体の機能を全て願いのために捧げたマッハは、まだ意識を取り戻していなかった。
エスト「マッハさん……」
エストは悲しげにマッハの名前を呟いた。
彼にとって頼れる良き先輩だったからだ。
ドライブ「マッハ、本当無茶しやがって……」
ウィスパー「ドライブさんにとっても、マッハさんはかけがえの無い人ですからね〜。そりゃあ、ショックは受けるでしょ〜」
と、ウィスパーは呑気そうに言うが周りの空気はどんよりとしている。せっかくエストが強くなったのに、大切な仲間が重体になる。それは当然嬉しくないことだ。
白い魔法使い「お前たち、落ち込むのは早い」
メディカルームに白い魔法使いが入ってきた。
白い魔法使い「エターナルから聞きたいことがあるらしい。今すぐブリーティングルームへ行くように」
エスト「あ、あの!マッハさんは無事でしょうか!?」
白い魔法使い「……それは知らん」
ドライブ「やはりそうか……」
ジバニャン「とにかくエターナルのもとへ行くニャン」
エストたちは結局、マッハをどうすることも出来ないまま、ブリーティングルームへ向かった。
エターナル「よく来たわね」
仮面ライダーエターナル。ムゲン地獄では本来の魂が目覚めたが、エストのパワーアップで本来の魂を消滅させ、今では別の魂がその肉体を動かしており、もうすっかり彼女は元気になった。
ウィスパー「おぉ!エターナルさん、もう体調は元気になったようですね!」
エターナル「ええ、この通りよ」
ディケイド「それより、聞きたいことってなんだ?」
エターナル「ああ、それはね。超次元マイスターミライのことについて調べてるの」
エスト「超次元マイスターミライ……。って、僕と同じ種族の名前じゃん!」
エターナル「その通り。詳しいことは分からないけど、超次元マイスターという未知の種族の祖先とも言われてるわ」
彼女は体調を取り戻してすぐ超次元マイスターというキーワードに目が付いたようで、今はそのことを徹底的に調べている。
鎧武「超次元マイスター……。俺はムゲン地獄で初めて聞いたが、一体何だろう……」
ディケイド「つまり、超次元マイスターは謎に包まれた種族……ということだな?」
エターナル「ええ。でも、これからよ!エストたちも、頑張って魔法少年たちを止めてちょうだい」
エスト「はい!!」
その頃、魔法少年たちは……
フライング「……申し訳ございません」
「謝ることではありません。ですが、エストという超次元マイスターの少年が自分の本性に目覚めたようです……。しかし、彼は本当の力を出していません」
フライングの前に玉座に座っている
金色に輝く長い髪の美しい少年は超次元マイスターのことを知っているようだ。しかも、エストのことも知っている。
「サーヴァンプ・マギカ、彼は悪事を行ったようですが、そのことについては?」
フライング「はっ、本当に愚かな男でございます」
「そうですか。ならば、貴方もそんな彼のようにならないよう、働きなさい」
フライング「承知しました……サクリ様」
彼はすぐ部屋を出ると、憎しみのこもった表情で早く歩いた。
フライング(おのれ超次元マイスターエスト、我ら魔法少年を汚しおって!サーヴァンプは死んだだけでなく、仮面ライダーの二人も離脱するなどありえぬ……!もういい、ここで本当の地獄を見せてやる!!)
