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Fate/blue night
8話
(fate stay night 碧の軌跡)
授業に身が入らない。
社会の授業。葛木宗一郎教諭が静かに黒板にチョークを走らせている。
その様子を眺めながら特にノートを取るでもなく窓の外を眺めている。

−結界、

恐らく英霊が仕掛けたそれは、学園全体を覆っており、それが碌なものではない事が用意に想像できてしまう。
結界が及ぼずであろう効果は気になるが、それ以上に士郎の様子が気がかりだった。
校門で別れた後、それから嫌な予感が消えない。
士郎は思いつめた表情で、一言も発せずに教室へと向かった。
恐らく、この結界をどうにかしたいと思っているのだろう。
放課後、犯人である英霊とマスターを探す約束をしたのだが耳に届いているのか疑わしい。
その前に昼休みには遠坂凛も呼んで作戦会議を開きたい所だが…。

「ダメだな…」

宗司は頭を振った。
今朝、衛宮家前での出来事を思い出した。

「じゃあね、衛宮君。色々あったけどここからは敵同士よ。昨日の今日で無いとは思うけど、青木くんも邪魔をするなら容赦はしないわ」

そう言ってクルリと優雅に踵を返すと颯爽と去っていく遠坂凛。
義理は果たしたのだからこれ以上慣れ合う気は無い。
そんな彼女の在り方は、どこか気高く美しく感じた反面、このままなし崩し的に正式に戦争が終わるまで手を組めないのは残念だった。
飽くまでもバーサーカー戦だけの関係、少し寂しい。

もしやこの結界は彼女が?
一瞬だけ疑ったが直ぐに有り得ないと思考を切り替えた。

……キーン、コーン、カーン…、

思考している間に時間は進み、授業の終わりを告げる予鈴が響く。

「ふむ…、時間だ。号令を」

葛木宗一郎教諭は教本をまとめて脇に抱える。

「起立、礼」

「……それから青木、授業が上の空だったようだが」

「すいません…」

「お前はこの後の放課後、職員室に来るように」

感情の篭もらない、それでいて突き刺すような視線を向けて言い放つ。
そしてさっさと教室を出て行ってしまった。

「ヤバイ…、怒らせたかな」

宗司は授業が上の空だった自身の態度を反省しながら職員室へ向かう。
そして葛木宗一郎教諭の無表情無感情の説教に晒され、開放された時には既に部活動に汗を流す生徒たちも帰路に付き、辺りは静寂が流れていた。
この調子だともう、学園には殆ど生徒は残っていないだろう。
宗司は士郎と結界の調査をするべく教室へ向かった。


「出て行った?」

そこにいたのは男子生徒が二名、たまたま残っていただけだった。
教室に着くなり待っていたのは士郎、ではなく士郎が既に出て行った報せだった。
どうやら先走って結界を張った犯人を探しに行動を開始したらしい。

「あのバカ…」

宗司は屋上へ移動する。
ここならば人目につかないし、辺りを一望出来る。
掃除はエニグマUを取り出すとクオーツを付け替える。
装着するのは『天眼』のクオーツ。
まるで空から眺める鷹の如く辺りの様子が脳裏に流れてくる。
そして、

「見つけた」

士郎の姿を確認する。
一人ではなく二人のようだ。
遠坂凛、聖杯戦争のライバルが士郎と共にいたのだ。

「……痴話喧嘩?」

その様子を見て宗司は首を傾げてしまう。
一体これはどんな状況だ?
士郎は教室で立て籠もっており、凛と激しく言い争っている。
凛は指先から漆黒の弾丸をガトリング砲さながらばら撒き、士郎は机を盾に必死で身を守っている。
普通に考えれば士郎の危機なのだが、宗司には何故か痴話げんかに見えてしまっていた。

「…っと、呆けている場合じゃない。取り敢えず止めないと」

宗司は溜息を付くと、目的地へ向かって走りだした。
作者: トッシー (ID:********)
投稿日:2014/07/03(木) 20:10
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