フライング・マギカを倒し、ついに魔法少年たちのボスの元へ辿りついたエストたち。果たして、世界の危機は救えるのだろうか!?
エスト「そこまでだ!ラスボス〜!!」
ウィスパー「よくも鎧武様に酷いことをしましたね!!この私が許しません!!」
ベルト「それだけじゃない、ドライブも酷い目に会ったのだぞ!?君はそんなことをして良いのか!?」
王座の間には、長い金髪の人物がうつむいていた。彼らがいくら罵ろうが全く反応していない。
ディケイド「お前、俺の息子はどこへやった!!答えろ!!」
「御主人殿はここにいません」
すると、金髪の人物が静かに口を開いた。そして顔を上げる。端正で中性的な容姿で、何故か見た目だけで神々しい雰囲気が溢れる。
鎧武「御主人殿……!?どういうことだ!!」
「我々の御主人殿は、神の境界の狭間にいます。ですが、貴方たちに会うことは出来ません。何故なら……貴方たちヒーローが御主人殿に会ったら、災いが起きるからです」
ドライブ「まさか、御主人殿って……」
「そう、俺の言う御主人殿は、仮面ライダーと巫女の血を継いだ者……。そして、その仮面ライダーはディケイド。貴方です」
ディケイド「そんな、想磨……」
ディケイドはサクリの言葉にショックを受け、がっくりとした。その緑の複眼には、大粒の涙が零れていた。
エスト「ちょっと、あんた酷いよ!!ディケイドにそんなこと言うなんて!!」
「超次元マイスター、エスト……」
エスト「え!?なんで僕のことを……」
「大アルカナの星の力を使う英雄……とも言えるでしょう。しかし、俺には敵わない。それも当然、俺も超次元マイスターですから……」
エスト「ま、まさか……貴方は……」
その時エストはあることを思い出した。それは自分が幼い頃、勇気と希望をくれた神様に出会ったことだ。まさか、こんな再開になるとは、予想外だっただろう。
エスト「サ、サクリ・ハクレイ様……」
サクリ「……よく覚えていましたね。超次元マイスターエスト」
ウィスパー「ちょっと!!あんた何者ですか!!」
サクリ「改めて、俺はサクリ・ハクレイ。別名サクリフィス・マギカ。第0の魔法少年です。そして、俺を作った御主人殿こそ、ディケイドと紅白の巫女の子……
博麗想磨」
ディケイド「想磨……嘘だ。想磨はそういう奴じゃない!!確かに想磨は魔法少年の絵を書き、それを自分の友達だと思っていた。だが、想磨が……想磨が、そんなことをする子に育てたつもりなんて……ないからな!!」
サクリ「貴方はそう育ててはいませんが、御主人殿は父親に捨てられた傷は未だに癒えてません。つまり、自分の子を捨てた貴方が悪い」
ディケイド「……!!」
ジバニャン「その言い方はないニャン!!ディケイドは何にも……」
ディケイド「良いんだ……ジバニャン。俺が、俺がもっと想磨の側にいたら……こんなことはなかった。サクリの言う通り、俺が全て悪かった……」
涙声で自分は悪かったとディケイドは口に出した。すると、サクリはディケイドに近づいてきた。
サクリ「仮面ライダーディケイド。貴方は親子関係すら破壊する、最悪の破壊者だ。そんな貴方に、生きる資格も、子供に会う資格も、ヒーローと名乗る資格も、無い」
サクリはハサミのような白い剣を手に取り、ディケイドを殺そうとした。
ディケイド「想磨……すまない。お父さんが、お父さんが全て悪かった。だから、こんな哀れなお父さんを、許して……くれ」
一本、ホワイトレジスタンスでは……
コマさん「マッハさん、かわいそうズラ……」
コマじろう「白い魔法使いさん、どういうことズラ?」
マッハを心配だと思ったコマさん兄弟が急遽ホワイトレジスタンス本部へ来た。
白い魔法使い「心配してすまなかった。彼は姉を復活するために全てを捧げたのだ」
コマさん「もんげぇ!?」
コマじろう「でも、そのお姉さんはどこズラ?」
「ここです」
コマさんたちが後ろを振り向くと、ピンク色の魂がふわふわと浮かんでいた。
白い魔法使い「まさか、君は……」
「私は……マッハの弟、霧子です」
コマさん「もんげーーー!?あの魂さん、お姉さんズラか!?」
白い魔法使い「本当に申し訳なかった。マッハが、全ての機能を捧げ、こんな形に……」
霧子「そうだったんですね……。でも、私は剛が元気に生きて欲しかっただけなのに……」
コマさん「コマじろう、剛って誰ズラ?」
コマじろう「マッハは元々、剛っていうカメラマンだったズラ。それが生まれ変わってマッハになったんだズラ」
