あれから何とかふたば幼稚園に着き、事故のことがあった為に本日は急遽休園となりあとは迎えを待つしんのすけたちだったが、しんのすけと風間くんとボーちゃんはむかえが遅いので朝からずっといる英霊達とゆっくりしていた。
「っで、じいちゃん達は英霊なの?」
ギルガメッシュが気分がいいからという事で取り出した茶菓子とお茶を啜りながら、しんのすけは気になったことを聞いていた。
じいちゃんとは山の翁に対するあだ名らしい。
「そうだ……我等は遥か昔……人類史において何らかの功績や偉業を成し遂げた者達が死後、若しくは生きたまま神格化した存在だ」
「じいちゃんが言ったことは少しはわかるけど、まだオラよくわかんないゾ……」
「まあ、まだガキンチョだから分かりにくいな……簡単に言えば形はどうあれ凄いことをした褒美にいざという時のヒーローになった……ってことだ!」
「おーさすが純情のモルモット!」
「モルモットじゃねえ!俺は叛逆の騎士モードレッドだって言ってるだろ!?」
山の翁はこの時気になっていた事があったのでしんのすけに聞いた。
「誓約者よ、我等を召喚した媒体は何を使ったのだ?」
山の翁はただの英霊ではない
冠位英霊と呼ばれる英霊の中では最強の存在である。しかも本人はまだ死んでるのか生きてるのかもよくわからない存在となっている……だが冠位を持つ最大の要因は山の翁のクラス
暗殺者はこの山の翁が始まりなのだ。この時点で普通に召喚できる存在ではないのは明らかだ。故に山の翁は正確には
冠位暗殺者が正しい。
故に気になった……自分を召喚した方法を山の翁は気になって仕方が無いのだ。
「そういえばそうだっな、太陽王たる我や獅子王やグラウンドサーヴァントである山の翁まで呼び寄せるなぞ並大抵の物ではなかろう……まさかと思うが我が妻の墓を荒らしたなんてことは無いだろうな!?「それはないだろうな」何故だアラヤの抑止力よ?」
「確かに本来の聖杯戦争では呼び出すに必要なものは、その召喚する英霊に縁がある物や遺品や建物の一部等が使われている……だけどそれならば召喚されただけで何が使われてかわかるはずだ」
サーヴァントは本来説明されたように、その人に関するモノを媒体として召喚するが様々なものがある。例えば太陽王オジマンディアスは生涯で最も愛した妻ネフェリタリに関する物だが召喚者はオジマンディアスの逆鱗に触れ死ぬ。
アルトリア・ペンドラゴンは伝説の聖剣エクスカリバーの鞘である『
全て遠き理想郷』が必要だがランサーでは聖槍『
最果てにて輝ける槍』だったりする。難易度低めでもモードレッド等の円卓の騎士は伝説の円卓の欠片、これらは正に神話そのものだと言われるために媒体の代わりとなる召喚符……もしくはしんのすけ自身の幸運によって引き寄せられたのだろう。
「うーん、オラこの召喚符を使っただけだゾ!」
エミヤがしんのすけが既に光を失った金色のチケット……召喚符を手に持ったが何時でも英霊召喚が出来るものである以外なんの変哲もなかった……だが充分すごいのだが。
「……本当にこれだけなのか?そもそも君は見た感じは魔術には関わりはないと思うんだが」
「魔術じゃなくて魔法使いと戦ったことはあるゾ?」
途端に空気が固まった。それはそうだ、しんのすけ達は魔法使いは日常に潜り込んでくる相手であるが魔術の世界に身を置く者達……英霊達にもとって神にも等しい者達なのだ。それと戦ったことがあるというのはとんでもない事なのだ。その為古代ウルクの王であるギルガメッシュは真っ先に食いついた。
「……雑種、いま魔法使いと戦ったことはあると言ったがそれは誠か!」
「うん異世界から来たマカオとジョマっていうオカマの魔女だゾ!」
「マカオとジョマ!?それって平行世界からの侵略者だった筈……まさかマスターが倒したなんて!」
どうやら嘗て戦ったマカオとジョマは英霊達のいた場所でも話題になっていたようだ。
「ジャンヌお姉さんもあの2人知ってるの?」
「はい、私たちサーヴァントは『英霊の座』と呼ばれる世界にいて、非常事態の時にはそこからこの世界に干渉し非常事態の元を断つのですが……あの2人は平行世界を渡り歩き完全制圧を繰り返した魔法使い……魔術の上位にあたる力なので迎撃に向かったサーヴァント……円卓の騎士の皆さんやここにはいない征服王が返り討ちにあったほどです」
「そうなのモードレッド?」
「そうだよ、アイツらあんな広範囲の固有結界展開するわ、ダンスで勝負されるわやたらトランプでケリをつけに来るわ、身体能力もオレ達以上って聞いてないぞ父上ー!!」
「……私だって予想外ですよ!それに事前情報を提供したのはマーリンです!」
「その事だけど……僕はあの見た目でちょっと吐きかけたからその時集められる限りの情報を集めたんだよ!」
