ・




 エヴァと士郎はリビングのテーブルを挟み、ソファで向かい合わせに座る。
 士郎の方は、脳震盪の余韻から来る若干の頭痛に顔を顰めて頭を押さえていた。

「……事情はわかった。しかし…よりによってあのアルビレオ・イマか。
 まさかこの学園の地下に潜っていたとはな……じじいも一枚噛んでいるか?」

「…どうだろうな」

 麻帆良学園の地下という場所に居を構えている以上、学園長である近右衛門が知っている可能性は確かにある。
 だが…あの人を食ったような胡散臭い魔法使いなら、こっそりと誰にもバレずに「フフフ…」とか笑いながら地下に潜り込んでも不思議ではない…とも、士郎は思っていた。

「…でも、あの飛竜のこともあるか」
「ん。竜だと?」
「ほら、前にネギが“ドラゴンを倒すには”って訊いてただろ」

 士郎は竜の一件と、その顛末をエヴァンジェリンに説明する。

「……本当にいたのか。この学園の地下に」

「しかもアルビレオさんの住処を守る門番としてな。
 守っているのがあの住処なのか、別の何かなのかは判らないが」

「………。」

 エヴァンジェリンは顎に手を添え無言で思索に耽る。
 士郎は彼女が口を開くのを待ち…数秒後、ぱっと顔を上げたエヴァは決心のついた様子で口にした。

「よし。じじいを締め上げるか。
 なに、口篭るようなら関節を幾つか外せばよかろう」
「なんでさ!?」

 どうしてそうなった。物騒にも程があるだろう、と士郎は制止した。

「というか、俺じゃダメだったけど、お前が直接訊きに行けばいいじゃないか。
 前に『紅き翼』メンバーのほとんどと面識があるって言ってたよな?」

「――――。」

 ………士郎は、露骨に嫌そうな顔をしたエヴァに半目で睨まれた。
 押し黙ると同時に、しかし納得する。

「…ああ、お前もアルビレオさんがニガテなのか。実は俺もかなり」

 苦手というか…どうにも信用ならない。あの胡散臭い笑顔は見ているだけで疲れるのだ。
 彼が眼を閉じて微笑む姿は、こちらの内心を見透かしているようで居心地が悪いったらないのである。
 そう思ってうんうん頷く士郎に対し、エヴァンジェリンは彼の言葉を真っ向から否定した。

「……馬鹿を言え。この私に苦手なものなどあるワケないだろう」
「葱。ニンニク」

 「うっ」と言葉に詰まるエヴァ。士郎が勝ち誇った笑みを浮かべる。
 カチンときたエヴァンジェリンはムキになって反論した。

「だ、大体、なぜ私があんなカビの生えた古本なんぞを避けねばならん!
 私はただ、あいつが心底気に入らないだけでだな――」
「あー、はいはい」

 「さー夕食の準備をしようか茶々丸ー」と呑気に言ってソファから立ち上がる士郎。
 エヴァンジェリンは「話を聞け」と怒りながら彼の腰にキックを入れた。
 そしてそんな主従のじゃれあいは、某メイドによって終始録画されていたのだった。







<おまけ>

士郎
「…ああ、お前もアルビレオさんがニガテなのか。実は俺もかなり」

 彼が眼を閉じて微笑む姿は、こちらの内心を見透かしているようで居心地が悪いったらない。
 ふと、士郎はそこで昔の出来事を思い出す。
 ……アルビレオと同じように、普段は薄目をしている人物との初対面が思い起こされた。


『ほう。こんな所に軽食屋があろうとは』

『いらっしゃい。…まあ、カフェとか喫茶店とか、そういう意味では軽食屋で間違いないな』

『左様か。見たところ麻帆良と同じ洋風の造り…そうでござるな、この店はプリンなど扱っているでござるかな?』


士郎
(同じように目を閉じてニコニコしてる楓とはまるで違うな…。あっちは見てて結構癒されるのに)

 そんな事を考えながらうんうんと頷く士郎に対し、
 エヴァンジェリンは彼の言葉を真っ向から否定したのだった。


 ―――ピキーン!


