彼女は夢を見た。ある科学者の生涯を見た。世界を支配しようとした彼により生み出された鉄の巨人の息吹を見た。世界を手に入れた彼は別の世界の過去の自分に自分の技術を伝えた……自分を超えさせかの鉄の巨人を強くするためであり、そして……自分に敵うライバルを求めたからである。その為に生み出された存在は何時しかミネルバXと呼ばれただの機械から肉体を持つ超アンドロイドになっていた。
科学者の名は兜十蔵。そして幾度の世界で生まれたライバルの名はDr.ヘル。彼らは何時しか互いの巨人で争う様になり、何時しか兜十蔵の息子が巨人を操り戦い出した。
そして兜十蔵は長い時で消えてしまった人としての心……親としての心を取り戻した。
何時しか鉄の巨人は悪魔からヒーローとなっていた。Dr.ヘルから世界を守る神にも悪魔にもなれる巨人へと。何時からかアフロダイと呼ばれる相棒も出来た。
だが遂に最後の戦いで鉄の巨人が敗れた……全身が砕かれようと十蔵の息子を救う為に脱出させて自爆した。それから十蔵はミネルバに巨人を完成させて息子たちの未来を救うように頼み息を引き取った。
そして神にも悪魔にもなれる巨人は、神すら消し去り悪魔も滅ぼす魔神となった。そしてそれが起動する時必ず彼の姿があった。
兜十蔵の息子……●●●という少年はかの魔神に取り込まれ続けその存在は並列世界へと消えた。ミネルバも足掻いた。かの巨人を……誰もが愛した●●●●●●を止めたいと思い何度も世界を超えた。新たなライバル達や偉大なる勇者……魔神の意思等の試練を乗り越えて行った。
だが遂にかなった願いも転生したDr.ヘルによって希望の巨人は世界を好き勝手に創り壊し続ける地獄の魔神となる。だが奪った世界から新たな巨人たちが目覚め魔神と対峙した。
幾億の自分という鉄の巨人の後継者が新たな世界を切り開く姿を見た。そして彼は歪んだその力を破り、幾億の新たな世界をつむぎだした。
そしてかの魔神は全知全能となり悪魔になった魔神は神となった……
そう、その光の魔神の名は───────────────
「……本当になんなのあの夢?並列世界とか”こうしりょく”とか”まじんぱわー”とか変なことばかり聞こえるのよ?」
とある世界、幻想郷の博麗神社と呼ばれる場所で少女達が会話をしていた。その中に一人いる赤い巫女……博麗霊夢は昨日見た夢を話していた。
「外の世界で聞いたことあったんですけど……なんでしたっけ?」
「鉄の巨人ね……お嬢様とかが気になる内容だけど。この世界に来たらどうなるのかしら?」
「場合によって倒すしかないぜ!」
目の前にいる3人……妖怪の山の神社の現人神である東風谷早苗、吸血鬼の屋敷である紅魔館のメイド長の十六夜昨夜、魔法の森の黒白魔法使いの霧雨魔理沙……三人の反応を見て気楽に考えていた。
鉄の巨人でも異能の力には勝てないと過去の事件でのことを思い出しながら言葉を出そうとした時空間が裂けたのを見て知り合いの妖怪だろうと思ったがすぐに違うと気づいた。
あの妖怪なら裂けた空間にはリボンがついて人一人分の大きさしかないのに、これはもう巨大なクレーターかと思うほどの裂け目が生まれた。
そこからゆっくりと浮上しつつ現れたのはそのげに恐ろしきその頭。金色に輝く双眼から赤いラインが走り黒い地肌に鋼のマスク、そして体は鋼の筋肉に赤いプレートが二つ、金属の関節、黒き肩に黒き腕にさらに生える左右合わせて4枚の剣。そしてその背に背負う紅き0の形をした円盤……背負っているのではなく浮かんでいる。夢に見たあの魔神そのものだった。
魔神はその両目を霊夢達に向けて、じっと見つめていた。
「れれれ、霊夢!さっきの話に出てきた奴かこれ!?」
「……本当にいたんだ。それより早苗、コイツから感じるこの力って」
「間違いなく霊力や魔力、それに比べるのも嫌になる神力が溢れています!」
「勝てる気が……ない」
体から溢れる複数の生命力がオーラとなって漏れ出す中で言葉を細々とつむぎ出すのを聞いたのか、そのマスクがバキバキと割れて声にならない言葉が光となって映し出された。
『此処が幻想郷か?』
「そうよ、忘れられし者達の楽園……そして私が」
『博麗の巫女……博麗霊夢。我は知っているぞ……そこの3人の事も知っている!』
グググという唸り声をあげて笑うその魔神からの言葉で既にこちらの事を知っている事を理解した。それよりも光が文字となってそれが声となるのか分からないがこの奇妙な体験をして冷や汗をかいている。
『だが我だけ知っていているのは無礼だろう……故に名乗る』
背後の赤い0の形をした物体が光り魔神は叫んだ。
『我が名はZERO!!我が名はマジンガーZERO!!
原初にして
終焉の魔神、Zから生まれZEROへと還す者なり!!』