「巨大兵器にサーヴァント、更にはインベーダーか。マスター……我が言うのもあれだが」
ギルガメッシュが言いたいことはわかる。囲まれた。これが今言える状況だ。地形エリアは冬木大橋……下には河川敷があるがそこには石にされた人間達の亡骸と血の海が広がっていた。だがしんのすけ達は諦めない……故にオルガ所長が近づいてきて耳元で囁く。それを聞き考えた作戦をすぐに実行した。
「フェイトシステム接続、召喚サークル起動します!」
「行くぞ!英霊召喚!!」
「俺もだ!来い!オレのサーヴァント!!」
しんのすけがあらかじめ持っていた巨神の加護付きの召喚符をそれぞれ5枚ずつ士郎と立花に渡し……そのまま二名合わせて8人分の英霊召喚を行ったのだ。因みに現在のカルデアの召喚システム『フェイト』は時たま変な英霊召喚が可能となっているらしくちょうどタイミングが重なったのか凄まじい力を持つ英霊が出てきた。
まず士郎のサーヴァントが現れた。1人は何故か保険医の制服を黒白逆にした姿をしている紫髪の少女、1人は機械の腕を持ち1人目と似た姿をしているが胸の発育が発達しすぎたような少女、また1人が出たが今度は足が武装化されたが股間部がプロテクターを取り付けただけの正に下半身痴女とでも言うべきまたもや1人目にソックリな少女だった。4人目は緑色のマントを羽織った飄々とした風貌の青年だった。
「はいはーい!サーヴァント
月の癌のBBちゃんでーす!あれ?来るの早すぎた!?まだプロローグ!?」
「サーヴァント、愛憎の
別人格パッションリップです……えと、その、よろしくお願いします!」
「快楽のアルターエゴ、メルトリリス……貴方が私のマスター……っまさか……いや何でもないわ。せっかくだから貴方のサーヴァントになってあげるわ」
「はいはい、サーヴァントアーチャーのロビンフッドだ。ってあんたらもいるのかよ!?」
「なんでさぁぁぁぁ!?」
知り合いなのか、それとも知り合いにそっくりなのがいっぱいいるのか士郎の目の前でガヤガヤ騒ぎ出した時に立花も召喚が完了した。
「サーヴァントキャスター……真名メディア召喚に応じて来たわ。何やら凄いことになってるけどよろしく頼むわ」
「バーサーカー、ベオウルフだ。何やらピンチらしいじゃねえか……やってやるぜ!」
「アルターエゴ、殺生院キアラ……元ビーストIIIですがよろしくお願いしますね?」
「セイバー新免武蔵守藤原玄信……あー!!やっぱごめん!セイバー宮本武蔵ここに推参!!」
またもやゲテモノ揃いのサーヴァントがやって来たようだ。藤丸立花が呼んだのは神代の伝説的な実力を持つ魔女で悲劇の女王メディア、邪悪の巨人や名も無い火竜を倒したドラゴンスレイヤーである偉大なる王である全く狂化が補正されないベオウルフ、とある世界でラスボスを務めた変態であり人類悪と呼ばれる存在であった武闘派尼さん殺生院キアラ、日本が誇る剣豪であるが何故か女性の宮本武蔵……何やら訳ありの英霊が2人も来てしまっていた。
「桜っぽい3人とアーチャー……とりあえず来て早速悪いけどあの巨大な怪物たちと戦ってほしい!」
「始めまして、藤丸立花です。隣が後輩のマシュです……とりあえず後ろを見てください!」
「なんでビーストの反応がするんですか!?しかも元ビーストIIIもいるなんて……ああもうやけです!リップ、メルト、ロビンさんいきますよ!センパイたち、指示を!」
「あらあら、懐かしい皆さんがいるのに驚きましたが……インベーダーとデスアーミーはいけませんね。皆様方は武器を構えてください……我らが人類最後の砦、この魑魅魍魎を倒さなければ世界最後の日が来ます」
「ムーンセルで調べてたんですねアレ……まあ共同戦線としますって」
士郎と立花の言葉で8人が一斉に振り返りこちらを見下ろすインベーダーやデスアーミーを見てBBが叫ぶ。リップがその巨腕を、メルトがその両脚を、ロビンがボウガンを、メディアが魔術式を展開し、ベオウルフとキアラが両腕を構え、武蔵が腰に構えた双剣を抜き取る。
「宝具を解放するぞ!弔いの木よ、牙を研げ
祈りの弓!」
