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Fate/Silver or Heart 第一訓:出会いは色々と
作者:亀鳥虎龍   2017/12/31(日) 05:58公開   ID:L6TukelU0BA
 こことは別の世界、言わば世界の裏側。

そこに、二人の男女が立っていた。

少女は少年の手を握り、決して離さないと決める。

少年も彼女の手を握り、決して離さないと誓う。

「さあ、いきましょう。 次のせかいが、貴方を待っています」

そして、二人は旅出った。

果たして、行き先は?





―出会いは色々と―





 侍の国……この国がそう呼ばれたのはずっと前の事。

現在は『天人あまんと』と呼ばれる異星人の侵略によって、侍も剣を捨てることとなった。

しかしこの江戸には、侍の魂を失っていない男がいた。

かぶき町と呼ばれる街に、『すなっくお登勢』という名の居酒屋がある。

その二階には、『万事屋銀ちゃん』と書かれた事務所が立っていた。

「ふぁぁ〜」

銀髪の天然パーマで死んだ魚の様な目、そして白い着流し姿。

彼の名は坂田銀時。

超が着くほどの甘党で、糖尿病寸前。

基本的にはダメ人間であるが、やる時はやる人。

しかし嘗ては、『白夜叉』の二つ名で知られた攘夷志士でもあるのだ。

そんな彼は、ソファーで横になっていた。

「銀さん、良い大人がダラダラしないでください」

眼鏡をかけた少年が、そう言って掃除を行っている。

彼の名は志村新八。

実家は剣術道場であるが、廃刀令で門下生は一人もいない。

現在は万事屋で、従業員として働いている。

「新八、銀ちゃんに何を言っても無駄アルよ」

サーモンピンクの髪にチャイナ服を着た少女が、そう言って酢昆布を口に運ぶ。

彼女の名は神楽。

宇宙戦闘民族の天人、『夜兎族』の一人。

「ワン!」

銀時のデスクには、一匹の犬が吠える。

彼の名は定春。

神楽の飼い犬で、彼女や銀時達を背負える程の巨体を持つ。

「ほら、シャキッとして下さいよ!」

「へ〜いへい」

これはそんな彼等の日常である。






 とある別世界にある街、その名は『風都』。

風車がトレードマークで風力発電を使う事から、“風の街”とも呼ばれている。

この街のとあるビリヤード店、その二階に事務所があった。

その名は『鳴海探偵事務所』。

この事務所には、二人の探偵が営んでいる。

「ふぅー、今日もこの街は賑やかだぜ」

スーツ姿でソフト帽を被った青年が、事務所に入って来た。

彼の名は『左翔太郎』。

ハードボイルドを志すが、感情が顔に出てしまう。

その為時折、“ハーフボイルド”と呼ばれる事が多い。

「やあ、翔太郎。 随分と早かったね」

ラフな服装で髪にクリップを付けている青年が、ソファーから腰を上げる。

彼の名は『フィリップ』。

本名は『園崎来人』であるが、現在の呼び名の方で呼ばれている。

好奇心の塊で、一度興味を示すと暴走気味になってしまうのが玉に瑕。

「まあな。 街を見合したけど、騒ぎになるような事は全然なかったぜ」

「それだけ、この街が平和だって事だね」

「だろうな」

彼等は風都に存在する凶悪事件を解決するコンビで、“二人で一人の探偵”と呼ぶ。

そんな彼らだが、電話が鳴り響いた。

「もしもし、鳴海探偵事務所です」

『もしもし、あの…事件の依頼をお願いしたいので、廃工場まで来てくれませんか?』

「分かりました」

受話器を置くと、翔太郎は帽子を深く被る。

「うっし、ちょっくら行って来る」

「僕も行こう」

翔太郎とフィリップは、すぐさま事務所を後にするのであった。






 依頼人との待ち合わせ場所に着き、二人はバイクの『ハードボイルダー』から降りる。

「ここだよな」

「誰もいない……。 コレはどういう事だ」

辺りを見渡すが、人の気配は全く見当たらない。

「フィリップ、嫌な予感がしねぇか?」

「同感だ。 この空気は危険だ」

警戒する二人であったが、まさにその時である。

「ようやく来たか……」

「「!?」」

突然の声に反応し、咄嗟に振り返った。