「ええい五月蝿いわ!!ランサーもセイバーも過ぎたことを蒸し返すではない!そして雑種!面白い話を聞かせてくれた礼としてこの飴ちゃんをやろう、話に入ってこれなくてすっかり空気になっている貴様の友と保護者と一緒に食べるがいい!」
ギルガメッシュに言われて飴を貰ったしんのすけは風間くんとボーちゃんとエミヤと話していた園長先生……もとい組長の方に飴を渡しに行った。
「話は終わった……の?」
「うん、オラ達の昔の話は何か凄いらしいゾ?」
「まあこっちも話は聞いたけど、すごい人達だな……「なんで?」だってエミヤさんを除いた全員は昔からの伝説だぞ!何人かは王様だし」
「まあまあ、とりあえず貰った飴を食べましょう」
「はぁ……君たちといると感覚が変になってくるよ……あの英雄王は面倒見が何気にいいし太陽王とか初代山の翁とか……何気にこの飴べっこう飴じゃないか」
「好きなんですかねべっこう飴?」
暫く飴を舐めながら待っているとしんのすけの母親である野原みさえが迎えに来た。
「しんちゃん!……って何この人たち?」
しんのすけに巻き込まれ様々なものを見てきたこの主婦も、いきなり鎧の騎士やら何やらを見て完全に固まった。
「おっ、母ちゃん!この人達はオラのサーヴァントだゾ!」
「サーヴァント……過去の英雄ねぇ?言っちゃあ悪いけどパッと見見るからに不審者よ?」
「彼らが私たちを助けてくれたのですよ」
「……あーそういう事ね。またなにか大変なことに巻き込まれるのね……だけど息子を助けてくださりありがとうございます」
みさえからのお礼に対して真っ先に対応したのは山の翁であった。
「顔を上げよ誓約者の母よ、我等は成すべきと考え行動したに過ぎない」
「それよりマスターはこれから帰るんだろう?」
「あっそうだゾ!母ちゃん早く帰ろう!」
「はいはい……この人達のことは帰ったらしっかりと聞かせてもらうからね?」
「フハハハハ!!雑種共よ今からマスターの家まで競走をしようではないか!勿論我はヴィマーナを使うぞ!」
「良かろう、我が宝具『
闇夜の太陽の船』の威光でこの春日部を照らしてくれるわ!」
「……前言撤回、ちょっとシメるわ」
ゲンコツ!!
「ひぇぇ……!あの古代王達が気絶してやがる!」
みさえが放ったゲンコツは慢心していた古代王達の背後から放たれ、頭にたんこぶを作り出し気絶に追い込んだ。しかしギルガメッシュのは昼間ではあまりに目立つ宝石の船だし、オジマンディアスは太陽そのものである太陽船を出そうとしていたのでむしろ良くやったである。
「そういえば貴方たちしんのすけの部下なのよね?ここから距離はあるけど大丈夫?」
「大丈夫です。私やエミヤさんは歩きなれてますし山の翁さんは転移能力を持っています」
「私はドゥンスタリオンがいます、モードレッドも背中に載せていきますのでどうぞお構いなく」
アルトリアが指を指した所には、愛馬であり英霊の一角でもある霊馬ドゥンスタリオンの姿があった。
「そう、なら私たちは行くわね?」
「風間くん、ボーちゃん、組長先生じゃあねー!」
こうして幼稚園から家に帰ったが途中で気絶してから気づいた英雄王と太陽王がものすごい速度で車を飛び越え屋根をよじ登り移動していたのが見えたが気にしないことにした。
だが、これがふたば幼稚園のメンバーと会う最後の時になるとはまだ知らなかった。
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家に帰ったしんのすけ達は、まずみさえに対して今回の始まりについて説明をしたが途中で自己に巻き込まれたのを聞いて早退したひろしが来た為により詳しく説明することが出来た。
「つまり、息子は伝説を残した偉人であるあなた達英霊のご主人様になったってわけ?」
「まあそういう事だね……まさかあの巨神である彼女に出会ってたなんてね!」
「まあ俺達はこんな事が日常だしな。けど……しんのすけの話が本当ならそのアルテラは随分と寂しいんだろうな」
ひろしはしんのすけから聞き、マーリンに明かされた巨神アルテラについて思ったことを言った。
語られた巨神アルテラの正体は約1億年周期で様々な惑星の近くを通り、文明を破壊しデータを回収……そして捕食する滅びの遊星ヴェルバーが創り出した生体兵器だという。
生物の生態を暴走させ、嘗ての恐竜と同じ巨大化を暴走させ自壊させ、更には嘗ての超古代先進文明や数多の神々を滅ぼし……最期には星の聖剣に貫かれ砂漠に朽ちて砕けた白き巨神《セファール》。破壊を終えた後は自ら命を絶つ事を迫られた破壊しか許されぬ悲しき巨神だった。
ギルガメッシュやアルトリア等の嘗てのセファールと戦ったことがある者達には苦い思い出だったが、しんのすけから聞いた夢の中で出会った話からひろしやみさえは違った見解をしていた。