放たれた矢は2体のインベーダーと3機のデスアーミー、更にシャドウサーヴァントたちの足元に当たり、更に巨大な巨木となりすぐ様紫色になり大爆発を引き起こした。
ロビンフッドの宝具……祈りの弓はイチイの木から作られたその弓から放つ超精密射撃により確実に当たり、そしてその対象者の内部の不浄を爆発的に増幅させて爆散させる宝具である。
作戦はまず士郎と立花達がインベーダーとデスアーミーをサーヴァントや竜牙兵から引き離して戦闘をやりやすくする……その間にしんのすけ達がサーヴァント達を倒すという所だ。
「ギルはあっちのライダーのお姉さんを倒して!じいちゃんとモーさんとマーリンはじいちゃんに似た人を!槍を持った人にはエミヤのおじさん!」
行動をしんのすけが叫んだ瞬間、赤黒い光が素早く敵サーヴァントに当たる。衝撃により体勢を崩したがすぐに異変に気がつく。体を動かそうとしているが動けない……。
「マスター適性がなくても魔力量が多いから支援はできるわよ!魔術師舐めんじゃないわよ!」
オルガ所長が指を鉄砲のような形にしてまだまだ撃つと言うように構える。この魔術の名は『ガンド』。北欧魔術の一つであるが魔力量が多いものが使うと上位版の『フィン』に変化する。所長が放ったのはフィンだ。スタンとダメージがガンドよりもある為先制攻撃を行うことが出来た。
その隙にギルガメッシュが稲妻のような形をしたナイフを手にして敵のライダーへと突撃していく。更にいち早く復帰した仮面を付けた敵のアサシンへと山の翁が突撃していく。その一瞬でマーリンとモードレッドが更に追撃しアサシンは大地へと倒れた。それでも立ち上がるアサシン……それを見てモードレッドが止めをさそうとしたがマーリンが制止する。
彼らの間に入ってはいけないと……その目が語っていた。すると何処からか鐘の音が流れてくるこの戦場へ流される。同時に山の翁の魔力が増大……宝具を解放する。
「呪腕よ……あの鐘の音が聞こえるか?」
「……聞こえます我らが王。我ら山の翁最期の時に聞いたあの鐘の音が……「構えよ」……承知!」
アサシンの右腕が肥大化し顕になる。オレンジ色のその腕は長大で異質な魔力を垂れ流しにしていた。同時にアサシンは駆け出し、山の翁は歩み出す。
「我が右腕は……死を司る魔神シャイターンの物。故にこの技は一撃必殺……!」
「聞くが良い。晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽―――首を断つか……!」
アサシン……山の翁の1人”呪腕のハサン”が先に宝具を解放する。山の翁となる為にすべてをかなぐり捨て手に入れた魔神シャイターンの腕……対象者に触れて擬似的に作り出した心臓を握り潰す事で相手を殺す力を持つ。
山の翁は青白い炎に包まれて突き進む。その右手の大剣が青く燃え上がり横一線に青い閃光が走った。
「
妄想心音!!」
「
告死天使!!」
互いにすれ違う。史上初の山の翁同士の戦い……そんな奇跡の結果は……
「……呪腕よ、また会うことがあれば……その時は共に戦おう」
大剣を地面に刺した瞬間、呪腕は黒く染まり風が吹いたと思うと白い羽に包まれて消滅していった。鐘の音に包まれ佇む山の翁はまさに死を告げる天使。
「これが……冠位持ちの力なのか……!?」
「正面から堂々と暗殺する……故に暗殺王の名を持つのさ。さて僕たちは彼女達の援護だ!」
山の翁の力を見たモードレッドは即死判定を持つ宝具を相手に堂々と勝利する山の翁の力に圧倒されながらも巨大兵器へと向かっていった。
しんのすけ達の作戦はこうだ。士郎達が大型の敵を倒すために専念するためにまずオルガ所長がフィンを放ちサーヴァントの動きを一瞬止めて、その隙に分断して分担で撃破。残ったメンバーは遊撃隊として援護しつつ巨大兵器を破壊する。
今も士郎と切嗣がそれぞれの獲物でインベーダーを攻撃しながらランサーの攻撃を凌いでいる。インベーダーがゲッター線の飽和状態で爆殺する以外に外部に生える黄色の目玉を破壊する事で撃破できるという話を聞いて目玉を攻撃している。
「I am the bone of my sword……