そこには、白いスーツを纏った男が立っていたのだ。

「そのスーツ……財団Xか!」

世界の“闇”を暗躍する組織、『財団X』。

その構成員らしき人物が、二人の目の前に洗われた。

「その通りです。 私の目的は、全ての世界を掌握すること。 その為にも、キミ達は邪魔だ」

《ディメンション》

男が一本のメモリを構えた瞬間、周囲の世界が歪み始めたのだ。

「な、何だこりゃ!?」

「まずい、コレは逃げないと!」

そして次の瞬間、翔太郎達の姿が消えたのである。






 東京の何処かにある一軒のビル。

その最上階に、探偵事務所が存在する。

「ふむ。 今回も、結構な『謎』が喰えたな」

青いスーツに金髪の男が、一息吐いたように椅子に腰着く。

彼の名は脳噛ネウロ。

正体は魔人で、『謎』を解決する事で生まれ出たエネルギーを喰らう。

「なんか今日は、平和な感じだね。 最近は旅行シーズンもあるそうだし」

金髪の少女がそう言って、弁当を口に運んでいる。

彼女の名は桂木弥子。

高校生の時にネウロと出会い、探偵として活躍している。

そんなある日、ネウロがこう言ったのだ。

「ではヤコ、我々も旅行に行くぞ」

「………はい?」

コレがなんと、全ての始まりなのであった。





「りょ、旅行って、行き先は決まってるの?」

「ふむ、適当に決まってるだろ♪」

「ですよね〜」

行き先の無い旅行に、不安を感じた弥子。

そんな中でネウロは、その場である物を取りだした。

「魔界7777ツ能力どうぐ普遍の亜空イビルディメンション』」

それは魔界のタイムマシーンで、明らかに設定無視の代物である。

「コイツを使い、並行世界へと旅立つのだ」

「あからさまに嫌な予感が的中した!」

「では行くぞ、ヤコ」

「ちょっと待って! まだ心の準備がぁぁぁぁぁぁ!」

弥子の頭を鷲掴みし、ネウロは普遍の亜空イビルディメンションの中へと入る。

勿論、彼女の意見を無視して。

こうしてネウロと弥子の、並行世界旅行ツアーが始まったのであった(笑)。

「笑えるかぁぁぁぁぁぁぁ(怒)!」






 古代ゲライオスという文明が存在する世界『テルカ・リュミレース』。

騎士団やギルドといった組織が存在し、魔物から人々を護っている。

特にギルドは強い規則に縛られる事はなく、己の流儀を貫く。

その一つのギルドが、少人数で構成された『凛々の明星ブレイブヴェスペリア』である。

「この辺りだよな?」

長い黒髪の青年が、森の中を歩いていた。

彼の名は『ユーリ・ローウェル』。

凛々の明星ブレイブヴェスペリアの構成員で、面倒見の良い兄貴分である。

「うん、ここだね」

首にスカーフを巻いた少年が、ユーリの言葉に同意した。

彼の名は『カロル・カペル』。

凛々の明星ブレイブヴェスペリアのボスで、ユーリは彼の補佐的な立ち位置でもあるのだ。

「ここね」

そんな二人とともに、妖艶な美女が歩み寄る。

彼女の名は『ジュディス』。

『クリティア族』と呼ばれる、古代から存在する種族の女性。

「ワン!」

そして彼等の元へ、一匹の犬が駆け寄る。

彼の名は『ラピード』。

ユーリの愛犬で、彼との付き合いが一番長い。

そんな彼等は現在、ギルドの仕事で森の中に来ていたのだ。

依頼内容は、“森に入った友人を見つけて欲しい”との事であった。

森の奥を歩くと、そこには白いスーツ姿の男が立っていたのだ。

「初めまして」

男を見た途端、ユーリは直感で気付いた。

“コイツは危険だ!”と……。

「お前等、気を付けろ! コイツはヤバいぞ!」

ユーリが叫ぶが、男は不敵に笑う。

「無駄だ。 コイツで……」

《ディメンション》

その瞬間、その場にいた者達が消えたのである。







 賑やかな江戸の町。

「不思議な町ですね」

「ああ」

二人の男女が、街の中を歩いている。

一人は茶髪で赤い瞳、白いシャツで黒いベストと黒いズボン姿の少年。

もう一人は三つ編みにした長い金髪で青い瞳、白いシャツでミニスカート姿の少女。

少年の名は『ジーク』。

嘗て、とある世界で起きた『聖杯大戦』の際に生み出されたホムンクルス。

