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超次元大戦 第十五話:魂を賭けた戦い
作者:亀鳥虎龍   2015/02/23(月) 21:51公開   ID:Iagjyn7tR9w
 日向ヒナタは現在、とあるカフェに来ていた。

デスハートの情報を少しでも得る為である。

「どうだったかい?」

「いいえ、全く」

「すみません、こちらもです」

「生憎、上条さんもです」

他の3人も合流するが、進展はなかった。

デスハートを探すならと、一緒にいるかもしれないDIOを探す事にしたのだ。

神裂達の証言を元にメモに記されたDIOの特徴。

しかし、どれもDIOの特徴に当てはまるものは無かった。

引き上げようとした4人であったが、その時であった。

「その人物なら知ってますよ」

「「「「!?」」」」







―第十五話:魂を賭けた戦いゲーム








 テーブルで一人、トランプを嗜んでいるスーツ姿の男。

「間違いない、一度会ったぞ」

そう言って彼は、不敵に笑った。

「ほ、本当ですか!? この男は、今どこに!?」

歩み寄った神裂であったが、彼女に対して男は答えた。

「タダで教えるとでも?」

「うっ……い、いくら欲しいんですか?」

「金は要りません。 その代わり、私と賭けをして貰いたいのですが」

「賭け……だと?」

「えぇ、ちょっとした賭けですよ」

そう言って男は、一匹の猫がいる方へとベーコンを放り投げた。

「ルールは簡単です。 あそこの猫に私が肉を投げます。 右か左のどちらかに猫が食べたほうの勝ちというゲームです。 貴方がたが勝ったら情報を無料で提供しましょう。 但し私が勝った場合は、それ相応の対価を払って貰います」

それを聞いたステイルは、吸い終えた煙草を携帯灰皿に入れる。

「成程ね。 なら、僕は右の肉に賭けるよ」

「おい、ステイル!」

「フフッ、楽しくなってきた。 では私は左の肉ですね」

すると先程の猫が肉に気が付き、走り出したのだ。

「(僕があの猫なら、絶対に大きい肉を狙うね! 右の肉の方が大きく見える)」

ステイルは心の中で勝利を確信していたが、彼の予想は大きく外れてしまう。

猫は最初は右の肉へと向かったが、直後に左の肉を咥えた後に右の肉を咥えたのだ。

「何!?」

「猫は左から右の肉を食べた……つまり賭けは私の勝ちだ」

「クソッ!」

予想外の敗北にステイルは奥歯を噛み締めるが、男は不敵な笑みを見せながらこう言った。

「さて、約束通り払って貰いましょうか」

「払うって何だ? まさか金か!?」

「『魂』ですよ。 賭けに負けたモノの魂をチップとして奪い取る。 それが私のスタンドの能力」

「「「「!?」」」」

その瞬間、人柄の虚像がステイルの体から魂を引き抜き、

「ステイル!」

一枚のチップへと変えた。

「しっかりしろステイル―――」

倒れた彼を介抱する当麻であったが、

「―――死んでる!?」

彼の脈が全く無かった。

そんな彼らに男は、自らの名を名乗った。

「自己紹介が遅れました。 私の名はダービー……ダニエル・J・ダービー。 因みにコイツは私の猫だ」

膝の上に先程の猫を乗せながら。






「テメェぇぇぇぇぇぇ!!!」

イカサマであると知った当麻は、怒りに任せてダービーの胸倉を掴む。

「ほう、そのまま私を殺すのですか? どうぞおやんなさい、私を殺したところであの男の魂はあの世へ行くだけだ」

当麻「ふざけんな! イカサマの癖に!!」

「イカサマ? 私はね、賭けというのは人間関係と同じだと思っている。 イカサマを見抜けなかったのは、見抜けない人間の敗北、泣いた人間の敗北。 つまり、バレなかればイカサマじゃあないんだ」