フライングの瞳の中は黒く酷く染まっていた……
エストたちは、またメディカルームへ戻り、マッハの様子を見ていた。
やはり、マッハの意識は戻らないままで、反応は無かった。
ドライブ「まだ目を覚ましていない……」
ディケイド「いや、もう意識を取り戻している」
エスト「え?」
ディケイド「意識は朦朧としているが、このまま様子を見ても時間の無駄だ。お前たち、魔法少年の討伐に行くぞ」
急にディケイドは魔法少年を倒そうと言った。しかし、エストは納得がいかないように言葉を投げつける。
エスト「あ、あんた!!どうして人のことはほっといていくんたよ!!」
ディケイド「だから、このまま時間の無駄だと……」
エスト「ふざけないでよ!!もう、あんたとは付き合ってられない。僕、魔法少年の討伐には行きませんから!!」
ディケイド「……好きにしろ」
ディケイドは冷たく呟き、そっぽを向いた。その態度を見て鎧武もエストに便乗する。
鎧武「おい、その言い方はないだろ!そんなのだったら、俺もエストの話に乗る!!」
ドライブ「俺も同じだ。もう付き合っていられない」
ディケイド「ああそうしておけ。俺だけで魔法少年を倒しにいってくる」
と言ってディケイドは、メディカルームを出た。
ディケイド「来たか、魔法少年」
「いかにも!拙者は第26の魔法少年、ルカリオ・マギカでござる!!」
ディケイドは、路地裏でルカリオ・マギカという黒髪に青いメッシュの魔法少年に出会った。
路地裏にいた人達はディケイドと魔法少年の戦いが気になり、熱い目で見ていた。辺りには熱い声援がぶわっと広がっている。
ディケイド(まさか、こいつらが見に来るとはな……。まあいい、早く片付けてやる)
すると、ディケイドはすぐにディスティニータクトを出すと、大きく魔法陣を描き、強力な必殺技を放つ。
その技にルカリオ・マギカはあっという間に浄化された。
ディケイド「まあ、こんなものか……。それにしても、一人だとなんか気が引き締まらない」
そう呟きながら、ディケイドは持っていたペンダントの蓋を取り、写真を見つめる。
ディケイド「想磨、父さんがすぐお前のところに駆け付けてやる……」
翌日……
エスト「むきーっ!もうディケイドのやつー!!」
今日もエストは不満そうな顔だった。なぜならあのディケイドの言葉が頭から離れられないからだ。
ウィスパー「まあほっときましょうよ〜。ほら、朝の一杯のお茶を飲んで下さい」
ジバニャン「そんなのいらないニャン!」
と、ジバニャンがウィスパーの手を払い、さらにウィスパーは熱いお茶が体にかかってしまった。
ウィスパー「あづーーーっ!!」
鎧武「余計なことするなよ、ジバニャン……」
ウィスパー「そうですよ!!せっかく淹れたお茶なのに!!」
ドライブ「待て、ディケイドがいないぞ」
そういえば、今日はディケイドの姿が見えない。やはりあの時、言い過ぎなかったほうが良かったのか。
エスト「やっぱり、あの時酷かったかな……」
エストも、あの時は言い過ぎだったと後悔した。
「皆さん、お客様が来ていますよ」
入り口からホワイトレジスタンスの隊員が来てお客様が来ていると伝えた。
鎧武「ん?なんだ?」
「どうぞ……」
すると、一人の仮面ライダーが居間に入ってきた。赤い複眼に緑の鎧、そして古いデザインのベルトをつけた勇ましそうな仮面ライダーだった。
ウィスパー「あーっ!あなたは……」
その男にウィスパーは指をさす。もはや彼は有名とも言えるかもしれない。
「ホワイトレジスタンスの諸君、だな?」
エスト「はい、そうですけど……。貴方、誰ですか?」
誰もがその言葉を聞いた瞬間……
「「ずごーーーーーーっ!!!」」
エストとその男以外全員ずっこけた。
ウィスパー「こらーーっ!あんたそんなことも知らないのですか!?この方は仮面ライダー1号!!元祖仮面ライダーです!!」
エスト「えぇっ!?だったら最初から言ってよ!!」
鎧武「それに、この人はさくらシティの町長なんだぞ!?」
ドライブ「やれやれ……」
1号「ま、まあまあ落ち着きたまえ……。改めて、俺は仮面ライダー1号。元祖仮面ライダーだ」
ウィスパー「1号様は、ショッカーによりバッタの改造人間とされましたが正義の心を持つお方。しかも!長年の時を得てよりパワーアップしました!!」
1号「いや、照れるよウィスパー。それより鎧武殿、貴方がご無事で良かったです」
と言って1号は鎧武に握手を交わす。
ドライブ「法王に対しては丁寧なんだな」
ウィスパー「そりゃ法王様ですからね」