少女の名は『ジャンヌ・ダルク』。

フランスの聖女で、裁定者ルーラーというクラスに就いた英霊。

聖杯大戦が終わり、世界の裏側から旅だった二人は、この世界へと辿りついたのだ。

「とにかく、働き先を探さないと…」

「そうですね」

二人は働き口を探すため、町の中を彷徨っていた。

しかし、その時だ。

ゴシャァァァァ!と、大きな音が聞こえたのである。

「「!?」」

音が聞こえた方角へと、思わず駆け寄ったのだ。






 二人が駆け寄ると、そこには一人の男がバイクと共に倒れていた。

男は飛脚で、かなりの重傷を負っていた。

「大丈夫ですか!?」

「うぅ……」

「すみません、病院に連絡を!」

ジャンヌが近くの人間に声をかけ、相手もすぐに連絡をした。

「大丈夫か!」

ジークが声をかけるが、男は一つの小包を差し出す。

「こ…これを…届け……て…ほし……」

「…ああ、わかった」

小包を彼に渡すと、男はその場で気を失う。

「救急車がもうすぐ来ます! ジーク君、その方は!?」

「気を失っただけだ」

「よかった……。 ところで、それは?」

「彼に託された。 コレを届けて欲しいそうだ」

「そうですか……」

「キミも来るのか?」

「勿論です」

「そうか…いこうか、ジャンヌ」

「はい」

こうしてジークとジャンヌは、小包を届けに行ったのだった。






 真選組…幕府に牙を向ける攘夷志士から、江戸の治安を守る警察組織の総称。

ジークとジャンヌは、その門の前に立っていた。

「ここで間違いないな」

「ええ。 ここが、真選組の屯所……」

二人は門前で唖然となるが、その時である。

「フム……この屯所に、珍しい客が来たようだな」

「「!?」」

着物姿に群青色の羽織りを着こんだ男が、ゆっくりと歩み寄って来たのだ。

「ご両人、ここに何のご用かな? デートスポットにしては、ここはあまり良いところではないが」

「あの、飛脚の方が事故で倒れて、その荷物を届けるように頼まれたのです」

「これがその荷物だが……」

ジークが差し出すと、男はそれを受け取る。

「失敬」

何故か彼は、小包を耳に当てた。

――カッチカッチカッチ…。

小包からは時計の音が聞こえてくる。

「ところで、貴殿等は知っているか? この街では最近、爆破事件が起こっている事を」

「どういうことでしょうか?」

「何も知らぬ飛脚に爆弾入りの小包を配達させ、配送された場所を爆破させるという事件だ。 贈られるのは必ず、時限爆弾だ。 つまり……」

男が小包を上に放り投げた瞬間、小包がボカァーン!と爆発したのだ。

「これも、爆弾だということだ」

その瞬間、男は鞘から抜いた刀をジークに向ける。

切っ先は彼の喉元を捉え、ジークもこれには驚愕してしまう。

「貴様…何者だ? 本当に荷物を届けに来ただけか?」

「!?」

「ジークくん!」

ジャンヌが叫ぶが、ジークも男も動く気配を見せない。

「いや、失敬。 事件の所為で、屯所の者達はピリピリしていたのだ。 なにせ、本業は警察なのでな」

鞘に刀を納めた男であったが、ジークの冷や汗は止まらなかった。

「安心せい。 貴殿等が嘘をついていないのは、顔を見れば分かる。 ほれ、早く行くといい」

「あ…ああ。 ありがとう」

「気にするでない」

ジークとジャンヌが立ち去ると、男は不敵に笑う。

「ふっ。 あのような可憐な娘と付き合っていたとはな……羨ましい」





 すっかり日が暮れ、ジークとジャンヌは今も街の中を彷徨う。

「日が暮れてしまいますね」

「宿を探すとしても、金もないしな」

「どこか、泊めてくれる家とかはないでしょうか……」

どうしようかと考えていたが、まさにその時であった。

「いててて……あの野郎……とんでもねぇトコに飛ばしやがって」

「何か、僕等の知ってるところじゃないよね」

「つまり、異世界ってことね。 あの男、何のつもりで私達を飛ばしたのかしら?」

「ク〜ン……」

長い黒髪の青年に、スカーフを巻いた少年、うなじに触角が付いた妖艶な女性、そして煙管を加えた犬が歩いていた。

「どうしよう……宿とか取れそうにないし……」