「ぐぅ……」

胸倉を放した当麻は、反論できずに拳を強く握り絞めていた。

「さて、お次は誰がいくのですか? 勿論考えながらでも良いですよ。 チョコレートはどうですか、美味しいですよ?」

軽い挑発を見せるダービーであったが、神裂は席に座ってグラスに酒を注ぎこんだ。

「表面張力と言うモノを知っていますか?」

「勿論、グラスの中の液体が溢れそうで溢れない現象の事……それが何か?」

「ルールは簡単です。 このコインを一人一回ずつグラスの中に入れ、先に酒を溢れさせた方が負け――というものです」

ルールを説明した後、神裂は数枚のコインをテーブルに置いた。

「まさか神裂!?」

何かを予感した当麻であったが、その予感は的中した。

「賭けましょう、私の魂を!」

「グッド」

自らの魂を賭けると宣言した神裂に、ダービーがサムズアップでOKサインをする。

「何を考えているだ神裂! 相手は詐欺師だぞ!」

「ご安心を。 ルールはさっき私が考えました。 ですので、イカサマをさせる余裕は与えません」

「でも……」

「日向ヒナタ。 すみませんが、あの男が何かしてこないかを見張っててください」

「……は、はい」

「良いでしょう、でもグラスを調べても構わないかな?」

「勿論、アナタにもそれぐらいの権限はある」

ダービーがグラスを調べた後、すぐにゲームが開始された。

「では、ゲームスタート」







 表面張力を利用したコインゲーム。

先攻はダービーからである。

「ところで、コインは何枚入れても構わないかな?」

「構いません、一度であればな」

「では、お言葉に甘えて……」

そう言ってダービーは、指で5枚のコインを摘まんでいた。

「5枚だと!?」

「静かに、テーブルに手を触れないで」

ダービーがコインをグラスの中に入れると、安心したように背もたれに背中を傾ける。

「ふう、如何かな?」

「くっ、大した精神力ですね。 では私は3枚でいきましょう」

そう言って彼女は、グラスにコインを3枚入れた。

酒は零れず、神裂はフゥと息を吐く。

彼女がコインを3枚入れた事で、グラスの酒は今にも溢れそうな状況であった。

「くっ!」

「さあ、次はアナタの番ですよ」

冷静沈着の彼女を前に、ダービーは怪訝な顔で板チョコを口に運んでいた。

余程なまでに動揺しているようだ。

「ここは日当たりが悪い。 別の角度から入れさせて貰う!」

「どうぞ、お好きに」

この光景に当麻は、神裂の勝ちは決まったと悟った。

「(世界に20人しかいない聖人で、並外れた幸運体質の神裂に賭けで勝とうなんざ、このおっさんも運がねぇな)」

ダービーが一枚のコインをグラスに入れたが、まさにその瞬間だった。

グラスの酒が、一滴も零れる事がなかった。

「「え!?」」

「そ、そんなバカな!?」

「何を驚いているのですか? さあ、次は貴方の番ですよ?」

ヒナタは白眼でダービーの行動を視ていた。

しかし、彼の行動から妙な動作は無かった。

「(そんな!? 白眼の洞察力でも分からないなんて!?)」

神裂がコインを3枚入れたのにも関わらず、ダービーは酒を溢れさせずにコインを入れた。

文字通り“神業”と言ってもおかしくない。

「フフフ……どうしたのかな、Miss.神裂。 それとも、グラスの酒が蒸発するまで待ちますか?」

余裕を取り戻したダービーとは対照的に、神裂は動揺を隠せなかった。

「あ……あああ………」

動揺の所為か、コインを持つ手が震えている。

まさにその時であった。

ダービーのスタンド『オシリス神』が、神裂の肉体から魂を抜き取ったのだった。

「も、申し訳ありません。 後は、頼みます」

そして、彼女の魂はチップへと変えられた。








「二個だ。 さあ、ギャンブルを続けよう。 次は誰かな?」

二人目の魂を手に入れたダービーは上機嫌であったが、当麻は怒りを爆発させる。

「テメェ!」

「ダメ、彼を殺したら!」

「だけど――」

「私達は既に彼ののペースにはまってるの。 二人を救うには、彼との賭けで勝つしかない」

「くっ――」

ヒナタに指摘された当麻は、悔しい表情で拳を握りしめる。

グラスを調べ始めたヒナタであったが、グラスの底にチョコレートの解けた跡ある事に気付いた。

「気付くのが遅かったようだな」

「ど、どういうことだ!?」

「グラスの底に、チョコレートの僅かな破片が付いていた。 あの時グラスを調べる際に、破片をくっ付けたのね……そうすればチョコが溶ければ、グラスは元の位置に戻り、コイン一枚分は入る余裕はある」