霧子「ああ、剛……。私の弟……。あなたは私を生き返らせるために自分の全てを犠牲にしたのね。
でも、もういいの。あなたが無事で元気にいれば、私はそれでいいから……」
一方で、ディケイドはどうなったのか。
エスト「ぐ……」
サクリ「ほう、そう思いましたよ」
エストはギリギリでサクリの攻撃を防いだ。
ウィスパー「エ、エストくん?大丈夫ですか?」
ディケイド「ど、どうして……守る!?」
エスト「だって、あんたは僕にとって大切な仲間だから!僕、最初から信じてなかったけど……でも、あんたに出会えて嬉しかったと思う!」
ディケイド「エスト……」
サクリ「残念です……貴方なら彼を殺してくれるはずなのに……」
鎧武「確かに、ディケイドは子供を置き去りにした。けど、俺たちのことを心から信頼している!!」
ドライブ「それに、子供のこともちゃんと大切にしてるからな!!」
サクリ「ほう、貴方たちもディケイドを味方にするのですね。ならば、御主人殿のところへ送ってさしあげましょう。
我がこの手で!!」
すると、サクリはハサミのような剣をもう一つ出した。
ベルト「二刀流か……!!」
サクリ「貴方たちは確かに下等な生き物ではありません。ですが、誤りをさせたくはないのです。
もし、貴方たちが己の意思を伝えたいのなら……俺に全てを示せ!!」
エスト「ああ、やってやりますよ!!こんな腐ってて汚れた世界なんて、嫌だもの!!」
ディケイド「俺は、ただ想磨を普通の元気な子供に育ってほしかった……。だが、お前にはそれがわからないなんて……!!サクリ、お前の汚い秩序は、俺が破壊してやるっ!!!」
ウィスパー「おぉ!やる気になったようですね!!」
エストたちは武器を手に取り、サクリと戦うことを決めた。
サクリ「覚悟なさい、光式『シャイニング・レヴァリエ』!!」
ディケイド「なんのこれしき!!」
ディケイドは運命の力でサクリの攻撃を弾き飛ばした。
サクリ「なるほど、破壊者だけであってこれ程の力があるとは。ですが、それもここまでです」
すると、サクリは目にも止まらぬスピードで剣を光の速さで振り、エストたちを沢山切りつけた。
エスト「うわあぁぁぁっ!!」
ウィスパー「皆さん!!」
鎧武「大丈夫だ、まだ立てる!!」
エストたちはなんとか体勢を整えたものの、サクリの猛攻は止まらない。
これが最強にして始まりの魔法少年の力だろうか。
ドライブ「ぐはぁぁっ!!お前……何者だよ!!」
サクリ「俺は始まりの魔法少年にして頂点に立つ魔法少年。貴方たち仮面ライダーより遥かに越える存在なのです」
鎧武「だからなんだ!!」
サクリ「下等な生き物は弱いが、傷つけてはなりません。しかし貴方たちは、そんな俺の可愛い魔法少年たちを圧倒し、殺した。それは許されると思いますか?」
ジバニャン「確かに、許されることじゃないニャン……」
エスト「でも、彼らは平和な街を傷つけた!!それが、鎧武さんにドライブさんに、マッハさんまで!!」
ドライブ「あと、エターナルもな!!」
サクリ「我々は傷つけるつもりなどありません。それが、どうして平和を脅かす存在だと思うのです?」
ディケイド「それは……くっ、何も言葉が浮かばない……!!」
ディケイドは何を言い返せばいいのか分からず、言葉が詰まってしまった。
サクリ「ディケイド……貴方は愚かで最低な人で正解でしたね。ならばここで、死になさい」
サクリは剣をハサミのように動かし、ディケイドの首を切ろうとした。
その時!
エスト「ディケイドさんに触るな!!」
サクリ「……何!?」
エストはすぐエンジェルフォルムに変わり、サクリの攻撃を防いだ。
エスト「ディケイドさんは、確かに子供を置いていって旅を続けた最低な人だ……!!でも、ディケイドさんは何よりも子供のことを心の奥から大切にしていた!!
あんたにも、分かるはずだ!!ディケイドさんは強くてクールなだけじゃなく、優しいところもあるっていうことを!!」
サクリ「黙れ……!!貴様に何が分かるのだ!!」
エスト「分かるよ!!ディケイドさんだって悲しい時は悲しいし、嬉しい時は嬉しい!!子供が出来たら大切に育てたい……そうでしょ、ディケイドさん!?」
と、エストはディケイドの方を振り向く。
ディケイド「エスト……」
エスト「サクリ、あんたは何も分かっていない!!この僕が、本当の優しさを、平和を、秩序を教えてやる!!