1号「さておき……。俺は君たちに重要な話をするためにここへ来た」
エスト「その重要なお話って?」
1号「それは、ディケイドの過去のことだ」
ジバニャン「ニャニャ!?1号さんってディケイドのことを知ってるのかニャン!?」
ディケイドは誕生日と血液型以外、その過去のことが一切不明である。しかし、1号だけはそれを知っていたという。
1号「では、よく聞いてくれ。長いことだが……」
約10年前、ディケイドは幻想の地に現れた。その目的は旅だったが、その途中、ある少女と出会う。それは、赤いリボンをつけた巫女の少女だった。その時ディケイドは何か感じたのだ。少女は飄々としていたが、野宿は危ないからという理由でディケイドを自分の拠点に泊めてあげた。だがディケイドは何故あの少女と一緒にいるとどこか来る何かが無意識に来るのか。ディケイドは気になって眠れなかった。その時、事件が起きた。怪物や怪獣たちが暴れ、次々と人を喰らっていった。ディケイドもなんとか倒そうとしたが、あまりにも多く、体力の限界だった。その時、あの少女がスペルカードというものを駆使し、戦いに参加した。この時彼女は
『こういう時こそ、お互い様でしょ?』
と言った。ディケイドは彼女と力を合わせて戦い、見事怪物たちを倒した。だが気づいた時、目に映っていたのは綺麗な風景ではなく、戦後の跡地のように塵と化した植物と、無惨な姿になった住民の姿だった。少女は深く悲しんだ。この姿を見てディケイドは自分も悲しく思ってきた。その時、空間のスキマから妖怪の女性が現れ、貴方たちならやることがある……と言った。ディケイドはこれ以上少女を絶望させないと、永遠の愛を誓った。彼女もディケイドといるならそれで良いと認め、やがて二人は結婚した。二人は別の世界、いわば星空都市に避難し、幸せに暮らし続けた。そしてついに、二人の間に子供授かった。とても可愛い男の子で、これで順分満帆な生活が続く……だが、そうはいかなかった。かつて巫女だった女性は風魔病という難病にかかり、入院していたその時、無念にも謎の原因で命を落としてしまった。ディケイドは深く悲しみ、そして息子の育児の辛さにより、次第にストレスが溜まっていった。しかし、奇跡は突然と起きた。死んだはずの妻が夢の中に出てきたのだ。妻は、こう言った。
『この世界は滅んでしまうわ。だから、貴方が運命を定め、世界を救いなさい』
その時渡された力、それこそ運命の力だった。彼は運命の力を妻から授かり、また戦いを再開した。妻に勇気と力をもらったことにより、ディケイドは育児にも励んだ。しかし、何年か経つにより、何かの違和感を感じる。それは、息子の成長がいつもより早いことだ。普通の人間はこのスピードで成長するはずがない。しかも、息子からとてつもないオーラを感じるようになった。このまま放置するわけにはいかない……と、そこでディケイドは、1号率いるライダー7人に息のを面倒を見て欲しいと息子を7人のライダーたちに託し、また旅を始めたのだった……
1号「これが、ディケイドの過去だ」
ウィスパー「おお、随分と波瀾万丈ですね……」
鎧武「てか、そんなことよりも……」
長い話だったのか、エストはあまりの長さに眠ってしまった。
ドライブ「エスト、寝ているし……」
ジバニャン「ほら、起きるニャン」
エスト「ん……なんですか?」
鎧武「ああ、ディケイドってのはな……」
鎧武はエストにディケイドのことを詳しく説明した。
エスト「えぇーっ!!ディケイドってそういう人なんですか!?」
ドライブ「さすがに子持ちは驚くよな」
ウィスパー「つまり、ディケイドは巫女と出会い、その巫女から運命の力を授かった……ということですね?」
1号「ああ、正解に近い。だから頼む、ディケイドと共に世界を救ってくれ」
エスト「はい!」
これで納得したエストたち。すると、そこへディケイドが現れた。
ディケイド「遅れてすまんな」
ジバニャン「あ、ディケイドだニャン」
エスト「ねえねえ!ディケイドさん!」
エストはディケイドに近づき、彼の過去のことを活かして口を開いた。
エスト「ディケイドさんって、子供いたんですよね?いや〜びっくりしましたよ〜!」
ディケイド「……それでなんだ」
エスト「その子供さん、元気ですか!?」
だがその時、ディケイドから衝撃的なことを口に出す。
ディケイド「子供?残念だが、もうここにはいない」
「「「えええぇぇーーーーーーー!!!!?」」」
その言葉に誰もが驚いた。果たして、ディケイドに一体何があったのか!?