熾天覆う七つの円環!」
「固有時制御……!」
切嗣へと迫るインベーダーの巨大な爪を花のような巨大なシールド熾天覆う七つの円環──かつてトロイア戦争で活躍した名刀デュランダルの元となる槍の一撃を防いだ伝説の盾──が一枚の防壁を砕きながら防いだ。その瞬間に固有時制御で加速した切嗣が全身の目玉を魔力で強化したサブマシンガンで破壊した。その瞬間インベーダーは体が膨れ上がり爆裂した。
シャドウサーヴァントランサー……日本の英霊と思われるそのサーヴァントはアルトリアと切り結んでいた。愛馬ドゥンスタリオンに乗り高機動一撃離脱を基本とするのに対してシャドウランサーは複数の刀やハンマー……更には薙刀などを使いこなして攻撃を防いでいた。だがアルトリアはこのサーヴァントの正体……真名に気がついた。この特異点に来る前にカルデアで見た英霊になってると思われる人物たちの特徴に該当する日本の英霊……。
「貴方はその七つの装備……そしてその服装は僧であるからにして、真名は武蔵坊弁慶ですね?」
「……拙僧は武蔵坊弁慶……そう……弁慶……弁慶だ……故に負けるわけにはいかぬのだ!」
瞬間、武蔵坊は宝具を解放しアルトリアを排除しにかかった。
「むうん!!五百羅漢補陀落渡海!!」
巨大な仏式術式が展開されてアルトリアの背後に光り輝く空間が展開される。間違いなくそこに吸い込まれていくのがわかる……。
「これこそ我が最大の宝具、五百羅漢補陀落渡海!!貴様だけではない……この場にいる全ての者も生きたまま生き仏にしてくれる!!」
この宝具は嘗ての即身成仏の儀式を宝具としたもので凄まじい特性を持つ。相手を特定の方向に送り込むことで強制的に成仏させるという英霊からしたらとんでもないものだ。
「ぐ、ぐぅぅ……!す、吸われる……成仏する……!」
はるかに巨大な力を持つアルトリア──女神ロンゴミニアド──もどんどん引き込まれていく、だが彼女も負けるわけには行かないのだ。
「ヨーロッパの女神が、仏式の冥土への旅立ちなんて笑えません……何より……こんな私を選んでくれた
マスターの元へ行くんだぁぁぁぁ!!」
ロンゴミニアドを解放しそのエネルギーをブースターとして使用して宝具からの解放を目指し一気に近づく。そのまま巨大な光の刃となったロンゴミニアドを胴体に横一線、続けて右肩斜め、更にドゥンスタリオンが蹴りを放ちながら空高く舞い上がる。
「吹っ飛べぇぇぇぇ!!」
瞬間槍から放たれたビームが武蔵坊を飲み込んだ。心臓たる霊核が砕かれてから最後まで思ったのは守るべき者なくして護るものは強くなれないという答えだった。
「ふふ、誰かの為に戦う筈の武蔵坊弁慶……虐殺をした拙僧にはこれが相応しい最期……か」
───しんのすけか……あの少年達の様な純粋なマスターに呼ばれて見たいものだ───
爆発の後にはクレーターだけが残り武蔵坊弁慶の姿はそこにはなかった。アルトリアはそれを確認するとしんのすけたちを助けるために向かった。
一方こちらでは同じ真名同士が高速戦闘を繰り返していた。空を翔るは白と黒の天馬、大地を駆けるは2人のライダー。メデューサvsシャドウメデューサという組み合わせだ。
士郎のメデューサは強豪揃いの第五次聖杯戦争を生き残った為に凄まじい戦闘力や経験を持つ。故にシャドウメデューサが押され気味だったが継続戦闘ではシャドウが優れていた。
甲高い金属どうしの擦れ合いと共に肉弾戦の激しい音が鳴り響き、同じ魔眼の光が激突する。そこにすかさず大量の剣がシャドウメデューサを狙うも、あっという間に距離を離されよけられてしまう。そこにすかさずマシュがラウンドシールドで背後から弾き返し、そのタイミングに合わせて全身の力を込めた蹴りをメデューサが捻り込む。
「マシュ、今のはいいタイミングでしたよ……しかし、やはり魔力量に差がありすぎましたか」
「少しずつ押してるはずなのに……これでは……」
こちら側が押されている。それを口にする前にマシュの姿がぶれて冬木大橋の河川敷まで叩き落とされていた。血の匂いに怯えながら、震える足に喝を入れて立ち上がる……だが直ぐに腹に蹴りが入りゴロゴロと血の上を転がった。