「……む?」
古菲
「どしたアル?楓」

 世界樹が見える丘で古菲と手合わせしていた楓は、突然何でもない方向に顔を向けて動きを止める。


「…いや、気の所為でござるな。
 予期しない出番が突然回ってきたかのよーな感覚がしたのでござるが」
古菲
「???」

 凄腕忍者・長瀬楓の気配感知は、メタの域に達していた。



<おまけA>

木乃香
「あ、超包子の席空いてるえー」
カモ
「少し早い気もするが、丁度イイな。ここで食ってこーぜ」
刹那
「カモさん、すっかりファンですね」
明日菜
「気持ちはわかるけどねー」
ネギ
「ハイ!四葉さんの料理は美味しいです!」

五月
“あ…皆さん、いらっしゃいませー…♪”
木乃香
「さっちゃーん!四人お願いなー♪」
刹那
(ペコリ)←軽く会釈
ネギ
「あれ?古老師や茶々丸さんは居ないんですか?」
五月
“くーさんはもう少し後から、茶々丸さんは十九時からのシフトですね。
 ………それはそうと、アスナさん”
明日菜
「ん、なに?」

五月
“昼間一緒に歩いていたカッコいい男の人って…アスナさんの彼氏さんですか?”

明日菜
「―――はぁぁあああああああああっ!!?
 ちっ、ちち違うから!!あれは…そう!ネギの従兄弟で…イギリスから遊びに来てて…!」

 ………後日。

亜子
「あんな、アスナにちょっと訊きたいコトあって…」
釘宮
「こないだアスナ、イケメンと一緒だったじゃん。アレ知り合い?」
明日菜
(もぉぉおおおおおおおっ!!!)

 この後、『ネギの従兄弟、ナギ・スプリングフィールド』という架空の人物を作る羽目になり。
 その連絡先まで聞かれた事で、ネギ達は急遽これらの辻褄合わせに奔走せざるを得なくなってしまったのだった。





〜補足・解説〜

あとがき:
 アルビレオの容姿についてですが……彼は普通に美形というか、そこら辺を上手く描写できなくて、匙を投げて言及せずに話を進行させたという裏話が(汗)
 あと、アルビレオに対する、士郎の隠しきれない不信感が伝わってくれれば幸いですw

士郎vsアルビレオの結果解説:
 士郎本人のスペックは最強クラスに届かないが、宝具は当然の如く通用する。
 というか士郎はどうしても宝具に頼りがちなため、魔法の効果的な運用という点では歴戦かつ熟練の魔法使いであるアルビレオにどうしても軍配があがりますよ、という話。
 そもそも、士郎は相手に情け容赦をかけてなかなか本気の本気にならないので、そこを突かれて痛手を受ける・重傷を負う・ピンチになる…の三重苦に陥り易い。そんな「血反吐を吐いてからが本番」と言われる男だがしかし、今回は腕を落とさずに済みました(京都のフェイト戦最終ラウンドは情け容赦ナシの本気モードだったため無血勝利)。
 ただし今の士郎にはその欠点をフォローできるAF『顔の無い英雄』があるので、あのまま続けていれば本気勝負でも引き分け、或いはアルビレオの負けだった可能性アリ。

>自分にはそんな相手もいないな、と考えて苦笑する。
 注意!コメント欄が荒れるので、ヒロインはこのモノローグにコメントできません!

>両手の短剣で草木を薙ぎ払いながら
莫耶「…私たち、今回は雑草取りまでさせられるのね」
干将「なんか扱い悪くないか?」
グラム「私なんて竜をガン見するだけのお仕事ですよ。甲斐が無いといったらありゃしませんよ…」
エクスカリバー「何ですかその言い草は!出番があるだけ有り難いと思いなさい!!」
カラドボルグ「ややっ!あなたは!!」
フルンディング「CCCでエクスカリバー・イマージュが登場した影響で、『剣製の凱歌』に登場する予定が完全に消滅した星の聖剣さんではありませんか!!」
エクスカリバー「(#^ω^)ビキビキ」
タルウィ「これが最強の幻想wテラワロスww」
ザルチェ「超ウケるんですけどーwwマジざまぁwww」
エクスカリバー「……エクス――――」
ヴァジュラ「な、なにーーっ!?担い手無しのセルフ真名開放だとーー!?」
デュランダル「さすが約束された勝利の剣!そこに痺れる憧れるゥ!!」
エクスカリバー「カリバーーーーーーーッッ!!!」
莫耶「私たち何もしてないのにーーっ!?」
干将「ただの巻き添えじゃないかぐわぁぁあああっ!!」
グラム「竜をガン見するだけの簡単なお仕事ですーーーーっ!!」

士郎
「―――っていう夢を見たんだ」
茶々丸
「士郎さん……あなた疲れてるんですよ……」

>両手の短剣で草木を薙ぎ払いながら
 こっちは真面目な補足です(オイ
 草木を掻き分けるのではなく、わざわざ干将莫耶で切り払いながら進んでいたのは、麻帆良地下の森エリアには危険な魔法植物が自生しているから。
 つまり士郎は、触手が伸びてきたら薙ぎ払うかたたっ斬り、何かデカイのとかヤバそうなのがお出ましになったら投擲→壊れた幻想をお見舞いして森を進んでいたのでした。