スーパーノヴァ・ブレイク!!!」
エストの強烈な閃光の刃がサクリの腹に突き刺さる。
サクリ「ぐはあぁぁっ!?」
サクリはその一撃に思わず吹き飛ばされた。
ウィスパー「どうですか!?これがエスト君の力でうぃす!!」
エスト「僕たちは平和を愛し、この世界が大好きなんだ……。だから、あんたには絶対負けない!!」
ディケイド「そうだな、エストの言う通りだ。俺だって、魔法少年に支配されるのはごめんだぜ。
サクリ・ハクレイ!お前だけは絶対に許さない!!」
その時、エストたちに新たなグリモアチップ、『ウルトラワールド』の力が授かられた。エストたちはそれぞれステッキにセットすると、ステッキはオーラを纏った神々しい剣へと変わった。
エスト「響け!奇跡のアルカナ!!」
「「「レインボーセイバー!!!」」」
4人がその剣を高く天に上げると、巨大な虹色の剣が現れた。そして、4人同時に必殺技の名前を叫ぶ。
「「「世界の幸福よ、永遠に、今ひとつになれ!!アンリミテッドレインボー・ザ・ワールド!!!」」」
虹色の剣が振り下ろされると、サクリの力を圧倒するほどの威力が放たれた。さすがにサクリも耐えきれず、その一撃を喰らってしまった。
サクリ「これが、本当の……せい、ぎ……!?ぐああああぁぁぁぁぁ!!!」
圧倒的な4人の力により、満身創意になったサクリ。
サクリ「おのれ……ヒーローごときが……」
ディケイド「貴方は、ただ悪を滅ぼしたかった。それが、子を置いた俺を含めてな。だが俺は、想磨を何よりも愛していた。それだけだ」
サクリ「ディケイド……」
サクリはゆっくりと立ち上がり、体勢を整えると、悲しげに口を開いた。
サクリ「俺こそ、本当に愚かだったかもしれませんね……。幼き子供を捨てたディケイドが、ただ許さなかっただけ……それなのに、ディケイドは心から子供を愛していたことに気づきませんでした。
ふふ……やはり世界はヒーローに任せておくべきだったのでしょうか……」
「それは違います!皇帝陛下様!!」
すると、オブリージュ・マギカと他の魔法少年たちが彼らの前に現れた。みんな、悲しそうな表情をしていた。
サクリ「皆様……」
オブリージュ「この世界をヒーローだけ任せ、我々は何もしないのですか!?我々は何のためにここへ来たのですか!?」
サクリ「それは、御主人殿の命令です。それだけ……」
ファントム「我ら魔法少年は、協力したかった。そうですよね!?」
サクリ「……ええ。ですが、御主人殿の前では言えませんでした」
ジバニャン「ニャニャ!?協力したかったのかニャン!?」
ウィスパー「それ最初から言って下さいよ!!」
ドライブ「そうだぞ。それ最初から言えば俺らだって協力するのにね」
サクリ「!!我々を許して下さるのですか?」
エスト「もちろんだよ!御主人殿の命令通りにしなくても、自分たちの思うがままにやればいいさ!」
サクリ「エスト……。我々も最初からそうしていればこんなことは無かった。でも、遅くない。
いいでしょう、我々魔法少年は全種族と協力することを誓います。特にエスト、貴方がいなければディケイドも、御主人も……」
ディケイド「深く悲しむ、だろ?俺の息子が俺を制裁するって聞いたら、そりゃ悲しむものだからな」
サクリ「ディケイド、そう言うのなら……御主人殿に会った時、もう一度話してみます」
エスト「うん、これで一見落着だね!!」
こうして、魔法少年たちとの戦いも終わり、更に魔法少年たちは他の種族との交流も始まった。
エストたちは、また平和を取り戻した………
はずだった。
フライング「ククク……御主人様、哀れな魔法少年の王が奴等に負けましたよ……」
翌日……
エスト「皆さんおっはよーございまーす!!」
今日は休日。エストは元気よくみんなに挨拶をした。その中にはかつて魔法少年だった妖怪も含まれていた。今はエストの力で元通りになり、元気に過ごしている。
ディケイド「相変わらず元気だけはいいんだな」
ウィスパー「いや〜。平和でなりよりでうぃす〜♪」
ジバニャン「でも、鎧武様は法王だからまた心配になってきたニャン」
鎧武は魔法少年との戦いが終わった後、再び法王としてこれから忙しくなるようだ。
ちなみにウィスパーとジバニャンは迷惑にならないよう、エストに預かってもらうことになった。
エスト「でも、こうやって平和が続くといいね」
ドライブ「バスターズの仕事も減ったし、エンジンが切れそうだよ」
ウィスパー「でもまさか……ひも爺やうんちく魔が魔法少年になってしまうとは、恐ろしいですよね。本当に」
ディケイド「これから暇になるな。想磨、元気にしてるか心配だ……」
エスト「でも、これからですよ!みんなでこれから楽しくやろう!!」
エストたちの楽しい平和は、これからも長く続く………
と、誰もが思っていた……。