「承知したはずだ、バレなければイカサマではないと」

「待てよ! そんな都合良く、チョコが溶けるとは限らないぞ!」

当麻の言葉が最もであるが、ヒナタは既にその答えに辿り着いていた。

「私達が気付かなかっただけなの。 角度を変えると言って、椅子から立ち上がった。 その時に、背中で遮っていた太陽の直射日光でチョコレートを溶かした」

「…フッ」

不敵な笑みを見せるダービーに当麻は青ざめた。

頭脳戦とはいえ、聖人である神裂を倒した彼に、恐怖を覚えたのである。

そんな中、ヒナタは椅子に腰かけた。

「分かりましたダービー。 今度は、私が相手します。 行うのはポーカーです」

「何!?」

「面白い、ポーカーは私の最も得意なゲームだ」

驚く当麻とは逆で、ダービーは余裕を見せながらイスに座った。

「何を考えているんだ! コイツは神裂をも負かしたんだぞ!? あまりにも――」

「分かってます。 暴力こそ使わないけど、今まで戦ってきた相手よりも危険な男です。 でも、やらないワケにはいかない」

そう言って彼女は、ダービーの顔を真っ直ぐ見る。

「ゲームの前に一つ、試したい事があります。 まずは、トランプをシャッフルして下さい」

言われた通り、ダービーはトランプをシャッフルする。

「テーブルに置いて、一番上のカードを取って下さい。 絵柄を見るのは自分だけです」

「何がしたいのかね?」

すると、ヒナタはトンデモない台詞を言った。

「そのカードは、ハートのQですね?」

「!? せ、正解だ」

ダービーが見せたカードは、ヒナタの予想通りのものであった。

「そのまま続けて言います。 スペードの7、クラブの5、ダイヤの2……」

宣言通りのカードに、当麻は驚きを隠せなかった。

「せ、宣言通りかよ!? でも、どうやって!?」

「私の白眼の洞察力で、シャッフルされたカードを全部見ました」

「面白い。 だが、それは見えないようにすれば言いだけだ」

不敵に笑うダービーであったが、ヒナタはこれを一蹴するように首を横に振った。

「違います。 私が言いたいのは、ここから先はアナタにイカサマをさせる暇は与えない……それを忠告したかったんです。 この眼がある限りは」

「グッド」






 新しいカードを使い、ゲームを始めることになった。

トランプを切ると、ダービーはそれを二つに分けると、

「一番上のカードを」

「………」

二人は互いに、目の前にある一番上のカードを取ってめくる。

「ハートの5」

「クラブのA」

「親は私だ。 おっと、そちらから視えない角度で切らんとな」

そう言ってダービーは再びカードを切った。

切り終え、一枚ずつカードを配っていく。

「ヒナタに私、ヒナタに私」

当麻はそれを見て、問題はないと判断した。

「ヒナタに私、ヒナタに私、ヒナタにわた――」

しかしその時であった。

「待って下さい!」

「!!」

突然、ヒナタが叫んだのだった。

「言いましたよね? イカサマをさせる暇は与えないと」

「へ? どう見ても、普通に配ってたようにしか見えなかったけど?」

首を傾げる当麻であったが、ヒナタは首を横に振った。

「いえ、彼の手に持ってるカード。 がはみ出てます。 それは、私に配ろうとしたカードですよね? 普通に配るフリをして、上から二番目のカードを私に配っていた」

はみ出ていたカードを取ると、ヒナタは自分に配られたカードをめくった。

それを見た当麻は驚愕した。

ヒナタに配られたカードは、10のカードが3枚揃っていたのだ。

「マジか!? これもイカサマに入んのかよ!?」

これは“セカンドティール”という技術と呼ばれ、カードを配るフリをして、上から2番目のカードを相手に配る手法である。

イカサマを見抜かれたダービーは、額から冷や汗が流れ出た。

彼女を、日向ヒナタを何処かで侮っていたのである。

「見事だ。 イカサマとは即ち、相手の心理的盲点を突く事。 ただ目が良いだけではイカサマは見抜けない……俺のセカンドティールを見破るとは。 どんな勝負でも、相手を舐めて掛ってはいけない。 反省しよう、どうやら私はキミを侮っていたようだ」