>インパクト・エンカウンター
 英語で「衝撃の出会い」の意。
 インパクト(impact)は、強い衝撃を与える、強い影響を与える…などの意味を持ち、
 エンカウンター(encounter)は人に出会う、危険に遭遇する…などの意味を持つ。

>学園街の上空を巡回する飛行船
 一学園の上空を、その学園(の団体?)が所有する飛行船が飛んで放送を行うというとんでもない光景。
 だが麻帆良ではよくあること。きっとまた千雨さんが頭を抱えているぜ。

>そこに映る、上目遣いで上気して顔を真っ赤にする少女
 明日菜は視力が良いので、まるで年頃の乙女のように顔を赤くする(実際年頃の乙女なんですけどw)自分を突きつけられて羞恥が一気にMAXに。
 そこで照れ隠しのために鉄拳を見舞ってしまう辺りが明日菜クオリティ!

>明日菜に殴られた額から「しゅうぅ」と煙を上げるネギ
 ………ま、摩擦熱?
 漫画的表現って、時々よく分かりません。
 例えばこれが委員長なら、彼女が登場すると背景に花が咲き誇るのは、「華がある」とも言い替えられる華やかで高貴なオーラを纏っていることを可視化した表現なんだろうと解釈できる訳ですが。
 しかし、理屈は知らないですが殴られた箇所というのは熱を持つので、それを考えると明日菜に殴られたネギの額は体表面の水分が湯気となって蒸発するほどの熱(=エネルギー、力)を持った拳の打撃を受けてしまったという衝撃の(以下略)明日菜さんマジぱねぇ。

>あまり身振りが大きいと尾行がバレます
 今回の刹那を見て、木乃香は「慣れたもんやなー、せっちゃんカッコイイー…♪」と、刹那に対する好感度を更に上げていた。
 ……貴女を守るために磨き上げたスキルなのよ……っ!

>「喧嘩するほど仲が良い」を地でいくこの二人
 原作・魔法世界編を終えた頃には、お互いへの理解が深すぎてこの二人が夫婦のように見えるのは私だけでしょうか?

>あんな細い柱で建物の荷重を支えきれるハズがない
 柱の太さと形状(アーチ)、対する住居の重量。その比率によってはあの柱で支えられる可能性がある気もしますが、普通はあんな危ない場所にあんな危険な建て方をしないハズなので、否定の方向で言い切っています。

>写真で見た事がある。
 詠春が持っている写真で見たものの、その時の士郎は魔法の存在を知らなかったため、その時点ではアルビレオの名前を知らなかった。
 のちにラカンの弟子となった頃に聞いた話によって、写真の顔と『紅き翼』メンバーの名前が一致したのであった。

>十年ぶりの来客を歓迎することも叶わないとは
 アルビレオ氏、まさかの見敵必殺サーチアンドデストロイ
 まあこの小説での彼は、真面目な(←これ重要)『封印の守り人』だからね。
 世界樹地下に封印されているものの危険度を考えれば侵入者に過剰に反応しても仕方ないね。
 あと「十年ぶり」というのは言葉の綾で、実際は一年に一度、彼の元を訪れる人物が存在します。

>あの門番を出し抜いてやって来た
 この時点で「一般人が何かの間違いで迷い込んだ」可能性は無いと判断しているため、士郎に容赦なしの速攻を当てたのでした。

>並みの魔法使いなら既に圧殺されているほどの重力
 ウチの士郎は魔法の精度そのものは平均の域を出ません。ただ、自分に出来ることを出来る限り必死にやってたら、アルビレオの攻撃から生き残れたというだけの話。
 士郎は魔術使い(Fate)として優れているとされるので、魔法(ネギま!)の効率的な運用能力は平均以上だと思います。アルやエヴァ、ネギには負けるでしょうけど。
 そしてその素質を極限まで鍛えられたのは、やはり師匠の存在が大きいでしょう。
「死ぬ!!上位精霊に喧嘩売れとか、絶対死ぬ!!」
「大丈夫だ、生き残れば死なねえ!!」
 こんなやり取りがあったに違いない(真顔)

Voウォ
 ノリというか演出のための擬音。本当はギリシャ語でやりたかった。
 原作でアルが『小さく重く黒い洞』を使った時の「ウォッ」という擬音が元ネタ。

>背後から彼の首に刃を当てる青年
 『小さく重く黒い洞』と『偽・螺旋剣』の攻防は数秒に及び、その間に士郎は(距離を保ったままの追撃を選択せず)アルビレオに接近した。
 しかしアルビレオの方も、魔法障壁や呪文の待機など迎撃準備を整えていたのだった。