「おや、君たちは怖くないのかい?」
「オレ達はなん度も世界を賭けた争いやら平行世界に飛んだり死にかけたりしたんだからもうそんなの聞いても今更だろ。それに俺達はしんのすけを信じる……これからもこれからもだ」
「何でもかんでも怖がってたら主婦なんてやってられないわよ!それにもしそのセファールになったら私達で正気にしてやるわ!」
マーリンも流石にこれ以上言うのをやめた。この手の相手はやると決めたらやるのだから止められないし…それに本当にやって見せるのだろう。
冠位魔術師としての感がそう認識した。
「わかった……だがマスターが聞いた話からするに、これからマスターとその家族は今日から新しい所に住んでもらうよ」
「なんでだ?」
「人類史を巻き込んだ異変になるらしい……つまりかなりの時代範囲が大規模なタイムパラドックスを誘発させる事件が発生するという事です」
「故に最も時空や次元対策が取られた組織で住んでもらうという事だな?」
「そうそう、いやぁ流石僕との付き合いが長いだけあってすぐに理解してくれ……って二人とも何食べてるの?」
「何って……せんべいだよ」
「私はチョコビです」
マーリンが説明したい事を先に説明したことを褒めようとした所で、2人がお菓子を食べてるのに気づいた。
よく見たら他の英霊も自由気ままに動いていた。
「フハハハハ!!我の財宝の中から1つ宝石をくれてやろうではないか!」
「キャッキャッ!」
ギルガメッシュは自分の黄金の鎧を見て喜んでいるしんのすけの妹であるひまわりに宝石を与えていた。
「おのれ、我がピラミッドを超える建造物を作り出すとは……このファラオに挑むか!」
オジマンディアスはTVで映っていた東〇スカ〇ツ〇ーに対して文句を垂れながら熱心に見ていた。
「へぇー今のパンってこんなに種類があるんですか!」
「これが冷蔵庫という物か……これがブレーカー……時代を感じるな」
ジャンヌは新聞のチラシに載っていたパンを見ていたり、山の翁は現代の日本の家を見て回っていた。
「みんな色々やってますな〜……ところでエミヤおじさんはなんでシロを乗せてるの?」
「ボクは何もやってない……この犬から乗ってきたんだ」
エミヤの頭にはしんのすけのペットであるシロが丸まっていた。お陰で白い髪を白い毛玉に包まれて今のエミヤはアフロ頭に見えなくもない。
「……マスター。話をしたいから令呪で何とかしてくれ」
「うーん、れいじゅがなんなのか分からないけど集めるの?みんな話を聞いてほしいんだゾ!」
しんのすけが命令をお願いした瞬間、しんのすけの右手の紋章の一部が消えて全員が正座をしていた。
「マスター、これが君がマスターである証である絶対命令権の力さ……さて話が脱線したね。では英雄王頼むよ」
「ふん、よく聞け雑種共よ。我等はさっき魔力の流れを調べたが、我らは『カルデア』という施設から魔力のパスが流れていた……どうやら我等はこのカルデアに来る筈だったがマスターの影響で我等は春日部に召喚されたのだろう。故にこのままでは雑種があの巫山戯た魔術師共に舐められるだろう……故に我等はこの家ごとカルデアに飛ぶことにする!故にオジマンディアスはこの家に魔術による補強をせよ!マスター達は急いで食料を買い集めよ!金は我が貸す!マーリンと山の翁はオジマンディアスの補助をせよ!モードレッドとアルトリアとジャンヌはマスター達の手伝いをせよ!我は独自に動く!あとエミヤはひまわりとシロの相手をしながら魔術師が近くにいないか確認せよ!」
「ハッ!なら今から準備しないとなぁ……!」
「よーし!頑張っちゃうぞー!!」
「背中を押してやろう……」
「……みさえ、急いで食料買うぞ」
「分かったわ……ジャンヌちゃん、あとアルトリアちゃんとモードレッドも手伝ってもらうわよ!」
「かーちゃんお菓子買っていい?」
「ばか!買っていいに決まってるんだろ!」
「えっと……頑張ります!」
「フハハハハ!!存分に買うがいいマスターよ!冠位持ちと共に戦えるだけではなく、アルトリアと一緒にいれるのだからな!今回はそのお礼という訳だ!」
「それより早くしなくていいのですか?」
「家の警備は任せてもらおう……今できる最後の買い物になるから後悔しないようにしてくれよ?」
唐突に決まった事に慌てながらも全員が行動をした。そして……同時に滅びの時間が刻一刻と迫るのをまだ誰も知覚出来ていなかった。
しんのすけは令呪が一角消えた右手を見て呟いた。
「オラ……マスターになっちゃったゾ!」
そして数時間後……カルデアへと野原家は土地ごと飛んでいった。
それが時代を超えた戦乱に巻き込まれることになるが……彼らは何を見て何を思うのだろう
果たして野原家は正気を保ち日常に帰る時は来るのだろうか?