するとダービーは、ステイルと神裂の魂を掴むと、

ダービー「だが言っておくが、私は別にあの御方の為に戦っているのではない。 生まれついてのギャンブラーとして戦いに来たのだ!!」

上空へと投げた瞬間、『オシリス神』が2人の魂をそれぞれ6枚のコインに分けたのだ。

「二人の魂を、それぞれ6枚のチップに分けた。 ポーカーと言うのは、己のチップが足りなくなったら自ら降りる事が出来るゲームだ。 さあ、まだ例の言葉を言っていなかったな」

「分かりました。 賭けます、私の魂を!」

「グッド!」

「また同じ目には遭いたくないので、ディーラーは無関係の人間に任せますね」

そう言ってヒナタは、偶然遊んでいた少年を見つけると、

「当麻君、あそこで遊んでいる子供に頼めないか聞いて来てくれるかな?」

「分かった」

すぐさま当麻に交渉を任せた。







 当麻が少年と交渉している間、ダービーは白いチップを6枚テーブルに置いた。

「この雪のように真っ白なチップがお前の魂だ。 お前が負けた時、その魂はこのチップへと姿を変える」

交渉が終わり、当麻は少年と共に店に戻って来た。

少年がカードを5枚ずつ配り終えると、二人はそれを己の手に収める。

「まずは小手調べで、チップを1枚払う」

「3枚です」

ダービーはチップを1枚、ヒナタは3枚払うと、少年は二人が払った分のカードを配る。

互いに己の手札を見る二人。

「ツーペア」

ヒナタがクラブとハートの9とハートとスペードの4のツーペアを出すが、

「悪いな、フラッシュだ」

ダービーはダイヤの3〜7までのカードで勝利する。

「な!?」

「………」

「危ない危ない……もう少しで負けるところだった」

一気にチップを奪われたヒナタの顔は、少し焦りを見せていた。

しかし残りのチップは4枚へと減り、外野である当麻も焦りを見せていた。

するとヒナタは、当麻に声を掛けた。

「当麻君、頼みがあるんだけど」

「え?」

果たして、その内容は?







「ゲーム再開です」

再びカードが配られると、2人はそれを手にする。

ゲームの続行にチップを一枚払った事により、ヒナタのチップは残り3枚となった。

ダービーの手にはスペードの9とクラブの8、そして3枚のKキングのカードが手札に置かれいる。

そんな彼に対し、ヒナタは手札を見た後、

「……」

少し落ち着いた表情を見せる。

「怖い怖い……何か強いカードが出ているようだな。 此処は様子見で1枚チェンジだ」

チップを払ったダービーに、少年はカードを一枚差し出した。

そんな彼にヒナタは、一言だけこう言った。

「では私は、チップの上乗せをします」

「上乗せ?」

「上乗せとして、上条当麻くんの“魂”を賭けます!」

「何ぃ!?」

仲間の魂を掛けたヒナタに驚いたダービーは、すぐさま当麻に目を向ける。

それを見た彼は、こう言ったのだ。

「ダービーと言ったな? アンタは策士として、見事な計算された戦術を使ってくる。 俺はどちらかと言うと賭け事は絶対に負ける。 運が悪いからな。 けどな、俺は彼女を……ヒナタを信じようと思う。 二人の魂を取り戻す為なら、俺は自分の魂を彼女の勝利に賭けるつもりだ」

そう言って彼は、椅子に座りこんだ。

これで、ヒナタのチップは残り9枚となった。







ダービー「フフフフ……二人とも、この緊張感の中で頭がおかしくなったのかな?」

ダービーはそう言いながらクラブの8からチェンジしたカードを見る。

そこにはスペード、ダイヤ、ハート、クラブ――と4枚のKキングが揃っていた。

そんな中でディーラーの少年の口元が、一瞬だけ引きつっていた。

「(ダービーさん、貴方の命令通りにやりました。 このお姉さんの持っているのは、何も揃っていない“ブタ”のカードです。 間違いありません)」

ヒナタを睨みながら、ダービーは心の中から勝利を確信していた。

「(クククク……お前は無関係の子供を選んだつもりだったが、残念だったな。 この小僧を含む、この店内の視界に映る人間全てがこのダービーの手先だ。 だから誰を選んでも、お前のカードは間違いなく“ブタ”のカードの筈だ)」