>彼にそう評される―――好まれるという時点で〜異常者と言えた。
士郎「心底嫌なんだが」
ネギ「元気出してよシロウ」
エヴァ「ぼーや、言っておくがお前も同類だからな?(単行本を見ながら)」

>出来うる限り他者を傷つけたくない
アル「ですが、代わりに家を壊そうとするのはどうかと思いますよ?」
士郎「“紅き翼アンタら”にそんな容赦は要らないだろう」
アル「フフ、確かにそうかもしれませんね」
士郎「…何かおかしいか」
アル「いえ、“紅き翼われわれ”に対する君のその容赦のない認識は、ラカンの下で相当に苦労したのだろうと」
士郎「………ああ、本当にな」
??『ぶぇーっくし!!ズズ…なんだ、また誰かが俺様を褒め称えてやがるな』

>初対面で締め上げられたり、風呂に放り投げられたり…殴られたり蹴られたりと。
 改めて事例を並べてみたがこれは酷い(苦笑)
 これらの仕打ちを受ける原因を作ったネギにも非があるが、ここまでかと思ってしまう。
 外見が美少女でも、これじゃあ麻帆良男子に明日菜の人気が無いのも仕方なしですわ……。
 そんな明日菜の隣で親友をやれている木乃香と委員長の株が私の中で爆上がりした瞬間である。

>士郎は『イノチノシヘン』に己の半生を登録した。
 『イノチノシヘン』の性能は「その人の能力を完全再現する」こと。
 士郎に出来ることは全て再現できるハズなので、投影も固有結界も使い放題です。多分。
 クロスオーバーってこういう時に困りますよね……まあ、ネギま!世界の魔法はかなりデタラメな能力が多いので、この設定でイケると思っていますが。
 (固有結界はこの場合、術者本人のものではなく「衛宮士郎の心象風景を形にして展開する」という形で起動する(再現される)のではと思われる)。
 しかし現時点でウチの士郎は『無限の剣製』を使いこなせていないので、この時点の彼を記録した『半生の書』の使用では、必然的にアルビレオは固有結界を使いこなせないという事になる。

>神楽坂明日菜という少女の魅力を人一倍理解しているつもり
 作者はネギ×明日菜を応援しています。
 ネギ×千雨も大好きです。
 ネギ×のどかも良いと思います。
 ネギ×夕映もアリだと思います。
 ネギ×楓も悪くないと思います。
 ………もう責任取って仮契約者全員嫁にしちまえよ(暴論

>キティ
 エヴァのフルネームはエヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル。
 士郎はキティと呼ぶつもりは無かったが、好奇心に負けて結局言ってしまう。
 そしてそこまでがアルビレオの計算であった。

>「あぶぶぶぶぶ」
>「あばばばばばばば」
カモ「イヤー、お互い災難だったっスね」
士郎「だな…もう少しお淑やかにならないもんかな」
エヴァ「――ほう。そもそも悪いのはどちらだったか、すっかり忘れているようだな?」
明日菜「エヴァちゃん。もう一撃、逝っとく?」
カモ&士郎「「 」」

>彼の頭を激しく揺さぶる
 魔力で強化された腕で脳みそシェイク。お察し。
 脳震盪を起こすのも当然の威力である。

>本当にいたのか。この学園の地下に
○麻帆良の地下【まほら-の-ちか】
 …秘密の宝庫。類義語:臭いものに蓋をする。
 竜が放し飼いされていたり、鬼神が数体封印されていたり、閉じられているだけで実は今も繋がったままという異世界へのゲートが放置されていたり、現在も世界を滅ぼそうとしている神様が氷漬けで封印されていたりと、まるで火薬庫のような状態なんだぜ!
 よくこんな場所の真上で他所様の子供を預かって学校を運営しようなどと……。

>露骨に嫌そうな顔をしたエヴァに半目で睨まれた
 原作で進路に悩む刹那の相談を「アホ」「くだらん」と一蹴した時のあんな感じの顔です。

>怒りながら彼の腰にキックを入れた
 この時には既に魔法薬の魔力が切れていたエヴァの蹴り。お察し。
 子供のスキンシップ程度の威力である。

>おまけ
 楓さん、喫茶店アルトリア初来店時のエピソードが明らかに!
 麻帆良サークルの良心・さんぽ部らしく、散歩してたら偶然見つけたらしいよ。

>長瀬楓の気配感知は、メタの域に達していた
 原作完結後には、修行の末に生身で宇宙空間を活動できるようになるとかなんとか。
 長瀬楓の身体能力は、ネタの域に達していた。



 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 『第52話 麻帆良祭前日/波乱の予兆(仮)』

 それでは次回!

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