「ぁぁ……ぁ……」
「ここまで良くやったと言いたいところですが、もう飽きてきましたので……2度と英霊として再起できないようにします」
その手に握られる禍々しい黒い鎌はハルペー。不死殺しの力を持ちながら傷を負った者は二度と治らない。英霊であるならともかく、デミ・サーヴァントではその傷は永遠に体を蝕むだろう。
「マシュ!」
何処からか突然現れた立花がマシュを抱えて振るわれたハルペーから逃れる。直後に黒いペガサスが通り過ぎる事で姿がまた現れた。立花が緑色のマントを羽織っているのを見たマシュはそれが魔力で編み込まれた道具……宝具であることを見抜いた。
「先輩、それは宝具じゃないですか!?」
「うん、ロビンフッドが貸してくれたんだ。だけど……やばいかもねこれ」
この宝具は
顔のない王と呼ばれる隠密活動に特化した逸話に基づいている。宝具として使うと切れ端だけでも複数の物体をステルスにすることが出来るが弱点もある……そう対軍相当の攻撃に弱いのだ。これにより即解除されたりもする。
回復術でマシュの傷を癒すも、後ろは橋の柱……万事休すである。だが目の前にいつの間にかだが青いフードを被った青年が杖を構えてふわりと着地した。
「まさか人間が生きていたなんてな……まあ、いいさ。今のは良かったぜ坊主、宝具の扱い方をよく理解出来たのは褒めてやるぜ。あと嬢ちゃん……よく頑張ったな」
「貴様……キャスター!?なぜ人間の味方をする!」
「味方っちゃあ味方になるか、だけど俺はこうした方がいいって思ったからやっただけさ。それにしても……堕ちるところまで堕ちたかライダー……此処で終わらせてやるよ」
瞬間、ルーン文字が空中に展開され灼熱の塊が一斉に飛び出してシャドウメデューサへと殺到するが黒いペガサスに乗ることで離脱した。だがその更に上空から更に2人落ちてきてペガサスの羽を切断する。異形の腕を持つ男はペガサスの頭を握り潰してそのままシャドウメデューサを地面へと投げる。
「我が斬艦刀に断てぬ物なし……チェストォォオオオオッ!!」
「とっとと落ちやがれ!」
予想外の衝撃で地面に落ちたシャドウメデューサはキャスターに向かって飛びかかろうとするも、その瞬間にマシュが瞬間強化の魔術をかけられている一撃を放ち上空に跳ね上げれ、そのままキャスターは巨大な方陣を展開してシャドウメデューサの足元へと展開し解き放った。
「桜の嬢ちゃん……約束は果たしたぜ……
F!!」
劈くような激しい悲鳴がその場に響き、爆炎の柱が舞い上がる。柱の炎が消えた時、残っていたのはあと少しで霊基が消える寸前の所々が焼き焦げたメデューサが座り込んでいた。
「さ……くら…………」
ポツリとつぶやくと姿が消えて、メガネと虹色の金平糖がそれぞれ一つずつ落ちていた。それをキャスターは拾うと顔を俯き黙祷をしていた。
「あの、そのメガネは?」
「このライダーがマスターから貰った絆の証みたいな物だ。簡単に言うとマスターとの思い出の品さ……遅くなってすまんな」
これはやるよと金平糖らしき物体を投げるキャスターはそのマスターを知っていたのか、まるで懐かしむ様に語る中マシュが質問をした。
「貴方はこの聖杯戦争のサーヴァントなんですか?」
「そうだ、今残ってるまともなサーヴァントの2人のうちの1人さ……なんか知ってる奴の気配がするけどまさか赤い髪の坊主とか金ピカアーチャーとかいないだろうな?え、いるのかよ!?……そういえばまだ自己紹介をしてなかったな。お前らも来いよ!」
先ほどペガサスの羽を破壊して更にペガサスの頭を握り潰した男2人もやって来て、名前を言った。
「嬢ちゃんに少年か……まあ気楽にやるか
特異捕食者雨宮リンドウだ、まあよろしく頼むわ」
「
特異剣士、ゼンガー・ゾンボルト。やっとまともな人間を見ることが出来たな」
「キャスター、クー・フーリン。今回はキャスターになったが……まあよろしく頼むぜ!」
戦闘が終わらぬ中、新たに出会ったのはこの聖杯戦争の生き残りである英霊と特異英霊と呼ぶべき存在たちであった。