実はダービーは店の中の人々を既に仲間に率いていて、誰がディーラーを務めても自分に有利な状況を作れるように仕向けていたのだ。

「(さて、今度は此方から奴を追い詰めに行くか……)」

そしてダービーは、チップの上乗せを仕掛けた。

「良いだろう、ならばステイルの魂を6枚……」

更に――と言って、神裂の魂を6枚前に出す。

「神裂の魂を6枚上乗せ。 合わせて15枚だ!!」

「「!?」」

これには流石の二人も驚きを隠せなかった。

「じゅ、15枚だと!? 待て、ヒナタには賭けるチップがもう残っていないんだぞ!?」

動揺する当麻であったが、ダービーは更なる追い撃ちを仕掛けた。

「“ない”だって? “ある”じゃないか、賭ける魂がまだ」

「何の事だ!」

「一筆書けばいいのだよ。 そうすれば、私の『オシリス神』は自動的に動き出す」

「何の事だと言ってんだ!!」

叫ぶ彼に、遂にダービーは堂々とこう言った。

「決まっているだろ? 貴様等の他の仲間の魂を賭ければ良いと言っているんだ。 そうだな、うずまきナルトの魂というのはどうかね?」

「な!? テメェ!!」

「(さあ、慌てろ小娘……その冷静ぶった表情を撃ち砕いてやる)」

この場にいない仲間の魂を賭けさせるという作戦。

「(ふざけんな! 恋人ナルトの魂を掛けさせるだと!? いくらヒナタでも、そんな事できるワケが――)」

流石に当麻も、怒りが頂点に登りかけていたが、

「分かりました、ナルト君の“魂”を賭けます」

「な!?」

「何ィ!?」

ヒナタは平然と、そして堂々と恋人の魂を賭けたのだ。

「ほ、本気で言ってんのか!? この場にいないヤツの魂だぞ!?」

「勝手過ぎますか?」







 ヒナタは紙に“私日向ヒナタは、ダービー氏との賭けに敗れた場合は、うずまきナルト氏の魂を差し出します”という内容を書く。

そんな彼女の表情は、どこか不敵な笑みを見せていた。

「(こ、この顔……まさか勝機でもあるというのか?!)」

一瞬の焦りを見せたが、ダービーは再び平常心を取り戻していく。

「(良いだろう、勝負に出てやろうじゃないか。 このダービーにハッタリなどかましおって、その代償は高く――)」

しかしそんな彼に、更なる追い撃ちが放たれたのだった。

「言っておきますが、私の上乗せの権利はまだ終わっていません」

「う、上乗せだと!?」

動揺するダービであったが、ヒナタは店内に響くほどの声で叫んだ。

「上乗せするのは、私の仲間全員の魂です!」

「何ぃぃぃぃぃぃぃ!?」

「ぜ、全員だと!? 待てヒナタ、何を考えている!?」

これにはダービーだけでなく、当麻ですら講義を唱えてしまう。

「私達は、このゲイムギョウ界の為に戦ってる。 だから女神様達も他の皆も、私に魂を賭けられても文句は言わない……。 しかしダービー、アナタには皆の魂に見合ったモノを賭けて貰います」