「どっかの家に泊めて貰うしかねぇな……ん?」

すると黒髪の青年が、二人の存在に気付く。

「なあ、アンタ等も泊まる場所、探してんのか?」

「あ、ああ」

「まあ、だろうな。 最悪の場合は、野宿も覚悟するしかねぇな」

青年が頭を掻きながら呟くが、その時である。

「あのぉ〜、どうかしましたか?」

眼鏡をかけた少年が、彼等に声をかけたのだ。

声を掛けられた青年は、即座に少年に状況を説明した。

「そうですか……宿に泊まりたいけど、お金が……」

「ああ。 どっかで泊めて貰える家でもありゃ良いんだが、最終的には野宿の覚悟もしておこうかと思ってよ」

それを聞いた少年が、こんな提案をしたのである。

「でしたら、ウチに来ませんか? 結構広いので、部屋も使えますよ?」

「ん? 良いのかよ?家族には相談は?」

「姉と二人暮らしですので。 姉上には、僕が説明しますから」

「じゃあ、そうさせて貰うか。 ユーリ・ローウェルだ。 頼むぜ」

「志村新八です」

こうして彼等は、新八の言葉に甘える事にした。

その後、姉の承諾を得た新八により、ユーリ達は志村家へとまぬかれたのである。





 その夜、万事屋はというと……、

「んあ?」

銀時の右手に奇妙な痣が出来ていたのだ。

「何だこりゃ?」

不思議に思いながらも、彼は寝室へと向かった。

「ふぁ〜……」

大きく欠伸をした銀時であったが、まさにその時である。

「!?」

突然のことであった。

右手の痣が、強く光り出したのだ。

「うおっ!」

痣の発光が消えると、彼は大きく目を開いてしまう。

「サーヴァント・ライダー、坂田金時だ。 アンタが俺の大将マスターか?」

金髪で黒いレザージャケットを羽織った男が、銀時に対してそう言った。

「なんじゃコリャァァァァァァ!?」

コレを見た銀時の叫びが、部屋中に響いたのである。





「なんじゃコリャァァァァァァ!?」

目の前の男に対し、銀時が叫ぶが、

「うるさいアル!」

隣の部屋にいた神楽が、怒号とともに襖を開けたのだ。

「神楽、丁度良かった! ここにジャケットを着た不審者が――」

神楽に追い返して貰おうと、銀時は彼女の方へ振り返る。

しかし、彼は再び驚愕してしまう。

「ん? どうした、神楽?」

黒い軍服に身を包んだ少女が、神楽の後ろから現れたのだ。

しかも声色は、何故か神楽と同じ。

「エェェェェェェェェ!?」

これには銀時も、再び叫ぶしかなかったのだった。





 その同時刻、新八の実家。

ピンポーン!と、インターホンが鳴り、

「は〜い」

一人の女性が玄関へと向かう。

彼女の名は『志村妙』、新八の実姉である。

扉を開けると、一人の女性が立っていた。

長い紫色の髪で、どこか神秘的で幻想的な雰囲気を纏っている。

「夜遅くすみません。 ワケあって、この街に来た者です」

「あら、旅の方ですか?」

「はい。 実は一日で良いので、泊めて貰っても宜しいでしょうか?」

妙は少し考えると、優しい笑みを見せた。

「分かったわ。 こんな時間に女性を追い出す人なんて、まずはいないでしょうし」

「ありがとうございます」

「ところで貴女、お名前は?」

名前を問われ、彼女は迷いなく答える。

「ワケあって本名を名乗れませんが、“ルーラー”と呼んで下さい」

「良いわ。 それじゃ、入って」

「失礼します」

しかしお妙は、全く知らなかった。

このルーラーという女性の存在が、新たな事件の始まりである事を……。

誰もまだ、知らなかったのだ。


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■作者からのメッセージ
 一度学園物から離れて、まったく別の作品を書きました。

『Fate/Apocrypha』のアニメ最終話の直前に投稿したものです。

ぜひ読んでください。

銀時「読みたくねぇ奴は読まなくて良いぞ〜」

新八「オイィィィィ! アンタ、とんでもない事言ってんじゃねぇぇ!」
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