そしてヒナタは、ダービーの平常心を完全に砕く言葉を強く言い放った。

「それはアナタから、『あの御方』の正体と能力を全て喋る事です!!」

それを聞いた瞬間であった。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

イスから転げ落ち、一気に後ずさりするダービーの姿に、当麻は驚きを隠せなかった。

「(この表情……ダービーは知っているのか、そいつの秘密を!? しかし喋れば、コイツの命は無い……裏切り者は消されるって事か!?)」

立ち上がりながらテーブルに手を叩きつけると、ヒナタは強い口調でこう言い放った。

「さあ、ダービー! 賭けるか降りるか、はっきりと口に出して貰います!! 勝負です!!」






 完全に精神が崩壊したダービーであったが、ゆっくりと立ち上がり、

「フー……フー……」

カツカツ――と、ヒナタのいるテーブルの方へと歩み寄った。

その手には、カードが強く握られていた。

「(お、俺は……世界一の博打打だ……言ってやる……“賭ける”って言ってやるぞ………)」

テーブルまで辿り着いたダービーは、ゆっくりと口を開こうとする。

「か……か……か……」

賭ける!――と言おうとするが、中々声が出ない。

しかし、その瞬間であった。

「(ダメだぁーーーーーー、ビビっちまって声が出ないーーーーーーーーーー)」

「ま、まさかコイツ……立ったまま気絶してんのか!?」

仲間の魂を全て賭ける――というヒナタの常識外れの覚悟に、ダービーは精神が崩壊し、完全に気絶してしまったのだった。

そのままダービーは倒れ、ステイルと神裂の魂は解放された。

「二人の魂が!」

解放された魂は、そのまま肉体へと戻った。

「あまりの緊張感に、心の底で自分の敗北を認めた……みたいですね」

ダービーの手を見ると、クラブの9と4枚のKキングのカード。

「き、Kキングキングの4フォアカード!? おいヒナタ、お前のカードは一体――」

驚いた当麻は、ジョルノの手からカードを取り上げるが、

当麻「………………え!?」

カードを見た瞬間、そのままカードを落としてしまう。

少年も恐る恐るカードを見ると、驚きのあまりに声を出してしまった。

「や、やっぱり“ブタ”だった!!」

そんな中、ヒナタは額から滲み出た汗を拭く。

「流石に彼の前では、イカサマは出来ないと予感してたんです。 だから精神的に追い詰める作戦を決行したんですけど……“ブタ”は予想してましたが、ここまで効果があっただなんて……」

予想以上に効果があった事に苦笑するヒナタに、

「ま、まさか……お前、そこまでこの“ブタ”に賭けていたってのかよ!?」

彼女の想像つかない度胸に、当麻はは腰を抜かしてしまったのだった。

更に彼女の口から、とんでもない追い撃ちの台詞が出たのだ。

「あと……私、ポーカーはルール通りにしただけで、実際に行ったのは初めてで……賭け事自体も初めて何です」

「…………」

暫く沈黙した当麻であったが、

「えええええええええええええ!?」

その後、店内に響くほどの絶叫を上げたのだった。






 その後、話を聞いた一同は、

「つまりアレか? お前等は知らない内に敵の土俵リングに足を踏み入れたって事なのか?」

「ちょっとでも怪しいとは思わなかったんですか?」

「もう少し警戒心持てよコノヤロー」

「そうよ。 最近ではちっちゃい子でも、怪しい人の言葉に耳を傾けないわよ」

そう言って呆れたのだった。

「面目無い」

「特にステイル。 お前、なに最初にやらてんだ! アレか? 相手がるでンディなッサンで『マダオ』だと思って油断したのかコノヤロー!!」

「そんなワケないだろ! というか、その“マダオ”って言葉、そういう言い回しもあるのか!?」

「まあ、お仕置きは必要ですけどねぇ」

そう言って沖田は、手にタバスコを握っていた。

銀時の手にも、練り山葵が握られていた。

「ま、待て……それをどうする気だ!?」

顔を青ざめるステイルであるが、何故か逆さ吊りされているので逃げられない。

「決まってんだろ?」

「アンタの鼻にブチ込むんでさぁ」

『銀魂』のドSコンビが、ステイルの鼻腔にタバスコと山葵を近付け、

ステイル「ちょっと待て! やめ―――ギャァァァァァァァァァ!!」

入れられたステイルは、絶叫を上げるのであった。

この光景を青ざめながら見ていた当麻であったが、神裂がいないのを思い出す。

「あの、神裂は何処でしょうか?」

恐る恐る尋ねると、新八は青ざめながら答えた。

「プルルートさん――いや、プルルート様と二人っきりですよ。 多分……絶対に癒えないトラウマを刻まれるかも」

まさにその時であった。

「火織ちゃ〜ん。 いけない子ねぇ、こんなにしちゃって♪」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ! たーすーけーてー!!」

ドア越しから聞こえる神裂の悲鳴。

これには当麻も、更に顔を青ざめてしまう。

「やっ! ダメぇ、勘弁して下さいぃ/////」

「あらぁ、色っぽい声なんかだしちゃってぇ。 もしかして、誘ってる? 誘ってるのね? じゃあ、期待に応えて……」

「ちがっ! 違いますからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

二度と癒えないトラウマを刻まれる神裂に、当麻は小さく「南無…」と手を合わせたのだった。

そんな中、ヒナタはソファーで横たわっていた。

ダービー戦で最も精神を使っていた為、緊張の糸が途切れたの如く、そのまま寝ていたのである。

そんな彼女に毛布を掛けたナルトは、小さく笑い、

「お疲れさん」

そう言って頭を軽く撫でたのだった。







TO BE CONTINUED

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